激しい戦闘の爪痕によって、周囲のビル群は半壊していた。
崩れ落ちた外壁、抉られた道路、
その中心で、俺たちは向かい合っていた。
「はぁっ...!」
俺は立ち上がりながらグングニルを構える。
対するシグルも無傷ではないが、余裕といった表情で佇んでいた。
「どうした、リーヴ。もう終わりか?」
「まさか...まだまだこれからだろ」
俺はそう言い返すものの、全身には無数の傷が刻まれており、トリオンが漏れている。
ギアジェスの二つ目のブラックトリガー、
距離を取れば竜殺砲、近付けば圧倒的な剣技。
シグルはまさしく俺にとって最悪の相手だった。
「ふっ、それでこそ私が認めた戦士だ」
『結人くん、聞こえる!?』
「宇佐美...?」
その時、宇佐美の通信が入る。
『玉狛第一、敵部隊の撃破に成功!』
「!」
『迅さんもクロウを倒した!みんな無事だよ!』
俺は思わず息を吐く。
知らず知らずのうちに背負っていた重圧が、少しだけ軽くなった気がした。
「そうか。皆、敗れたか。ならば、後は私だけだな」
対するシグルのその声音には怒りも焦りもない。
ただ一つ、覚悟だけがあった。
『結人くん、みんな今そっちへ向かってる!もう少しだけ──』
「いや」
俺は宇佐美の通信を遮り、視界の中心にシグルを見据える。
「待つつもりはない。ここで決着をつける」
みんながやってくれたのだ。だから今度は、俺が応える番だ。
シグルはその言葉を聞き、満足そうに笑った。
「そうでなくてはな」
ファヴニールが再び構えられる。
俺もグングニルを握り直す。
先に動き出したのは、俺だった。
ファヴニールとグングニルが衝突する。
俺は鍔迫り合いを切り上げ、ファヴニールを踏み台にして飛び上がる。
「なるほど、斜めに跳んで距離を稼いだか」
「ハアッ!」
俺はシグルに向かってグングニルを投擲する。
シグルはそれを肩に食らいながら竜殺砲を放ち、それにより俺の左腕が吹き飛ぶ。
「くっ!」
「土壇場でその発想力、やはり優秀な男だ」
俺は残った右腕で戻ってきたグングニルを回収する。
(大砲のチャージはもう無い。あとは距離をとって投擲で...!)
俺はそう思い、投擲の態勢に入った。
その瞬間、
──ヒュン
何かが発射されたような音が聞こえ、同時に俺の体のバランスが崩れた。
「!右足が...」
「竜殺砲はしばらく撃てないと思っただろう。だが、砲撃が常に100%のチャージを消費しているとは限らない」
「...!」
そうか、さっきの砲撃はチャージを小出しにして放ったものだったのか!
だから今、二発目が飛んできた...
「今の無防備で身動きの取れない貴様なら、残りの50%でも仕留められる」
シグルはそう言いながら剣先を俺に向ける。
「...終わりだ。貴様は強かった、リーヴ」
剣先に、光が集っていく。
「だからこそ、この一撃で終わらせる」
そして最後の砲撃が放たれ、爆炎が立ち上った。
竜殺砲が直撃した。
機動力もシールドもない彼では受け止めきれないだろう。
だが...
「念には念を入れておかねばな」
そう呟きながら私は歩きだす。
先程のでチャージは無くなったが、グングニルを回収できれば十分。
歩みを進めていくうちに煙が晴れていく。
それと同時に、淡い緑色の光が見えた気がした。
「...あれは?」
煙が、完全に晴れる。
「!」
そこにはまだ、リーヴの姿があった。
だが問題はそこではない。
問題は、まだ腕と足を欠損している状態、つまりトリオン体だということ。
そして、グングニルに搭載されていないはずのシールドが出現していることだ。
「バカな、どうやって...!」
私は目を凝らす。
よく見ると、彼の服装は隊服のようなものに変わっており、肩にはBORDERと書かれたエンブレムがあった。
リーヴはシールドを解除し、トリオンのキューブを展開、分割していく。
「まさか、玄界のトリガーか!」
「アステロイド!」
リーヴが放った弾に対し、私はシールドを展開し、大剣の体躯と合わせて防御する。
確かに威力は高いが、防ぎきれないほどじゃない。
受けきって隙が出来たところを一気に詰める!
しかしそう思った瞬間...
