ドラクエ3 〜女子だけのパーティで魔王に挑んでみた〜   作:ミサ2

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【勇者】マナ
【盗賊】カミラ
【商人】ダリア
【武闘家】メイリン


【第15話】生きて抜けろ

「左前方――いっかくうさぎ!」

 カミラが叫ぶと同時に、白い影が闇を裂いた。

草原で見れば愛嬌すら感じるその姿も、この閉鎖空間では別物だ。額の一角がわずかな光を反射し、暗闇の中で冷たく閃く。

「――っ!」

 メイリンの拳が一匹の腹を撃ち抜く。だが後続の二匹が壁を蹴り、頭上から飛びかかった。

「マナ、低く!」

 反射的にマナが身を沈める。その頭上を、カミラの短剣が一直線に走った。鈍い手応え。いっかくうさぎが岩壁へ叩きつけられる。

「ダリア、右!」

「ああもう!狭いのよ、ここは!」

 ダリアの太いナイフが岩壁をかすめ、火花を散らした。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 暗闇では距離感が狂う。オオカラスの羽音の反響は方向感覚を乱し、オオアリクイの長い舌は闇のどこから伸びてくるかわからない。

 草原とは別の戦場だった。

 

(……落ち着け)

 

 メイリンが敵を捉え、カミラが地形を見る。

 その連携だけが、辛うじて四人を崩壊から繋ぎ止めていた。

 

 神経を削る戦闘を幾度も繰り返した末――

 

「……あ」

 不意にマナが顔を上げた。

 闇の奥に、針の先ほどの白い光が見える。

 

 出口だ。

 

 針の先ほどの光が、一歩進むごとに少しずつ輪郭を広げていく。

「……やっと、出られる…」

 マナが安堵の息を漏らしたが、それはカミラとて同じ気持ちだ。

 出口が近づくにつれ、湿った土の匂いに混じって、草いきれを含んだ風が流れ込んでくる。カミラは短剣を握ったまま、慎重に光へ近づいた。

 

 洞窟を抜けた瞬間、視界が白く弾けた。

「っ……」

 暗闇に慣れきった目に、午後の日差しは鋭すぎた。カミラは思わず腕で顔を覆う。細めた瞼の裏で、光の残像がちかちかと揺れた。

「ふぅ……やっぱり、お天道様の下の方が落ち着くわ」

 隣でダリアが大きく息を吐き、太いナイフを肩へ担ぎ直した。

 やがて視界が落ち着き、島の全景が姿を現す。

 背後には、今しがた抜けてきた洞窟の黒い口。そしてその先――午後の光を浴びながら、ナジミの塔が天を突くようにそびえ立っていた。

 

「メイリン、怪我は?」

 振り返ると、メイリンは乱れた髪をかき上げながら静かに頷いた。だが、その拳の指関節からは血が滲んでいる。

 マナもまた、左肩を押さえて顔をしかめていた。裂けた布地の下で、赤黒い血がじわりと滲んでいる。

「マナ、見せて」

 駆け寄ろうとしたカミラ自身も、脇腹に走った痛みに思わず息を止めた。暗闇で無理な姿勢のまま短剣を振るった代償だった。

「……ったく、散々な目にあわされたわね」

 ダリアが荒く息を吐く。太ももには、オオカラスに裂かれた傷が痛々しく残っていた。

 無傷で抜けられるほど、この洞窟は甘くなかった。

 

 カミラは塔を見上げた。

 湿った闇を抜けたばかりだというのに、さらなる試練が実感された。

 

 

 日没までは、まだいくらか時間があった。

 岬の洞窟での戦いは、四人の体力を確実に削っていた。だが、薬草はまだ残っている。

 ここでキメラの翼を使えば、一瞬でアリアハン城下へ戻れる。柔らかなベッドで眠り、明日の朝に改めて挑むこともできる。

 だが――せっかくあの洞窟を抜けてきたのだ。

 いまさら振り出しへ戻るような真似はしたくなかった。

「ここで少し休んだあと、塔の中を見てみましょう」

 仲間を見回しながら、マナが静かに言った。

「いざとなったら撤退する。でも、何も見ないまま帰るのは嫌だから」

 誰も反対しなかった。

 四人は薬草を分け合い、それぞれの傷へ貼り付ける。青臭い匂いが風に混じった。

 休息は短く済ませた。日が落ちれば、ここもまた洞窟と同じ闇になる。

 

「行こう。四階建て……ってところかしら」

 マナが長剣を握り直し、先頭へ立つ。

 重厚な門を押し開けると、塔の内部は昼間だというのに薄暗かった。通路は複雑に枝分かれし、ところどころに固く閉ざされた扉が並んでいる。

 マナたちは一つずつ慎重に確認しながら進んだ。

 

 やがて、ある部屋の隅で地下へ続く石階段を見つける。一段降りるごとに、空気が変わっていった。

 塔特有の冷えた石の匂いに混じり、どこか人の生活を思わせる暖かな匂いが漂ってくる。

 最下段へ足をつけた瞬間だった。

 

「お! 久しぶりにお客さんだね」

 陽気な声が響く。

 カミラは反射的に短剣へ手を掛けた。だが、そこにいたのは魔物ではなかった。

 使い古された木製カウンター。壁に吊られた古びたランプ。そして、妙に人懐こい笑みを浮かべた男。

 

「旅人の宿屋へようこそ。一晩、お泊まりになりますか?」

 

(……は?)

 

 カミラの脳内で、警戒心が一気に跳ね上がる。

 こんな塔の地下に宿屋。

 どう考えても怪しい。

 旅人を油断させる魔物の罠か。それとも幻覚か。

 だが一方で、カウンター奥に見える簡素な寝床と、洗いざらしのシーツの匂いが、疲れ切った身体には致命的なほど魅力的だった。

 もし本物なら――これ以上ありがたい場所はない。

 カミラは男から視線を外さぬまま、背後の仲間たちの気配を探った。

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