ドラクエ3 〜女子だけのパーティで魔王に挑んでみた〜   作:ミサ2

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【勇者】マナ
【盗賊】カミラ
【商人】ダリア
【武闘家】メイリン


【第12話】武闘家は四人に戦術を与える

 アリアハン城内で、四人はいくつかの話を聞いた。

 

 宮廷学者レイラニによると、ナジミの塔へは、アリアハン西にある『岬の洞窟』から渡れるらしい。海岸線を歩けば、一日とかからない距離だという。

 だが、カミラの耳に最後まで残ったのは、別の話だった。

 

 盗賊の鍵。

 

 あらゆる扉を開くと言われるその鍵は、バコタという盗賊が作ったものらしい。そして、その当人は今もアリアハンの地下牢へ繋がれているという。

 同業の末路を見せつけられたようで、カミラは思わずマナを見た。だがマナは特に驚いた様子もなく、静かに頷いているだけだった。

 

 さらに、盗賊の鍵を手に入れた後には、「魔法の玉」というものを探す必要があるらしい。

 その玉を使えば、旅の扉を通って世界へ出られる。

 かのオルテガもまた、その扉を使ってアリアハンを発ったのだという。

 その名が出た時、マナの横顔が、ほんの少しだけ変わった。

 

 城を出ると、午後の日差しが四人を迎えた。

 父が使ったという旅の扉。その話を聞いた時のマナの横顔が、カミラの頭に残っていた。何も言わなかった。けれど、いつものんきな顔ではなかった。あの時、何を思っていたのか。カミラには、まだわからなかった。

 

 城下町を歩いている最中、メイリンが不意に足を止めた。

「ちょっと。次にモンスターと戦う前に、決めておきたいことがあるんだけど、いいかしら?」

 マナも足を止め、不思議そうに首を傾げる。

「うん。どんなこと?」

 カミラも少し意外だった。メイリンは、ここまであまり自分から多くを語る娘ではなかったからだ。

 メイリンは引き締まった表情で、三人の顔を順番に見据えた。

「四人のフォーメーションのことよ」

 フォーメーション……。

 カミラは聞き慣れないその言葉を、頭の中で繰り返した。

「見たところ、この中で速く動けるのは、カミラと私よね?」

「そうね」

 マナが同意するように頷く。メイリンは歩きながら、そのまま続けた。

「だから、モンスターが現れた時、まずは私が初手の一撃を加える。その一撃を入れている間に、マナとダリアは攻撃の用意をして。私の攻撃で敵がひるんだところを、二人で左右から叩くの」

「なるほどね」

 マナが感心したように声を漏らし、ダリアもまた、黙って頷いた。

 

 そこでカミラは、徐々にメイリンの言うことが分かってきた。

 これまで自分たちは、三人で戦う形など一度も決めていなかった。マナが前へ出る。カミラが隙を探す。ダリアがその場で判断する。昨日までは、それでどうにかしようとしていた。

 だがメイリンは違う。

 加わったばかりの彼女は、もう四人の動きを一つの流れとして考えていた。

 

「……じゃあ、私は何をしたらいいの?」

 カミラが問いを差し挟んだ。前衛で暴れるわけでもなく、重い武器を振るうわけでもない自分に、メイリンは何を期待しているのか。

 メイリンはまっすぐにカミラを見た。

「カミラは、二人の攻撃をよく見ていて。仕留め損ねたところを、間髪入れずに叩くの。目が利き、動きの速いカミラだからこそできる役目よ」

 カミラは一瞬、言葉を失った。

 仕留め損ねた隙を叩く。それは、盗賊として長年泥水の中を這いずりながら培ってきた、他人の弱点を見抜く目そのものだ。メイリンは、カミラの戦う姿を一度も見たことがないのに、その適性を的確に突いてみせた。

「……わかったわ」

 

「ただし」

 メイリンが言葉を継ぎ、四人の歩調が自然と緩んだ。

「これはモンスターが一匹で現れた時の話ね。もし二匹、三匹と同時に現れたなら、このフォーメーションは通用しない。その時は、臨機応変に動くしかない」

 メイリンの視線が、再び三人を見回す。その目は、甘い返事を許すものではなかった。

「私が一番強そうな敵をまず叩く。残りの敵については、各々の瞬時の判断に任せるわ。……できそう?」

 マナが力強く頷き、ダリアもまた、覚悟を決めたように無言で首を縦に振った。

 カミラは、わずかな沈黙のあとで口を開いた。

「臨機応変なら、得意よ」

 盗賊として生きてきた年月は、予定通りにいかないことなら、いくらでもあった。

 完璧だと思った計画が崩れ、退路を断たれたその場で、次の一手を探り当てる。そうやってカミラは路地裏で生き延びてきた。

 メイリンはカミラの答えを聞くと、短く、小さく頷いた。

 余計な称賛も、確認の言葉もない。だが、その眼差しは、先ほどまでカミラを見定めていたものとは、少し違っていた。

「それで行きましょ」

 カミラは腰のナイフの重さをベルトに感じながら、どこか誇らしい気分で足を踏み出せた。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 話がまとまり、城下の門へ向かおうとしていた三人にメイリンが声をかけた。

「待って。今日はまだ、出発しないほうがいい」

「えっ、なんで?」

 先に門の方へ向きかけていたマナが振り返る。ダリアも荷物の紐を直しかけた手を止めた。メイリンの視線は、カミラとダリアの足元や肩に、鋭く注がれていた。

「カミラ、それにダリア。あなたたち、昨日の傷がまだ癒えきっていないでしょう。その状態で、初めての洞窟や塔に入るのは、無茶というもの」

 指摘され、カミラは思わず肩をすくめた。昨日の乱戦で負った切り傷が、歩くたびにじわりと疼く。隠していたつもりだったが、武闘家の目は誤魔化せなかったらしい。

「それにもう、昼を過ぎているわ。今から出れば、ナジミの塔に着く頃には日が落ちる。不慣れな場所での夜戦は、避けたほうがいいと思う」

 カミラは何も言い返せなかった。メイリンは少しだけ表情を和らげ、続ける。

「二人なら、今日のうちに薬草を使い、一晩しっかり休めば明日には全快しているはず。万全を期すべきだわ」

「うん、わかった。メイリンがそう言うなら、今日は休もう」

 マナは素直に頷き、肩をポンと叩いた。

「じゃあ、メイリン。今夜はうちに泊まったら? 部屋なら余ってるし」

「え……オルテガ様のお宅に…っ!?」

「うん」

「それは……」

珍しく、メイリンが言葉を探すように視線を伏せる。瞳がわずかに左右に揺れた。

「さすがに、畏れ多いわ」

「そんな大した家じゃないって」

マナは気軽に笑い、メイリンの背を押す。

「……なら、お言葉に甘えます……」

 

 そんな二人を見送って、ダリアがくすりと笑い、カミラに向き直った。

「じゃあカミラ、あなたは私の宿に来ない? 幸い、隣の部屋は空いているはずよ。薬草のちゃんとした使い方ぐらい教えてあげるわ」

「……薬草の使い方? 塗って終わりじゃないの?」

「ふふ、そんな雑な使い方じゃ、もったいないって。さあ、行きましょう。明日は長丁場になるんだから」

カミラは小さく息を吐き、

「……世話になるわ」

とだけ答えた。

 

 

 傾きだした太陽が、四人それぞれの影を石畳に長く落としていた。

 

 今日加わったばかりのメイリンが、戦い方を示し、休むことを促した。

 四人の旅は、その日から少しだけ形を持ち始めた。

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