異世界転生したサモナーさんは呪いの世界に行く   作:cohaku

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pixivでも投稿してます。
結構な話数になったので短編集ではなく独立した形で投稿する事にしました
視点がコロコロ変わります


第2話

「あ、育てればいいのか」

働かない特級のせいで、日本でただ一人の特級を拝命する事になってしまった禪院樹は多忙な仕事に忙殺されながらも甚爾の子育てをしていたのだが唐突にアデルとイリーナなどの強敵がいるエリアに連れて行った弟子たちを思い出した。

「でも、ゲームと違って育てるならそれなりの年月も金も必要になるな…」

特級術師とはいえ、多くの弟子を育てるとなるとそれなり以上の出資が必要になる。

「ふむ、考えてみるか」

 

 

 

「作ってしまった」

そうして一年、あれやこれやと調べてゲームのドロップで稼ぐのが最も安定した手段だと思い、色々な商品を考えた。

結局海外の未発見の鉱脈がある土地などを買い取りそこにドロップアイテムを混ぜ込んで販売する会社を立ち上げた。カモフラージュに呪霊を見える程度の呪力がある奴を縛りで縛って雇われ社長をしてもらい、式神たちに商品を作るのを任せる。

採掘などは土精霊たちに任せ、加工などは生産に特化した人形組に任せる。

「呪符ももう少ししたら売れそうだな」

それに並行して呪符を売るための準備も進めている。

ゲルタ婆様から頂いていたゲームの中ではご禁制の品であった紙。現実世界では簡単に購入できる代物だ、コピー用紙なら簡単に大量に手に入るがあまりいい符が作れなかった。ならばと和紙を使えばコピー用紙よりはいいものが出来たので様々な和紙を取り寄せてどれが一番いい符が出来るかの検証中だ。

これは売れる、普通の術師達は回復の力である反転術式は使えない人間が多い。反転のように失った手足を再生させるなどは出来ないが軽い怪我でも治せるのは有用だ。

他にも浄土曼荼羅は試しに使ってみると御三家秘伝領域対策である落花の情と違いシン・陰流の簡易領域のように必中効果も打ち消せるし効果時間が過ぎるまで相手を攻撃できないが今のところ簡易領域のように結界が壊される様子はない。

身体能力を強化する奴も緊急退避に使えるテレポートもきっとよく売れるだろう。

「一先ずこれで資金は確保できるか、なら次は」

まずは人が入らない場所に愚者の石板を設置し全世界に転移拠点を作る。日本は各都道府県に必ず一つ、海外は各国に一つ。愚者の石板を使えば不可視の結界が張られるからわざわざ土地を買う必要は今はない。将来的には必要になるかもしれないが、それは資金に余裕が出来た時でいい。

「術式になったせいかポータルガードに制限がなくなったのはよかったな」

各転移拠点に召魔を各5匹ほど配置する。最低限インビジブルストーカーを一体は配備して残りはローテーションで配置を決める。オレは複数のオレの情報を統合し飛ばした実験情報体の1人だからかオリジン以外の召魔もいるので召喚できる数は尋常ではない数がいるので配置する召魔には困らない。

これによって日本全国にいつでも召魔を送り込める環境が整った。

「まずは消耗を抑える」

死ぬ術師を減らす。そうすれば仕事をする人手が無駄に減ることもない。

「ある程度資金が溜まったら次は育成だな」

 

 

 

 

 

「やあ」

星漿体護衛任務をバックレて逃亡していた俺たちは樹が持ってきた天元様の一筆を持って天内たちと樹に任せて上層部に突撃、天元様の同意の元星漿体の同化を無しにした俺たちは高専に戻った。

