男は守られるのが常識の貞操逆転世界で、唯一魔法を使えるようになったので、全力で女の子達を守っていたら激しく執着されるようになってしまった 作:タンポポ西田
アタシ、アイリス・フォーミラーは恋をしている。
恋の相手は、アタシの初めての人——ユークリッド・ヴェレミア君だ。
ただでさえ男は人数が少ない。それなのにこんなアタシと身体を重ねてくれたのだ。
正直、身体目当てのところはあった。
だって、顔はすごく好みだったから。
それが初めての相手なら言うことないじゃん。
噂ではどんな男の子でもヤッてしまえば愛おしくなるって聞く。
今回はそれのすごいやつ。
それじゃあ顔が良いから更に好きになるかって言われる、話が違う。
だって実際、一緒に身体を重ねて分かった。めっちゃ良かった。
もはや運命の人と言っても過言じゃない。
ぶっちゃけ今は男の子に比べれば、女の子の方が社会的地位は高い。
とはいえ年を重ねれば重ねるほど、価値は薄くなっていく。
だって基本的に男の子は外に出たがらない。
それに魔法も使えないから女性の方が上のはずなのに、男の子の数が少ないからいざ選ぶとなると男の子の方が強い。
ただ、働かないと生きていけないから、エッチなお店で働く男も多いのも実態だけど。
つまりエッチをするためにはお金を払わないといけない……まだそういうお店には行ったことがないけど。
だから、こうしてアタシのワガママに付き合ってくれるだけでマジ感謝。
つまるところ、何が言いたいのかと言うとアタシは恋をしているのだ。
人生でたった一度しかない初恋を。
……いや、まぁ初恋は初めての恋なんだから人生で一回しかないでしょ、みたいなツッコミは野暮だけど。
ともかく
それはそうと……ユークリッド君って本当優秀すぎない?
いくら魔法が使えないからってマナ回路が見えるどころか修正までやってのけるんだもん。
だから最近、クラスのみんなが
……いや、ひょっとしたら、雑務とかこつけて裏で
最近はあの堅物でお馴染みの
なんだかんだ言いつつも委員長も狙っているのだろうか。だとしたら……ちょっと困る。
ただでさえ、一緒にいれる時間が少ないのだ。
これ以上離れ離れになったら、アタシは寂しさと虚しさでどうにかなっちゃいそうになる。
実際、今日も朝のホームルームにはいなかった。
なんでもユークリッド君は雑務をこなすことを条件にこの学院にいさせてもらっているらしい。
だから、ユークリッド君がクラスにいないことは仕方ないんだけど……さすがに愛しのユークリッドをこき使うのはアタシ的には泣けてくる。
先生曰く、ユークリッド君は雑務をするために休んでいるとのこと。
ひょっとしたら、実は雑務が早く終わって教室にくるかなぁ……なんて淡い期待を抱いていたけれど、1時間目の授業が始まっても教室に来る様子もない。
おかげで1時間目の授業の内容は何一つとして覚えていない。
だからアタシは1時間目の授業が終わった後に、こっそり教室を抜け出した。
きっとこのまま授業を受けても、集中できないから。
「今日は授業にいなかったってことは……自分の部屋にいるのかな……?」
アタシは授業で誰もいない廊下を一人歩く。
ついでにアタシの固有魔法である『隠密』を使っておく。
これで完璧。アタシは堂々と廊下を歩く。
歩く度、すぐ横の教室では先生が授業をしている声がする。
本当だったら怒られることなのに、この時間がほんの少しだけ楽しく感じている自分がいるのも確かだった。
ただアタシだけが世界から切り取られたような、そんな錯覚がした。
ただ廊下を歩いていて分かったことがある。
少なくともユークリッド君が学院内で雑務をしている感じはしないということ。
だったら、部屋かな??
なんだかんだユークリッド君もサボるんだ。意外とワルじゃん。
なんて思ったけど……この前、初めてシテもらった時には二人で仲良く授業をサボったから別に初めてサボる訳じゃないのか。
ふふっ……それならアタシもワルになっちゃおうかな。
まぁ、アタシは現在進行形でサボっているんだけどね。
そんなこんなで気が付くと、アタシはユークリッド君の自室がある寮までたどり着く。
ユークリッド君と同じ寮だなんて……今になってめっちゃ羨ましい。ほんとずるい。
「なんの音だろ……??」
ただ上の方からギシギシと木材が
最初は小さな違和感だった。
ユークリッド君の部屋に近づく度、木材の
アタシはユークリッド君の部屋の前に辿り着く。
扉は半開きになっていた。
ユークリッド君は少し不用心なのでは? なんてことを思う間もなくアタシの思考は目の前の光景で吹き飛んだ。
「え? 誰……?」
部屋の中でアタシの知らない長い黒髪の女の子がユークリッド君の部屋で身体を重ねていた。
「……っ!!」
アタシは思わず『隠密』の固有魔法を再度使用する。
重ねがけしたってなんの意味もないことは知っている。
でも……私は見ているだけしかできない。
ユークリッド君と身体を重ねている長い黒髪の女の子は、同性目線から見ても綺麗だと感じた。
元々、この王国では黒い髪を見ることは少ない。
けれど、そんな物珍しさはどうでもよくて、
ユークリッド君と身体を重ねている長い黒髪の女の子は、なんというか気品に
一目見ただけで生物レベルで格の差を思い知らされた。
ユークリッド君は彼女みたいな女の子がタイプなのかな。
少なくともアタシに気品なんてない。
実際、アタシはノリが軽すぎて委員長から『ヘラヘラしすぎ』だなんて言われるくらいだ。
つまりアタシと正反対。
あぁ、嫌だな。知らなければ比べなくて済んだのに。
せめてもの抵抗で、アタシは下腹部に手を添える。
「んっ……あっ……」
バレないように声を殺す。
アタシは思わず『隠密』の固有魔法がある。
少なくとも、アタシが気づかれることはない。
水が
それが『隠密』の固有魔法のおかげだって理解っている。
でも、それなのに……、
(どうして、止まらないんだろう)
ゆっくりと腰を落として、声が出ないように歯を食いしばる。
きっと心のどこかでバレてしまいたいって思っているアタシもいるから。
もしもアタシがここで愛しの彼と見知らぬ彼女をしているところを見ながら、自分を慰めていたなんて知ったら、ユークリッド君はアタシのことをどう思うんだろう。
でもそれでもいいかもしれないなんて思った。
ユークリッド君がアタシに感情を向けてくれるだけで、少なくとも彼を独り占めできているから。
いや、でもやっぱり嫌われたくないな。
そんなアタシの思いは知らず、目の前の二人の行為は激しさを増す。
二人に比例して、アタシも激しさを増す。
「~~~っ!!」
そうして、アタシは一人果てる。
でも二人は変わらず続けたまま。
このままここにいたら、いつかは本当にバレてしまう。
「部屋に、戻ろう……」
そしてアタシは壁に手をついて立ち上がり、部屋に戻る。
でも部屋に戻っても二人の姿が目に焼き付いたまま。
アタシは部屋で一人慰め続ける。
結局、アタシはこの日の授業には戻ることはなかった。
本当にワルだったのはアタシの方だったのかもしれない。