BLACK LAGOON Maid's Salvation   作:AI太郎

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第六話

BLACK LAGOON

Maid's Salvation

第六話

守るべき方

ロベルタは坊ちゃまを誇りに思っている。

昔からだ。

そして最近は特に。

「旦那様、こちらを」

執務室。

ロベルタがお茶を置く。

旦那様――ディエゴ・ラブレスは書類に目を通していた。

最近は忙しい。

だが。

以前とは違う忙しさだった。

暗い顔で書類を見ることが減った。

使用人達の表情も明るい。

屋敷も活気を取り戻している。

それは偶然ではない。

「ガルシアはどうしている?」

旦那様が尋ねる。

「経済誌を読んでおられます」

少しの沈黙。

そして。

「またか」

小さく笑う。

ロベルタも微かに微笑んだ。

最近の坊ちゃまはよく本を読む。

経済誌。

企業情報。

事業報告書。

ロベルタには内容は分からない。

だが。

意味は分かる。

坊ちゃまは誰かのために読んでいる。

ラブレス家のために。

旦那様のために。

使用人達のために。

それが分かる。

だから誇らしかった。

坊ちゃまは優しい。

昔から。

誰かのために頑張れる方だった。

中庭。

「痛っ!」

聞き慣れた声が響く。

ロベルタは思わず目を閉じた。

まただった。

本当にまただった。

窓の外。

ファビオラと訓練している坊ちゃま。

そして。

転ぶ。

見事に。

「……」

ロベルタはため息を吐いた。

最近の悩みだった。

鍛錬。

正直に言えば反対だった。

今でもそうだ。

必要無い。

坊ちゃまが戦う必要など無い。

危険に身を晒す必要も無い。

敵が現れるなら。

自分が排除する。

障害があるなら。

自分が取り除く。

それで十分だ。

坊ちゃまは守られるべき方だ。

少なくともロベルタはそう思っている。

だが。

旦那様は認めた。

坊ちゃま本人も望んでいる。

だから止められない。

それが少し悔しかった。

再び視線を向ける。

坊ちゃまが立ち上がっていた。

服は泥だらけ。

額には汗。

それでも。

また構える。

また向かっていく。

転ばされる。

立ち上がる。

また向かう。

その繰り返し。

ロベルタは少しだけ眉を下げた。

何故そこまでするのだろう。

戦う必要など無いのに。

危険なことなどしなくていいのに。

それでも。

坊ちゃまは諦めない。

昔からそうだった。

優しい方だった。

そして。

頑固な方だった。

旦那様によく似ている。

夕方。

訓練を終えた坊ちゃまが戻ってきた。

当然。

泥だらけだった。

「坊ちゃま」

「何?」

「お風呂へ」

「まだ大丈夫」

「お風呂へ」

「はい」

素直だった。

少し安心する。

夜。

屋敷は静かだった。

巡回を終えたロベルタはふと足を止める。

坊ちゃまの部屋。

灯りが漏れていた。

まだ起きているらしい。

ノック。

「どうぞ」

入室。

坊ちゃまは机に向かっていた。

本を読んでいる。

また難しそうな本だった。

だが。

もう驚かない。

坊ちゃまは昔からそうだった。

年齢の割に賢い。

いや。

賢いという言葉だけでは足りない。

時々。

大人より大人びて見えることがある。

使用人達も言う。

旦那様も認めている。

ロベルタ自身もそう思う。

坊ちゃまは立派な方だ。

優しく。

聡明で。

誰かのために努力できる。

本当に。

誇らしい。

だが。

それでも。

心配は消えない。

「ロベルタ?」

坊ちゃまが顔を上げる。

優しい声だった。

そして。

目も。

優しい。

昔からずっと。

変わらない。

不思議なくらい。

坊ちゃまはいつもそうだ。

誰かを見る時。

特に。

自分を見る時。

まるで大切なものを見るような目をする。

理由は分からない。

だが。

嫌ではなかった。

むしろ。

少し安心する。

「どうしたの?」

「いえ」

ロベルタは首を振った。

「そろそろお休みください」

「あと少しだけ」

「駄目です」

「少しだけ」

「駄目です」

坊ちゃまが困った顔をする。

少しだけ勝った気分になった。

本当に少しだけ。

部屋を出る。

扉が閉まる。

ロベルタは静かに息を吐いた。

坊ちゃまは立派な方だ。

誰よりも。

だからこそ。

守らなければならない。

どんな危険からも。

どんな敵からも。

何があっても。

絶対に。

それがロベルタ・シスネロスの願いであり。

誓いだった。

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