「縁」を視る近界民、ボーダー隊員になる   作:白豆男爵

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時間軸は原作の約半年前くらいを想定しています。


縁の始まり

(ゲート)発生、双葉ちゃんが一番近いです』

「了解です。すぐに向かいます」

『無理は禁物よ、双葉』

「分かってます、加古さん」

 

今日も今日とて、ボーダー基地付近に発生する、否、発生するように仕向けている(ゲート)から現れるトリオン兵と戦うボーダー隊員。

今日の防衛部隊を務める加古隊の新人、黒江双葉は屋根伝いに指定の場所まで移動していく。

 

「対象を発見、戦闘を開始します」

 

 

 

「なるほど、あれがA級。バムスター程度じゃ苦戦もしないか」

 

そして、その様子を遠巻きに眺める者が一人。

本来一般人は立ち入ることを禁止されている警戒区域だが、その青年は監視カメラの死角となる場所からボーダー隊員の戦闘を観察している。

やがて他の隊員も到着したのか、一気にトリオン兵が一掃されていき、あっという間に戦闘終了。

ちなみに、フィクサーみたいな立ち回りをしているが、決してトリオン兵を仕向けたわけではない。

本当にただ眺めているだけである。

 

 

 

やがて加古隊は苦戦することなくバムスターたちを撃破。

 

「さすが双葉、あっさり倒しちゃったわね」

「これくらい普通です」

「双葉、すごい」

『...!まだ周囲からトリオン反応!皆さん、注意しt...』

 

しかし、新人故のおごりか、はたまた戦闘終了後の油断した隙を狙った奇襲故か、黒江双葉は不覚をとった。

突如背後から現れた新たな(ゲート)から出現したモールモッド数体への反応が遅れる。

その数ざっと5匹。いくらA級といえど、この数、不意打ちと条件が重なっては危険といわざるを得ない。

加古も咄嗟にハウンドを構えるが、この距離では間に合わない。

 

「っ!シールド...」

「!双葉!」

 

双葉もなんとか反応してシールドを張ろうとするが、展開が間に合わない。

このままでは確実に緊急脱出(ベイルアウト)してしまうだろう。

 

 

 

「...まずいな」

 

一方、その様子を眺める青年はポツリとつぶやく。

 

「いや、ボーダーのトリガーには緊急脱出(ベイルアウト)がある。俺が手を出すまでもない。だから...」

 

その瞬間、青年の脳裏に、とある記憶が蘇る。

 

『お前の手を借りたって、俺は...!』

「っ!くそっ!」

 

そして青年は思い立ったように、その手にトリガーを握る。

 

「トリガー、起動(オン)!」

 

青年の体はトリオン体に換装され、その手には槍が出現。

青年はその槍を大きく振りかぶり、力を込める。

 

「せー...のっ!」

 

そしてトリオン兵に向け...放つ。

バシュン!という轟音と共に放たれた槍は、空中でさらに加速。

黒い閃光となってモールモッドへと突き進む。

 

『!南から巨大なトリオン反応!加古さんたちの方に向かってます!』

「正体は!」

『不明です!トリオン反応、どんどん増大していきます!』

 

次の瞬間、五体のモールモッドがほぼ同時に貫かれ、その巨体は瞬く間に砕け散る。

だが、それで終わらない。

勢いを一切失わないまま飛翔した槍は、そのまま奥の住宅街へと突入。

一棟、二棟、三棟と、家屋の壁や屋根を紙のように貫通しながら進み、最後に地面へ突き刺さった。

ズドォン!という音が響き、遅れて衝撃が周囲を揺らし、家屋の窓ガラスが一斉に震える。

一直線上に並んでいた数棟の家屋には巨大な風穴が空いていた。

 

「今の、何...?」

(トリガー、なの?ボーダーの物じゃない...)

