ソシャゲ転生したら主人公の偽物だったので、偽りの久条運命としてGARDENに所属します 作:木津
初めて一人でGARDEN内を移動したせいで迷子になりかけたが、リリィ様にフォローしてもらいなんとか集合場所へ向かう。
(すでに先行き不安なんだが……)
(すみません、今まで部屋に籠もってましたから)
時間がある時に散歩でもしてGARDEN内を見て回ろうと思う。ここに来る道中も、自分には見慣れない景色ばかりだった。
第六層へと向かう軌道エレベーターのターミナルに着く。そこには、すでにカノン、シオン、プログラムの3人が集まっていた。
3人とも休日のためか、今日はゲーム内で見慣れた戦闘服ではなく、それぞれの私服姿だ。
カノンは白を基調にしたワンピースでトートバッグを肩に下げている。装飾は少なめだが、胸元の青いリボンやボタンがアクセントになっている。カノンの容姿も相まって、清楚な雰囲気を醸し出していた。
シオンは白いシャツに黒いショートパンツ、大きめのパーカー。ゆったりとしたシャツに、片方の肩がずり落ちたパーカー。その着崩した格好が、気だるげなシオンの雰囲気によく合っている。
プロブレムはデニムのショートパンツに短めのトップス。露出した肩やお腹、多めのアクセサリーとイメージ通りギャルっぽい服装だ。
初めて見る服装に内心で感動しながらも、表面上は平静を装う。じっくりと眺めていたいが露骨に見つめていては不審に思われるだろう。
「おっは〜!」
「ふわぁ〜おは」
「おはようございます。えっと、呼び方は運命くんでいいですよね……?」
「おはようございます。はい、よろしくお願いします」
今日は影武者の慣らしなので運命陛下として過ごさなくてはならない。ここ最近は、命呼びに慣れ始めていたところなので、ゲームであれだけ聞いた運命呼びはすこし新鮮だ。
「堅いって〜そんなんじゃ運命くんらしくない」
プロブレムに敬語を突っ込まれる。運命らしい口調にはあまり自信がないのだが頑張るしかない。
「そうだね。じゃあ今日はよろしくね」
「ん……じゃあ、そろそろ行こ。ちょうどエレベーターも来た」
シオンがエレベーターを指さす。こうして、3人と一緒に街へ繰り出した。
プロブレムの案内で最初に向かったのは、最近オープンしたというスイーツのお店だった。
「あ、早くに来たのにもう並んでる!」
「行列ができるという噂は本当ですね」
「甘い匂いがする、ね」
店の前には若い女の子たちが並んでいた。日本なら都会で売っていてSNS映えしそうなスイーツだ。
「早速並ぼうか」
騎士の中でも人気のあるプロブレムが並んでいる子に早速声をかけられていた。運命陛下は騎士より知名度が低いはずなので変なことをしなければ怪しまれることは無いはずだ。一応バレる確率を減らすため、カノンとシオンに合わせて控えめに対応する。
話していると自分たちの番がすぐに来た。それぞれ好きなものを注文し、口をつける。仮面をつけたまま食べるのにもだいぶ慣れてきた。
「ん〜甘くて美味しいですね!」
「そうだ! みんなで写真撮ろーよ」
プロブレムのノリに合わせて『イェーイ!』と声を上げ、四人でくっついて写真を撮る。周りを見ると、同じようにスイーツを買った客が写真を撮っていた。
「えっへへ〜あとでモノに自慢しちゃお」
食べながら何気ない感想を交わす。3人が話題を振ってくれるのでとても話しやすい。
スイーツを楽しんだあとは、そのまま街を散策する。
いくつかの店を見て回り、気になった小物を手に取ったり、ショーウィンドウを覗いたりする。気がつけば緊張が解れて、普通にお出かけを楽しんでいた。
しばらく街を歩いたあと、四人は服屋へ向かう。
運命陛下は基本的に男性の姿なので、命としてはこれから女性の姿で過ごす時間が多くなる。というわけで女性用の普段着を見に来たのだ。今日も自分だけ私服じゃないので少し浮いている。
ファッションセンスには自信が無かったが今日は頼れる3人がいる。おすすめのお店に連れて行ってもらうと店内にはさまざまな服が並んでいた。
カノンたちはそれぞれ気になる服を見ながら、似合いそうなものを探してくれる。3人とも女性の姿になった運命を着飾れるのが楽しいのかかなり乗り気だ。
そんな中、カノンがふと思い出したように尋ねた。
「そういえば、運命くんってどんな服が好きなの?」
「……私の好きな服?」
「うん。せっかくだから、運命くんがどんな服装を好きなのか聞いておきたいなって」
「それ私も気になるー」とプロブレムが身を乗り出し、シオンもこちらに近づいてきた。シオンも気になっているらしいのは意外だったが、偽物である自分の意見を参考にして、陛下の好きそうな服を知りたいのかもしれない。
「あくまで私の意見だけど、やっぱり普段のDEFAULT衣装が一番似合ってて……でも普段と違う服装も……」
そんなことを話しながら、みんなで服を選んだ。
買い物を終えた四人は、買い物袋を手に店を出る。運命陛下に昨日貰ったお小遣いをだいぶ使ってしまったが、今後私服に困ることはなさそうだ。
スイーツを食べ、写真を撮り、街を歩いて、服を選ぶ。
特別な事件もない、何気ない平和な日常。騎士たちが普段どんなふうに過ごしているのかを知ることができて、かなり嬉しかった。
それに今日一日で最初に合流したときと比べれば、3人との距離が縮まったような気がする。
距離が近いプロブレムなどに最初はちょっとドキドキしていたが、すぐに同性の友達のような距離感で過ごせた。自分には意外とTS適性があったのかもしれない。
いや、3人がフレンドリーなだけかな。神域で初めて会ったときから、あの3人は普通に接してくれたのだから。