「縁」を視る近界民、ボーダー隊員になる   作:白豆男爵

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それぞれの役目

あるビルの屋上。

無数の鴉がそこへ向かっていく。

その先には、一人の老人が立っていた。

 

「おかえり、ノル」

 

老人の言葉と共に鴉が散り、その中からノルの姿が現れる。

 

「ごめんなさい、負けちゃった...」

「大丈夫。よく頑張った」

 

クロウはノルを責めることなく、ただ静かに少女の頭を撫でる。

彼にとって、ノルはともに戦う戦士であると同時に、まだ9歳の幼い少女なのだ。

 

「先に船へ戻っていなさい」

「クロウおじさんは?」

 

その瞬間、クロウはふと顔を上げる。

 

「儂はあの男の相手をせねばならんのでな」

 

クロウはそう告げ、船とつながったゲートにノルを入れる。

そして間もなく、屋上の扉が開かれる。

そこから現れたのは、サングラスをかけた男...迅悠一だった。

 

「今度は本物だよね?」

「無論、幻影にノルを任せるなど危険な真似はせんよ」

「悪いけどこっちも必死なんでね、あの子の帰還を利用させてもらった」

「謝ることはない。戦場ではよくあることだ」

 

クロウは複数の鴉を呼び戻し、戦闘態勢に入る。

迅もまた、風刃を構える。

 

(儂の鴉の衆(フギンホード)は戦闘向きではない。じゃが、いくらでもやりようはある)

 

次の瞬間、両者は動き出す。

鴉はいくつもの砲撃を放つが、やはり未来視を持つ迅には当たらない。

 

「ほほっ、まるで未来でも見えているようじゃな」

「さて、どうかなっ!」

 

迅はクロウを称賛しながら風刃を振りかざす。

クロウは身をひねるが、いくつもの刃が胴体を切り裂き、トリオンが漏出する。

 

「おじいちゃん、戦闘向きじゃないでしょ。この状況、結構厳しいんじゃない?」

「かもしれんの。じゃが...!」

 

クロウが手を振りかざすと、迅の上下左右を鴉が取り囲む。

 

「...!」

「儂とて、ただでやられるわけにはいかんのでな!」

(未来が見えるとしても、これほどの物量があれば無傷とはいかないはずじゃ)

 

クロウの思惑通り、砲撃のいくつかは命中する。

だが、迅はその未来すらも見越していた。

砲撃が当たったのは多少ダメージを負っても問題のない部位ばかり。

迅は未来視で当たっても問題ない砲撃、当たってはならない砲撃を見極めていた。

 

「ほほ、完敗じゃな...じゃが、おヌシをかなり遠くまで引き付けられた」

「そうだね、今から俺が行っても結人の援護には間に合わない。でも...」

 

迅は未来を見据えながら、クロウに向かって言い放つ。

 

「未来はいい方向に向かってるよ。着実にね」

 

その言葉とともに迅はクロウのトリオン体を破壊する。

白煙とともにクロウの生身が露わになった。

 

「未来視か...ならば儂は船の中からこの結末を見届けることにしようかの...」

 

クロウはそう言うと戦艦につながるゲートへ撤退していき、そのゲートは閉じる。

迅はそれを追いかけることはしなかった。

これ以上、クロウと戦うことに意味がないことを知っていたから。

 

「後は頼むぜ、結人、玉狛の皆。それと...黒江」

 


 

西エリアにて、玉狛第一とバルキアの交戦は続いていた。

そこへ、ダウンしていた通信が入る。

 

「...!鴉が!」

『みんな、迅さんが鴉使いを倒したよ!』

「そうか、迅が...」

「これでオペレーター復活っすね」

「待ちくたびれたわ。栞、サポートお願い!」

『了解!』

 

その様子を見て、バルキアは少し動揺する。

 

「クロウが、やられた...?」

 

バルキアは今まで何度もクロウとともに戦ってきたが、彼が倒されることはほとんどなかった。

それほどまでに彼が策略と情報戦に長けていたからである。

 

『すまんの、バルキア。ノルだけでなく儂もやられてしまった』

「そうかよ、じいさん...あとは任せな」

『うむ、隊長を頼む』

 

クロウはそう言って通信を切る。

バルキアは目下にいる3人に視線を戻す。

 

「正直舐めてたよ、玄界のことは。どうやらあんたたちだけじゃなく、ここは精鋭ぞろいみたいだ...だが!」

 

