異世界転生したサモナーさんは呪いの世界に行く 作:cohaku
この家には、お母さんと津美紀に見えない同居人がいる。
それはお父さん以外の家族一人一人についていて、俺達を守ってくれている。外に出会う気色の悪い奴らは近づいただけで消してしまうし、ジャングルジムから飛び降りてバランスを崩して頭から地面に落ちそうになったときは優しく受け止めて、車の事故に遭いそうになったときは車を受け止めて、物心ついてから…いや、つく前から守ってくれている。
俺が見えることは分かっているのか俺限定だが、高い所の物を取ろうとした時にとってくれたりもする。優しい奴らだ。
家族の中で親父にだけついてないから、お母さんと津美紀がいない時に
「おとうさん、ないない」
「?」
「ないない」
と言いながら護衛として近くにいた同居人を指さすと目を見開いて驚いた後、お父さんは苦笑した。
「ああ、兄貴が付けてくれた護衛だよ。俺にも一応ついてるぜ?」
「ないない?」
「基本は姿を見せねぇからな。おい、恵が会いたいってよ」
お父さんが自分の影に向かって声をかけると影からにゅっと黒い毛並みの犬が現れた。
「!」
「兄貴は心配性だからな、俺にも一応護衛をつけてる。普段はずっと影の中にいるけどな」
「わんわん?」
「…わんわんだな」
「わんわん!」
俺は、その犬に抱き着いた。
「モフモフ」
「確かにモフモフしてんな、シリウスの方が手触りいいけど」
「がふっ!?」
「この子よりモフモフ?」
「ああ、兄貴の一番のお気に入りだ。これをいうとヴォルフの機嫌が悪くなんだけどな」
「きゅーん」
「ははは、お前もヴォルフは怖いか?」
「めぐ、もっと会いたい」
「ん~、恵がもっとデカくなったら紹介してもらうか」
「もっと、大きく?」
「そうそう、もっとデカくなったらな」
お父さんの言葉に早く大きくなりたいなと思いながら、俺は犬の毛並みに顔をうずめた。
「だぁ!また負けた!」
俺は地面に寝っ転がった。
「まだまだだねぇ」
コロコロと笑う樹に見下ろされながら先ほどの戦闘を振り返る。たまに高専に来る樹の領域を使った訓練、ガチの殺し合いは毎回俺の負け越しで終わる。
多種多様な攻撃に混ぜられた俺の術式を突破する攻撃の対処、封印術で術式や呪力強化すら封じれた戦闘、術式縛りでの接近戦などなど色々な経験をせてもらっている自覚はある。
「ほんと、相変わらず樹は俺の無下限を簡単に突破するよね!」
「時空系は本当に相性がいいな」
樹が時空系と呼ぶやつは基本は不可視の攻撃で俺の無下限を貫通する。
「それに何だよ!影を攻撃って!防御できないじゃん!」
「ハハハ」
「笑い事じゃないんだけど!」
俺にとって樹は天敵だ。術式が突破されるから反転を覚えて常に術式を回す状態になっても勝てる気がしない。
「悟、早く交代してくれないか?私の時間が少なくなるじゃないか」
「へぇへぇ、すぐ交代するよ!」
「傑君は今回どんな内容が良い?」
「そうですね、じゃあ樹さん一人でお願いしても?」
「かまわないよ」
起き上がって観覧席からこちらに向かってくる傑と交代する。
傑と樹の訓練も様々な方法で行われる。傑がより群れを扱う事を覚えるために樹も群れを用いたり、今のように圧倒的な個を相手にする訓練だったり。
多種多様な攻撃の光が傑の呪霊を襲う。その光の中を樹は一直線に傑に向かって走り出す。
傑はそれを止めようとさらに呪霊を出すが、次々と現れる光の奔流に呪霊達は次々と倒されていく。傑の懐に入り込んだ樹と接近戦になれば呪霊を出している暇はなくなる。しばらくして首を折られて戦闘は終わった。
「まだ反転覚えないか…これは治癒行為が出来る術式のある呪霊を探す方が速そうだな」
「イタタタ、相変わらず接近戦になったら勝てませんね」
「年季が違うからな」
「兄貴、そろそろ時間じゃねぇのか?」
「ん?あ、もう時間か。じゃあ、今日はこれで終わり、またな」
領域がとけて高専のグラウンドに戻る。樹はそのまま疲れを見せることなく任務に向かっていった。
「ホント、樹って強いよね」
「同じ特級になっても並べた気はしないね」
「年季もちげぇし、お前らと術式の相性も悪くねぇからな。才能もある」
「「それは確かに」」
呪力総量・呪力出力は双方規格外のレベルと言えるし、六眼でも隠れてしまう術式の詳細は分からないが式神を召喚・無数の攻撃手段と汎用性に優れながらも威力もけた違いな術式、フィジカルギフデットと殴り合っても簡単に死なない肉体の頑強さと高い身体能力。どれをとっても術師として最高峰の素質がある。
「それの扱いも巧いしな」
「もっと無下限を磨かないと勝てないだろうなぁ」
「私はもっと強力な呪霊を取り込まないと」
「まぁ、もうちょい本気を引き出せるようになれば遊び相手ぐらいには認定してくれんじゃねぇか?そうしたら色々便宜計ってくれるから頑張れよ」
「甚爾は樹の本気を知っているの?」
「おお、兄貴が一番楽しみにしているのが俺との殺し合いだぜ。まぁ、式神は使わねぇ完全な殴り合いだけどな」
甚爾の言葉に驚いた。フィジカルギフデットの甚爾と殴り合いで試合が成り立ちとは到底思えなかったからだ。
「それ甚爾の圧勝じゃないの?」
「いいや、兄貴は呪力強化+術式の身体強化もあるからな。フル強化した兄貴は俺に匹敵するぜ、まぁ俺もそれをすれば有利になるけどな」
「あの術式、身体強化もあるんですか?本当に汎用性が高いですね」
「後は単純に技術がすげぇ、俺を投げられるなんて兄貴だけだぜ?」
「体術の技術も高いよね、武器の扱いも上手いけどさ」
あらゆる意味で樹は、規格外だ。その底を見たことある人間は甚爾以外いないだろう、俺達との試合だって手加減されているのは知っている。
「何時か本気の樹さんと戦いたいね」
「おう、ぜってぇ追いついてやる」
「精々頑張れよ」
お嫁さんに婿入りしてないだろうから名字は禪院のままかな?何かあった時の護衛役は多分この一家に付けているのは一番信頼しているだろうキース・オリジンの従魔だと思う
サモナーさんと唯一殴り合いが出来るのって完全フィジギフだけだろうな