芦花真実コンビからすると何の話もしないで故郷にめちゃくちゃ仲のいい幼馴染置いて上京して従妹と自分たちの友達の世話焼いてた挙句、幼馴染とちょいちょい顔合わせてるのにまともに会話もせず挨拶だけしてたとかいう状態なんですわよね。ちょっと脚色したら女の敵ムーブ一直線。そらギルティでしてよ。
『――――だったら、確かめりゃいいだろうが!』
あの怒鳴り声を、今も覚えてる。赤い髪結い紐で一括りにしていた金髪が、ほとんど引き千切るくらいの勢いで切断された。
地面に叩き付けられた金色。ありったけの怒りを込めたアースアイ。綺麗だなと思っていた全てが一瞬で恐怖に変わる。
呆然としていたその場の全員を置き去りに、彼は校舎へと歩を進めていく。けれど、それ以降その日は姿を見ることはなかった。
何となく気に掛かって、放課後に校舎のあちこちを捜索した。
彼は、屋上へ行く階段に独りで座り込んでいた。
憎しみに淀んだ瞳。バサバサになってしまった金髪。傷だらけで濁った宝石を、それでも大切に抱えたまま。
声を掛けようかとも思ったけど、勇気が出なくて。
『――――ぃよう! 随分荒れとったなぁ君?』
『……誰だよ』
男子生徒に、先を越された。申し訳なさそうに此方を一瞥した後、彼は身軽に階段を昇って行って。
彼にも見覚えがあった。見た目というより、持ち物の色。
男子にしてはパステルカラーのピンクが多くて、「おっ」と思ったんだ。
『いやぁ、ああいうのホンット困るわなぁ? たかが色1つであんなにガミガミ食って掛からんでもええやんな?』
『うっせぇ』
『好きな色馬鹿にされるだけでも悔しいっちゅうんに、まして持って生まれたもんまであんな言わんでもええと思うんよ、俺』
あぁ、それなら仕方ない。脳裏を過った思考はそれだった。
同情心と言い切るのは簡単だけど、その色で彼の行動を染めてしまったら、何かがだめな気がした。
「――――そ、ッらァ!」
巨大で無骨なハンマーが振るわれる。黒鉄色でいかにも男の子って感じのフォルムに、似つかわしくないピンク色のリボンが持ち手に小さく巻かれている。
見た目だけなら家族か誰かに貰ったものを着けているようにも見えるだろう。隠し方が随分と上手くて、なんだか寂しくなる。
甚平風の衣装は藍色で、アクセサリーのサングラスは暗い紫。ヤクザみたいな風貌の中、その一点だけが軌跡みたいに記憶に残る。
本当はもっといろんなものに使いたかったんじゃないだろうか。
隠したくて、でも、隠しきってしまったら自分を押し潰してしまう。だからこそのせめてもの抵抗、そんな風に見えて。
「ヘルプ、行かなくていいの?」
「あいつの問題やからなぁ」
わざとこっちにも聞こえるように話を音声に載せていたから、さっきの会話も聞こえてる。
約束したわけじゃないだろうけれど、勝ったら本当に俵を連れ帰るという意志を感じた。試合全体の勝ち負けじゃなくて、あの刃を受け入れてしまえば問答無用で連れていく。表明する意志は、まさしく神様みたいで。
それと同時に、いじらしい女の子そのものだった言動が脳裏を過る。お互いの想いの確認もなしに別れるとか、流石に有罪でしょ。だから私たちはあの子の肩を持った。
二人のうちどちらかがサポートに入れば、間違いなく向こうの拮抗は崩れる。仮に試合に負けたとしてもあの子――――タケちゃんさえ倒してしまえば約束はご破算にできるだろうに、彼らは律儀に自分の役目を全うし続ける。
「居なくなったら嫌じゃないの? 友達なんでしょ」
「
お得意の蹴りをビットで防ぎつつ、追撃のハンマーを警戒して距離を取る。久遠は真実が何とか抑えてくれているから、道坂相手なら手数で此方が押せている。
こっちの残機は私も真実もあと1。道坂と久遠の残機も1になった。1対2なら押せるかと思って攻め立てれば、器用に防御に徹しつつ櫓の占拠を妨害される。私達もどうにか粘って邪魔できたけど、実力差でじり貧になりつつある。
タケちゃんと俵は一度も落ちてていないけれど、現在位置的に負ければそのまま櫓を取られるだろう。