バルキアはその手に持つ槍を向け、宣言する。

 

「私は負けない。隊長のためにも、あんたらは全員ここで倒す!」

 

一方レイジはバルキアを見据えながら、迅との会話を思い出していた。

 

・・・

 

「悪いねレイジさん、夜遅くに」

 

結人とボーダーの会談が終わった後、迅はレイジのみを呼び出していた。

 

「問題ない。それより迅、話とはなんだ」

「...今度のギアジェス来訪なんだけど、今日の会談で、対立がほぼ確定した」

「そうか。それで、俺たちは何をすればいい?」

「さすがレイジさん、話が早い。この戦いで、結人はギアジェスの強敵と戦うことになる。でも、俺たちの前にも、それぞれ強敵が現れそうなんだ」

 

迅は少し深刻そうな顔でそう告げる。

 

「最悪の未来は、俺たちが取り逃がしてその強敵たちが合流することだ。だから...」

「俺たちは目の前の敵を倒せ...ということだろ?」

「うん。頼むよ、レイジさん」

 

・・・

 

(こいつを倒せば、直接でなくとも結人の負担が軽くなる)

「迅の予知によれば、ここが正念場だ。行くぞ!」

「「了解!」」

 

レイジの号令とともに、3人は一斉に散開する。

バルキアはそれを見るや否や、烏丸に向かって突撃。

烏丸は何とか弧月で受け止める。

 

「さっきより速い!?」

「言っただろ、全員ここで倒すってな!」

「ハアッ!」

 

そこへ小南の大斧が振り下ろされるが、バルキアは超スピードでそれをよけ、槍で2人まとめて吹き飛ばす。

さらに次の瞬間、気付けばバルキアの姿はレイジの視界から消えていた。

 

『レイジさん後ろ!』

「!?シールドモード!」

 

レイジは何とかレイガストをシールドモードに移行させるが、圧倒的な速度が乗ったそのひと振りはレイジを盾ごと吹き飛ばした。

 

「へぇ、反応できるとはね」

 

レイジが起き上がり、バルキアの方を見ると、バルキアの翼はわずかに緑色に輝いており、粒子が漏れていた。

 

「あの翼...宇佐美、分析できるか?」

『うん、翼にトリオンが集中してる。あの粒子はトリオンが漏れてるっぽい。とりまるくんのガイストに近いかも』

「つまり消耗度外視で俺らを仕留めに来てるってことっすね...」

「槍と光線による攻撃、そして何よりも圧倒的な速度...速度?」

 

レイジはその瞬間、とある思考に至る。

 

(もし、相手の速度を利用できるとしたら...?)

「2人とも、俺に考えがある」

 

レイジは秘匿通信で全員に作戦を共有する。

 

『確かに、それならいけるかもっすね』

『ま、試してみる価値はありそうね』

『よし、まずは俺が囮になる。行くぞ!』

 

次の瞬間、レイジは機関砲を取り出し、アステロイドを連射する。

だが当然のごとくバルキアはそれを躱し、レイジに迫る。

 

「そんな重そうな武器を抱えて私に追いつけるのか?」

「追いつく?逆だな。お前が追いかける側だ」

 

そう宣言するとレイジは放棄された市街地に向かって走り出す。

 

「なっ!待ちやがれ!」

 

レイジが走り出した方向は結人のいる方向。

バルキアはそれを無視することが出来るわけもなく、レイジの追跡を始める。

もちろんスピードはバルキアのほうが速い。

 

『レイジさん、次の角を右だよ!』

「了解」

 

レイジは市街地の入り組んだ地形を、宇佐美のサポートをもとに駆け抜けていく。

 

「ちょこまかとうざったい!」

 

バルキアはしびれを切らし、再び翼にトリオンを集中させ、超スピードで直進する。

レイジはこの瞬間を待っていた。

 

(...!今だ!)

「スパイダー!」

 

レイジはバルキアの進路上にスパイダーを設置する。

 

「甘い!この程度!」

 

しかし、バルキアは急ブレーキをかけ、ワイヤーを槍で切断する。

だがその一瞬が、ワイヤーを切るために止まったわずかな時間が、勝利のへの一手となる。

 

「エスクード!」

「しまっ──!」

 

そこへ烏丸がすかさずエスクードを発動し、盾と盾でバルキアを挟み込み、拘束。

 

(ワイヤーは囮で本命はこっちの拘束だったか!)