そして戻って数日後、樹がまたふらっと高専を訪れた。

「兄貴、来たのか」

「この前の事もあったしね、はいこれ理子ちゃん達の逃亡資金とかもろもろまとめた請求書」

「へーい」

樹が取り出した書類を受け取る。

「樹も手を貸したのか」

「追いかけて捕縛しろって命令だったけど、一番意見を聞かないといけない人に意見を聞いてその通りにしただけだよ」

夜我センは樹に向けて呆れたような視線を向けているが樹はまったく気にしてないようだ。

「そうだ、甚爾。せっかくならいつのものあれをやらないかい?」

「あれってアレか?」

「ちょうどさっき捕まえた奴もいるし、呪術師として一皮むけるならやった方が良いだろ?」

「……そりゃ、そうだがなぁ」

甚爾と樹がいうアレとはなんだろう。甚爾が渋っているって事は結構いかれた奴ってのは分かるけど。

「はぁ、いいぜやろう」

「本当か!」

樹の目がギラギラと不穏な光を帯びて輝いている。本当に何するつもりなんだろう。

「おい、夜我」

「なんだ?」

「兄貴が遊びたいってよ」

「領域展開」

「「「「はぁ!?」」」」

「召魔闘技場」

いつの間にか樹が掌印を組んで領域を展開していた。高専のグランドが厳つい中世のコロッセオのような風景に切り替わる。

「さて、ではルールを説明しよう」

領域を展開した樹を見る。

「ここは私の領域の一部闘技場だ。ここは現実世界とルールが違う」

足元に縛られた人間がいた。

「こいつはさっき捕まえたばっかりの呪詛師。対戦モード起動」

樹と呪詛師の周りに不可視の結界の様なものが敷かれる。

「はい、終了」

それを確認したのち、樹はいつの間にか手に追っていた刀で呪詛師の首をはねた。その程度で動揺する俺達じゃないけど、次の瞬間は驚いた

「ルールが違うってそういう事ね」

「そう、この領域の中にある限り対戦モードでは死は訪れない。対戦モードが終わればその死はなかったことになる」

結界が消えたかと思えば呪詛師の首は元通りに繋がり息をしていたのだ。

「傑君、消えてもいい呪霊はいるかい?」

「は、はい」

傑が蠅頭を一匹呼び出す。

「対戦モード起動、終了」

樹が蠅頭に手を添えながらもう一度結界を張りその蠅頭を握りつぶす。そして結界が消えると、握りつぶされた蠅頭が樹の手のひらの上にいた。

「こんな風に使役したものでも死ぬことはない。つまり」

「殺し合いをしようという事か?」

「そういうこと、呪術師は死に近づくほど呪力の核心を掴むらしいしいい遊びだろ。じゃあまずは私と傑君でやろうか?同じ使役系同士だしね。参加しない人達は闘技場の観覧席に、あそこなら絶対安全だからね」

傑と樹だけを残して甚爾の案内で闘技場の観覧席に移動する。

「傑君、今の君の全力を見せてくれ。将来同じ位置に立つ君の力を、対戦モード起動」

「っ、はい!行きます!」

傑が大量に呪霊を呼び出した。それが一斉に樹に向かう。

「おいで」

樹の声に呼応して魔法陣の様なものが3つ現れる。

「ヴォルフ、テロメア、バンドル」

白銀の狼、黒髪の美女、8つ頭の蛇が現れ傑の呪霊を迎え撃った。まず蛇の8つある頭から炎がブレスとして吐き出される。それによって突っ込んでいた戦闘の呪霊達は消し炭にされていく、それをよけて向かう呪霊に美女が前に出て無数の光の玉を放つ。

それは目が眩むほどの光を発し、

「すこしお粗末だな」

「なっ」

一瞬の目くらましでどうやって傑の元に行ったのかわからないがいつの間にか傑の後ろに樹がいた。

「ぐあっ」

「……私が動いたらすぐに終わりそうだ。ヴォルフ適度に遊んであげて」

「がうっ」

それからはまるで大人と子供が戦っているみたいに傑が転がされる。奥に樹が立っていて2匹の式神が樹を守り、狼が傑本体に攻撃を仕掛ける。気が付けば傑が出した呪霊は全部倒されていて傑もボロボロにされていた。

「傑君、君はまだ発展途上だね。もっと強力な呪霊を取り込んで君自身も反転を使えるようになればもっともっと伸びる…だからここで一回死んでいこうか」

「がふっ」

傑の喉が狼にかみ砕かれた。少し間が置いて結界が解除される。

「イタタタ、樹さん容赦ありませんね」

「生き返るんだから大丈夫だろ。じゃ、次は甚爾と悟君がやろうか」

樹が傑を抱えて観客席に移動したので俺と甚爾が闘技場に降りる。

「対戦モード起動、甚爾」

「あぁ?」

「思いっきりやっていいぞ」

「了解」

甚爾が武器庫呪霊を吐き出す。

「そんじゃま、大盤振る舞いと行きますか!」

武器庫呪霊が何かを吐き出す。

「呪具じゃない、なんだ」

警戒しながら距離を取って蒼を打ち出す。無限があるとはいえ甚爾相手に接近戦はやりたくない。

ザシュッ

「!?攻撃、どこから」

「へぇ兄貴の予測通りだな。そんじゃ、調査を始めますか」

甚爾の手の中には無数の紙束があった。

 

