異世界転生したサモナーさんは呪いの世界に行く 作:cohaku
「ねぇ、君さ出来るんでしょう?」
そう問いかける私の言葉にそいつは目を細めるだけで答える。
「まずは、統括就任おめでとう禪院樹」
「最近よく言われるな、そんなめでたい事でもないだろ」
天元に呼ばれて訪れた薨星宮。手土産として持参したお菓子を手渡し、何故か南国風になっている結界のビーチパラソルの下にあるビニールチェアに腰を下ろした。
「君ならば、公平に合理的に組織を運用するだろうと思われているのだろう。今まで上層部に振り回されていた術師達からすればそれは十分におめでたい事だ」
「ハッ、健全に組織を運営してそれがおめでたいって終わってるだろ」
連れ立っていた式神が飲み物を用意する。黄金色に輝くジュースを飲み天元の言葉に鼻を鳴らす。
「それと彼らを止めてくれてありがとう」
「……そう言えば同じ平安時代からの知り合いでしたね」
「ああ、特に羂索とは特に親しくしていた」
「あのマッドサイエンティストとか」
召魔にしてから何をしたかったのかと聞きだしたが言い分は完全なマッドサイエンティストでこれを長年野放しにしていた呪術界がよく存続できていたなとも思ったが無下限と六眼の抱き合わせの最強の存在かあったからゆえだとわかった。
もし五条といなければ奴はもっと早く目的を達成していただろう。
「君が手綱を握ってくれたおかげでこれからは枕を高くして眠れるよ」
「予想外の結果だったけどね、奴らの術式と知識を私が継承するタイプだと思ってたんだけどね。まぁ、こっちの方が人手が増えるから結果的に良かったけど」
「呪物になった術師達も一部例外以外は皆君の式神になったね」
「死なない術師が大分増えたからなこれで大分術師達の負担は減るだろ。そしてその増えた時間にやりたいことがあるんだよ」
「君たちが新たに制定した呪術規定の「闘技」だね?」
「ああ、秤君からの提案だったけど呪術師の存在を公にした以上、裏の連中が似たようなことを考える可能性が高いからね。先にこっちで制定させて取り締まれるようにしたってわけだね。今、呪霊や術式を取ることが出来るカメラの開発を依頼している所だよ。
術師達への鍛錬にもなるし、近々試しに開催しようって話し合いをしている所だね。元受肉術師達の中には強い奴と戦いたいから呪物になったっていう連中も多いし彼らの希望をかなえる目的でも有用な提案だったよ」
「君は出るのかい?」
「ん~、私たち特級は特級VS特級とトーナメントを勝ち抜いた優勝者が望めば指名制で優勝者VS特級って感じを予定しているかな?ワンサイドゲーム過ぎても面白くもないし賭け事として成立しないからね、まぁ勝敗のほかにどれぐらいの時間生き残れるのかっていう賭けも用意するつもりだから特級はそっちがメインになるかも?」
「成程」
「で、そろそろ何で私を呼んだのか聞いていいの?」
「君に話があるのは正確には私ではない」
「君に話があるのは私さ」
「九十九か」
いつの間にか白い世界に特級術師九十九由基が立っていた。
「一体何の用だ」
「久々に戻ってきたし、天元の顔を見てやろうと思ってね」
此方に目線を寄こす樹は、白い世界になった結界を気にもせず私を見据えている。
「そこで面白い事を知ったのさ」
「面白い事ね」
黄金に光る飲み物が入ったグラスを揺らし、じっと私を見る樹。
「天元、何を九十九に教えたんだ?」
「君の結界の性質と役割を」
「成程…つまり、君が言いたいのは」
「そう、樹さんの結界の性質と役割について聞いたときに私は思ったのさ。
ねぇ、君さ出来るんでしょう?君なら呪霊の存在しない世界を実現できるんでしょう?」
私の問いかけに樹は目を細めて私を見据える。
「まったく面倒な事に気が付いたな」
「君が管理する結界は世界各地にあって、火星にも領域を展開している。はっきり言って結界はまだわかる、核となる呪物があるならそこから呪力を引っ張れば君に消耗はほとんどない。でも火星は違う、星一つを包み込むほどの領域、しかも世界そのものを作り替える術式を行使しながらなんて人間の呪力量で足りる訳がない」
「そうだな」
「じゃあ、何処から呪力を引っ張っているか…君は地球の呪霊になるかもしれない呪力を回収してそれを利用しているね」
