「縁」を視る近界民、ボーダー隊員になる   作:白豆男爵

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近界民、ボーダーに入隊す

ギアジェスとの衝突から約1週間後、やがてその日は訪れた。

 

「ボーダー本部長の、忍田真史だ。君たちの入隊を歓迎する」

 

登壇した忍田さんがマイクを通して隊員たちに挨拶を告げる。

ここにいる俺も、晴れて今日から正式なボーダー隊員というわけだ。

まあ、C級は隊員というより訓練生という感じだが。

 

ちなみに、俺のランクの処遇については城戸指令と話がついている。

何やらブラックトリガー使いはS級に分類されるらしいが、ボーダートリガーを使ってみたかった俺は他の隊員と同じくC級として入隊としてさせてもらった。

もとろん無条件というわけではなく、その条件は、B()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

有事の際は臨時のS級隊員として動く場合があるため、部隊に所属していると色々と都合が悪いのだろう。

城戸指令曰く、『君の事情を知っている者がいる隊であれば考えないこともない』とのことだ。

 

つまり、俺はB級に上がっても基本的にソロの隊員として活動することになるとういうこと。

仮に隊に入るとしても城戸司令たち上層部の許可を得る必要がある。

まぁ、ボーダーのトリガーを使ってみたいという俺の目的に支障はないため、快く承諾した。

 

「ぜひ正隊員を目指して頑張ってくれ。君たちと共に戦える日を待っている」

 

そう言って忍田さんは敬礼する。

前々から思っていたが、この人は強者としての貫禄がある気がする。

戦っているところを見たことはないが、それでも分かる。

この人は間違いなく、強い。

 

「私からは以上だ。ここから先は、嵐山隊に一任する」

 

そして忍田さんが退場するとともに赤い隊服を着た4人組が入ってくる。

それを見るなり、周りの隊員は盛り上がりを見せる。

もしかしてそれなりに人気がある隊なのだろうか。

 

「これからオリエンテーションを始めるが、まずはポジションごとに分かれてもらう。攻撃手と銃手を希望する者はここに残り、狙撃手を希望する者はうちの佐鳥について訓練場に移動してくれ」

 

俺のポジションは前から決めていた。

スコーピオンを使う攻撃手だ。

理由は至極単純で、前に宇佐美からトリガーについて一式レクチャーされたときに一番しっくり来たのがこれだったからだ。

あとはシンプルに近距離ポジションに興味があったからといったところか。

 

「改めて、攻撃手組と銃手組を担当する嵐山隊の嵐山准だ」

 

そこから嵐山さんの説明が始まる。

正隊員にならなければ防衛任務に就けないこと。

そして、正隊員になるにはトリガーのポイントを4000まで上げなければならないこと。

嵐山さんの言う通りに手の甲を見てみると、1000と書かれていた。

どうやら仮入隊期間に素質があると判断された人はポイントが少し上乗せされているらしい。

 

ポイントを上げる方法は二つ。合同訓練で良い結果を出すか、ランク戦と呼ばれるものでポイントを奪い合うこと。

合同訓練は定期開催のため、早く上がりたければランク戦でポイントを稼ぐことになりそうだ。

 

どうやらまずは訓練を体験するらしく、俺たちは広い部屋に案内された。

 

「まず最初の訓練は、対近界民戦闘訓練だ。この仮想空間の中で、ボーダーの集積データから再現された近界民と戦ってもらう」

 

どうやらあの空間ではトリオン切れは無いらしく、思いっきり戦ってくれとのことだ。

初心者に配慮した親切設計ではあるが、そもそもいきなり戦って下さいと言われてみんな少々混乱している。

嵐山さんが説明するうちに、仮想空間内に仮想トリオン兵が生成されていく。

 

「バムスターか。少し小さくなってるが、確かに実力を測るには最適化もな」

「説明は以上!各部屋、始めてくれ!」

 

嵐山さんの掛け声とともに、戦闘訓練がスタートする。

ここで早いタイムがでるかどうかで才能を測っているといったところか。

タイムはまばらだが、大体の平均は2分半くらい。

たまに1分切りに近い人もチラホラいる。

周りを観察していると、やがて俺の番がやってきた。

さて、スコーピオンはまだ使い慣れていないが、どこまでやれるか...

