異世界転生したサモナーさんは呪いの世界に行く 作:cohaku
これまで波乱という波乱はなかった呪術界。
しかし、それも今日で終わりらしい。
「ん?」
式神からの連絡を受け取った。
「どうした、樹」
「ちょっと用事、少し席を外すぞ」
処理をしていた書類から顔を上げてすぐに目的地に向かう。
「…成程、頭に引っ掛かってた違和感はアレだったか」
夜の学校に監視をつけてからたまに様子を見ていた子と恵の呪力を感じて昔から思っていた疑問が解けていく。何度か単独で回収したことはあったが二つ揃っている場面に立ち会う事でその呪力の類似性がやっとわかった。
「これ、絶対あいつの仕込みだな。恵が苦戦するレベルの呪霊が普通はこんなに集まんないし」
思い出すのは額に縫い目のあった女。津美紀にも手を出そうとしてたし、やっぱり早々に殺すべきだったか。
「おっと、まずはここを何とかしてからだね。闇より出でて闇より黒く その穢れを禊ぎ祓え」
帳を下ろす。監視があると面倒なので近場にいるだろう悟君だけを通す設定にしておく。
「俺にジュリョクがあれば「はい、そこまで」え?」
「樹さん!?」
「これは没収。ダーク・ヴォルテックス」
呪霊が闇に包まれ消える。消えた後には禍々しい呪力を持った死蝋の指が落ちていた。それを拾って、2人を見る。
「なんかヤバそうだから来たけど…うんやっぱりそうか」
2本の死蝋から感じられる呪力とピンク色の髪の子の奥底に眠るものの呪力が完全に一致している。
(つまりアレは両面宿儺の器を作ってたって事か、身体能力は劣化フィジギフぐらいはあるし、他にどんな細工をしているんだか)
「樹さん、助けてくれてありがとうございます」
「恵、悟君は?」
「今頃、自分用のおやつでも買ってんじゃないですかね?」
「ふぅん、まぁいいや。とりあえず恵の治療が先かな?」
傷はそれほどひどくない。アースヒール一発で見た目の怪我は全て治った。
「今どういう状況?」
「遅かったね、悟君」
「樹がいるって恵が危なかったの?」
「危なかったのはこっちの子、えっと確か虎杖悠仁君だったね」
「は、ハイ!」
「端的に言うと君は私の監視対象だったんだよね」
「「!」」
「カンシタイショウ?っすか?」
「そう産まれた時からね。君のお母さんが明らかにお腹の中にいる君に呪術的な奴で何かしているのを見ちゃってね、君自身が何かしたってわけじゃないから監視対象として監視していたんだ」
その言葉の意味が分かる悟君と恵は目を見開いて悠仁君を凝視している様に見える。悟君は目が見えないけれど。
「何もなければそのまま放っておくつもりだったんだけど、そうもいかないみたい。悟君なら見えるんじゃない?悠仁君の中にあるやつ」
「……うそ、そこの子の中に宿儺の指がある」
「!?五条先生、それは本当ですか?」
「多分、悠仁君は人工的に作られた宿儺の器なんだろうね。流石にそれを知って放置しておくわけにはいかないからちょっとお話し合いをしようか、領域展開」
風景がいつもの闘技場に切り替わる。悟君と恵はいつもの事と反応はないが、悠仁君は突然変わった周りの景色に目をいろ黒させて驚いている。
「さて、まずは人工的な宿儺の器だと仮定して悠仁君をどうするかって話だね」
「本当に宿儺の器なら放置しておくわけにはいかないでしょ」
「それは分かりますけど、今の虎杖は非術師ですよ?高専で保護とかは出来ないじゃないですか」
「それが問題なんだよね」
「えっと、宿儺の器とかって何?」
「ああ、そういえば説明してないね。恵、何処まで説明した?」
「呪霊の事ぐらいですね、此奴の先輩が宿儺の指の封印を解くって言ってたんでそんな説明する時間はありませんでした」
「じゃ、簡単に今の状況を説明しようか」
悠仁君に呪術師とか両面宿儺とその指についてとかを簡単に説明する。
「えっと、つまり俺のかーちゃんが何かしらの目的で俺をりょうめんすくな?の器として作ったってこと?」
「そういう事だね、呪詛師として登録されているわけじゃなかったから見逃したけど失敗したかな?」
「宿儺の指は20本、そのうちのいくつかはそっちに確保されていると見るべきだ。このまま悠仁を放置して知らない所で宿儺の受肉をされるわけにはいかない。
