ソシャゲ転生したら主人公の偽物だったので、偽りの久条運命としてGARDENに所属します   作:木津

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第004話 全力の命乞い

 

 

 盗賊が、洞窟が、そして神域が消えていく。

 自分は盗賊以外には会わなかったが、この神域には他の……それこそ罪のない住人もいたはずだった。

 

「神域消滅、青い空(エンドブルー)確認です!」

 

「んー! 相変わらずきれいな青空」

 

「ふわぁ……風が気持ちいい、ね」

 

 神域を、世界を滅ぼしたばかりの彼女達はゆったりと伸びをしていた。世界を滅ぼして何も感じていないわけじゃないだろう。しかし、これが騎士達の日常なのだ。

 こんな悪役を倒して終わり!、みたいな結末じゃなく、神域に生きる住人に命乞いをされて罵声を浴びせられることもあったはずだ。

 それでも前に進むしかない。それが騎士達の、GARDENの歩む運命なのだ。

 

 神域の崩壊からまぬがれた俺は空に手をかざしてみる。どこまでも青い空はとてもまぶしく綺麗だった。

 

「まぁ、でも……」

 

 世界の最後の光景がこんな綺麗な青空なら、少しは悪くないのかもしれない。

 

 

 

 

 

「お願いします! なんでもするのでGARDENランヴィリズマに連れてってください!!!」

 

 青い空の元、神域が消滅した魔界の大地に跪いて、俺は懇願していた。

 

 見渡す限りの崩壊世界、魔界の地表は人類が住める環境ではない。だから人類は空へと居住地を移した。それが浮遊大陸GARDEN『ランヴィリズマ』、組織名と同じ名を持つ人類最後の拠点である。

 

「はい、一緒にGARDENに帰りましょう!」

 

「運命くんが増えるとなるとみんなびっくりするだろうな〜」

 

「ね」

 

「う〜ん……」

 

 割と受け入れコースで和気あいあいとしているカノン、プロブレム、シオンの3人とは違い、運命陛下の返事は思わしくない。

 

 それもそのはず、GARDEN『ランヴィリズマ』は文字通りの人類最後の楽園。ここが落ちれば本当に人類は全滅なのだ。

 万が一が許されない場所だ。星遺物から生まれた瞬間を見ていたとはいえ、得体のしれない存在である自分を大歓迎とはいかないだろう。

 逆にカノン達が受け入れる気満々な様子なのは少し心配になる。

 

 それに運命陛下とその仲間はGARDENの騎士達には秘した別の目的を持っている。おそらくそのことが懸念点なのだ。

 実際、プレイヤーとしてその秘密が存在していることを知っている。彼の脳内に住みつく彼女のことも。自分の存在からGARDENにそのことがバレてしまったら彼の目的の邪魔となってしまう。

 

「…………」

 

 黙ってこちらを見つめる運命陛下。考え込んでいるのか、頭のなかにいる彼女と相談しているのか……

 

「運命陛下、私は何があろうとあなた(・・・)の味方です」

 

 思いを込めて、跪いたまま手を差し出す。

 

 そのままじっと見つめていると思いを受け取ってくれたのか、差し出した手の甲にそっと手の甲を当ててくれた。

 

 

 

 

 

「え……?」

 

「……っな!」

 

 運命陛下と触れた瞬間、一瞬で周囲の光景が変わっていた。

 辺り一面の真っ白な世界に大量の本棚が浮かんでいる。

 そしてこちらを見ながらわなわなと震えている、ソシャゲの冒頭で話しかけてきそうな謎の美少女。彼女見て思わずその名を零す。

 

「リリィ?」

 

「どうやって我が読者の脳内に入ってきた!」

 

 運命の脳内に住みつき、勝手に本屋を営んでいる少女。運命と共通の目的を持つ、真の仲間とも言えるような存在、リリィだった。

 

 自分の身体が久条運命であることに気がついた時、頭の中で呼びかけまくったのだが反応が無かった。自分の脳内には彼女が存在しないので、自分が運命の偽物だろうと判断し相手が本物だと受け入れたのだ。

 そんなリリィが突然目の前に現れた。いや、自分が現れたのか。

 先ほどの彼女の発言も踏まえると目の前にいるのは本物のリリィで、ここは本物運命の脳内なのだろう。

 

「えーと……」

 

「リリィ、落ち着いて」

 

 理由がわからず答えようのないリリィの問いに戸惑っていると、いつの間にか現れていた本物の運命陛下が彼女を宥めてくれた。

 

「詳細は分からないけど、触れた時にパスでも繋がったんだろう」

 

「だが、我が読者! ここに侵入されては……」

 

「いや、本音で話すには丁度いい。やっぱりリリィのことも知っていたんだね?」

 

 騎士たちの目もないこの場所で話せるのは確かに大きい。この場で何とか説得するしかないだろう。

 

「はい、自分の脳内には居ませんが」

 

「となるとやっぱり、外からの情報で再現された偽物じゃなくて、私の完全なコピーなのかな」

 

「それにしてはおかしすぎるだろう。記憶の再現度が低すぎるし、性格も違う」

 

 運命陛下の推測に、リリィ様が反論をする。彼女の透き通るような美しい瞳がこちらを見据える。

 

「そして何より、運命本人だとしたら何故こうも自分にへりくだれる? ふざけてる状況じゃないことは本人が一番わかっているだろう」

 

 ……自分としては真剣にやっていたつもりなのだが、確かに久条運命がこの行動をしていると考えればふざけていると捉えられても仕方ない。

 

「記憶がおかしいせいか、自分が運命という自覚のほかに運命じゃない感覚もあります。お二人がGARDENと違う目的があることはしっかり覚えてますよ」

 

「じゃあ、その目的は?」

 

「……覚えてません」

 

「ボクの正体は?」

 

「……」

 

「おい! 何も覚えてないじゃないか!」

 

 リリィ様の問いに何も答えられない……その辺りはまだリバxリバでは明かされていない。久条運命は謎多き主人公なのだ。

 

「まぁまぁ、落ち着いて。リリィのこと、私たちに別の目的があることはわかってるんだね?」

 

「はい」

 

「どう考えても目的を探りに来た間諜じゃないか? 我が読者。それに今までのことが本当だとしても役に立つとは思えないぞ……」

 

 神域で何も役に立てなかったことがここに響いてきている。まあ確かにどう貢献するか聞かれたら肉盾になるくらいしか答えられないのだが……

 

「じゃあ最後だ。我が読者……いや、お前の名前はなんだ?」

 

 リリィ様が真剣な表情で質問を投げかけた。運命陛下もこちらをじっと見据えている。真剣な雰囲気も相まってこの回答が人生を左右するという感覚を否応なしに伝えてくる。

 

 久条運命という名はコードネーム。本当の名前は別に存在する。

 

 これにすら答えられなかったら、彼らは自分を久条運命とは認めてはくれないだろう。だが、これも作中で明確には明かされていない。

 

 ……一応心当たりはある。それにかけるしかない!

 

「__」

 

 そっと自分のリバxリバのプレイヤーネームを口にした。

 

「く、余計なことばかり覚えているな……」

 

 リリィ様達の雰囲気が少し緩む。どうやら正解だったのだろう。ほっと一息をつく。

 

 ……「紫亜に踏まれ隊」とか「叢裂をぷみり隊」みたいな名前にしなくてよかった。本当に……

 

 




【GARDEN『ランヴィリズマ』】
 GARDENの騎士達の拠点。13層に分かれた縦長の浮遊大陸。かつては複数のGARDENが存在したらしいが、今はランヴィリズマしか残っていない。文字通りの人類最終拠点。
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