異世界転生したサモナーさんは呪いの世界に行く 作:cohaku
「貴方達に話したいことがあります」
いつになく真剣な樹さんの顔に自然と背筋が伸びた。
「本当なら貴方達に話したくはなかったのが私と甚爾の本音です。しかし、家族である以上話すべきだと私が判断し甚爾が賛同しました」
「…いつまでも黙っておける事柄じゃないんでな」
恵の誕生日の翌日のリビングで樹さんと甚爾くんを前にして正座して座っていた。二人の雰囲気に思わず床に座ってしまっていた。
「まずうちの家業の事について話そうと思う」
「家業?」
「まずはこれをかけてくれ」
そう言って私と津美紀に眼鏡を渡された。
「これは?」
「普通の人には見えないものを見えるようにする眼鏡だ」
「「うわっ」」
メガネをかけると樹さんの後ろに大きな黒い狼が見えた。
「これは私の式神だ。この世にはこんな風に普通の人間には見えない存在がいる」
そこから樹さんと甚爾くんの実家である禪院家が昔から見えない存在、呪霊を祓う事を生業としている血筋であること、私たちの様な非術師と言われる見えない人達の負の感情から呪霊が産まれる事、恵が禪院家の血を濃く受け継いで見える側であることとかを色々と説明された。
「大丈夫か?」
「だ、大丈夫。でもちょっと休ませて、いきなりすぎて」
子供達はいつの間にか新しく召喚された式神たちと遊び始めていた。
「樹、他には何がいるんだ!」
「樹さん!ネコさんとかはいないの?」
「猫はいないなぁ、ライオンさんとか虎さんとかはいるぞ」
「ライオン!」
「虎さん!」
その様子に樹さんは苦笑しつつも二人の質問に答えていた。
「危険な世界にいるんだね、樹さんと甚爾くんは」
「危険って言っても俺達を殺せる存在はまずいないけどな」
「そうなんだ?」
「兄貴も俺もつえぇからな。そこら辺は心配すんな」
自信満々の甚爾くんの顔に安心感を覚えた。
「樹、護衛紹介して!」
「護衛?」
「私たちの家業関係で巻き込まれた時用に皆には護衛をつけているんだ。ローテーションだから同じ式神じゃないけどね」
樹さんの言葉に私は甚爾くんを振り返った。
「あ~、気にスンナ。俺と結婚した時から常に護衛付きだからよ」
「へ!?」
「兄貴も気を利かせて女型の式神しかお前と津美紀につけてねぇし何かあったことしか報告もあげてねぇよ。本当に呪霊とか実家関係からのもめ事に巻き込まれた時の護衛だしな」
俺の護衛はだいたいアイツ、と最初に見た狼を指さした甚爾くんに文句を言おうと思ったが、私たちじゃ呪霊や呪術師に対抗できないから護衛をつけるのは当たり前かと考え直した。むしろ人じゃないだけマシかもしれない。
「この家にも結界が張ってあるからある程度安全だからこの家の中にいりゃ、常に張り付いたりはしねぇよ」
「そうなの!?」
「その事もあっての一軒家のプレゼントだぜ?マンションだと結界の条件付けが面倒だからな」
そこまで考えての一軒家のプレゼントだったとは、やけに素直に家を買ってもらったと思っていたがそういう事情もあったからなのかな?
