男は守られるのが常識の貞操逆転世界で、唯一魔法を使えるようになったので、全力で女の子達を守っていたら激しく執着されるようになってしまった   作:タンポポ西田

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第8話 特別留学生

「貴方……色々と忙しそうだけど、大丈夫なの?」

 

 朝のホームルーム前。

 

 1年Fクラスの教室に入ると、このクラス委員長であるリリア・タルタロスが長くウェーブがかった金髪を毛先を弄りながら俺に声を掛ける。

 

「えぇ、特に問題ありません。ご心配お掛けしました」

 

「そう。それならいいのだけど……無理してるなら言いなさい? 貴方に倒られるとクラス全員が貴方の部屋に行くことになるわよ」

 

 俺がそう答えると、リリアさんは溜息を漏らす。

 

 学院長がそういう形にしてくれたのだろう。

 

 そういう意味では雑務というのは都合がいい。

 

「それは……賑やかになりますね」

 

「笑いごとじゃないわよ」

 

 リリアさんは再び溜息を吐く。

 

 昨日、ティターニア様とは夜が更けるまで身体を重ねた。

 

 その結果、ヴィルヘルム・ティターニアの固有魔法『潜在能力強化(オールアップ)』を手に入れることができた。

 

 未だ使える状況ではないから、どんな効果は分からない。

 

 基本的に固有魔法は強力である。

 

 何故なら、他の人が使えない魔法のため切り札的な側面もあるから。

 

 だから使ってみたい試してみたい気持ちもある。

 

 とはいえ、ティターニア様を助ける任務をこなした後、休む間もなかったせいかティターニア様が満足した後、俺とティターニア様は眠りについた。

 

 目覚めると、『良かったわ』という置き手紙と彼女の残り香を残して俺の部屋を去っていた。

 

「ともかく、本当に無理してるようなら絶対に言いなさい。いくら男だからとはいえ、貴方に倒れられても面倒だから」

 

 やはり、リリアさんは面倒みがあるのだろう。

 

 委員長になるべくしてなった、なんとなくだがそんな気がする。

 

「あと、これは昨日の授業の内容のメモ。写し終わったら返してちょうだい」

 

「申し訳ありません。ありがとうございます」

 

 多分、その推測は間違っていない気がする。

 

 リリアさんは根っから優しいのだろう。

 

「リリアさん。何かお困りなことはないでしょうか?」

 

「ないわ」

 

「……さようですか。でしたら、何か困ったことがあったら遠慮なく仰ってください」

 

「その時になったらお願いするわね」

 

 リリアさんは飄々(ひょうひょう)と言う。

 

 ないと言われてしまえば仕方がない。その時になったら全力で雑務に取り組ませて頂こう。

 

 とはいえ、未だ委員長への心の距離は遠いまま。

 

 こればかりは信用されるためにも頑張らないといけない。

 

 なんてことを思っていると、

 

「ほら、朝のホームルーム始めるから席に着け~」

 

 ポニーテールの担任、もとい、ドロシー・ソルティアが教室に入る。

 

「今日から()()()()()がこのクラスに入る。みんな仲良くしろよな。じゃあほら入ってこい」

 

 教室の中がざわつく。

 

 とはいえ、このタイミングで留学生なんて一人しか思い浮かばない。

 

 そして教室のドアが開かれる。

 

「あ……」

 

 と、アイリスさんが声を漏らす。

 

 柔らかな笑みを浮かべて、()()()()()()長い黒髪の少女が入ってくる。

 

「あ……」

 

「ギラファ帝国から参りました。ヴィルヘルム・ティターニアと申します。どうぞ皆様宜しくお願い致します」

 

 心なしかアイリスさんがティターニア様に向けている視線は悲しみを帯びていた。

 

 何故かは分からないが知り合いなのだろうか?