 

 

 

 

「成程、時空系はだいたい効果あり」

悟と甚爾の戦いを見ながら何やらメモをしている樹を見る。

「五条の無下限を突破するものを確認しているのか?」

「ああ、せっかくだからな私の術式がどこまで通じるか確認しようと思って」

呪符、樹の術式が込められた使い捨ての呪具で幾つかは高専で売られている。樹は悟同じ別格だと思っていたが、最強であるはずの悟ですら樹は倒せる手段を持ち合わせているのが判明した。

「うん、いい感じ。悟君は無下限を突破する相手がいなかったから想定してなかったみたいだけどいい感じに追い込まれてる」

「相変わらず規格外な力だな」

「一回で確信掴めるかな?掴めなかったらまたやるけど、傑君も自分に反転ぐらいは使える様になろうね」

「アハハハハ…がんばります」

「おっ、終わったね」

甚爾が取り出した二股の短剣によって滅多刺しになった悟が倒れる。

「…へぇ、一発か。やっぱり悟君は優秀だね」

「反転術式!」

悟の怪我が逆再生されるかのように回復していく。

「兄貴」

「甚爾、どうする。私が変わってもいいよ」

「問題ねぇよ、呪符の補充を頼む」

「はい、追加」

樹が甚爾に呪符の束を投げ渡した。

「よう、まだ終わってねぇよ!」

「だろうな」

「言うは易し俺も今まで出来たことねぇもんが死に際でつかんだ呪力の核心で出来た!」

「お前、ハイになってんな。まぁ、そんなことはどうでもいい。やろうぜ五条、今のお前の力を見せてみろ!」

「あ゛ーーーー?そうか?やっちゃっていいだなぁ!」

そこからの戦いはまるで別物だ。悟も甚爾も動きのキレすら違う。

「ほう、この速さについてこれるか…ならもっとギアを上げてやる!」

「来いよ!」

甚爾の動きが完全に見えなくなった。

「覚醒した事で100%以上のパフォーマンスを引き出しているみたいだね。これに黒閃が合わさったら面白そうだな」

「この状態の五条に黒閃なんて甚爾先生だってただじゃすまないはず」

「大丈夫さ、今の悟君は確かに強いけどまだ力を使い始めた殻付きのひよこだからね」

「ひ、ひよこ」

「あの状態の悟に甚爾先生が勝てるんですか?」

「将来は分からないけど、今は甚爾の方が強いよ」

樹の言った通り最初は果敢に攻めていた悟だがどんな攻撃も甚爾の素早さについて行けないのか当たらないことにイラついてさらに狙いが甘くなってきている。

「虚式・茈」

「そんなトロい攻撃あたるわけねぇだろ!」

最後はまたあの短剣で五条の首を跳ね飛ばした甚爾の勝利に終わった。

「悟君、頭は冷えたかい?」

「あ゛ーー、多分?」

「それならよかった、物足りないなら私とも戦うかい?」

「いや、それは今度で良いわ。今の状態で樹に勝てるわけねェもん」

「そっか、でも一回で呪力の核心を掴んだね。ご苦労様、悟君。甚爾もかっこよかったよ」

「そう簡単に負けるわけにはいかねぇよ、俺は兄貴の護衛だからな」

 

 

 

 

 