「そろそろ、頭の整理は終わったか」
「は、はい!」
「じゃ、本題を話そう」
「え、恵の事が本題じゃ」
「そっちも本題だが、本命はこっち。私と甚爾の体の事だ」
「体?」
「私は40を超えているはずなんだが、どう思う?」
「あ!」
そういえば話の中に樹さんが甚爾くんを赤ん坊の頃から育ててたって話が合った。え、つまり
「樹さんの見た目って20代でも普通にアリですよね?」
「若い!」
「ちょっと術式の関係で半分人間やめかけているんだ、甚爾も巻き込んでしまっていて」
「俺も人間やめかけてんだわ、だからめっちゃ長生き」
「「「へ?」」」
「神とドラゴンの寵愛は恐ろしいものだ、度が過ぎれば人の道から外れる」
「愛ってのは最も歪んだ呪いっていう奴もいる位だしな」
口元に手を当てて苦笑する樹さんの顔はわがままを言う子供にしょうがないなと対応する父親の様な顔だった。
「だから私たちはずっと見た目は若々しいし、見送ることになると思う」
「それで樹さんはいいの?」
「甚爾を巻き込んでしまった事だけはちょっと後悔しているけど、うん。私自身がそうなるのはもうどうでもいいというかなったものはしょうがないというか」
「兄貴が長生きすんなら俺も付き合うまでだな。お前には悪いと思うけどよ、兄貴を一人にすんのは嫌だなんだわ」
2人は割り切っているのだろう、人でなくなると言いながらもそれを気にする素振りはない。
「私はあまり一般人と関わらないから何もしないけど、甚爾はお化粧とかで何とか誤魔化すから安心してほしい。本当なら結婚前に言うべきだったんだろうが言うのが遅くなってすまない」
「いや、それは樹さんが謝る事じゃないし、結婚前に言われても多分甚爾くんと結婚してましたし」
「俺も初めての相手で浮かれてて兄貴にも紹介したの結婚してからで忘れてたんだわ」
「まぁ、言ってほしかったとは思うけど簡単に話せる内容じゃないのは分かるし」
実は人間やめてますなんて簡単にいえる事じゃないのは分かっているし、呪霊っていうのも本来は私たちみたいな一般人が知るべきことじゃないってのは分かる。
「樹、人間じゃないの?」
「でもどこも違くないよ?」
「普段は隠しているからね」
樹さんは右目に手を当てる。
「ほら、神様からもらったものの一つだよ」
「「虹色だ!」」
その手がのけられると樹さんの目の色が7色に変色する目に代わっていた。
「この目を通して神様が私の様子を見るんだ」
「神様が?」
「その為に与えられたものだからね、今も会いに行ったら色々話されるよ。あまり人間には関心がないのか私や甚爾、後は私の庇護下にいる子たちのお話だけだけれどね」
「めぐ達の話もする?」
「今一番、関心があるみたいだ。甚爾の時もそうだけど、子供が好きらしいね」
「お父さんも」
「何度か会いに行くたびに甚爾と会わせろっていうから連れて行ったら、私と良好な関係の神様全員集合してて全員から祝福を送られちゃったりとか色々あったんだよ」
「しゅくふく?」
「私にもついでとばかりにどっさりとね。恵たちにも薄い加護はあるみたいだ、まぁ人の道を外れるほどじゃないから注意はしないけれど」
「私たちも?」
「私が一等気にかけている甚爾の家族だからな。呪いにほんの少し耐性が出来る程度の軽い加護だけど」
「ないよりはマシだろ、特に非術師なお前らには合って損はねぇ恩恵だ」
「確かにね、こんな世界だと呪いに耐性があった方が良い」
「耐性があると良い事なの?」
「呪霊の中には毒みたいなやつを使う呪霊もいるからな、それに耐性があるって事は生き残れる可能性が高くなるってことだ。人を操る術式にも抵抗できるようになる」
「まぁ、私の式神が守るからそういう事になることはほとんどないと思うけど」
「そういえば、守ってもらっているなら何かお礼がしたいと思うんだけど何か私たちでできる事がありますか?」
「?彼らの仕事だから気にしなくてもいいんだよ」
なぁ、と言いながら式神たちを撫でる樹さんの言葉に各々頷いたり鳴き声を上げたりして肯定を返す。
「でもお世話になっているなら、お礼がしたいな」
「お礼!めぐ達守ってくれるからお返し!」
「子供達もお礼をしたいって」
「と言ってもな」
樹さんが式神たちを撫でながら考え込むように顎に手を当てた。
「基本、皆に付けている式神は人型だ。甚爾は強いから動物型にしているけど、やっぱり人型の方が出来ることが多いからね。動物型の子達なら大体はちみつが好きだからって言えるんだけど人型の子たちはそういう欲求を表に出さないから私も何が好きとかは分からないんだ」
「そうなの?」
「彼らは歌を歌ったり鳴いたりはするけどちゃんとした言葉を発する事はないしね。多分、お礼を言われるだけでも喜ぶと思うからいつも見える恵がお礼を言って上げたらいいと思うよ。そのメガネもあげるけど家の外には持ち出さないでね、そこそこいい値段するし、外で呪霊と目が合うと襲われるから危ないしね」
「え、いいんですか?」
「恵もその方が話しやすこともあるだろうしね。はい、これ眼鏡ケース。普段はこれに入れておいてね」
「は、はい」
お高そうな革の眼鏡ケースを二つ渡される。
「よし、お話が終わったことだし。今日は何処かに食べにでも行こうか?」
「俺、くるくるずし喰いたい!」
「私もくるくるするお寿司!」
「回転寿司だな、さっそく行こうか!今日は私の奢りだぞ、好きなだけ食べろ!」
「「やったーーーーーー!!」」
術式に神様達とドラゴン達もついてきているサモナーさん