 

「というわけで、粗相のないようにしてな……先生は怒られるのが嫌なんだ」

 

「いいえ。そんなことは気にしなくていいので、私には気軽に接して下さい。祖国……ギラファ帝国では公爵家の令嬢という扱いですが、こちらの王国ではただのヴィルヘルム・ティターニアですので。私のことは是非ともティターニアとお呼びいただければ」

 

 ティターニア様は可憐な笑みを浮かべる。

 綺麗な花には棘があるというが、ティターニア様の棘はより一層鋭く見える。

 そして、クラスの全員がただのヴィルヘルム・ティターニアではない……というのも理解している。

 そもそも、なんで一番下のFクラスに?? といったような疑問も生まれているだろう。

 俺もそう思うが、昨晩のことを思い出すと心当たりは生まれる。

 

「それじゃあ、そうだな……悪いがユークリッド。一度、席を特別留学生に貸してやってくれ。予備の机は空き教室に余っているはずだから、ホームルームが終わったら取りに行ってくれ」

 

「承知しました」

 

「という訳で、ティターニア……はユークリッドの席に座ってくれ」

 

「えぇ。お気遣い感謝するわ」

 

 なんて言えばいいか先生は困惑していたが、一旦はティターニア様を同じ生徒として接するようだ。 

 

 そして俺が立ったついでに、ティターニア様が座りやすいように椅子を軽く引く。

 

 ティターニア様は席に着く前に、俺に声をかけた。

 

「あら、騎士くん。ありがとう。こちらでもお世話になるわね」

 

「とんでもございません。何かあれば気軽に仰って下さい。雑務であればお力添えさせていただきます」

 

 俺は頭を下げると、

 

「そう。それなら早速放課後空いているかしら?」

 

「え……」

 

 アイリスさんが小さく声を漏らす。

 

「申し訳ありません。本日は既に予定が埋まっておりまして、明日の放課後であればご対応させて頂きますが」

 

 正直にお手伝いしたい気持ちはある。

 

 でも俺は既にアイリスさんと約束をしている。()()の雑務ならばそちらを優先するが、そうでなければ先に約束をしてた方を対応するのが筋だと思っている。

 

「そう、それなら仕方ないわね」

 

 ティターニア様は残念そうな顔をした。

 

「それなら明日ね」

 

「承知致しました」

 

 俺の答えに頷いて楽しそうな顔をする。

 

「あの……」

 

 声の方を見ると、が長くウェーブがかった金髪の女生徒が声をかける。

 

「あら、リリアじゃない。お久ぶりね。元気だったかしら?」

 

 委員長でリリアさんは困惑した表情を浮かべながら言葉を返す。

 

「ありがとうございます。元気ではありますが、どうしてこちらに? それにユークリッド君とはお知り合いなのでしょうか……?」

 

 リリアさんの問いにティターニア様は一瞬だけこちらに視線を送った後、イタズラっぽい笑みを浮かべて、

 

「そうね……彼には世話になってるのよ。少なくとも()()()()よりは深い仲なのは確かよね」

 

『え? どういうこと?』『まーた、ライバルですか』『隣国とはいえ、公爵家はずるくない?』『なーにが公爵家じゃい! 負けてたまるか!!』

 

 ティターニア様の一言でクラスがザワザワと慌ただしくなった。

 

「え……あ、そうなんですね。何かあったら仰って下さい。委員長としてお助けしますから」

 

 リリアさんは困惑しながらも答える。

 

 知り合いよりも深い仲と意味深に言われると関係は気になると思う。だが朝のホームルームという短い時間であったり、隣国の公爵であったりと、現状深く聞きづらいのもたしかだろう。

 

「あら、ほんと?? リリアがそう言ってくれるなら助かるわ。何かあったらすぐに頼らせてもらうわね」

 

「えぇ、是非」

 

 リリアさんはぎこちない笑みを浮かべる。

 とはいえ、さすがは委員長だ。

 リリアさんは困惑しつつも委員長という職務を正しく行なっている。

 俺も負けないように頑張らないと。

 

「あ、そうそう騎士くん」

 

「どうかされましたでしょうか?」

 

「私は襲われたばかりだから……これからはちゃんと私のことを守ってね。お父様も貴方の隣が一番安全だと判断したから」

 

「承知致しました。その雑務、承らさせて頂きましょう」

 

 ティターニア様のお言葉に、俺は頭を下げるしかなかった。

 

 

 

 

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