男は守られるのが常識の貞操逆転世界で、唯一魔法を使えるようになったので、全力で女の子達を守っていたら激しく執着されるようになってしまった   作:タンポポ西田

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第9話 ティターニアからの雑務

「あら、ちゃんと来てくれて嬉しいわ」

 

 再びの放課後、俺はティターニア様に雑務とのことで王立魔法学院の昇降口の前で待ち合わせをしていた。

 

「お待たせして申し訳ありません。ティターニア様」

 

 俺がそう謝罪すると、ティターニア様は微笑む。

 

「可愛い紳士を待つのは、淑女たる貴族の勤め。むしろちゃんと来てくれて嬉しいわ。騎士くんを誘った時のクラスの子達ったらすごい表情をしていたもの」

 

「有難い限りです。俺としてはいつでも雑務を受け入れたい所存なのですが」

 

「ふふっ……騎士くんは誰にでも平等に優しいわね。本当に残酷よ。でも、そういうところは嫌いではないわよ」

 

「お褒めに預かり光栄であります」

 

 そう俺はティターニア様に雑務として放課後の買い物に同席することになった。

 

 その際にクラスの皆様からは『くそっ……これが権力か!』『あぁ……美少年を誘う度胸のない処女にどうか祝福を……』などとティターニア様に羨望の眼差しを送っていた。

 

 ただ一人、リリアさんだけは俺を心配そうな目で見ていたけれど。

 

「なんて。こんなところで雑談なんて時間がもったいないわ。早く行きましょう」

 

「承知致しました」

 

 そう言って、俺とティターニア様は歩き出す。

 

 その間も周りの女性からは奇特な視線を送られる。

 

 歩きながら、雑談程度に気になったことをティターニア様に尋ねる。

 

「ティターニア様。ところで何故、わざわざ外に買い物に? 仰っていただければ指定の場所に荷物のお届けをさせて頂きますが」

 

「あら、つれないわね。ただただ騎士くんとデートがしたいだけだわ」

 

「ですが、ティターニア様は攫われたばかりですよね? 今、外出するのはあまり得策ではないこともご理解されているはずでは?」

 

「あら、部屋で身体を重ねる方が良かったかしら? 仕方ないわね。全部片づけたら、嫌になるくらい身体を重ねましょう」

 

「ティターニア様。お言葉でありますが、冗談を言っているつもりはありません」

 

 ティターニア様を襲った男潰しの狂犬達(ケルベロス)の背後には得体の知れないものがいる。

 

 事実、捕えたはずの男潰しの狂犬達(ケルベロス)はその得体の知らないやつに口封じのために殺された。

 

 殺されたのも女王陛下がいらっしゃる王城の中での出来事だ。

 リスクを背負いたくないのが本音だ。

 

「騎士くん。私はそこまで馬鹿じゃないわ。最初に出会った夜、私は騎士くんに言ったわよね。『私はやられたらやり返すのが主義』って。どんな手段を使っても私は仕返しをしたいの」

 

「つまり……その仕返しを俺がやれと」

 

「話が早くて助かるわ。さすが私の騎士くんね」

 

 ティターニア様はそう言って俺の目を真っ直ぐに見つめる。

 

「やること単純明快。私が囮になって、やつらに捕まるわ。そこに騎士くんが乗り込んで相手を抑えて、情報を取りに行く。あと私を助けるのも忘れないで頂戴ね」

 

「さすがに無茶が過ぎるかと。何よりも危険です」

 

 得体の知らない敵がティターニア様を殺すとも限らない。

 

 まだ昨日今日の関係ではあるがティターニア様がそこまで考えが及ばない方ではないことを知っている。

 

「それに、俺の信念としてティターニア様が傷つくやり方は賛成しかねます」

 

 俺は女性が傷つかない世界を創るために、様々な雑務を引き受けているのだ。

 

 それなのに、わざわざティターニア様を傷つくやり方をするのは賛同できない。

 

 しかし、ティターニア様はゆっくりと首を横に振る。

 

「リスクを愛せないやつに女神は微笑まないわ」

 

「え?」

 

「それに危ないことが怖いなら部屋に鍵をかけていればいいだけ。でもそんな臆病者に私はなってあげたりしない。だから私は騎士くんに雑務をお願いしているの。騎士くんだったらどんな相手でも簡単に倒せるって信じているから」

 

「まだ昨日今日の関係だと思いますが」

 

 俺がそう尋ねると、ティターニア様は俺の目を真っ直ぐに見つめて答える。

 

「私、人を見る目だけには自信があるの。騎士くん。それを貴方が証明して頂戴」

 

 ティターニア様がそこまで俺を信じてくれていると理解してしまった。

 

