異世界転生したサモナーさんは呪いの世界に行く 作:cohaku
「成程な」
不機嫌そうな兄貴の声に背筋が伸びた。
「まったくさっさとあいつらを切らなかった私の判断が間違っていたみたいだ。悠仁君の殺害まではまだ理解できるが、まさかここまでやるほど抱き込まれているとはな」
手に持っていた報告書を放り投げた。
交流戦で現れた特級呪霊達に関する報告書。交流戦で暴れた呪霊とそれを囮にして忌庫に侵入して高専に保管されていた宿儺の指と呪物を奪っていった特級呪霊。
そしてそれの成功確率を上げるために前日に海外出張を言い渡されていた俺たち二人。これは確実に上層部とそれを画策した呪詛師が繋がっている何よりの証拠だ。
「で、どうすんだ?」
「呪詛師は近々大きなことをしそうだな、その時にきっちり追及してほぼ全員首を切らせてもらう」
完全にブチ切れている兄貴にご愁傷さまと心の中で手を合わせた。
「しばらくはそれに対応する準備を整えるために籠るからレプリカントを置いておく。それで任務は遂行できるだろう」
「俺は?」
「内通者の監視を頼む。まぁ、事情が事情だから何とかしてやりたいしな」
兄貴は俺にその内通者を探った報告書を渡した。
「成程な、分かった。多分殺されるだろうから監視していて救出すればいいわけだな」
「ああ、しばらくはお前に任務が回されないように牽制しておく。何かあればすぐに呼べ」
「了解」
レプリカントが召喚されて兄貴の姿に変わるのを見届けて兄貴はテレポートしていった。
「しばらくよろしくお願いします」
「おう、お前も上手くやれよ」
「お前達だな、高専から盗まれた呪物は」
「「は?」」
「で、お前が長男ってわけだな」
「なっ!」
特級呪物・九相図。呪詛師認定はされていないが加茂家の汚点と称される加茂憲倫によって生み出された、呪霊の子を孕む特殊体質を持つ哀れな女を使って生み出された9人兄弟。
そのうち、3兄弟が盗まれた。受肉できる呪物がその上の3兄弟だけだという事だろう。
戦力目的、とは言えないか捨て駒目的で奪っていったってのが正しい表現だろうか。
成立して150年とはいえ実践を経ていない奴を突然組み込んだって捨て駒にしかならない。
流石にそれは可哀想だと思ってしまった。
加茂憲倫の写真を入手してそれを見てしまっては余計に。
だから、宿儺の指が収められていた場所の近くに現れた次男と三男を、そしてその気配をおって不可視の結界の前に立ち往生していた長男を問答無用で保護した。
「で、なんでお前らを保護したかっていうと余りにも哀れだからだ」
「哀れ?」
「哀れだろ?自分たちを面白半分に生み出した馬鹿にさらに利用されるなんて」
そう言って三人の前に加茂憲倫の写真を掲げた。
「その絵が何を…!?」
「ほら、よく見てみろ。この額の傷見覚えがあるだろ?」
「まさか!」
「「兄さん/兄者?」」
しっかりと親の記憶があったのは長男だけなのだろう、自分たちを受肉させた人物と自分たちを作った男の共通点を見つけ出しその顔は怒りで歪んだ。
「加茂憲倫ぃぃ!!」
「そういう訳で、流石に可哀想だと思ってな。お前ら三人を保護したってわけだ、まだ人も殺してないみたいだし暫くはここで大人しくしてもらえないか?」
「貴方に何の得があるの?」
「得とかはあまり考えてない。ただ利用されるだけされて殺されるなんて嫌だろうなって思っただけ」
「俺達どうなるんだ?」
「まず、これを始末して繋がっている上層部も一掃するまではここで大人しくしててほしい。しばらくしたら動くんだろアイツら」
「五条悟を封印すると聞いた」
「ま、そっちは私たちが何とかするから君たちは大人しくしてて、流石に突然連れて行ったら処刑だなんだってうるさいし、落ち着いてから君たちの処遇は決めるよ。
あ、大丈夫。私がいる以上、処刑は絶対にないから」
上層部を切る決断をしたし、九相図兄弟に同情したサモナーさん。