「にしてもこれって便利だよね」

そう言った悟の手には高専で売っている呪符があった。

「確かにね、私たちみたいな反転も領域も使えない術師には必需品だよ」

「おかげで私も楽できて助かる」

軽い怪我程度なら治し、重い怪我でもある程度は回復する反転術式が込められた呪符。領域対策が出来る結界を張ることが出来る呪符。

これらの呪符は、使用者の呪力を消費しない。どんなに呪力を使い果たし精魂尽き果てたとしても発動できる。

しかもこの前の手合わせの時発覚したが攻撃するための呪符もあるらしい、販売はしていないが。

「確か樹さんが作っているんだっけ?」

「そう、樹の術式の一部を込めて作ってる」

「改めて聞くと凄いよね、特級として働きながら呪符を使って他の術師の支援も出来る」

実際調べてみると呪符が売られるようになってから呪術師の死亡率は劇的に低下している。今じゃ年に一人いるかいないか。

「お値段も比較的手ごろだしね」

「高専生の間はな、卒業したら正規の値段になるよ」

「それでも使い捨てだからそんな高くねぇだろ。これ別のやつが作ったらもっと高い値段で売るだろうよ」

それはそうだ。術師でも才能がある人しか使えないものを使う呪符なんてもっと高額でもおかしくない。

「樹だからこんな良心価格なんだよ。あの人、仕事が忙しくてたまに「無能しかいないのか今の呪術界は」って文句言うけど他の呪術師の事を考えて呪符の値段はお手頃、等級違いの任務を割り振ったのを知れば上層部を締め上げる。

呪術師としてはだいぶまともよりなんだよな」

「そんなに樹さんは忙しいのかい?」

「もう一人の特級が仕事しないからね、特級が受け持つ任務ぜんーんぶ樹さんが捌いているんだよ」

「仕事をしないって、どうして?」

「えっと確か、呪力について研究しているって聞いたな。呪霊の産まれない世界を作るって」

「呪霊の産まれない世界…」

「まぁ、そんなことになったら俺たち術師家系はどうすんだって話だけどな。今更一般社会で俺達が働けると思うか?」

「無理じゃない?五条の顔ならアイドルとかも出来そうだけど性格がクズだからすぐスキャンダルで破滅しそう」

術師家系は非術師を見下している傾向がある。今更一般社会になじめる性格のやつなんてごく少数だろう。

「確か呪力を甚爾みたいに完全に捨てるか、全人類が呪力コントロールを覚えるか」

「非術師皆殺しかって所だけど、非術師皆殺しなんてしたら生活水準落ちて大変なことになるよ。私は絶対にやだね」

「呪力を完全に捨てるってのもすぐには無理だし、呪力コントロールなんてどうすればいいんだか」

「ひ、非術師皆殺しって」

「一番手っ取り早い方法ってだけで一番お勧めしないよ。非術師から術師が生まれる様に術師から非術師が産まれることなんて珍しくもない。そうなった時、赤ん坊をどうするかなんて考えたくもないね」

殺すか殺さないか無抵抗の赤ん坊を前に悩むなんて嫌な事はしたくない。

「それにそれする前に多分、樹に殺されるだろ?成功する確率なんてほとんど0じゃん、やる意味ないない」

「まぁ、それはそう」

この時の会話がのちの夏油やけっぱち事件に繋がるとは誰も予測できない事だった。

 

 

 

 

「ハァハァ」

「ハァハァ」

呪符を破る。込められた呪力が体に巡り傷を癒す。

「残りの呪符は」

「回復が一枚、こんなことなら領域対策の呪符も買っとけばよかった」

「まさか2級でこんな任務を振られるとは思いませんでしたからね、帰ったら一番に買いに行きましょう」

「だね」

灰原と私は前を見据えた。2級の任務だったはずなのにふたを開ければ産土神信仰、土地神の1級案件だった。何とか呪符で怪我を治し耐えていたがその呪符も残り一枚ずつ。

「さて、どうやって逃げましょうか」

「その必要はないよ」

ザッ

一瞬だ、瞬きの間に一級呪霊が細切れにされて消えた。

「よく耐えたね」

「樹さん」

いつの間にか消えた呪霊の真上に特級術師である禪院樹が立っていた。

「怪我は治しているんだね、それなら高専に帰ろう」

「あの、なぜ樹さんがここに」

「近くを通った時に気になったから、様子を見に来ただけ。運がよかったと思えばいいよ」

「特級とはすごいですね、私たちが死を覚悟した呪霊をいとも簡単に祓ってしまう。もう貴方達だけでいいのでは?」

「七海!」

思わず漏れ出た本音。灰原の咎めるような声と

「それは無理だな。私も悟君も傑君も一人の人間、人間が出来る事ってのは意外に少ないものだよ。たった3人でどうやって日本全国、場合によっては海外に出張して呪霊を祓うんだい?」

その本音を意に介さず、禪院樹はそう答えた。

「どんなに個が強くともこういうことはマンパワーがものをいう。一人の五条と百人の1級術師、どちらがより多くの呪霊を倒せると思う?一か所に固まっていれば五条だ、だが全国に散らばっているなら100人の人手の方が良いに決まってる。