でも悠仁は呪術師じゃないから、高専で保護するわけにもいかない…いっその事、今宿儺を受肉させる?秘匿死刑の対象にはなるけど僕と樹ならそれに無期限の執行猶予を付けることはできる」
「それは」
悟君の言葉にしばし考えた。確かにこちらとしてはそっちの方がメリットがある。高専の忌庫に保管されている6本、今ここにある2本、私が確保し領域内に隠してある6本の14本が手元にあり、残りの5本を相手側が持っていると仮定する。
全ての指を取り込むまでという執行猶予なら私の領域内に封じてあるのが見つからない限り悠仁君の処刑は執行されない。
「そうだな、その方がこちらとしては安心できる。だけど悠仁君にとってはあまりいい選択肢じゃない。常に命を狙われる立場になるけど体に封印された指の力が解放されたらどっちみち存在はバレる。
それならまだ擁護者になりえる私たちの目の届くところにいた方が安全ではある」
「すでに指一本体に埋め込まれているならどっちにしても遅いか早いかの違いだけだしね。それで君はどうする?好きな地獄を選んでいいよ」
「えっと、その両面宿儺ってのはそんなに警戒されるやつなの?」
「伝承では、人肉を好んで食べていたとか色々書かれている呪術界で一番恐れられている呪詛師だ」
「俺がそいつの器で、それを喰う事で両面宿儺が復活するって事でいいんだよな?」
「そうだね、どういうつもりで作ったのかは知らないけどそういう思惑で作られたとは思うよ」
「そのトッキュウジュブツってのは壊せないんだよな」
「そうだね、本来なら周りに被害を与えないって言う制約の元絶対に破壊できない代物なんだけどこれはあまりにも呪力が濃すぎて周りにも被害が出る一番厄介なやつだ」
「俺が喰って死ねば、それはなくなるの?」
その言葉に3人とも言葉に詰まった。悠仁君の視線は嘘は許さないと私たちを見つめている。
「…なくなるね、君が腹に宿儺を抱えたまま死ねばね」
「樹さん!」
「こんなことで嘘はいてどうするの、それに彼は人工的に作られた存在なんだ。作った製造者がいつ彼の元に現れて使おうとするかもわからないんだ。なら、私たちの監視下にいてもらった方が彼の安全のためにも必要な事だと思うよ」
「なら、俺それ喰うよ。じいちゃんに言われたんだ「お前は強いから人を助けろ」、それに抑えられる人のいない所でその両面宿儺が俺に受肉したら大変だしな」
「覚悟は決まった?って事でいいのかな」
「……全然、なんで俺が死刑なんだって思っているけど呪いは放っておけねぇ。宿儺は全部喰ってやる、後は知らねぇ」
悠仁君がこちらに手を伸ばした。
「そう、本来ならそんな心境の子をこちらに巻き込みたくはないのだけど君を放置しておくことはできないからね。悟君」
「ん、今回は僕が抑え込むよ」
「悠仁君、君がどれほど器としての適性があるかもわからない。最悪、君の自我も消えるかもしれないそれでもこれを喰らうかい?」
「ん~、自信ねぇけどなんか大丈夫な気がするからモーマンタイ」
「分かった、歓迎するよ虎杖悠仁君。地獄へようこそ」
悟君に宿儺の指の一本を渡し、恵と共に観客席に移動する。
「いいんですか?」
「ダメだけど、しょうがないよ。製造者がいるって事は使う当てがあるって事、見知らぬところで核爆弾を使われるより、私たちの監視下に置いた方がいくらかマシでしょ」
「それは、そうなんですけど」
恵の言いたい事だってわかる。非術師である虎杖悠仁を巻き込みたくないと思っているんだろう。
悠仁君が宿儺の指を飲み込み、両面宿儺が受肉する。その証のように体に呪印が現れ、近くにいた悟君に襲い掛かる。
「まだ指二本だから、子供みたいなもんだな」
「それでも俺にとっては脅威ですけどね」
暫くして突然動きが止まり呪印が消える。
「アタリだね」
「そうみたいですね」
「しばらくは見守りの式神の数を増やす、合図はいつも通り。悠仁君にも教えておいて」
「分かりました、何かあれば遠慮なく頼ります」
「うん、本当なら君たちの成長のためにも頼ってほしくないけど。いつ上が動くか分からないから」
闘技場で悟君と話す悠仁君を見る。
「宿儺を抑え込むって選別基準で選ばないとね」
何かが動き出す、そう思える風が吹いてきた。
原作が始まる