異世界転生したサモナーさんは呪いの世界に行く 作:cohaku
「よう」
「禪院甚爾!」
突然の乱入者に男の顔色が変わった。
「まったく無茶をしたな坊主。まっ、よかったじゃねぇか捨てられてよ」
禪院甚爾、俺とは真逆の天与呪縛を持ち呪術界最強の術師禪院樹の寵愛を受ける最強の非術師。
「お前何でここに」
「あ?兄貴の情報網を甘く見んじゃねぇよ、とっくの昔にお前の場所もお前が内通者だってのも兄貴は掴んで監視してたんだぜ。お前ら全員気付いてなかったみたいだけどな」
「なに!?」
「お前の存在を認知しているってのも知っているだろ?なぁ、宿儺の器の製造者さんよ」
「くっ、そこまで知られていたか」
「津美紀にまで手を出そうとしてんだってな、なら俺に殺されても文句ねぇよなぁ!」
いつの間に持っていたのか紙の束が引きちぎられる。それと同時に俺の周りに結界が張られ傷ついた体が癒され
「ここで引導渡してやらぁ!」
「くそっ!真人逃げるよ!」
「ちょ、ちょっとなんで俺が呪力なしなんかから逃げなくちゃ!」
「ただの呪力なしだと侮るな!いいから逃げるよ!」
「逃がすか!」
凄まじい呪力を放った禪院甚爾が呪詛師と特級呪霊に襲い掛かっていた。アレは禪院樹が売っている呪符だったんだろう、あれほどの枚数を一度に使い強化された禪院甚爾から逃げようと特級呪霊を引きずって走り出した呪詛師を追いかけるが肉体の性能が違うすぐに追いつかれて
「呪霊操術使いか!」
突如として現れた大量の呪霊に舌打ちをした禪院甚爾がもう一枚呪符を取り出しそれを破り捨てる。
瞬間あたり一面が炎に包みこまれ解き放たれた呪霊が一匹残らず焼却されてしまった。
「すごい」
「…チッ、もう逃げたか。逃げ足が速い奴らだな、まぁいい最低限の仕事はしたからな」
追跡は出来ないと判断したのか立ち止まった禪院甚爾がこちらに振り返った。
「与幸吉、お前にはスパイ容疑があるしばらくは俺達の元で大人しくしてもらうぞ」
「…わかった」
「ただお前の絡繰りは使えるし、奴らについての情報を喋れば五条と禪院の連名で助命懇願が出来る。大人しくこちらの指示に従った方が身のためだ」
「ハイ!」
そして俺は禪院樹の監視下に一時的に置かれることになった。
与幸吉の情報通り10月31日の前日に海外任務を割り当てられた俺たちは一先ず大人しく飛行機に乗り込んだ…と見せかけて俺に変装した奴と兄貴に変身したレプリカントを飛行機に乗せて、文句が言われないように任務先の転移拠点に転移して対象の特級呪霊を始末して誰も知らない兄貴の拠点の一つに待機していた。
「獄門疆…成程、まずは悟君の無力化からか」
「傑のやつが九十九に協力して海外にいて、優太の奴も海外任務、そして俺達も前日に海外任務で日本から追い出しているうちに五条の坊の無力化って事だろうな」
「まぁ、それを見逃す私たちではないけどね」
コロコロと笑いながら儀式のための装束を身に着けている兄貴を見る。
すでに禪院の奴らに命じて儀式のための補助の魔法陣の準備はやっている。無くても出来るが、こういう風に補助を入れる方が呪力消費が少なく範囲も広くなるからって事で態々作った特注品だ。
ジャラジャラと音が鳴るほどの装飾品は全て呪力をため込んだ代物で術の発動を補助し装飾品の土台である金属も魔法陣が刻まれそれを効率的に還元する特注品。
布にさえ魔法陣が織り込まれ、その全てが兄貴が使おうと思っている呪文を補助するためのもの。
「これを使う事になるとはな」
使おうとしている呪文は、兄貴が滅多に使う事がない、使う必要のない呪文だがその効果は絶大だ。
「今回はしょうがねぇよ、保護すべき対象が多いからな」
「そうだな、多少の被害はしょうがないとはいえそれを抑える努力はしないといけないからな」
渋谷に閉じ込められる無数の非術師達。それは全て五条悟の力を抑えるための人質だ。
「やっていることが狡いけどな」
「まぁ、弱者が強者に勝つために策を練るのは当然だ。ただ無関係の一般人に手を出すのはダメだと思うけどね」
「呪詛師がそんなこと考えねぇからな」
儀式用の装束を身に纏った兄貴が笑う。
「悟君が封印されても何とか出来る手段はある。まずは悟君の救出よりもそいつらの捕縛及び殺害が優先だ」
「ああ、そうだな」
五条の坊よりも呪詛師や呪霊を優先する。冷酷だと言われるかもしれないが、五条の坊が封印されても兄貴がいればそれほど問題になる事柄はない、兄貴が居なければ混乱していたかもしれないが兄貴が健在な以上問題が起きることはあり得ない。
「なんで兄貴が狙われなかったのかって思うが、そもそもその兄貴が本物の兄貴じゃない可能性もあるからそういう奴がいない五条の坊を狙ったって事かね?」
「さぁね、単純に六眼と無下限の抱き合わせが怖いだけかもよ?」
兄貴が茶化すように言うが、推定相手が宿儺と同年代の呪物が受肉したか天元様と同じように何らかの術式で延命していた相手だ。過去の六眼と無下限の抱き合わせに負けてそっちを警戒しているのかもしれない。
「そっちの可能性もあるか」
「とりあえず、被害を最小限に抑えるために悟君の救助は後回しで、自分の作戦が上手く言った奴ほど油断するものだからね」
「了解」
やっと呪詛師の尻尾を掴んだサモナーさん