彼らとタケちゃんの指導のお陰で私達も強くなったと思う。
けれど、強さじゃ助けられないものは、確かにある。
「あいつが生きてさえいれば、俺らはそれでええんや」
その言葉は、あんまりにも否定しようがなかった。悲しくなるくらい頷くしかなくて。
「ずるいじゃん、それは」
「こうとしか言いようが無いんよ」
お互いに、苦笑するしかないまま激突した。
◇
『そういやお前弁当って自分で作ってんのか?』
『独り暮らしなんだから当たり前だろ』
梅干しのおにぎりを食べながら、そう言っていたのを覚えている。
彼がおにぎり以外食べてるところを見た事無いな、とふと思った。
『やっぱ親直伝か?』
『……どーだろうな。母さん不器用だったから』
包丁使う度にどこかしら切ってたと続いた言葉。懐かしそうに細められた目。お母さんの事が大好きなのはすぐに分かった。
『一目見りゃすぐ分かんぞ、野菜の切り方とかめちゃくちゃでガッタガタでよ、唐揚げとかたまに生焼けだったし……ぶっちゃけると自分で作った方が早かった』
『めっちゃボロボロに言うじゃんか』
お母さんの料理が見ていられなくて、自分で出来る事を探すようになったのかな、なんて。
勝手に聞き耳立てて、勝手に納得したことは、次の瞬間ひっくり返った。
『……でも、母さんが作ってくれたって思うと、何の文句も出なかったんだよな』
『……マザコン』
『るっせ』
誰かが作ってくれたご飯って、それだけで十分美味しいんだよね。
「ふ、ぅ――――!」
「やぁ――――ッ!」
半分見えないくらいの速さで振り回される双剣を、当たらないギリギリの距離を保ちながら迎撃する。秘密の特訓の成果でもあるけど、相手が基本的に道坂君と久遠君で固定だったから癖とか何となーく分かるんだよね。人読み、って言うんだっけ?
私の彼氏も一緒に鍛えてもらったけれど、攻撃がもの凄い的確で参考になるって目をきらきらさせながら言ってたなぁ。ちょっとジェラシー。
「
「何度か。でも基本昼飯のレパートリーがおにぎり固定なんだよなアイツ」
当初の頃のですます口調はもう完全に捨てていた。なんとなく友達として溝がなくなったような気がして嬉しい。
それはそれとして、俵君はお弁当となると何でもとりあえず白米の内側に詰め込むらしい。おすすめはポテトサラダだとか。ポテトサラダのおにぎり……??
「超美味しそう」
「超美味かった」
マヨネーズと胡椒が効いてた、と。何それ超食べたい。
逸れた思考を戻すように激突する槍と双剣。手加減なんてしてない本気の連撃を、速度が乗り切る前に妨害して何とか抑え込む。
「でも、帰っちゃったらもう食べれなくなっちゃうね」
「まあな」
「いいの?」
「別に」
さらりと流すような返答は、一見すれば薄情。
けれど、鷹みたいな鋭い吊り目が、しっかり迷って考えた末の本音だって示してくる。
私達があの子の側に付いたように、久遠君も自分の考えで俵君の側に付いている。その上で、もしも俵君があの約束を受け入れるのなら仕方が無いと覚悟してるんだ。
「おふくろの味ってやつが恋しくなるなんて、誰にでもある事だろ?」
「……そっか」
それなら、しょうがないよね。
寂しさを握力に変えながら、大上段から槍を振り下ろした。
◇
初めて彼女を見た日を、嫌になるほど覚えている。
白い髪、白い肌、白い服に、金色の瞳。この世のものとは思えなくて、神様だと一目で信じた。
道理も知らないクソガキは、相手が迷惑がるかもなんて考えもしなくて。
他に子供なんていない山奥の集落だったから、同年代と一緒に遊べるというだけで嬉しくて。
山の中、綺麗な川、田んぼのあぜ道、祠みたいな小さな境内。色んな所に連れて行ったし、連れて行かれた。
あやとりとか、おはじきとか、或いは人形の服を縫ったりだとか。竹細工も教えてもらったんだったな。
タケトリさまが持って来ていたモノを一緒にやる日々で、およそ現代の子供とは思えないアナログで女子っぽい遊びしかしてこなかったけれど、どうにも楽しかった。