星一つを包み込む領域、そんなものどれだけ呪力があっても一個人で賄いきれるわけがない。つまり外部供給があるはずだ、そして調べて見れば近年の呪霊発生数は災害や大規模な事件が起きてもその上昇幅は昔と比べると軽微と呼べるほどに少なかった。
そして天元に確認した樹の拠点にしている結界の性質と役割で確信した。
「つまり君がその呪力を全て回収すれば呪霊は発生しない、どうだい私の推測は?」
パチパチ
「正解だ、九十九。確かにやろうとすれば出来ないことはないだろう」
「じゃあ何で「言っただろう、過保護になるつもりないと」
樹は肩をすくませ、手に持っていたグラスをそばに控えていた式神に手渡す。
「呪霊のいない世界、そんな世界にしたところで何の意味がある。呪術師の仕事は呪詛師退治だけになり、それもいなければ廃業。私がいなくなったとき呪術師のノウハウが失われれば人間は呪霊との戦うすべを無くしただ殺されるだけの存在になり下がる。
そも呪霊が居らず術師や呪詛師だけになればその力を向ける矛先が人間同士になり不毛な殺し合いが続く可能性もある。今の術師が社会的地位を保っているのは社会にとって害悪である呪霊を討伐する存在だからであって、その呪霊がいなくなれば危険な力を持った異能力者になり、マイノリティである私たちが迫害されないという保証はない。非術師にしたら呪術師も呪詛師も同じように見えるようになる可能性もある。
今のように発生をある程度コントロールし、呪術師に対する福利厚生を充実させて、非術師と持ちつ持たれつを維持した方が何倍もいいと思ないか?呪霊のいない世界を実現するなら術師のいない全ての人間が呪力を捨てた世界にするしか道はないと私は思っている」
「そ、それは」
樹の言葉に確かにそうだと思う。1000年も呪術界を維持してきたのは呪霊と呪詛師という敵対者がいたからであって、呪術師と非術師だけになった場合、呪術師が恐れられ迫害される可能性は高いと思う。
それは人類の長い歴史が証明しており、樹の言葉に反論できる材料は私は持っていなかった。
「それか日本のみならず世界中の人間が呪力を手に入れ全員が術師になるか、そうなった場合の呪術師と呪詛師の対立は怖いがな。呪術は兵器として扱われ、裏も表も呪術が飛び交うそんな世界になるだろう。
今の状態ならまだ、私が監視が出来る状態だから大きな問題は起こってないだけだという事を忘れるな」
「くっ」
確かに少し探ればわかるが海外の裏社会の連中が呪術師の存在について嗅ぎまわっていることは知っている。それを樹が抑え込んでいることも。
「九十九の考えは正しい、対処療法ではなく根本治療が必要である。しかし、それをすぐに実行できる代物でもないという事は分かってくれ。
例えば全ての人間に甚爾や真希のように完全に呪力を捨て去ることはできるのか、出来ない場合海外のようにたまに現れる特級呪霊に呪力と術式を失った人間達がどう対処するかという具体的な案を。
全ての人間に呪力と術式が宿る場合の社会問題と呪詛師に大量発生にどう対処するのか、戦争に兵器として転用される呪術師たちの保護方法など。
考えることは山ほどある。人生にやり直しはない、その選択の先の問題にどう対処するのかを私たちは考える必要がある。世界を変えるんだ、その変えた世界を丸ごと背負う覚悟はあるんだろうな?」
サモナーさんは世界を背負ったことのある人なのでその重みはちゃんと知っている人だしその結果もちゃんと考える人だと思う
どんな番外編が読みたいとか意見があったら教えてください
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1 日常小話
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2 IF小話
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3 サモナーさんが特級に成るまでの前日譚
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4 その他(コメントに書いてください)