『
「了解です。すぐに向かいます」
『無理は禁物よ、双葉』
「分かってます、加古さん」
今日も今日とて、ボーダー基地付近に発生する、否、発生するように仕向けている
今日の防衛部隊を務める加古隊の新人、黒江双葉は屋根伝いに指定の場所まで移動していく。
「対象を発見、戦闘を開始します」
「なるほど、あれがA級。バムスター程度じゃ苦戦もしないか」
そして、その様子を遠巻きに眺める者が一人。
本来一般人は立ち入ることを禁止されている警戒区域だが、その青年は監視カメラの死角となる場所からボーダー隊員の戦闘を観察している。
やがて他の隊員も到着したのか、一気にトリオン兵が一掃されていき、あっという間に戦闘終了。
ちなみに、フィクサーみたいな立ち回りをしているが、決してトリオン兵を仕向けたわけではない。
本当にただ眺めているだけである。
やがて加古隊は苦戦することなくバムスターたちを撃破。
「さすが双葉、あっさり倒しちゃったわね」
「これくらい普通です」
「双葉、すごい」
『...!まだ周囲からトリオン反応!皆さん、注意しt...』
しかし、新人故のおごりか、はたまた戦闘終了後の油断した隙を狙った奇襲故か、黒江双葉は不覚をとった。
突如背後から現れた新たな
その数ざっと5匹。いくらA級といえど、この数、不意打ちと条件が重なっては危険といわざるを得ない。
加古も咄嗟にハウンドを構えるが、この距離では間に合わない。
「っ!シールド...」
「!双葉!」
双葉もなんとか反応してシールドを張ろうとするが、展開が間に合わない。
このままでは確実に
「...まずいな」
一方、その様子を眺める青年はポツリとつぶやく。
「いや、ボーダーのトリガーには
その瞬間、青年の脳裏に、とある記憶が蘇る。
『お前の手を借りたって、俺は...!』
「っ!くそっ!」
そして青年は思い立ったように、その手にトリガーを握る。
「トリガー、
青年の体はトリオン体に換装され、その手には槍が出現。
青年はその槍を大きく振りかぶり、力を込める。
「せー...のっ!」
そしてトリオン兵に向け...放つ。
バシュン!という轟音と共に放たれた槍は、空中でさらに加速。
黒い閃光となってモールモッドへと突き進む。
『!南から巨大なトリオン反応!加古さんたちの方に向かってます!』
「正体は!」
『不明です!トリオン反応、どんどん増大していきます!』
次の瞬間、五体のモールモッドがほぼ同時に貫かれ、その巨体は瞬く間に砕け散る。
だが、それで終わらない。
勢いを一切失わないまま飛翔した槍は、そのまま奥の住宅街へと突入。
一棟、二棟、三棟と、家屋の壁や屋根を紙のように貫通しながら進み、最後に地面へ突き刺さった。
ズドォン!という音が響き、遅れて衝撃が周囲を揺らし、家屋の窓ガラスが一斉に震える。
一直線上に並んでいた数棟の家屋には巨大な風穴が空いていた。
「今の、何...?」
(トリガー、なの?ボーダーの物じゃない...)
あまりにも強力すぎる一撃。
双葉も他の加古隊のメンバーも、何が起こったのか分からず、呆然と立ち尽くしている。
しかし、加古だけはその状況を冷静に飲み込む。
それどころかその槍に少し興味を示しつつある。
「双葉、その槍を回収して。本部に持ち帰るわよ」
「!了解!」
付近におり、最も機動力の高い双葉に槍の回収を指示し、指示通り双葉は槍を回収。
「回収しました。このまま本部に...」
だがその槍はすぐに振動し始める。
それに何かを感じ取った加古は即座に警告するが、少し遅かった。
「双葉、離しなさい!」
「...!なんて力っ!?」
そしてその槍は飛んできた軌道を沿って、双葉もろとも持ち主の元へと戻っていく。
「...さて、どうしようか」
青年は槍の帰還を待つ間に、これからについて考える。
これだけ派手に目立ってしまっては、ボーダーに目をつけられるのも時間の問題である。
「しばらくは隠居生活かな~...うん?」
思考を巡らせるうちに、槍は戻ってきたが、その槍には先ほど助けたはずの少女が引っ付いていた。
「ちょちょちょっ!?おわっ!?」
「きゃっ!?」
そして青年と双葉は見事に衝突。
お互いにしりもちをついてしまう。
青年はすぐさま立ち上がり、双葉に手を差し伸べる。
「えっと、大丈夫かい...?」
「あ、ありがとうございます...」
双葉はその手を取って立ち上がるが、即座に思考を切り替える。
「じゃなくて!あなたは一体?」
「...!悪いけど、説明してる暇がないんだ、ごめん!」
青年はそう断ると、おもむろに槍を空に向かって構える。
槍を投擲しながら自身もそれに摑まり、ものすごい速度で飛翔していく。
流石の双葉の機動力をもってしても、あれに追い付くことはできなかった。
「あの人は、一体...?」
その場には、双葉の疑問の言葉だけが残った。
直後、加古から双葉向けて通信が入る。
『双葉!聞こえる?』
「加古さん、すみません。槍の投擲者と思われる男性を発見しましたが、逃げられました」
『特徴は?』
「...優しそうな人でした」
双葉はそんな、参考にならなさそうな答えを返すのだった。
黒江双葉を謎の槍が助けてから数日。
その槍の持ち主である青年、リーヴは三門市の商店街を歩いていた。
「しばらく大人しくしてるつもりだったんだけどなぁ」
そう言いながらも手には買い物袋が下げられている。
隠居生活とは程遠い。
「やっぱりこの星はいい」
ふと視界の先を見る。
人と人を繋ぐ無数の”糸”。
家族、友人、恋人、仲間。
この街にはそれが溢れていた。
「...本当に不思議だよ」
その時だった。
ふと、一人の青年が目に入る。
そして、リーヴは思わず足を止めた。
その青年には、街中から数え切れないほどの無数の”糸”が集まっていたからだ。
「...なんだあれ」
「やあ」
青年はまるで最初から気付いていたように手を振る。
「やっと見つけた」
(見つけた?俺を探していた?まさか、ボーダー隊員...?)
「えっと、あなたは?」
「俺は迅悠一」
そう名乗った青年は笑いながら、手に持っていたぼんち揚げを差し出す。
「ぼんち揚げ、食う?」
「はい?」
先ほどの異様さとは裏腹に虚をついた言葉にリーヴは硬直する。
「まあ、冗談はさておき...」
「ええ...?」
「黒い槍の話をしようか」
「...!」
その言葉を聞いたリーヴの表情が、一瞬にして固まる。
しかしリーヴは即座に表情を戻す。
「何のことでしょうか?」
「あと、黒江を助けた話」
「......」
「それと、君自身の話かな」
「俺自身の...?」
「隠さなくてもいい。別にとって食おうってわけじゃないんだ。俺としては、君とも仲良くしたいんだ」
迅は変わらず笑みを浮かべたまま言った。
「ネイバー君?」
次からは基本的に一人称になると思います。
思いつきで書いたので続くかはモチベ次第です。