一言も発さない。ぴくりとも表情を動かさない。だというのに、どうしてか何を考えているのかはすぐ分かる。
成長するにつれて、それがおかしいという事には自然と気付いた。やはりこれも何となくで、なにかしらきっかけやロジックがあったような覚えがないので説明に困る。
思い出すのも恥ずかしい母との喧嘩の後、彼女に何も言わないまま家を出た。
親父の車に乗せてもらって、自分でどうにかこうにか調べて契約した安アパートへ。
初めての都会には、あの集落には無かったものだらけで。好奇心より警戒心が勝って、スマホが電池切れになるまであらゆるものを調べ倒した。
アルバイト探しは難航した。
母譲りの金色の髪に
学校に行っても、奇異の視線の嵐だった。
風紀検査では髪を染めるな、カラーコンタクトは禁止だとさんざん言われて、言われるたびにみっともないくらいキレ倒した。道坂と久遠に出会えてなかったら、今以上に荒れた学校生活を送っていたかもしれない。
――――金属の擦過音と火花で意識が目の前へと戻って来る。
眼前で刃を振るってくる彼女は微笑みを崩さない。今日に至るまで一度たりとも見せた事のない表情で、一度も披露しなかった流麗な剣術で攻め立ててくる。
「今の生活、辛くない?」
「うるっせぇ!」
「意地の張り通し。優しいから知り合った女の子みんな放っておけないんじゃない? 顔見知り程度だからって我慢してたけど、あの子……いろPさんは流石に駄目だったかな。君のお母さんを思い出して、居てもたってもいられなかったんだよね」
今に至るまでの全てを見てきたかのように、穏やかに語り掛ける声が雑音のように集中を蝕む。
嫉妬も恨みも無い、まるで思い出話をするかのような穏やかさだからこそ拒めない。悪意が一欠片たりとも存在していないのだ。
「義務感で誰かと一緒に暮らすってすごく大変だよ。君のお父さんと同じ。居ても立ってもいられなくて、無理矢理にでもお母さんの手を引いた、あの人と」
「ッ、ちィ……!」
諭すような言葉が刺してくる。
先ほどから視界がおかしい。過集中で酸欠にでもなったみたいで、刃ばかり認識している。
「あの人は柔軟な人だったから耐えられたけど。君に出来る? いつか帰っちゃう女の子と、いつまた無茶をし始めるか分からない女の子を見守り続けるなんてこと」
「……」
「君が背負わなくてもいいんだよ。君じゃなくたって、誰かが支えてあげられるんだから」
赤い糸を避けるように刃が進んでくる。世界中に張り巡らされたそれの隙間を縫うように、白銀が飛来する。
集中が過ぎて遂に幻覚まで見え始めたらしい。息つく暇もない剣戟と、心を揺さぶる本音の言葉が精神を限界まで詰めてくる。
それでも負けじと刃を振るう。真似るように赤い糸を避けて刃を通せば、驚いたように防御した。
何度目かも分からない激突。回避でも受け流しでもなく、彼女は今初めて明確に防御した。回避が間に合わなかったのだ。
いける、今の感覚を逃すな。そう叫ぶ本能に逆らわず刃を振るう。二度、三度、四度と続いて、五度目で武器同士の衝突を利用して距離を取られた。
「これだけは答えて欲しいな。君は、
在りし日の姿を振り払うような、年長者らしい真面目で硬い声の色。
物質論と精神論。半端な答えは纏めて切り捨てるとばかりのその姿。
そんなもの、最初から決まっていた。
「最初から、“やる”ありきだったよ、俺は」
「……そっか」
寂しそうに笑んで、白刃を振りかざした。
◇
一進一退の攻防は、牛鬼の撃退で傾き始めた。櫓を占拠され、俵側の天守閣に大将落としが出現してしまう。
このまま芦花・真実が彼らを倒せれば、試合の趨勢は決定されるだろう。
櫓の占拠と相手の妨害という二つの目標が強制的に一つに絞られ、手を選ぶ余裕はないとばかりに道坂が動いた。
「――――ッッだ、らァァァッ!!!」
道坂がハンマーの大技で地形を破壊する。
一時的に視界が遮られ、芦花は移動を余儀なくされる。
(綾紬さんはサポート側、どっちかと言えば前衛なのは諌山さん。残しとくと面倒なのは、向こう――――!)