それに私たちを過労死させる気かい?」

「…すいません、少しナイーブになっていたみたいです」

確かにそうだ、今だってそこそこの任務が渡されるのにそれを特級術師だけで祓えなんて無茶ぶりもいい所だ。考えればわかる事なのにこんなことを言うなんて。

「構わないよ、そう思ってしまうのも無理はないからね。私たち特級は強いよ、特級がどういう基準で選ばれるかは知っているかい?」

「確か単独で国家転覆が出来る人がなるんでしたよね」

「そう、悟君はほぼ無敵のバリアに高威力広範囲の攻撃が出来るから、傑君は圧倒的な手数による数を使った殲滅が出来るから、そして私は私自身が出来る高威力広範囲の攻撃と召喚する式神による殲滅が可能だから。

結局特級ってのはいかに大量に人を殺せるかってのが大事でそれに強さがたまたまついてただけ。甚爾だって特級呪霊を祓えるけどあの子は完全に一対一特化型、特級には認定されない。国家転覆が出来る力の形じゃないからね」

「大量に…人を殺せるから特級」

「呪霊を倒せるからじゃない、人を殺せるから特級なんだよ。1級や特別1級だって術式の相性とか習得している技術とかで特級を祓える奴だっている。でもその術式が大量殺人が出来なかったら特級には任命されない。

君たちはまだ高専生、術式なんてなくても1級になる人はなるし強い術式を持ってても結局使いこなせなかったら宝の持ち腐れ。確かに君たちは1級呪霊に殺されかけた、でも生き残った。なら次は殺せるように強くなるか、生き残るすべを模索するといい」

そう言って笑うと懐から何かを取り出した。

「さしあたって領域対策に使える呪符は必要かい?」

「「売ってください!!」」

 

 

 

 

「それはアリだ」

「ありじゃねぇわ、馬鹿者が!」

ゴンっと音が響いた。顔を上げれば九十九の頭に拳骨を振り下ろしている樹さんがそこに立っていた。

「っあ、ちょっと樹君!いきなり何するの!」

「お前が世迷言を言っているのが悪い、何が非術師皆殺しだ」

「それが一番イージーじゃん!非術師を皆殺しにして、術師だけにする生存戦略でいずれ術師しか生まれなくなる」

「その過程の犠牲は無視か?非術師の赤ん坊が産まれればそれを殺すのか?それを殺された両親の怒りと恨みは?」

樹さんの言葉にふと3人で話していた事を思い出した。

 

『呪霊の産まれない世界…』

『まぁ、そんなことになったら俺たち術師家系はどうすんだって話だけどな。今更一般社会で俺達が働けると思うか?』

『無理じゃない?五条の顔ならアイドルとかも出来そうだけど性格がクズだからすぐスキャンダルで破滅しそう』

『確か呪力を甚爾みたいに完全に捨てるか、全人類が呪力コントロールを覚えるか』

『非術師皆殺しかって所だけど、非術師皆殺しなんてしたら生活水準落ちて大変なことになるよ。私は絶対にやだね』

『呪力を完全に捨てるってのもすぐには無理だし、呪力コントロールなんてどうすればいいんだか』

『ひ、非術師皆殺しって』

『一番手っ取り早い方法ってだけで一番お勧めしないよ。非術師から術師が生まれる様に術師から非術師が産まれることなんて珍しくもない。そうなった時、赤ん坊をどうするかなんて考えたくもないね』

 

どうして忘れていたんだろう。そうだ、3人で話してた。

呪霊の産まれない世界、呪力を甚爾先生みたいに完全に捨てるか、全人類が呪術師になるか、非術師の皆殺しか確かに話をした。

「結局、殺した奴と殺された奴が呪いあって人類が滅亡するって未来しかないじゃないか」

「それなら甚爾くんを研究させてよ!」

「ダメに決まっているだろうが!私の庇護している子に手を出すならそれ相応の覚悟があるって事だよな」

「樹さん」

2人の会話に割り込む。

「私は九十九由基さんの考えにある程度賛同します。いつまでも対処療法でやってないで根治療法をした方が良い、確かにそうです」

「夏油くん!」

「でも非術師皆殺しはダメだってのも分かります。生活水準が下がるしその後に産まれた非術師の処遇など問題点が多いのも事実です」

「それで?」

「なんで九十九さんの研究に協力しないんですか?皆が甚爾先生みたいになれば呪霊は産まれないんですよね?」

「実験動物扱いをされるのを黙ってみてろと?」

「そんなことしないよ、ちょっと血とか肉片とか脳の構造とか色々調べたいだけで」

「それに根治治療したとしてその後の術師の生活のプランニングは出来ているのか?ただ治療したいってだけで私の協力を引き出せるとでも?」

「そんなの研究して手段を確立してからでも問題ないでしょ?」

「樹さん協力してあげてくれませんか?」

「なら、私に勝って見せろ。そしたら考えてやる」

2人して闘技場に誘われ、ボッコボッコに叩きのめされた。

 

