ソシャゲ転生したら主人公の偽物だったので、偽りの久条運命としてGARDENに所属します   作:木津

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第009話 偽皇帝の仕事

 

 

「どうぞ」

 

 書類に向き合う陛下にそっと仕事の成果を渡す。

 

「……ありがとう」

 

 陛下はそう言って、自分が渡したカップに口を付けた。

 

「美味しいよ」

 

「ありがたき幸せ」

 

 朝から手間暇かけて淹れたコーヒーだ。陛下の口に合ったようで何よりだ。

 

(何を言っているんだねキミは……)

 

 リリィ様が脳内で茶々を入れてくるがスルーする。

 

 陛下の部屋に滞在して数日。早々に書類仕事から戦力外通告を受けた自分は立派なお茶汲み係へと昇進を遂げたのだ。

 

 ……言い訳をさせてほしい。

 

 最初は問題なかったのだ。経費の計算とか備品の確認とか、そういった一般的な書類なら問題なく片付けることができた。確証はないが前世?でも普通に仕事をしていたはずだし。

 

 しかしGARDENの皇帝陛下に振られる書類がそんな簡単なものばかりなわけはない。とある神域における文化のレポートだの魔剣のメカニズムに関する所見だの、一般人であった自分にわかるわけがないのである。

 

 そんなわけで戦力外となったあとは、表情のないまま机で仕事をする陛下の身の回りのお世話をする係をしている。

 

 掃除も済ませ手持ち無沙汰になった自分はソファーの隅っこにそっと座った。

 

(おーい、まだソファーやテーブルにゴミが残っているぞー)

 

(リリィ様……騎士の忘れ物をゴミ扱いしないでくださいよ)

 

 リリィ様がここぞとばかりに騎士達が陛下の部屋に忘れていったものを処分させようとしてくるのを拒否する。

 自分が勝手に処分でもしようものなら今後GARDENで安全に過ごせるか怪しくなってしまう。

 

(なに、暇そうなキミに仕事が残っていることを教えてあげただけじゃないか)

 

(それならリリィ様が私に仕事を教えてくれればいいじゃないですか……)

 

 自分が書類仕事を戦力外通告されたとしても、リリィ様の指示通りに動くラジコンになれば陛下の書類仕事を手伝えるのではと提案したのだが……

 

(運命の自業自得だろう)

 

 と手伝ってくれない。

 運命陛下がここまで書類に追われているのは陛下自身が楽園聖典に言って大量に引き受けたかららしい。

 命の監視役として部屋に一緒にいるから、外へ行くような任務は免除で代わりに書類をたくさんやると。

 

 陛下がずっと部屋に籠もっているのは問題なんじゃないかと思っていたが、そのせいであと数日缶詰めになっていても問題ないとのことだ。

 

 普段はそこまで書類仕事ばかりしていない……というか一日頑張ればなんとかなるくらいの量らしい。

 

 陛下は私の書類仕事能力を自身と同等と見積もって引き受けたのだろう。初めて会った神域での無能さを考えるとどうしてそんな期待をされていたのか少し謎だ。

 

 まあいざとなったらリリィ様も手伝ってくれるだろう。なんだかんだリリィ様は陛下には甘い。

 今だって拗ねて力を貸してくれないというよりは、自分の視界を借りて書類仕事をしている陛下を見ていたいのだろう。陛下を視界に入れておくとリリィ様も嬉しそうなのだから。

 

 そうして自分は今日も陛下の姿を見ながら、自分用に淹れたコーヒーに口を付けた。

 

 

 

「かなり馴染んでいるようね」

 

 突然やってきた楽園聖典のマリアが、ソファでのんびりとコーヒーを嗜む私の姿を見て話しかけてくる。

 

「そうですね。よくしてもらってます」

 

 そのままマリアと少し話していると書類仕事が一段落した陛下がやってきた。

 

「マリアが来たということはもう用意できたの?」

 

「えぇ、倉庫の隣室の改装が終わって、命用の部屋が用意できたわ」

 

「私用の部屋ですか?」

 

 突然の話に困惑していると二人が説明してくれた。

 

「あなたは皇帝の影武者としてGARDEN内でもできるだけ存在を隠してもらうことになる。そこでちょうど空いていた倉庫の隣室をあなたの居室として改装したのよ」

 

「命には普段倉庫の管理人でもしてもらおうかなって」

 

 倉庫というと、ゲームでもあった所持アイテムを確認できる倉庫のことだろう。管理人が必要なのか疑問だが、皇帝陛下の影武者がそのへんをふらふらするわけにもいかないし、倉庫の管理人くらいが丁度いいのかも知れない。

 

 自分のためにわざわざ空き部屋を改装してもらったのが申し訳ない気持ちになる。

 

「それじゃあ早速見に行ってみようか」

 

「そうね、行きましょう」

 

「はい!」

 

 陛下とマリアに連れられて数日ぶりに部屋の扉をくぐった。

 

 

 

 浮遊大陸GARDENは全十三層からなる浮遊大陸だ。

 GARDENで倉庫と言えば、第七層および第八層の工業貨物区画にある超巨大倉庫を指すだろう。物流の拠点でありながら、深淵とも言われる広さを持つ。

 

 そんな場所に連れて行かれるのかと思っていたが、案内されたのは陛下の部屋のすぐ隣だった。

 どうやら陛下の私物などを置く個人用の倉庫らしい。広いは広いがそこまでではない。

 

 用意された部屋はシンプルなワンルームという感じだった。入り口はなんと倉庫の中。

 入るのに一旦倉庫を経由しないといけないという面倒くささがあるが秘密基地みたいで楽しい。一応他にドアがあるがそちらは基本閉め切りらしい。

 倉庫内で陛下と入れ替われるようにこういった形状になっているようだ。

 

「狭くて悪いわね」

 

「全然大丈夫です!」

 

 狭いと言っても運命陛下のめちゃくちゃ広い部屋や倉庫と比べてという話で一人で過ごすぶんには問題ない。

 キッチンや風呂・トイレ、クローゼットも付いているので都会のマンションの一室のようだ。

 

「気に入ってくれたならなによりね。家具とか何もないから用意してちょうだい。ある程度は経費で落とすから。今後はこの部屋で寝泊まりして普段は待機しておいて。任務があれば連絡するから」

 

 はい、と携帯端末を渡された。

 

「設定はある程度してあるわ」

 

「了解です。ありがとうございます」

 

 見た目はスマホだが、使い方がよくわからないのであとで陛下に教えてもらおう……

 

「じゃあ私の部屋に戻ってオンラインで家具を見ようか。オッター貿易に頼めば秘密裏に手配してくれるはず」

 

「それでお願いね」

 

「わかりました!」

 

 

 

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