そのまま道坂はハンマーのジェットで加速。殆どコントロールを放棄した暴走と言っていい挙動で、一直線に真実の方へと吹き飛んだ。
「んな!?」
「
勢い任せに衝突し、真実ごと交通事故を彷彿とさせる勢いで転がる道坂。
そのまま距離を取られる前にHPを削り切る――――
「させるか!」
「ッ、くそ……!」
――――前に、芦花が飛ばした爪型ビットに進路を阻まれる。
既に起動していたジェットを方向転換に使用し、道坂は芦花へとハンマーを叩き込んだ。
直撃した高威力の一手に成す術なくエフェクトを散らし散っていく芦花。
続いてもう一人、と砂埃の向こうへ視線を寄越した、その瞬間。
「芦花ナイスっ!」
「――――は、やってもうた。欲かいたわ」
投擲された槍が、真っ直ぐに胸へと吸い込まれた。
全損するHP、やり切った顔をした真実。
だが、それを久遠は見逃さない。無手という絶好の機会を伺っていた鷹の目が強襲する。
土煙に隠れ、真実の行動を敢えて見逃し、確実に一撃で獲れる瞬間を狙い過たずに討つ。
「よくやったァ!!」
「ま、そうなるよねぇ……」
『凄まじい相討ち! 一瞬の判断が勝敗を分けたぁ!!』
『4人とも判断が素晴らしかったですね、これは』
次いで散っていく真実。一人残された久遠に、まだアバターが散り切っていない道坂が声を掛ける。
「久遠、後はお前の自由や」
試合中、
友人が居なくなるかもしれないということに、久遠が分かりづらいながらも動揺していることを察していた。
だからこそ、昔馴染みの選択に引きずられなくてもいいと背中を押す。
「……悪ぃ、道坂」
「お前昔ッからそういうとこ素直やないねんな」
仕方が無いと笑う道坂に、久遠はシニカルに笑い返す。
いい友人を持った。その想いを誇りと抱いて、大鷹のライドに飛び乗る。
途中でライドから飛び降り、ミニオンを蹴散らしながら一直線にトップレーンへ疾走。
俵と少女の剣戟が目に入った瞬間、超加速ウルトを温存した自身の判断を最善手と称えた。
視認されるかされないかのギリギリでウルトを起動。帝アキラにすら迫りうる最高速の連撃で牛鬼を突破し、そのまま櫓へ――――
「させないよ――――ッ!?」
「だと思った!!」
――――と、見せかけた。
まだ僅かに残っていた超加速でタケへと容赦なく刺突を叩き込み、そのままショットガンを連射。しかし発砲し切るよりも刃を振るう方が早かったことで、互いに胴体を両断され相打ちの形で二人は同時に散る。
「行け、俵!」
「――――ありがとな」
目前だった櫓を俵が占拠し、そのままライドに乗って天守閣へと駆けていく。
残るはタケと俵のみ、これ以上決着を先延ばしにする気は両者共に毛頭無かった。
『ここでタケが初めての乙! そして……これは!?』
『下手に移動せず、わらDを直接迎え撃つつもりのようですね』
かくして辿り着いた天守閣。
ミニオンからの攻撃を受けて地上へと降りた俵の視界に映るのは天守閣の前に立ち尽くす少女。
もはやここまで来れば問答無用。
意思の確認は既に済んでいる。
だから、あとは意地の張り合いに他ならず。
「――――ねえ、最後に言葉遊び、しよっか」
風の音だけが抜ける木造の舞台で、タケは仮面を捨てる。
倣うように、俵もまた笠と狼面を脱ぎ捨てた。
『おぉっとこれは!?』
『いろPに続きわらDまで脱いだー!?』
「ふふ、リアルにそっくりの顔。さてはあんまり弄ってない?」
「そっちこそリアルそのまんまじゃねぇか。こっちに倣うように背丈伸びやがって」
双子のようにシンクロした苦笑。
溜め息を一つ、少女は俵の知る無表情のタケトリさまへと戻り、言葉を紡ぐ。
「今から言う言葉の中にある嘘を探してみて」
数は一つ、と続く。
嘘に隠された思いが、ここに拡げられる。
「あなたの事、最初は嫌いだったよ。いつも無理矢理連れ回すし、かと思えば都合のいい時しか来てくれないし。いっつも私と遊んでばっかりで、私が居なくなったらどうするつもりだったんだろうってずっと思ってた」
「……」
「集落を離れていったとき、ちょっとだけ安心したんだ。自分の足で歩ける子だったんだ、って」