 

 

 

樹さんに九十九もろとも叩きのめされた数日後。任務に訪れた廃村、まだ建物は新しく廃村になったのが最近だとわかる。

「なぜ廃村になったんだろう?」

「えっと確か今回祓除対象の呪霊を代々抑えていた術師の家系があったそうなんですが、ほらここ田舎でしょそれで気味悪がられて村八分にされていたみたいで、この村から出て行って抑える人がいなくなったせいで呪霊被害が増えて一時的に村から出て行ったみたいです」

「成程」

正規の呪術師じゃないらしいし、虐げられてまで仕事を続けるのも酷だろう。その家系の人たちが今幸せに過ごしていることを願うしかない。

呪霊を取り込み、今日はもう任務がないから高専に帰ることになった。ゲロ雑巾味の呪霊に憂鬱になりながらも車に乗り込むと車に置いてあった瓶を手に取り、ふたを開け飴を一粒取り出した。

それを口に含むと、呪霊の後味は消えて優しく甘いはちみつの味が口の中を満たした。

「あ、樹さん」

「傑君、任務帰りかい?」

「はい、樹さんは?」

「来年、私の保護している子たちが高専入学の年齢になるからそれの打ち合わせ」

「保護?」

「うん、傑君はさ両親は呪霊のことどう思ってる?」

「私の両親は私がいるというならいるのだと信じてくれてます」

樹さんに叩きのめされてから少し休暇を与えられ、その時に両親にも会いに行った。相変わらず両親は善人で私の事を心から心配してくれていたのを感じ、一瞬でも非術皆殺しを考えたことに罪悪感を感じてしまった。

そうだ非術師にだっていい人はいる。それを皆殺しにしようなんてあの時の私は精神に異常があったんだろう。と休みを取って落ち着いた頭で考えるとそう判断できる思考が戻ってきた。

「そっか、そういう人ばかりだと良いんだけどそういう当たりってのは結構少ない。大抵嘘つき呼ばわりか気味悪がられて虐げられるか。後は術師家系でも術式とか呪力とかで良い待遇じゃないとか、そういう子達を保護している施設を運営しているんだ、ついでに術師として才能があるなら人材確保にもなるしね」

「成程、でも今まで見なかったですけどどうしてですか?」

「たまたま君たちの世代の年齢の子がいなかっただけだね。君たちの世代だと窓になれる位の素質しかなかったから普通の高校に行かせたし、来年行かせる子が久々に術師とか補助監督になれそうな子達だよ」

そんなことをこの人はしていたのか、特級として呪霊を祓い、呪符を作って術師を助け、虐げられていた者達を保護する。なんて人なのか同じ特級なのにここまで違うなんて。

「凄いですね、そんなことまでしているなんて」

「そうかい?元はさ、任務で忙殺していた時に任務が多いなら人手を増やそうって思って始めたんだ。そんな助けてやろうなんて高尚な考えなんてなくて私が楽になりたいから始めた」

「それでもそれで助かる人がいるなら凄い事ですよ」

「そうか?ありがとう」

 

 

 

 

 

「その話を聞いて、私も何かできないかって考えることが多くなったね」

「へぇ、それで何か考え付いた?」

「ううん、まだ何も。樹さんに頼んで保護された子たちの理由とか教えてもらったりして考えているんだけどね」

悟と樹さんと話してから考えるようになったことを話す。私たちも高専の卒業が近くなり将来の話をすることが増えた。

「悟は五条家の当主だったっけ?」

「そう、でももう一つやりたいこと出来たわ」

「え?」

「俺、高専の教師になる」

悟の言葉に私は目を見開いた。特級術師で御三家の当主なんてとても忙しくなると思っていたのに、それに教師?悟に出来る訳がないと思った。

「この前のさ、灰原と七海の任務。やっぱり上層部が絡んでやがった、俺への嫌がらせだ。樹が居なかったらあの二人は最悪両方とも死んでた」

「それは」

「いい加減さ、もうあいつ等に好き勝手されるの面倒だからさ。樹がガキども保護して手勢を増やすみたいに俺も賢くて強い仲間増やしてこの呪術界変えることにした。俺と樹がそうやって仲間増やしてあいつらの勢力を削いで、そんで呪術界を変える」

