ソシャゲ転生したら主人公の偽物だったので、偽りの久条運命としてGARDENに所属します   作:木津

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GARDEN『ランヴィリズマ』の騎士
第006話 楽園の歓迎


 

 

「ごめんなさい。偽運命くん……いきますよ!」

 

「ちょっと待ってください! カノン様! もっといい方法があると思うんです!」

 

 身の丈ほどの巨大な大剣『聖剣カノン』を構えたカノンにじりじりと距離を詰められていた。華奢な少女の体躯ながらも大きく剣を振りかぶったその姿は、可憐さと勇敢さを感じさせ見惚れそうになる。その振り下ろし先が自分でなければだが……

 

 ここは神域討滅後の魔界、一旦仲間として受け入れられた俺をGARDENへと連れて帰るために、運命陛下たちはGARDENを支配する『楽園聖典』へと連絡した。

 得体の知れない偽物である俺を連れて帰りたいという言葉に、始めは難色を示していた『楽園聖典』ではあるが、運命陛下の類まれなる交渉術によりいくつかの条件を出されたうえで許可をもぎ取った。その条件の一つが――

 

「いくらGARDENへの移動手段を見せないためとはいえ、聖剣で殴って意識を飛ばすというのはかしこい選択肢ではないと思うんです!!」

 

 連れてくる際に、移動手段の一切を見せないことだった。

 

 後ろでは陛下とプロブレムが気絶させた自分を詰める用の段ボールを用意している。あれは恐らくラビリスが使う騎士たちすら脱出不可能な実験用段ボール! 気絶してあれに詰められたが最後、次目覚めるのはドリル完備の実験室だろう。さっきの通信時実験がどうとかの言葉が漏れてたし。

 

(さっき何でもするとかなんとか言ってなかったか? 諦めてその身を差し出したまえよ)

 

 脳内でリリィ様が投降を促してくる。運命陛下と同じ身体の自分が調べられるのはまずいんじゃないかと言ってみたものの、少しくらいなら問題は無い、と取り付く島もなかった。

 

(一億歩譲って実験は受け入れますけど、気絶させるために聖剣フルスイングを受ける必要は無いでしょ! 薬とか)

 

(そんな便利なものは無い。ほら前を見ろ)

 

「え?」

 

「覚悟!!」

 

 ガーンときれいなフルスイングで俺の意識は身体ごと吹っ飛び、世界がぐるりと回転した。

 

 

 

 

 

《第九軌道人類史》

浮遊大陸 GARDEN『ランヴィリズマ』

 

 

「はっ! ここは……」

 

 辺りを見回すと会議室のような部屋だった。窓にはきれいな青空が映っている。そして目の前には幾人かの人物がいる。

 

「お目覚めのようね?」

 

 偉そうな褐色ロリツインテールの少女が話しかけてくる。GARDEN『楽園聖典』の主席にして総司令官のマリアだった。背後には顔が認識できないイヌっぽい生物が彼女を守るように佇んでいる。

 

「……マリア」

 

「あら? 私のことも知っているのね。「さん」をつけなさいよ。久条運命のコピーというのは本当なのかしら。だいぶあやしいけれど。あなたはどう思う、XXX(キス)?」

 

「……」

 

「ほら、XXX(キス)もそう言っているわ」

 

 後ろにいる顔のない生物に同意を求めるも当然返事は無い。にもかかわらずこう言ってくる彼女にはXXX(キス)の声が聞こえていたのであろうか。ちょくちょくこの一連の流れをしているし、もしかしたら彼女の持ちネタなのかもしれない……

 

「まあまあ、そうあやしんでたら可哀そうだよ」

 

 どう返事すればいいか迷っていると、横から優しそうなピンク色の髪をした少女がマリアを宥めてくれた。GARDEN『楽園聖典』の第三席にして、第三騎士団『Maze Lab.(メイズラボ)』のKING 優しいみんなのママ、メイズだった。

 

「それでGARDENに入りたいんだよね?」

 

「はい、そうです」

 

 GARDEN『ランヴィリズマ』に来てすぐに、俺はどうやら『楽園聖典』との面談に臨まされているようだ。さっきから面談ばかりしている気がする……

 

「うん! 人類を守るために戦ってくれるならママは大歓迎♪ マリアはどうなの?」

 

「騎士たちは万年人手不足。それが少しでも解決するなら私も歓迎するわ」

 

 マリアが不敵に笑ってこちらを見る。どうやら二人とも歓迎モードらしい。命乞いするために土下座の準備をしていたのだが、出番は無かったようだ。

 

(おい、油断するなよ。こいつらはどうせ偽物であるお前を通じて我が読者の秘密を探りたいだけだ)

 

(もちろんですよ。リリィ様)

 

 GARDENの皇帝とはいえ、『GARDEN』という組織と運命陛下は利用し、秘密を探り合うような関係。そのトップであるマリアとメイズは頭も切れるし謀略に長けているだろう。運命陣営に属しているつもりの俺としてはある意味命を狙ってくる敵より危険である。だが……

 

(今の私は知略で勝てる気がしないのでフォローお願いします)

 

(……ほんとにしっかりしてくれよ)

 

 リリィ様の呆れような声が脳内に響く。自分より遥かに頭がいい相手に騙し合いなんてできる気がしないのだから仕方ない。

 

「ひとまずGARDENに歓迎するのはいいんだけれど、あなたはなにができるの?」

 

「具体的には不老不死だったりするのかなぁ? そうなら騎士として加入してもらいたいんだけど」

 

 この世界の人達は不死はともかく当たり前のように不老長寿だ。目の前の少女二人もそう。ただ自分が不老不死かなんてのはなった自覚も無いし普通に分からない。傷を負ったのだってさっきの聖剣フルスイングだけだ。

 

「わかんないです」

 

「能力も正体も不明……と。得体の知れない星遺物だったあなたをGARDENで自由にする訳にもいかない。どうせ危険度は調べないといけなかったんだからついでに調べてくれる? メイズ」

 

「うん! まかせて。それじゃあ早速実験室に行こうか。あなたの身体をすこ〜し調べさせてほしいんだ」

 

 この流れは、このまま実験室送りになりそうだ……せっかく回避できたのかと思ったが無理そうだった。信頼を得るためでもあるし、自分のことが何も分からないのは事実。やはり受け入れるしかないのだろう……メイズはものすごくニコニコしている……

 

「はい……」

 

 メイズに促されて部屋を出る。後ろに黙って立っていた運命陛下やカノンたちと目が合った。屠殺場に連れて行かれる子牛を見る目をしていた。

 

 メイズママ(マッドサイエンティスト)に連れられて、自らの足で自身の処刑(じっけん)室まで進む。道中、憧れのGARDENの風景を楽しむ余裕もない。これなら目が覚めた瞬間実験室の方がよかったかもしれない。

 

 

 

「え、ちょっと待って! いきなりドリル!? もうちょっと最初はソフトなヤツからというか…… 待って、ホントに待って…… ぎゃーーー!!!」

 

 




【実験】
 久条運命は皇帝の権限を使って毎日一人実験台として騎士を差し出す。メイズは実験協力のお礼としてアイテムや情報閲覧の権限をくれる。そうした裏取引が行われている。
 これも神々に対抗し、人類を救うためである。実験中悲鳴や明らかに鳴ってはいけない音がしているような気がするが、仕方ない。
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