微笑んで、泣きそうな顔をして。
それは、ツクヨミを創ったどこかの誰かにそっくりだった。
「でもね。だからこそ、嫌。私が居ない世界で生きていくあなたなんて、見たくない」
構えられる大太刀。再び鞘を捨て、今度は大上段に構えた。
その姿は、まるで何かを天に祈るようで。
「だから――――お願い。行かないで」
――――これが最後。
抜刀の姿勢で構えた俵の視界に、再び映り込む赤い糸。「タケトリさま」が今の今まで刃を当てないよう気遣い続けていたもの。
そして、今、それらを全て叩き切らんと構えている。唐竹割りに振り下ろされる刃は、糸を避けて俵を斬ることなど到底不可能だろう。
沈黙が戦場を満たす。
1秒、2秒、3秒――――計ったように正確に、互いが互いへと飛び掛かる。
「行かねぇよ」
鞘走る白刃は、
一切の抵抗なく叩き折られる縁切りの太刀。
無手となった少女に一瞥もくれず、即座に納刀。バットの要領でフルスイングし大将落としを天守閣へと叩き込んだ。
「笑いたきゃ笑えよ。キレたきゃキレてろよ。俺は縁切りの神様になんて祈らねぇ、祈ってなんてやらねぇ。小指叩き切られようが針千本飲まされようが、雁字搦めになったもん全部抱えて行く」
決着を示すように爆発する天守閣。
その轟音と光を背景に、在りし日の少年は向き直る。
「面倒臭ぇモン全部切り捨ててはい終わりなんて、そんな
生まれた瞬間バッドエンド。レールの上を無理矢理走らされ、いつか足元の爆弾が炸裂する。そうであるのなら――――
「吹っ飛ばされてレール外れて転げ回って、それでも辿り着いたその先がハッピーエンド……その方がいいだろ」
「……まったく、誰に入れ知恵されたんだか」
何時だってキラキラ輝いていたかぐや姫が教えてくれたこと。少年はそれを肯定した。
そんな星月夜の瞳に、少女は仕方ないなと肩を竦めることしか出来なくて。
「いいよ、私の負け」
エキシビションマッチ、これにて決着。
◇
「た゛わ゛ら゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛~~~~!!!!」
「どわっぐえ!?」
ログアウトするや否やかぐやに抱き付かれて面白い声を出して転げる俵。あーあー、涙と鼻水でシャツがべっちょべちょ。でもまあ、甘んじて受け入れてあげなさい。あんだけ啖呵切ったんだから。
「かぐやずっどいっじょにいるぅ~~うぅぅぅうぅ」
「いや帰りなさいよ」
お迎えどうなったんだ本当に。予兆すら一向に無いじゃないの。
そんなことはともかく。一波乱あった――――期間全部通したら二十も三十も波乱あった気がするけど――――ヤチヨカップも優勝という形で無事終幕、お兄ちゃんも力業で納得させた。ひとまず上出来だったんじゃなかろうか。
「と、いうことで。用意したよ、保証人」
「……マジでやってのける奴があるかよ」
「無理難題でも出したつもりだった?」
「家族とすこぶる折り合い悪かっただろ、お前。ついでに言やぁ俺男なんだけど」
「かぐやの従兄で心配性って言ったら一発」
「マジで言ってんのかお前の兄ちゃん」
否定はできない。でもまあ、いい機会だし。
かぐやを喜ばせてあげたいっていう超極秘の裏もあることだし?
「お互いこっちの方が良いでしょ。それともまだ心配する時間長引かせる?」
「自分を人質にすんな欠食児童。つーかお前そんな性格だっけ?」
「……ってことは、遂に……?」
かぐやがきらきらした目でこっちを見てくる。期待の大爆発が隠せない顔しちゃってまぁ。動画でも回せばよかったかなと思う辺り、私も毒されたかな。
片手を腰に当て、もう片方で親指を立てて玄関の扉を指す。
「やるよ、引っ越し」
「~~~~っ、やった、やった、やった~!!!」
※俵はボイスチャットに不慣れで広域用から切り替えておらず、タケトリさまはそんなもん知らんとばかりに喋ってます。つまり一連の流れ全部垂れ流されました。良かったな俵、君の異名は多分女の敵だ。
っぱCV前田さんと言えば神様に黙って見とけよって指突き付けるムーヴだよなと思いながら構想していた今話。ついにここまで来たなぁという想いですわね。