ソシャゲ転生したら主人公の偽物だったので、偽りの久条運命としてGARDENに所属します 作:木津
「ママ〜〜……」
「よしよ〜し、よく頑張ったね〜。いいこいいこ」
何度目かの実験が終わった俺はメイズママの華奢な体躯に抱き着き、傍目を気にせず泣きついていた。
メイズはそんな自分の頭を優しく撫でてくれる。小さくて柔らかくて、ふわふわしていて安心する。
「このデータは……」
「この数値……つまり──」
周囲ではMaze Lab.の面々や研究者たちが実験が終わったあとの分析等でばたばたしている。それから目をそらすように俺はメイズの胸元に顔をぐりぐりと押しつけた。
メイズは優しくつつみ込んでゆっくりと撫でてくれる。こうして過酷な実験の合間にメイズが甘やかしてくれなかったら、俺の心は既に折れていたかもしれない。まあ、実験を主導しているのも、今優しく撫でてくれている彼女なのだが……
ここ数日でグロ耐性とか痛み耐性とかだいぶ上がった……
これがメイズママの心理掌握術か……好き……
(きみねぇ……完全に籠絡されてるじゃないか)
リリィ様が呆れたように呟く。実験中付きっきりで(脳内から)様子を見てくれていた彼女の存在もありがたかった。実験中現実逃避したいときはずっと話し相手になってくれたのだ。おかげでだいぶ仲良くなれた気がする。
身体はメイズに、精神はリリィに甘える。完璧な布陣だ……
(くだらないことを考えてないで前を見たらどうだ? 次はどうやら性能試験のようだぞ)
……ドリルじゃないならなんでもいいや。とりあえずもう少し撫でられていよう。
「で? ここ数日ずっとあの子を見ていたみたいだけど成果はあったの?」
「はい、これ」
どれどれとマリアはメイズが差し出した書類を見る。
・限りなく不老不死──Maze Lab. に修復できる範囲なら再生可能
・異能──魔剣使用、神域展開可。その他、久条運命とほぼ同種の異能を保持。出力はオリジナルと比べると約80%
・所有物──再現された『魔剣リリーリベルタ』は魔剣としての運用が可能。詳細はオリジナルと同じく未解明
「カタログスペック上は久条運命の劣化コピー……本当なの?」
「うん! ママもびっくりだよ」
「持っていた魔剣すらもコピーされている……もっと変えの利かない貴重なものを持たせてたらそれも増えたのかしら」
「どうだろう? でも、大事なのはあの子の力の方だよ」
現金なことを考えるマリアをメイズはさっと流した。
「魔剣を使えて、神域を展開できるというだけでも替えが利かなかったのに、その他の異能も持ち合わせてるなんて」
「でも、ちょ〜っと使い方が下手みたい。複雑な神域を展開しようとしたら暴走しちゃったから」
マリアはこの前実験室周辺でけたたましいアラートが鳴っていたのを思い出した。
「大丈夫なの?」
「相手の神域を中和するだけなら問題ないよ。自分の神域を作るとなると少し危険かな〜。定着速度が異様に速かったから」
神域の定着が速いとなるとおいそれと魔界には下ろせないだろう。見失った隙に神域を展開されでもしたら対処が難しい。
「当分は目の届くGARDENに居てもらうしか無さそうね。それで、あの子の正体は何だったの?」
「
「おいそれと試すわけにもいかない、か……そして一番の重要事項にして本物との大きな差異」
マリアは書類の強調された一文に目を落とした。
・未来の記憶あり
「未来というよりはここより進んだ平行世界の記憶かなぁ。元の星遺物は運命くんをそのままコピーしたんじゃなくて、平行世界の運命くんを連れてきちゃったのかも?」
「思い出せないことも多いみたいだけど、未来のことを知れるのは大きいわね」
検証は必要だろうが、その記憶が信頼できるなら神々に対して先手を打てる。
「はじめは何を拾ってきたのかと思ったけど、本当に大きな拾い物ね」
「時間はあるし、本質についてもゆっくり見極めていこっか」
星遺物本来の機能はまだ不明。今は久条運命を模しているが、もしコピー対象を変えられるなら──その価値は計り知れない。
「えぇ。降って湧いたGARDENにとって二枚目の
腹の中で何を考えていようが関係ない。その存在がGARDENに利するならせいぜい利用させてもらおう。
「人類の勝利のために!」
にやりと笑うマリアにメイズはにこにこしながら一枚の書類を追加で渡す。
「マリアちゃんも受け入れてくれてよかったよ」
「正式加入書類?……ふ〜ん、いつまでも偽運命じゃかっこつかなかったし悪くないんじゃない?」
「本人は少し安直かな〜って気にしてたよ」
そこには見慣れたものと少しだけ違った名前が記載されていた。
コードネーム