──視界の右側で黄色い閃光が光った
「...!新手!」
「韋駄天!」
突然現れた少女...黒江は、黄色い光をその身に纏う。
私はそれに対し、残ったシールドを展開する。
だが、その少女は直進ではなく、シールドを避けるように軌道を描き、高速で移動。
残り少ないトリオンで放たれた最後の韋駄天は、シグルの体を切り裂いた。
「まさか、もう一人いたとはな...」
シグルは黒江の韋駄天をもろに食らった。
ドン、という音と共に、シグルのトリオン体が破壊される。
「ありがとう、黒江。助かった」
「いえ、神代さんが引きつけてくれたおかげです」
竜殺砲が直撃する直前、宇佐美から通信が届いた。
・・・
竜殺砲が来る。
俺には万が一の時の緊急脱出用に、ボーダーから受け取っていたトリガーがある。
だが、セットされているのはシールドと護身用のアステロイドのみ。
俺のトリオン量なら両防御であれば受け止めきれるだろうが、右足と左腕が無い状態では戦闘は困難だろう。
でも、ここで俺が離脱したらきっとシグルは基地を襲撃し始める。
どうしたものか、と考えていたその時だった。
『結人くん、双葉ちゃんが近くまで来てる!』
「黒江が...?」
・・・
そこから俺は攻撃を受け止め、注意を引きつける、という作戦にシフトしたというわけだ。
「こうなっては、グングニルの回収は不可能だな」
やがて煙の中から姿を現した生身のシグルは諦めたようにそう呟く。
「勝敗を分けたのは味方の有無...良い仲間を持ったようだな。リーヴ」
「そうですね、いい人たちに恵まれました」
俺はそう言いながら基地の方を見る。
きっかけは偶然だったが、俺はここで大切なものを得た。
「シグルさん、俺はここではリーヴではありません」
「ふむ...?」
俺はここでもらった居場所と名前を、言葉に乗せる。
「俺は玉狛支部所属...神代結人です」
「ユイトか...その名を忘れることはないだろう」
シグルはそう言って振り返り、そこへ船に繋がるゲートが出現した。
「上には私から上手く言っておく。もうギアジェスが攻めてくることは無いだろう」
「いいんですか?」
「なに、私がこの戦いの勝者に贈れるものはこれだけだ」
「...ありがとうございます」
シグルさんは船へ乗り込み、ゲートが閉じる。
これにて、ギアジェスの来訪、および戦闘は幕を閉じたのだった。
「神代さん」
「ん?」
「やりましたね」
「...ああ」
俺と黒江はコツンと拳をぶつけ合った。
俺は玉狛支部の屋上で夕暮れを眺めていた。
するとそこへ迅がやってくる。
「よう結人。ギアジェスとはちゃんとお別れできたか?」
「...まだ実感が湧かないな」
終戦は意外とあっさりなもので、ギアジェスが撤退した後は戦闘なんてなかったかのように警戒区域内には静寂が訪れた。
ギアジェスの目的は俺のグングニルであったため、市街地の被害はゼロ。
結果的にこの戦いは死者も出ずに終わりを迎えた。
「ほら、下でみんなが待ってる」
「みんなが?」
「打ち上げするんだって。みんな張り切ってるよ?」
迅はそう言いながら階段へ向かう。
「そういえば黒江が一番張り切ってたよ」
「?」
「結人が無事でよかったってさ」
黒江が...てかしれっと玉狛にいるのは何でだ?
「俺が、黒江も一緒にどう?って連絡したら、『今から行きます!』って本部からすっ飛んできたんだよ」
「そうなのか...てかしれっと心読むなよ」
「ははっ、なんかそんな顔してたから」
俺は懐からグングニルを取り出し、眺める。
「...行くか」
これからはギアジェスのリーヴとしてじゃなく、神代結人として生きていく。
グングニルと...エイルと一緒に。
CHARACTER INFORMATION
リーヴ(神代結人)
・PROFILE
名前 リーヴ(偽名・神代結人)
ポジション ???
年齢 17歳
誕生日 1月19日
身長 177cm
血液型 不明
星座 かぎ座
職業 ギアジェス偵察部隊→ボーダー協力者
好きなもの 商店街巡り、人間観察
家族 父、母
・SIDE EFFECT
縁感知(えにしかんち):視覚に入った人間の人間関係を糸として認識できる。信頼、敵意、友情、尊敬などを視覚的に把握可能。糸の太さである程度関係を判別でき、太ければ太いほど良好な関係らしい。
基本的に常時見えているが、意識すればある程度のON/OFFは可能。本人は普段視界の中心に入った人の糸だけを視るように意識している。
自身に関する糸は見えないため、他人からどう思われているのかは分からない。
・BLACK TRIGGER「黒き槍<グングニル>」
リーヴが持つブラックトリガー。
槍型のトリガーであり、近接性能は弧月と同程度のバランス型。
真価を発揮するのは投擲であり、その貫通力は絶大。
遠くに投げるほど威力が増大していく仕様で、射程の届く限りは青天井で強くなる。
欠点は投げた後無防備になることで、扱いがかなりピーキー。
自動帰還機能がついているが、一瞬で戻ってくるわけではないため、必ず隙が生じる。
・PARAMETER
「黒き槍<グングニル>」使用時
トリオン 36
攻撃 13
防御・援護 5
機動 8
技術 10
射程 14
指揮 3
特殊戦術 11
Total 100
シグル
・PROFILE
名前 シグル
年齢 30歳
誕生日 7月12日
身長 185cm
血液型 不明
星座 つるぎ座
職業 ギアジェス王国騎士隊隊長
好きなもの 強い戦士、ギアジェス
家族 父、母、弟
ギアジェスに忠実な愛国者。
その実力は高く、ギアジェス随一と言われている。
戦士として仲間や相手には一定の敬意を持っている模様。
・BLACK TRIGGER「竜殺剣<ファヴニール>」
シグルが持つブラックトリガー。
大剣型のトリガーであり、高い攻撃力を誇る。
攻撃をトリオン体に当てるごとにチャージが蓄積し、チャージを消費して高威力の砲撃を放つことができる。
・PARAMETER
「竜殺剣<ファヴニール>」使用時
トリオン 35
攻撃 23
防御・援護 7
機動 4
技術 19
射程 5
指揮 15
特殊戦術 11
Total 119
さすがにヴィザ翁の方が強い。
ちょっと数値が高い気もしますが、シンプルに強い武人をイメージしたらこうなりました。