ドラクエ3 〜女子だけのパーティで魔王に挑んでみた〜   作:ミサ2

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【勇者】マナ
【盗賊】カミラ
【商人】ダリア
【武闘家】メイリン


【第22話】トゲの鞭と新たな旅へ

 ダリアが歩きながら、ふと思い出したようにマナへ視線を向けた。

「マナ、そもそもあのメダルおじさんとは、どういう知り合いなの?」

「うん。旅立つ前にね、このアリアハンをいろいろ歩いて調べてるうちに、そういうおじさんがいるって知ったの」

 マナはこともなげに答える。

 その返事に、ダリアは意外そうに眉を上げた。

「よく見つけたものねぇ。あんな住宅街の奥の一軒家なんて、普通に暮らしてたら気づかないわよ」

「うん。ちょうどメイリンのことも知った頃かも」

 名前を呼ばれたメイリンが、おや、という顔で横から覗き込んできた。

「そういえば、私のこともどうやって知ったんだっけ? 最初に声かけられた時、びっくりしたのよね」

「あの辺うろうろ歩いてたら、メイリンのパパの道場に行き着いたの」

 マナはあっさり言って笑う。

 そのやり取りを聞きながら、カミラは内心で静かに舌を巻いていた。

 メイリンの道場を探し当てたのもそうだし、ナジミの塔や『とうぞくのかぎ』についても、マナは最初から妙に詳しかった。

 自分が盗賊だと見抜いていたことまで思い出し、カミラは改めて小さく息を吐く。

 

 今回の旅立ちのために、マナはいったいどれほど下調べをしていたのだろう。

 それなのに、いざとなれば地下道を前にして、あっさり「やめとく」と言える。

 無理に進まず、引く時は引く。

 

(……意外と、無鉄砲でもないのね)

 いつも「行ってみなきゃわかんない」と笑って真っ直ぐに進むから、もっと危なっかしい奴だと思っていた。

 確かに危うさはある。

 けれど、それは考えなしだからではないのだ。調べて、備えて、それでもなお、自分で選んで前へ進んでいる。少なくとも、カミラには、そう見えてきた。

 

 カミラは前を歩くマナの背中を見つめた。

「……マナって、本当に不思議な奴」

 ぽつりと漏らすと、マナが振り返る。

「え、なんて?」

 きょとんとした顔だった。

 カミラは思わず吹き出しそうになる。

「……なんでもないわよ」

 そう返しながら、カミラは小さく肩をすくめた。

 

 本当に何も考えていないのか。

 それとも、全部考えた上で、ああして笑っているのか。

 未だによく分からない。

 

ーーーーー

 

 「ねえ、カミラ」

 メイリンが歩く速度を少し緩め、カミラの腰の鞭へ視線を向けた。

「なに?」

「そのトゲの鞭なんだけどね。ちょっと試してみたいの」

「試す?」

 メイリンは街道脇の切り株を指差した。

「あれ、打ってみてくれない?」

「……まぁそうね、試してみようか」

 カミラは腰から革製の鞭を外した。柄を握り直し、切り株へ向けて腕を振る。

 軽く打ったつもりだった。

 

 鞭が空を裂き、乾いた破裂音が街道へ響いた。

 

 一瞬にして、トゲ付きの鞭が切り株へ叩きつけられる。木片が飛び散り、表面へ深い傷跡が刻み込まれた。

 

「……うわ」

 思わずカミラ自身が呟く。隣で見ていたメイリンが、納得したように頷いた。

「やっぱりね。かなり強いわ、これ」

 その横で、ダリアも興味深そうに鞭を眺めていた。

「なるほど……」

「なによ、その顔」

 カミラが聞くと、ダリアは腕を組む。

「いや、思ったよりちゃんとした武器だなって」

 ダリアは商人らしい目つきで鞭を見つめた。

「棘の配置も悪くないし、革もちゃんとしなってる。見た目だけの色物じゃないわね」

「そんなの見て分かるの?」

「そりゃ分かるわよ。武器商人なめないで」

 ダリアは少し得意げに鼻を鳴らした。

「扱いは難しそうだけど、ちゃんと使えれば、相手には相当厄介な武器になるわね」

 

 その言葉に、メイリンも頷く。

「うん。群れ相手に強そうなの」

 メイリンは軽く拳を握ってみせた。

「これまでは、私もカミラもスピードで近づいて戦ってたでしょ?」

「そうね」

「私は体術だから、近づかないと届かないし」

 そう言ってから、カミラの鞭へ目を戻す。

「でも、それなら少し離れたまま打てる。一度に何匹か巻き込めると思う」

「そんなことできるの?」

 カミラが聞き返すと、メイリンは少しだけ笑った。

「使い方次第ね。今のカミラなら、オオカラスくらいなら四羽まとめて払えると思うわ」

「そんなに!?」 マナが目を輝かせる。

「それなら囲まれても大丈夫かも」

「うん。スライムみたいなの、数が増えると結構面倒だったでしょ?」

「ああ……それはあるわね」

 カミラは苦笑した。小型の魔物は、一匹一匹は弱くても数が増えると厄介だ。前回の乱戦でも、足元へ何度か潜り込まれていた。

「そんな時でも、これで一掃できるはず」

 

 だが、メイリンはそこで少し表情を引き締めた。

「でもね」 カミラの手元を指差す。

「そういう長い武器って、敵に近づかれると急に使いにくくなるの」

「ああ、なるほど」

 間合いを詰められて懐へ入り込まれたら、長い鞭はただの邪魔な紐になる。

 ダリアも横から口を挟んだ。

「鞭って、間合いを支配できる代わりに、懐へ入られると弱いのよ。そこは槍なんかと少し似てるわね」

「だから、左手に短剣持っといたほうがいいと思うわ」

 メイリンがカミラの左腰を軽く示す。

「懐へ入られた時用にね」

 

 カミラは左手で腰の短剣の柄に触れる。右手の鞭で敵の群れを薙ぎ払い、近づいてきた相手だけを左手の刃で仕留める。

(……いけるわね、これなら)

 自然と次の戦い方が頭へ浮かんだ。

「私たちの戦い方、ちょっと変わりそうね」

 マナがそう言って、少し嬉しそうに笑う。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 カミラは改めて、手の中の鞭へ視線を落とした。

 

 メダルおじさんからもらった一本の武器が、もう自分たちの戦い方を変えようとしている。

 魔法の玉を手に入れれば、次はいよいよ旅の扉。そこから世界へ。

 

 新しく手にした力と、これから始まる果てしない旅。

 その両方を思うと、抑えたつもりの熱が、カミラの胸の奥で静かに灯った。

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