ソシャゲ転生したら主人公の偽物だったので、偽りの久条運命としてGARDENに所属します 作:木津
魔剣使いに向かって進むにつれて天使の襲撃を幾度も受ける。その度に運命の指揮のもと、カノン達によって蹴散らされていった。
危なげない戦闘にピンチは訪れず、肉盾の出番もない。
「……薄々感じてたんですけど、この神域ってもしかしてかなり弱いんですか?」
「そう? 大抵の神域はこんなものじゃないかな? 魔剣も神域産みたいだし」
天使相手に無双する騎士たちを見ながら、運命陛下と雑談をする。近くで行われる戦闘にもだいぶ慣れてきた。
「記憶ってほとんど無いの? このくらいの神域なら何百と潰してきたはずだけど」
「印象に残った神域(ストーリーで出てきたやつ)しか思い出せないです。正直、騎士についても何人か顔を思い出せなかったり……(未登場キャラ)」
「かなり重症だね」
遠回しに回答する。実はここはソシャゲの世界で〜自分はプレイヤーだった〜なんて言っても意味不明なだけだ。記憶が曖昧なのは本当だし、妄言と捉えられると警戒されそうだ。
逆に思い出せる分のストーリーについては結構明瞭だ。そういえば今は時系列どのあたりなんだろうか。
「この神域の魔剣使いは盗賊なんですよね?」
「そうだよ。人のいるところで噂を聞いたからね。天使(ばけもの)を従える盗賊がいるって」
先ほどの痕跡も相まってほぼ確定らしい。
となるとやはりこの神域はストーリーに出てきていないモブの神域なのだろう。
カノン、プロブレム、シオンのKING三人がいたので、メインストーリーの第零章の神域なのかと思っていたがどうやら違うようだ。そういえばストーリーの最初は運命陛下は個別行動をしていたはずだ。
あの伝説の勇者パーティーを見れないのは残念だが、雷の鹿さんに会わずに済むならだいぶ安全だろう。
「戦闘が終わったみたいだね。さあ行こうか」
「はい!」
魔剣使いの根城は広めの洞窟だった。天使たちがどこからか持ってきた大量の物を運び込んでいる。
「あぁ? なんだおめーらは?」
天使たちを倒しながら進むと最奥にそいつはいた。山のような金銀財宝に囲まれ、大量の肉を食らっている。
「うっわーわかりやすい悪役」
「天使たちを配下としたたった一人の盗賊団。その首領であるあなたが魔剣使いですね」
プロブレムとカノンが盗賊の首領に対峙する。こちらの目的を察したのか、でっぷりと太った魔剣使いは傍らの剣を携え立ち上がる。
「太りすぎ……健康に良くない」
「その魔剣を渡してくれないかな?」
シオンが魔剣使いの体型に苦言を漏らし、運命陛下は相手に投降を促した。
「はん……おめーら俺様に勝てるとでも思ってるのかよ」
「そっちこそ、そんな体型で戦えるの?」
ゆったりと立ち上がったその姿はどう見ても機敏に動けそうにない。
「お前らもこの剣が目的なんだろ? この剣は人形どもを従えられっからな。だがこの剣にはこういう使い方もあるんだよ!」
「っ!」
魔剣使いが魔剣の力を発動した瞬間、地面が一気に揺れた。大きな揺れに思わず尻もちをつく。
「はっ。今だ人形共! やっちまえ!」
魔剣使いは揺れてない。敵対する相手にのみ大きな揺れを起こす魔剣? 運命陛下達も体勢を崩している。周囲から現れた天使達が一気に攻勢を仕掛けてきた。
このままではまずい……そう思った瞬間に揺れが収まる。いや、より大きな力に上書きされ止まった。
「ふっ」
一瞬で体勢を立て直したカノン達が天使を迎撃する。
「バカな……なんで揺れが止まって……!?」
「今の力は神域由来の力みたいだね。だったら神域を中和すれば止められる。私の魔剣でね」
運命陛下が地面に突き刺した剣を見せる。不敵に笑う運命陛下を見て、盗賊が目を見開いた。
「なっ! その剣、つまりお前も!」
「そう、魔剣使い」
揺れが起こった瞬間、彼の愛剣である『魔剣リリーリベルタ』の力で神域を展開し、神域を中和したのだ。
GARDEN唯一の魔剣使いにして、騎士たちを従える『皇帝』。それが久条運命なのである。
「こっちは終わりました。後はあなただけです」
「なんだと!?」
運命陛下と盗賊が話している間で、3人は周囲の天使をすべて片付けていた。
「くっ……いやまだだ!」
盗賊の持つ魔剣が輝き巨大な影を生み出した。
「はっ、こいつは勇者とかいうやつも倒したんだ。こいつがいる限り俺は負けねぇ!」
巨大な怪物のような姿の上位天使。ヤツの生み出せる最強の下僕だったのだろう。だが……
「カノン」
「はい、いきます。《BLADE》!天牙煉斬閃!!!!」
運命陛下の承認をもって発動されたカノンの
「な…あ…。なんなんだよ、お前らは! 俺は最強の盗賊だぞ…… こんな…こんな力、お前ら一体何なんだよ!!」
自らが最も信頼を置く力を容易く消し去られ、なすすべがなくなった彼は驚き、叫び散らすことしかできなかった。
彼が思わず叫んだその言葉に俺は場違いにも少し笑みをこぼす。
「盗賊か〜。私らそんなちゃちな悪役じゃないんだよね」
「私たちは魔剣をはかいする」
「そして、この
世界を破壊する。その言葉に盗賊の目が見開かれる。
「そう、私たちは━━」
《魔王》
運命たち四人がそう名乗るのを、少し離れたところで見守る。
この名は彼らの覚悟の表れ。
人類の英雄である騎士達が人類を守るために、神域の上書きによる人類の消滅を防ぐために、他の人類を滅ぼすと決めたから……
「GARDENランヴィリズマ、
「《最後の魔剣使い》にして《聖女の詠み手》━━」
「《人類を永続させるもの》━━」
「魔王、久条運命」
運命陛下の名乗りを受け、盗賊は少したじろぐと覚悟を決めたのか動きだす。
「クソっ!! まだだ!」
魔剣が輝きを放ち、天使たちを大量に作り出す。
現れた天使たちをカノン達が迎撃、天使の凶刃など意に介さず斬り伏せる。
そして限界を超えて駆動した魔剣は砕け散った━━
【BLADE】
騎士や天使たちが使う必殺技。リバxリバプレイヤーに求められるプレイヤースキルのほとんどはこれを上手く発動することである。