悟の言葉に私は声が出なくなった。そんなことを考えていたなんて知らなかった。

「傑もさ一緒にやろうよ」

「一緒に?」

「そう、教師になれとまでは言わないけどさ。この腐った呪術界を変えようぜ」

その言葉に天啓を受けた気がした。呪術師として生きてきて非術師の暗い部分も術師の暗い部分も見てきた。一時は非術師を皆殺しにしようとも考えたことがあるほどに。もう、最初の様な「弱者生存」を掲げられない位には擦れてしまった自覚があった。

それでも堕ちなかったのは、術師の仲間達や非術師の家族や友達がいたから。非術師の大切な人を、術師の大切な人を守りたい。いつの間にか私はそう願うようになっていた。

非術師は術師として呪霊を祓う事で、術師は任務を積極的にこなすことで守っているつもりだった。でも、そうか術師を守るなら等級違いの任務をわざと与える上層部と総監部が腐っているからダメなんだ。腐った膿は取り除かないといけない。

そしてそれを悟と樹さんが目指すというなら、同じ特級として私も一緒に目指したい。

「うん、一緒に変えよう」

まだ道は見えないけど、やるべき目標は決まった。世界を変えるなんて大それたことは言わないけど、まずは自分たちの小さな世界を変えよう。

 

 

 

 

 

「お前が教師ねぇ」

「なに?」

「いや、もうちょい性格直さねぇと生徒に嫌われるぞと思ってな」

五条のが教師になると言った。呪術界を変えるために仲間を育てると。

「兄貴に任せておいた方が良いんじゃねぇの?今だって勢力拡大しているんだし」

「樹だけじゃ、動きにくいでしょ。僕も動いた方が早く改革が進みそうだしね」

「確かに御三家のうち2つが動くなら改革が進むだろうけどよ」

兄貴がガキどもや見える奴らを保護するのは上層部と総監部を信用してないから、無駄に人材を消費する馬鹿を信用など出来る訳がないそう言って保護して育てた奴らという信用できる奴らを潜り込ませる。そしてそこから引っ張ってきた情報で色々な事をしているのは知っている。

そして慢性的な人手不足を解消して少しでも自分の負担を減らすため。呪術界を変えようとまでは考えていない、だがそれが長く続けば結果的に変えることにはなっていただろう。

兄貴の教育を受けた奴らがそこそこの階級になっていることは知られている。零細の呪術家系の奴らの中には少しでも再起を図りたいと兄貴に子供達を預ける奴らも現れ始めた。

兄貴はそれを快く受け入れて、今育てている最中だ。それが花開けば数多くの非術師出身の術師と呪術家系の家が兄貴に忠誠を誓う連中になる。そうなったらその勢力は呪術界最大規模、もう上層部や総監部を乗っ取る事だって簡単に出来るだろう。

そこに五条も参戦するとなると

「いつまでも古い価値観のままで居られても困るんだよ。これからもっと時代は進んでいく、何時か呪霊のことが非術師達にバレるかもわからない。そんなときにあんな奴らが上にいたら面倒くさい」

「それはそうだな」

五条の言葉に頷いた。確かに技術も発展してきた、いつ呪霊のことがバレるのかって感じにはなってきているかもしれない。

「だから今変える。僕や傑、樹がいるときにじゃないと。こんな好条件そうそうないでしょ?」

「成程な。ならもうちょい人に寄り添えるようになれよ、俺も出来てるとは言わねぇがガキ相手にすんならもうちょいあたりを柔らかくしろ」

見てみたいと思った古い慣習が横行する呪術界をきれいさっぱり消し去り新たな呪術界を作る3人の姿を。兄貴が禪院家を180°変えたみたいに変わる呪術界を。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へぇ、面白いな」

