異世界転生したサモナーさんは呪いの世界に行く 作:cohaku
見づらかったのでちょっと変えました
禪院家で透明人間の俺が生きてこれたのは唯一庇護してくれた人がいたからだった。
「甚爾は強くなるな」
式神を使う術式を持った親戚だった。この人だけは俺の事を猿と呼ばず透明人間としても扱わず庇護してくれた。
赤ん坊のころからこの人の元にいて、最初はこの人の事を親だと思っていたほどだった。
「なんで兄さんは俺を育てたんだ?」
この人が他の連中に陰口を言われているのを知っている。猿を育てる酔狂者や稚児趣味とか色々と。
「?子供を育てるのは当たり前だろう?それにお前は強くなる」
「呪力も術式もない俺がか?」
「そんなものお前にいらないだろう?呪霊は呪具を使えばいい、人はその肉体だけで殺せる」
そっと俺の両手を包んだその人は目をギラギラさせて俺を見ている。
「お前はきっと生身ならこの世の誰よりも強くなる」
何処までもまっすぐに自分を見る目に俺はちゃんと存在しているんだと実感できた。家の他の連中なんてどうでもいい、この人の期待に応えたいと俺はずっと強く願っている。
『甚爾、もしもの時の為にこれを渡しておこう』
『紙?』
『私の力を封じ込めた札だ。これを使えば多分お前でも素手で呪霊に対抗できるだろう』
幾何学的な模様が描かれた紙を数枚渡された。
『これを破り捨てれば、私の呪力が甚爾の体を巡るだろう。呪具を持たせようかと思ったがこれの方が敵にバレにくい、肌身離さず持っておけ』
俺はそれを常に持ち歩くようになった、普段はあの人の庇護のもとにいることで呪霊に煩わされることもないがいつあの人のいない時に家の奴らから呪霊を嗾けられるか分かったものじゃない、あの人もそれを想定してこれを渡したんだろう。
そして今
「とうとう使う時が来たか」
あの人が任務にいない時に奴らはやってきた。無理矢理俺を連れだして、連れてこられたのは呪霊を大量に飼っている地下の部屋。そこに何も持たされずに放り出された俺は受け身を取って着地し奴らが扉を閉めたのを確認すると溜息を吐いた。
分かる、ここにいる奴らの気配が分かる。そして俺はすぐに札を一枚取り出して破り捨てる。
パンッ
「言った通りになったな」
素手なのに殴った呪霊は消えた。なら
「全て祓ってやるよ」
俺に負けはない。
「甚爾」
「あ、兄さん!」
どれだけ時間が経っただろうか、ほぼすべての呪霊を素手で祓った俺は任務から帰ってきたあの人が開けた扉を見上げた。
「無事だったか」
「兄さんの札のお陰でな」
「それは?」
あの人は俺の首に巻き付いている呪霊を指さす。
「これ?役に立ちそうだから、契約した」
何か出せと思えばそれは口から折れた刀を出した。それにあの人は目を見開いて驚いた。
「物をしまえる呪霊か、有用な子だな」
そして呪霊を優しく撫でた。
「なら今度、呪具を用意しよう。持ち運びには困らなそうだしな」
「あの札もくれよ」
「勿論用意しておくよ。この子に入れるなら専用のケースがいるな」
あの人が俺を抱き上げる。
「しかし、あまりにもおイタが過ぎるな。少しばかり灸をすえるか」
「兄さん?」
「そういえば、その子に名前は付けたのかい?名前は小さな呪だ、しっかりとした関係を作るなら必要だろう?」
「名前」
あの人にそう言われて契約した呪霊を見た。人間の顔をしたイモムシみたいな呪霊。
「思いつかねぇ」
「物をしまえる…聖櫃ぐらいしか思い浮かばないな。だけど呪霊にその名は相応しくないだろう、色は紫か」
俺を抱いたまま部屋から出て地上へと向かうあの人は、俺に巻き付いたままの呪霊を見ながらぶつぶつと何か呟いている。
「紫梱はどうだろう」
「しこん?」
「ここから出たらどう書くか教えるよ、まぁ結局甚爾の配下なんだから甚爾が気に入った名前を付けると良い」
ふいに光が差し込み地上に出たのが分かった。
「兄さん」
「なんだ?」
「おかえりなさい」
「ただいま、甚爾」
気が付けば当主が父もどきからあの人に代わっていた。
本来なら当主になるはずだった直毘人はあの人の補佐になって、この家に存在していた者達は気が付けばボロボロな状態で庭に転がり最初は憎悪をたぎらせていた視線をあの人に向けていたのにしばらく経てば畏怖と敬意を帯びるようになっていった。
この家で石ころ同然に扱われていた者達もいつの間にか戦い方を覚え、前よりも生き生きと生きている姿になっていた。
そしてこの家に軟禁されていた俺は、学校という所に通う事を許されるようになった。いや、俺だけじゃない他のちびっこ共も学校へ通う事を許可された。ただし、「学校では力は使わず、呪霊のことを話さない」という縛りを結んだうえでだが。
「なんで今更学校になんて行かせるんだ?」
「何時までも常識のない馬鹿のままにしておくわけにはいかないからな。安心しろ護衛は付けてある」
この家は変わった、いやあの人が変えた。気が付けば雑魚集団だった奴らがそれなりの腕になっていた、暗く絶望しながら生きていた奴らが顔を上げて前を向いて生きるようになった。
「甚爾」
それでもあの人は、俺を一番に愛してくれるのは変わらなかった。俺も学校に行くようになって前よりも一緒にいられる時間は少なくなったけど俺が帰ってきたら任務で不在の時以外は必ず出迎えてくれたし、俺以外のちびっこ共を抱き上げることもしない。俺とそれ以外、確かに明確な差があった。
それに優越感を覚えていた。
サモナーさんなら最強になれると思っている作者です