 

あまりにも強力すぎる一撃。

双葉も他の加古隊のメンバーも、何が起こったのか分からず、呆然と立ち尽くしている。

しかし、加古だけはその状況を冷静に飲み込む。

それどころかその槍に少し興味を示しつつある。

 

「双葉、その槍を回収して。本部に持ち帰るわよ」

「!了解!」

 

付近におり、最も機動力の高い双葉に槍の回収を指示し、指示通り双葉は槍を回収。

 

「回収しました。このまま本部に...」

 

だがその槍はすぐに振動し始める。

それに何かを感じ取った加古は即座に警告するが、少し遅かった。

 

「双葉、離しなさい!」

「...!なんて力っ!?」

 

そしてその槍は飛んできた軌道を沿って、双葉もろとも持ち主の元へと戻っていく。

 

 

 

「...さて、どうしようか」

 

青年は槍の帰還を待つ間に、これからについて考える。

これだけ派手に目立ってしまっては、ボーダーに目をつけられるのも時間の問題である。

 

「しばらくは隠居生活かな~...うん?」

 

思考を巡らせるうちに、槍は戻ってきたが、その槍には先ほど助けたはずの少女が引っ付いていた。

 

「ちょちょちょっ!?おわっ!?」

「きゃっ!?」

 

そして青年と双葉は見事に衝突。

お互いにしりもちをついてしまう。

青年はすぐさま立ち上がり、双葉に手を差し伸べる。

 

「えっと、大丈夫かい...?」

「あ、ありがとうございます...」

 

双葉はその手を取って立ち上がるが、即座に思考を切り替える。

 

「じゃなくて!あなたは一体?」

「...!悪いけど、説明してる暇がないんだ、ごめん!」

 

青年はそう断ると、おもむろに槍を空に向かって構える。

槍を投擲しながら自身もそれに摑まり、ものすごい速度で飛翔していく。

流石の双葉の機動力をもってしても、あれに追い付くことはできなかった。

 

「あの人は、一体...?」

 

その場には、双葉の疑問の言葉だけが残った。

直後、加古から双葉向けて通信が入る。

 

『双葉!聞こえる?』

「加古さん、すみません。槍の投擲者と思われる男性を発見しましたが、逃げられました」

『特徴は?』

「...優しそうな人でした」

 

双葉はそんな、参考にならなさそうな答えを返すのだった。

 


 

黒江双葉を謎の槍が助けてから数日。

その槍の持ち主である青年、リーヴは三門市の商店街を歩いていた。

 

「しばらく大人しくしてるつもりだったんだけどなぁ」

 

そう言いながらも手には買い物袋が下げられている。

隠居生活とは程遠い。

 

「やっぱりこの星はいい」

 

ふと視界の先を見る。

人と人を繋ぐ無数の”糸”。

家族、友人、恋人、仲間。

この街にはそれが溢れていた。

 

「...本当に不思議だよ」

 

その時だった。

ふと、一人の青年が目に入る。

そして、リーヴは思わず足を止めた。

その青年には、街中から数え切れないほどの無数の”糸”が集まっていたからだ。

 

「...なんだあれ」

「やあ」

 

青年はまるで最初から気付いていたように手を振る。

 

「やっと見つけた」

(見つけた?俺を探していた?まさか、ボーダー隊員...?)

「えっと、あなたは?」

「俺は迅悠一」

 

そう名乗った青年は笑いながら、手に持っていたぼんち揚げを差し出す。

 

「ぼんち揚げ、食う?」

「はい?」

 

先ほどの異様さとは裏腹に虚をついた言葉にリーヴは硬直する。

 

「まあ、冗談はさておき...」

「ええ...?」

「黒い槍の話をしようか」

「...!」

 

その言葉を聞いたリーヴの表情が、一瞬にして固まる。

しかしリーヴは即座に表情を戻す。

 

「何のことでしょうか?」

「あと、黒江を助けた話」

「......」

「それと、君自身の話かな」

「俺自身の...?」

「隠さなくてもいい。別にとって食おうってわけじゃないんだ。俺としては、君とも仲良くしたいんだ」

 

迅は変わらず笑みを浮かべたまま言った。

 

「ネイバー君?」




次からは基本的に一人称になると思います。
思いつきで書いたので続くかはモチベ次第です。
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