BLACK LAGOON Maid's Salvation   作:AI太郎

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第十一話

ロアナプラの外れにある射撃場は、土と火薬の匂いがした。

レヴィは標的の前に立つと、何の前置きもなく銃を抜いた。

構える。

撃つ。

乾いた音が連続して響く。

標的の中心近くに穴が増えていった。

速い。

無駄がない。

漫画やアニメで見た時とは違う。

目の前で見るレヴィの射撃は、派手さよりも先に「慣れ」が来た。

呼吸するように撃つ。

殺すための動作を、日常の動作にしている。

ガルシアは少しだけ息を呑んだ。

q

「何だその顔」

レヴィが銃口を下げる。

「すごいと思って」

「気持ち悪ぃな。素直に褒めんな」

「褒めたら駄目なの?」

「ロアナプラじゃ駄目だな。舌を抜かれる前に財布を抜かれる」

そう言って、レヴィは予備の拳銃を投げてよこした。

 

ガルシアは受け取る。

重い。

カルテルの船で触らせてもらった時と同じだ。

けれど、今度はただ持つだけではない。

撃つ。

「やってみろ」

ガルシアは頷いた。

足を置く。

重心を落とす。

腕を伸ばす。

グリップを確かめる。

狙う。

撃つ。

乾いた音。

弾は標的の外側に当たった。

中心ではない。

だが外れてもいない。

レヴィの眉がわずかに動く。

「もう一発」

ガルシアは撃った。

今度は胴体の中心寄り。

三発目。

少し左。

四発目。

また外周。

それでも、弾は標的を捉えていた。

レヴィは煙草を咥えたまま黙って見ていた。

「……当たるじゃねぇか」

「近いから」

「近くても当たらねぇ馬鹿はいる」

ガルシアは銃を下ろした。

「でも遅いでしょ」

レヴィはそこで初めて笑った。

「分かってんじゃねぇか」

 

彼女はガルシアの横へ立つ。

「構えは悪くねぇ。体もブレねぇ。誰かに叩き込まれたな」

「ファビオラに」

「知らねぇ名前だが、そいつはガキ相手に随分と物騒な教育をするらしい」

「優しいよ」

「だったら俺は聖母マリアだ」

ガルシアは少し笑った。

レヴィは煙草を吐き捨て、足で踏み消す。

 

「だがな、坊主。お前の撃ち方は綺麗すぎる」

「綺麗?」

「教科書通りだ。構えて、狙って、呼吸して、撃つ。お行儀が良くて涙が出るぜ」

レヴィは自分の銃を抜いた。

「だが撃ち合いってのは学校の試験じゃねぇ。相手はお前が答案用紙を綺麗に埋めるまで待ってくれねぇんだよ」

 

銃声。

標的に穴。

速すぎて、ガルシアは瞬きを忘れた。

「今のでお前は三回死んだ」

「一発しか撃ってないよ」

「俺が三人いたら三回死んでる」

「それは反則じゃない?」

「死体は抗議しねぇ」

それはレヴィらしい答えだった。

ガルシアは黙って頷く。

 

悔しい。

だが納得もあった。

ファビオラから教わったのは、体の使い方と基礎だ。

生き残るための土台。

だがレヴィが言っているのは、その先だった。

撃つか撃たれるか。

迷った瞬間に終わる世界。

 

「もう一回」

ガルシアは言った。

レヴィは口の端を吊り上げる。

「いい目だ」

そしてすぐに付け加えた。

「だが百年早ぇ」

「じゃあ百年分やる」

「言うじゃねぇか、お坊ちゃん」

レヴィは笑った。

獲物を見つけた獣のような笑みだった。

「構えろ。まずはその上品な撃ち方から少しずつ汚してやる」

ガルシアは銃を構え直した。

標的を見る。

呼吸を整える。

その瞬間、レヴィの声が飛ぶ。

「遅ぇ」

次の瞬間、後頭部を軽く叩かれた。

「撃つ前に死んでる」

「痛い」

「生きてる証拠だ。感謝しろ」

最悪の教師だった。

だが、最高の教師でもあった。

ガルシアはそう思いながら、もう一度銃を構えた。

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