「そう仰るのであれば、俺個人としては引き受けるしかありませんね……しかし、敵に身柄を拘束されるのであれば、少なからず怪我をされる可能性があります。そうなってしまえば帝国と王国の間に亀裂が走ってしまうのではないでしょうか? であれるならば、一度学院長と相談させて頂きたいのですが」

 

「騎士くん。今回の一件、何をされたとしても私はお父様に『何もなかった』と報告するわ。なんなら、昨日の時点で既にお父様には手紙を送っている。だから騎士くんは何も気にしなくていいわ」

 

「そこまでですか……」

 

「そこまでよ。私は誇り高きヴィルヘルム公爵家の令嬢よ。やらっぱなしで祖国に帰った方がお父様に叱られてしまうわ。それにもしも断られたら口が滑ってしまうかも……私、何を言うと思う??」

 

「承知致しました。そこまで言うのであれば、必ずやその雑務を遂行いたしましょう」

 

「賢明な判断に感謝するわ」

 

 そこまで言われたら断れない。

 というか、もはや半分脅迫なような気がするけれど。

 

「だとしたら、これを渡しておくわね」

 

 ティターニア様は俺に片眼鏡(モノクル)を渡す。

 

 ティターニア様から受け取った片眼鏡(モノクル)は金の装飾に彩られ、見るからに高いものだと直感的に理解できる。

 

「これは?」

 

「私の居場所が解る探知魔法が埋め込まれたマジックアイテムよ。これで私を攫った相手のアジトまで後をつけなさい」

 

「そんなお高いものを……承知致しました」

 

 俺はティターニア様から受け取った片眼鏡(モノクル)をかける。

 

「とても似合っているわ」

 

「ありがとうございます。あまり眼鏡はかけませんが、お褒めに預かり光栄です」

 

 俺がそういうとティターニア様は一つ手を叩く。

 

「あぁ、騎士くん。もう一つの雑務を忘れてないかしら?」

 

「もう一つの雑務でございますか?」

 

 俺は頭を傾げる。

 

 今回の雑務の真意はティターニア様を囮に敵をおびき寄せること。

 

 故に、もう一つの雑務と言われても理解の範疇から消えていた。

 

「私とデートすること」

 

「失礼致しました。今日はどこまでもお付き合いさせて頂きます」

 

「そうよ。それじゃあ行きましょう――と言っても、目的地は目の前なの」

 

「ここは――高級レストランですか?」

 

「ええ。貴族御用達のレストラン。昨日の内に個室を抑えたのよ。少し晩飯には早いけれど最上のコースを予約しておいたわ」

 

 ティターニア様のスマートさは勉強になる。

 きっと他の男にさぞモテるだろう。

 しかし、疑問が一つ湧いた。

 

「……もしも俺が断っていたらどうするおつもりだったんですか?」

 

「そもそも断られることなんて想定していないわ? でもそうね……もしも断られたら一人寂しく食事をしたかしらね。本当に良かったわ。いくら私でも二人前のコース料理は入らないかもしれないもの」

 

「それは本当に良かったです。ご一緒できて大変うれしく存じます」

 

 俺は苦笑するしかなかった。

 

 そうして、俺とティターニア様はレストランの中に入るのであった。

 

* * *

 

「ご馳走様でした。とても美味しかったです」

 

 ティターニア様と食事を終えた後、外に出る。

 

 陽は既に落ち切っており、街中は出店も含めて人通りが賑やかだった。

 

「ふふふ……どういたしまして。私、とてもこのお店を気になったわ。また行きましょう。もちろん私のおごりで」

 

「それが雑務であれば、是非ともご一緒させて頂きますよ」

 

「ふふふ……気分が良いわ。ねぇ、騎士くん。このまま私の部屋でイチャイチャしないかしら? 昨日よりも気持ち良くさせてあげるわよ」

 

 ティターニア様は俺の左腕に胸を抱き寄せる。

 

 ティターニア様の巨大な胸は俺の腕の中でむにゅりむにゅりと形を変える。

 

 まったく、ずるいお方だ。しかしそのお誘いには乗ることができそうになさそうだ。

 

「ティターニア様。とても魅力的なお誘いですが……振り返らないで下さい。背後にお客様がお見えです」

 

「ふふふ……まったく野蛮なデートの誘い方ね。騎士くんもそう思うでしょ?」

 

「でもそのデートにはいかれるのでしょう?」

 

「もちろん。だけど安心して。私は意外に一途なの。だから、ね」

 

 そう言って、ティターニア様は俺の肩を引き寄せて頬にキスをする。

 

 甘いバニラのような香りが俺の鼻腔をくすぐる。

 

「それじゃあ行って来るわ。後はよろしくね。私の騎士くん」

 

 ティターニア様は甘いバニラ残り香を残して、人ゴミに姿をくらます。

 

「さぁ……雑務の時間だ」

 

 俺は独り呟いて、ティターニア様の後ろ姿を見送るのだった。

 

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