「「小南(先輩)!」」

 

そして、すぐ近くの屋根の上から、大斧を携えた少女が飛び上がる。

 

「ちっ!」

 

身動きの取れないバルキアは小南に向かって光線を放つ。

 

「「両防御(フルガード)!」」

 

だが、レイジと烏丸がフルガードでその光線を防ぐ。

 

「ここで私が負けたら、隊長だけになっちまう...それだけは、させるわけにはいかねえんだよ!」

(あいつらを撃ってる暇はねえ。斧使いが降ってくる。だったら...!)

 

バルキアは翼にトリオンを集中させ、光線の出力を増加させる。

レイジと烏丸が張ったシールドにヒビが入り始めた。

 

「くっ!ここにきて威力を...」

「張り続けろ京介!」

「あんたに負けられない理由があるように...」

 

そして小南はシールドが割れるよりも速く、バルキアへと落下していき...

 

「私たちも...あいつのために、負けられないのよ!」

 

──大斧を、振り下ろす。

 

「うおりゃぁぁぁ────!」

 

バルキアの胴体は、エスクード諸共真っ二つに切断された。

 

「そうか...じいさんもノルもやられた理由が分かった」

 

バルキアは納得した。

自分が、仲間が、玄界人に敗れた理由を理解した。

 

「これが、玄界の兵士か...」

 

バルキアはそんな感嘆の言葉を吐きながら、白煙と共に生身へと戻っていく。

小南は依然としてバルキアのことを見つめていた。

 

「どうした?とどめを刺さないのか?」

「別に?わざわざ刺す理由がないもの」

「私はお前たちに負けたんだぞ?敵のトリガー使いは殺しておくのが普通だろ」

「そんな必要ないって言ってるのよ。それに、そんなことしたら、あいつが悲しむでしょ」

 

小南はそう言いながら少し俯く。

 

「...はっ、とんだ甘ちゃんに拾われたみたいだな、あいつは」

「なっ、甘ちゃんですって!?」

「でもまぁ、こういうのも悪くねえのかもな」

 

そう呟くバルキアの後ろに、船につながるゲートが開く。

 

「じゃあな、斧使い。また機会があったら、その時は負けねえぞ」

「ふん、望むところよ。今度もあたしが勝つわ」

 

バルキアはどこかスッキリしたような表情で、船に戻っていった。




ENEMY INFORMATION

クロウ
・PROFILE

名前 クロウ
年齢 56歳
誕生日 11月8日
身長 164cm
血液型 不明
星座 とけい座
職業 ギアジェス王国騎士隊参謀
好きなもの 情報、策略
家族 父、母(故人)

絵に描いたような策略家の老兵で、後方支援・情報戦が得意。
独り身のため孫がおらず、噂によるとノルを孫のように可愛がっているらしい。

・TRIGGER「鴉の衆<フギンホード>」
クロウの専用トリガー。
トリオン体の鴉を生成することができ、索敵、電波のジャミング、砲撃、自身の幻影の生成が可能。
鴉のトリオン消費も少なく、かなりの数を生成することができる。

・PARAMETER

「鴉の衆<フギンホード>」使用時
トリオン 8
攻撃 3
防御・援護 10
機動 3
技術 8
射程 10
指揮 9
特殊戦術 3
Total 54

バルキア
・PROFILE

名前 バルキア
年齢 23歳
誕生日 9月8日
身長 169cm
血液型 不明
星座 おおかみ座
職業 ギアジェス王国騎士隊副隊長
好きなもの 戦い、辛いもの、家族
家族 父、母、弟、妹

騎士隊の中で一位二位を争うほどのバトルジャンキー。
家族好きの一面があり、特に弟と妹が大好き。

・TRIGGER「乙女の翼<ヴァルキュリア>」
バルキアの専用トリガー。
展開された翼による高速飛行が可能であり、翼からトリオンの光線を放って攻撃することもできる。
三叉の槍を顕現させ、機動戦で相手を翻弄する。
烏丸のガイストのように、一時的にトリオンを翼に集中させることで超高速飛行が可能となる。

・PARAMETER

「乙女の翼<ヴァルキュリア>」使用時
トリオン 6
攻撃 7
防御・援護 4
機動 13
技術 9
射程 4
指揮 7
特殊戦術 2
Total 43
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