召魔から変な奴がいると聞いてやってきた仙台。そこにある病院に入院している女を見た。

クレヤボヤンスで気取られない位置からそれを見る。女は妊娠していた、女の額には縫い目の様な傷があった、女の脳には口があった。

「赤ん坊に細工しているみたいだし、多分マッドサイエンティストの部類だな」

大きくなった腹に手を当てて何かしらしている女にこれはヤバいなと思いながらも何もしない。女は呪術師だ、だけど呪詛師として認定されているわけでもない。しかも体には赤ん坊を抱えている、殺すのはちょっとという感じだ。

「何かしら大きなことをしそうな奴だ」

多分、あの口のある脳が本体で体は入れ物だ。術式も複数個もっている、多分今まで入れ物にしてきた人たちの術式が使える。

「赤ん坊の方の細工も…あの呪力どっかで見たような?」

赤ん坊の方を見ると何か禍々しい呪力が感じれたが女によって封じれているのかその詳細が分かることはなかった。

「女の方を探ったら面倒な事になりそうだ。赤ん坊の方は女がいなくなるなら監視をつけるか」

後に女の正体を知った樹はあの時殺しておけばよかったかと思ったらしい。




順調に勢力拡大中のサモナーさん
人材が居なければ弟子たちみたいに育てればいいじゃん、と天啓を受けて見える人たちを保護して育て始めているサモナーさん
上層部と総監部のやり方が気に食わないので独自の勢力を形成中
領域の中だと死に戻り出来るので格闘成分その他はそっちで摂取しているので比較的理性的。一番の楽しみは甚爾との本気の殺し合い
美々子と菜々子は両親を保護した後産まれたのでそもそも村を知らない
最近、勢力が弱い呪術師家系から子供を預けられているが快く受け入れて教育中

高専の仕事が板についてきた禪院甚爾
豊穣の乳で身体能力その他超強化されているフィジギフ。さらにサモナーさんのバフもらったらヤバい怪物になる
この度、五条悟を最強にしたけどそれでも倒した今のところ呪術界№2
五条の無下限を突破する天逆鉾と貫通する呪符でボコボコにした
五条の教師になる宣言もまぁ頑張れと応援中

最強になったけどまだまだ最強じゃない五条悟
甚爾との殺し合いで死にかけて呪力の核心を掴んで反転を習得したけどまだまだ最強には程遠い五条家次期当主
サモナーさんの術式だと普通に無下限突破してくる攻撃とかそもそも術式を使えなくするとかできるので最強には多分ならない
呪術界を変える決断をして教師になることを決めた

闇落ちは防げた夏油傑
猿拍手もないし、理子ちゃんは生きてるし、灰原は生きているし、双子は救出済みだしと闇落ち原因がことごとくなくなってもなお闇落ちしかけたがその前にサモナーさんにボコられ冷静さを取り戻した
悟とサモナーさんと呪術界を変えるんだと決めて覚悟が決まった。多分もう闇落ちはしない
進路はまだ決まってない

生きて帰った灰原と七海
サモナーさんに助けられて生きて帰った二人は、今度こそ似たようなことがあったら祓ってやると気合を入れて鍛錬中
持ち運ぶ呪符の量を増やして、領域対策の呪符もすぐに買った

サモナーさんに嫌われているだろう九十九
サモナーさんには甚爾に手を出そうとする変態痴女的な認識されている(子供の頃の甚爾に詰め寄っていたから
この度サモナーさんにしばかれた

脳みそメロンパン
宿儺の器の調整中にサモナーさんに見つかった。運よく見逃されたので今回は死ななかった
どっちを獄門疆に封印するか考えている。多分どっちも封印しないとどっちみち積むと思うから頑張れメロンパン!


サモナーさんに保護されている人たち
サモナーさんが作った保護施設に保護されて呪霊のことや呪術師についての基本を学び育てられている人たちと呪術家系から預けられている人たちがいる
皆順調に成長中、そしてサモナーさんへの忠誠心も成長中
将来的には呪術界はサモナーさんの縁者に支配されそう


穏やかにゆっくりと呪術界を牛耳る準備(無自覚)を進めているサモナーさん(仕事が忙しいから人手を増やそう、信頼できる後方支援欲しいってだけ)
上層部と総監部にはめっちゃ警戒されているし勢力を削ごうとしているけど強いし窓や補助監督も緊急避難用のテレポートの呪符とか持たされて削げないのでどうしようかと悩んでいる。そして手を出す度にサモナーさんに〆られている
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