ドラクエ3 〜女子だけのパーティで魔王に挑んでみた〜   作:ミサ2

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【勇者】マナ
【盗賊】カミラ
【商人】ダリア
【武闘家】メイリン

<カンダタ一味>
首領:『カンダタ』
大盾の大男:『壁』
長柄の槍使い:『先生』
投擲手(石つぶて):『三本指』
捕縛手(鉤縄、ロープ):『犬』


【第38話】奈落の底は

 形勢が動いたと思った、その時だった。

 床を転がる影が、不意にダリアの足首を強く掴んだ。

「えっ……!?」

 ダリアが息を呑んだ次の瞬間には、激しく床へ引き倒されていた。ほとんど同時に、太い縄が彼女の上半身へ絡みつき、腕ごと胴を締め上げていく。すぐさま両足首も縛られた。

 

「はい、お嬢ちゃん、捕まえた。ヘッヘッヘ〜」

 物陰から這い出てきたのは、異様なほど気配の薄い男だった。男はすかさず、身動きの取れないダリアを軽々と肩へ担ぎ上げる。

「犬、でかしたぞ! ガハハ!」

 部屋の奥からカンダタの濁った哄笑が響き渡る。

「は、放せ……っ!」

 ダリアが必死に身をよじって抵抗するが、男の腕はびくともしない。

「放すわけないだろ」

 

(ダリア!!)

 カミラの視界が一瞬、赤く染まった。

 即座に手首を返す。トゲの鞭が凄まじい風切り音を立てて宙を奔る。

 狙い過たず放たれた一撃は、「犬」と呼ばれた男の太ももを鋭く捉えた。

 

「ぐおおっ……!」

 鋭いトゲに肉を裂かれ、男はたまらずバランスを崩す。その腕から力が抜けた隙に、担がれていたダリアが床へと転がり落ちた。

 

 カミラは間髪入れずに追撃の鞭を振るったが、男は驚異的な反応でそれを飛び退いてかわし、ダリアの身体から大きく距離を取った。

 

 

【挿絵表示】

 

 

 カミラはすぐさまダリアの元へ駆け寄ると、腰のナイフを抜いて彼女に巻き付いたロープを素早く切り裂いた。

 

 だが、その安堵も束の間、上空から鋭い風切り音が迫る。

 カミラの脇腹に、ずしりと重い石礫が容赦なく激突した。

「――っ!」

 息が詰まるほどの衝撃に襲われた、そのすぐ後だった。今度はカミラの右膝を別の礫が正確に捉える。

「くっ……!」

 骨の奥まで響くような激痛に、カミラは顔を歪めてその場に膝をつきかけた。

 

 上からは三本指の礫。下からは犬の縄。

 少しでも隙を見せれば、足を取られ、縄をかけられる。ダリアのように。

(捕まったら、終わる……)

 強いだけではない。こいつらは、捕まえるために動いている。逃げ場を削り、体勢を崩し、仲間を一人ずつ奪っていく。これまで戦ってきた魔物とは、まるで違う。

 

 視線を転じれば、前衛のメイリンとマナも押されていた。メイリンは大盾の圧に阻まれ、鉄の爪を届かせられない。マナは槍の間合いに入れず、じりじりと後退を余儀なくされている。

 

 カミラは頭上から断続的に降ってくる礫を必死にかわしながら、犬を近づけさせないよう、鞭を大きく回して牽制を続けるしかなかった。

 

 その時、一際鋭い風切り音が走った。大きな石礫がマナのこめかみを襲う。

「うぅうっ……」

 鈍い音が響き、マナが短い悲鳴を上げてその場に激しくうずくまる。意識が飛びかけたのか、相手の槍使いから繰り出された鋭い突きを、かろうじて手にした盾で受け止めるのが精一杯だ。

 

「マナ、引いて!」

 ダリアが叫びながら、マナの元へと飛び出す。

 異変に気づいたメイリンが、槍使いへ回し蹴りを放った。槍使いは紙一重でかわした。だが、続く鉄の爪がその頬を浅く掠める。

「ちっ……!」

 その直後、横から大盾が押し込んできた。メイリンは踏ん張り切れず、大きく体勢を崩す。

 

 その隙に、ダリアがマナの身体を無理やり起こし、襟首を掴んで下がらせた。

 しかし、その無防備な背中を逃さず、影のようにつきまとう犬が再び捕縛の牙を剥いて突進してきた。

 

「させないよ……!」

 カミラは痛む右膝を叱咤し、鞭を奔らせた。床を叩く鋭い一撃が犬の足元を掠め、這い寄る捕縛の手を追い払う。

「ちっ! 意外と面倒くせぇな……」

 カンダタの舌打ちが聞こえる。

 

 四人は必死の抵抗を続けた。だが、彼らの連携に抗う術もなく、じりじりと部屋の一角へ追い詰められていく。

 背後は壁だ。もはや逃げ場はない。

 

「よし、そこだ。犬、あとで拾っとけ」

 部屋の奥で、カンダタが下卑た笑みを浮かべた。その手が、壁に設置された太い鉄製のレバーを一気に引き下げる。

 

 ガチリ、と不吉な金属音が響いた。

 

 その直後だった。

 足元の石床が、瞬時に二枚に分かれるように左右へ沈み込んだ。

 

 ぽっかりと開いた真っ暗な奈落。踏ん張る間もなく、四人の身体は闇の底へ吸い込まれていった。

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