ドラクエ3 〜女子だけのパーティで魔王に挑んでみた〜 作:ミサ2
【盗賊】カミラ
【商人】ダリア
【武闘家】メイリン
<カンダタ一味>
首領:『カンダタ』
大盾の大男:『壁』
長柄の槍使い:『先生』
投擲手(石つぶて):『三本指』
捕縛手(鉤縄、ロープ):『犬』
形勢が動いたと思った、その時だった。
床を転がる影が、不意にダリアの足首を強く掴んだ。
「えっ……!?」
ダリアが息を呑んだ次の瞬間には、激しく床へ引き倒されていた。ほとんど同時に、太い縄が彼女の上半身へ絡みつき、腕ごと胴を締め上げていく。すぐさま両足首も縛られた。
「はい、お嬢ちゃん、捕まえた。ヘッヘッヘ〜」
物陰から這い出てきたのは、異様なほど気配の薄い男だった。男はすかさず、身動きの取れないダリアを軽々と肩へ担ぎ上げる。
「犬、でかしたぞ! ガハハ!」
部屋の奥からカンダタの濁った哄笑が響き渡る。
「は、放せ……っ!」
ダリアが必死に身をよじって抵抗するが、男の腕はびくともしない。
「放すわけないだろ」
(ダリア!!)
カミラの視界が一瞬、赤く染まった。
即座に手首を返す。トゲの鞭が凄まじい風切り音を立てて宙を奔る。
狙い過たず放たれた一撃は、「犬」と呼ばれた男の太ももを鋭く捉えた。
「ぐおおっ……!」
鋭いトゲに肉を裂かれ、男はたまらずバランスを崩す。その腕から力が抜けた隙に、担がれていたダリアが床へと転がり落ちた。
カミラは間髪入れずに追撃の鞭を振るったが、男は驚異的な反応でそれを飛び退いてかわし、ダリアの身体から大きく距離を取った。
カミラはすぐさまダリアの元へ駆け寄ると、腰のナイフを抜いて彼女に巻き付いたロープを素早く切り裂いた。
だが、その安堵も束の間、上空から鋭い風切り音が迫る。
カミラの脇腹に、ずしりと重い石礫が容赦なく激突した。
「――っ!」
息が詰まるほどの衝撃に襲われた、そのすぐ後だった。今度はカミラの右膝を別の礫が正確に捉える。
「くっ……!」
骨の奥まで響くような激痛に、カミラは顔を歪めてその場に膝をつきかけた。
上からは三本指の礫。下からは犬の縄。
少しでも隙を見せれば、足を取られ、縄をかけられる。ダリアのように。
(捕まったら、終わる……)
強いだけではない。こいつらは、捕まえるために動いている。逃げ場を削り、体勢を崩し、仲間を一人ずつ奪っていく。これまで戦ってきた魔物とは、まるで違う。
視線を転じれば、前衛のメイリンとマナも押されていた。メイリンは大盾の圧に阻まれ、鉄の爪を届かせられない。マナは槍の間合いに入れず、じりじりと後退を余儀なくされている。
カミラは頭上から断続的に降ってくる礫を必死にかわしながら、犬を近づけさせないよう、鞭を大きく回して牽制を続けるしかなかった。
その時、一際鋭い風切り音が走った。大きな石礫がマナのこめかみを襲う。
「うぅうっ……」
鈍い音が響き、マナが短い悲鳴を上げてその場に激しくうずくまる。意識が飛びかけたのか、相手の槍使いから繰り出された鋭い突きを、かろうじて手にした盾で受け止めるのが精一杯だ。
「マナ、引いて!」
ダリアが叫びながら、マナの元へと飛び出す。
異変に気づいたメイリンが、槍使いへ回し蹴りを放った。槍使いは紙一重でかわした。だが、続く鉄の爪がその頬を浅く掠める。
「ちっ……!」
その直後、横から大盾が押し込んできた。メイリンは踏ん張り切れず、大きく体勢を崩す。
その隙に、ダリアがマナの身体を無理やり起こし、襟首を掴んで下がらせた。
しかし、その無防備な背中を逃さず、影のようにつきまとう犬が再び捕縛の牙を剥いて突進してきた。
「させないよ……!」
カミラは痛む右膝を叱咤し、鞭を奔らせた。床を叩く鋭い一撃が犬の足元を掠め、這い寄る捕縛の手を追い払う。
「ちっ! 意外と面倒くせぇな……」
カンダタの舌打ちが聞こえる。
四人は必死の抵抗を続けた。だが、彼らの連携に抗う術もなく、じりじりと部屋の一角へ追い詰められていく。
背後は壁だ。もはや逃げ場はない。
「よし、そこだ。犬、あとで拾っとけ」
部屋の奥で、カンダタが下卑た笑みを浮かべた。その手が、壁に設置された太い鉄製のレバーを一気に引き下げる。
ガチリ、と不吉な金属音が響いた。
その直後だった。
足元の石床が、瞬時に二枚に分かれるように左右へ沈み込んだ。
ぽっかりと開いた真っ暗な奈落。踏ん張る間もなく、四人の身体は闇の底へ吸い込まれていった。