異世界転生したサモナーさんは呪いの世界に行く 作:cohaku
見づらかったのでちょっと変えました
この家の奴らは馬鹿なのか、馬鹿だったな。
式神の術式だからと分家筋から迎え入れられた親戚の激怒する様子を見ながら直毘人は溜息を吐いた。
十種影法術は影を媒体に式神を召喚する術式だ。だから分家筋に産まれ相応の呪力と式神を扱う術式を持って生まれた親戚は本家に引き取られた。
そいつはすぐに頭角を露にした、召喚された強力な式神と本人の戦闘センス。それらを駆使して2桁に届かぬ歳で1級呪霊を祓って見せた。
すぐさま特別1級術師の称号を賜り、その称号に恥じぬ功績を上げた。時には1人で特級呪霊を祓った事さえある。
その呪力は、年々増加しておりもはや自分たちと比べるのも烏滸がましいほどの呪力を備え特級呪霊と対等に渡り合う式神を使役するそいつは明らかに規格外だった。
そしてそいつがこの家で唯一執着するのがそいつが特級に任命された翌年に産まれた呪力0の子供禪院甚爾だ。産まれてすぐに殺そうと話し合いをしていた奴らを無視して抱き上げると
「いらないなら私がもらい受ける」
そう言って自室に連れ帰ってしまった。それからは任務をこなしながら式神の手も借りてそいつは子育てに勤しんだ。嫌がらせをしようものなら次の日には庭に吊るされていた。辛うじて死んでいなかったがしばらくは使い物にならない程度にはズタボロにされていた。
それを幾度か繰り返し、とうとう諦めたのかしばらく手を出していなかったが寄りにもよって甚爾を呪霊を飼っている部屋に突き落とすなどそいつの逆鱗に触れる蛮行を行うとは、そこまで愚かだとは思ってもいなかった。
「直毘人」
「!?なんだ」
努めて平静を装い呼びかけに答える。そいつの前には、俺以外の禪院家の術師が全員地に付してそいつに足蹴りにされていた。
「お前、当主を継ぐつもりは?」
「おいおい、特級様がいるのに俺に当主になれってか」
「お前が次期当主だろう?お前なら私を下手に刺激しないで使えるはずだが?」
その言葉に苦笑いが浮かぶ。今なお頭を踏み弄られている現当主を見た。
「勘弁してくれ、お前がなれよ。補佐はしてやるぞ」
「いいだろう、なら私は私の好きなようにこの家を変えるぞ」
「構わねぇさ、お前が変えるなら悪いようにはならねぇだろ」
そしてそいつは現当主の目を潰した。戦えなくなった当主は引きずり降ろされそいつが当主の座に座った。
まずあいつは、世間を知らねぇガキどもを学校に行かせることにした。危険だと反対したがそいつの式神が常に護衛するという条件を聞きなら大丈夫かと納得した。
次に家の術師達をある場所へ拉致して鍛えるようになった。最初は反発していた奴らも何度も何度も倒されている間に絶対に敵わない力の差というのを思い知ったらしく心が折れてそいつに従順になり始めた。俺も巻き込まれたが他の奴らよりは手心を加えられているのが分かる扱いだ。
そのおかげか明らかに力量が上がっているので結果オーライという奴だ。
そしてこの家では虐げられていた奴らを保護して様々な仕事を振る様になった。今までは無給でこき使われていた者達だしっかりと給金を払い休みも与える。今までの境遇との違いに驚きながらも歓迎している様子にそいつは満足そうに見ていた。
そいつが当主になってから家の環境は一気に変わった。術師達は他者を虐げるよりも訓練に身を入れ力量を上げ、虐げられていた者達は認められる喜びを知り、小さな子供達は世間を知った。
そしてそいつの唯一の愛し子は
「やっぱり甚爾は強いな」
「強いなんてもんじゃねぇだろ」
そいつと同じ側に立つ化け物になっていた。身体能力のみで術師達を叩き伏せる姿を喜悦に染まった顔で眺めている。そいつはでっかくなった愛し子に相も変わらず首ったけで釣書を持ってきても結婚する意欲すらない始末だ。
「お前、当主なんだからそろそろ結婚して子供を作れよ」
「今のところ興味がないな」
「はぁ、五条にも抱き合わせが産まれたし当主様は結婚しないしなんで頭が痛い問題ばっかでてくんだよ」
「六眼と無下限か?私とどっちが強いかな?」
「…お前だろ、お前の式神たちは対抗できそうな奴もいるからな」
その言葉にそいつは笑みを浮かべた。俺が正しく実力を見分ける目を持っていることへの笑顔か、将来呪術界を背負って立つと言われる子供よりも強いという事への喜びか。多分前者だろうが、その笑みは妙な威圧感がありすぐに目を反らした。
「兄貴」
「甚爾」
「こいつらじゃ、詰まらねぇ」
「じゃあ、私とやろうか」
書類を処理していた手を止めてそいつは庭に降りる。二人の戦いに巻き込まれまいと叩きのめされていた者達が体を引きずってその場から逃げ出した。
「甚爾君とご当主様の戦いが見れるってホンマか!」
「直哉」
俺の子で唯一相伝を受け継いだ息子。そしてなりより強い人間が大好きでそいつと愛し子の事が大好きだ。
まぁ、もはや元の形も分からぬほど変わり果てたこの家であの二人に敬意を払わない存在はいない。それが畏怖であれ憧れであれあの二人はもはや禪院の象徴となった。
恐ろしいまでの呪力と強力な式神を従える特級術師である現当主とその傍らに寄り添い呪力0でありながら特級さえ祓う規格外の男。
そしてそれに付き従う、当主に鍛え上げられた精鋭たちと呪力の無さを武器に暗躍する暗部部隊。
「五条だろうが何だろうが、どうでもいい事か」
五条に抱き合わせが産まれたことで御三家の均衡が崩れたと囀る馬鹿がいるが、それは間違いだ。正しく禪院を理解している奴らがいるならこういうだろう。
呪術界は五条と禪院の二大巨頭になったのだと。
なんだかんだ人の上に立てる素質はありそうだなって思っている作者です