 

【1号室、用意...始め】

「行くか」

 

俺は音声と合図と同時に駆けだし、弱点を狙って飛び上がる。

手元からスコーピオンを出現させ、下から目を切り裂いた...つもりだったのだが、傷が浅かったのか、まだ倒し切れていない。

 

「少し手元が狂ったな...」

 

俺はそのままバムスターの上に乗り、頭部まで移動。

頭上からスコーピオンを突き刺し、止めを刺した。

 

【1号室終了。記録、6秒】

「6秒か...」

 

最初の一撃で仕留められれば後2秒は縮まったな。

しっかり使いこなせるようにこれから鍛えていかなければ。

 


 

「まじかよ!」

「一桁台!?」

「全然見えなかった...」

 

突如一人の隊員が叩き出した6秒という結果にほかのC級隊員は驚いていた。

それに対し、木虎はその結果を見て眉をひそめている。

 

「6秒...」

「確か、あの子が話に聞いていた近界民の子ですよね、嵐山さん」

「ああ、そのはずだ。しかし6秒か。緑川の4秒に続いて2位の記録だな」

 

城戸司令から通達があった、ボーダーに入隊した近界民。

やはり近界民故にトリオン兵に詳しいからか、慣れた手つきで訓練用の仮想トリオン兵を撃破した。

最初の一撃がズレていなければもっと短い記録を出せただろう。

 

「木虎から見て、彼はどうだ?」

「最初の一撃も浅かったですし、まだ粗がありますね。でも、動きに迷いがありません。実戦経験者って感じの動きです」

「そうだな」

 

俺は訓練室でスコーピオンを見つめる彼を見る。

 

「面白いやつが入ってきた」

 


 

少しして全員の戦闘訓練が終わった後、次はブースのような場所に案内された。

どうやらここは個人ランク戦をするためのブースらしく、やり方やルールなどを一通り説明された。

 

「オリエンテーションは以上で終了だ。解散!」

 

さて、オリエンテーションも終わったところで、早速個人ランク戦をやってみることにした。

操作パネルを見ると、対戦相手の武器種とポイントが表示されている。

こうしてみると、やはり様々なトリガーがあるな。

B級に上がったら色々試してみたいところだ。

 

「さて、そろそろ相手を決めないとな」

 

やがて対戦相手を選択すると、トリオン体が仮想空間に転送される。

 

「おお、こんな感じか」

【個人ランク戦、一本勝負。始め】

「うおおおお!」

 

機械音声の合図と同時に刀のトリガー...弧月を持った対戦相手が突撃してくる。

弧月が振り下ろされるが、俺は半歩だけ横へずれて斬撃を躱し、空振った相手の懐へ潜る。

 

「動きが真っすぐすぎ」

「ぐわっ!?」

 

俺はすれ違いざまにスコーピオンで胴体を切り裂いた。

 

【緊急脱出。勝者、神代】

「まあこんなもんか」

 

そしてその後も何人かと対戦して勝利し、先ほどの訓練と合わせて俺のスコーピオンでのポイントは1632となった。

 

「思ったよりも増えないな。しばらくかかりそうだ」

 

色んなトリガーを試してみたいが、まあ急ぐほどのものでもないので、気長にやっていくことにしよう。

そう思っていると、後ろから声をかけられる。

 

「神代さん」

「お、黒江か」

「入隊、おめでとうございます」

「ありがとう、わざわざ来てくれたのか?」

「神代さんのせっかくの晴れ舞台ですから。聞きましたよ、戦闘訓練で6秒だったそうですね」

 

黒江は嬉々とした様子で話してくる。

 

「なんか嬉しそうだな」

「当然です!今日から同じボーダー隊員ですから。そうだ、隊員同士ですし、今日から神代先輩と呼んだほうが...」

「あはは、好きに呼びなよ」

「あれ、黒江じゃん。何してんの?」

 

すると奥から黒江と同い年くらいであろう少年がやってきた。

 

「その人は?見たところC級みたいだけど」

「今日入隊した神代結人だ。よろしく」

「神代...あー!戦闘訓練の記録が6秒の!」

「俺を知ってるのか?」

「知ってるも何も、基地でもう噂になってるよ?」

 

ふむ、もう噂になってるのか。

やはり俺だけ一桁台は目立ったのだろう。

かといって、手を抜くつもりもないが。

 

「俺、緑川駿。黒江とは幼馴染なんだ〜」

「そうなのか。よろしくな、駿」

 

俺は駿と握手をする。

左胸をよく見てみると、隊のエンブレムと共にA04と書かれていた。

 

(A級4位か、駿も相当強いんだろうな)

「ねーねー、俺とランク戦しようよ!ポイント変動なしでいいし、俺もスコーピオン一本でやるからさ〜!」

「ちょっと駿。あまり神代先輩に迷惑かけないで」

「いいよいいよ、せっかくだしやろう」

「いいの!?やったね!」

「まったく、ほどほどにしなさいよ?」

「分かってるって」

 

そうして俺と駿で模擬戦をすることになったのであった。




リーヴ(結人)の一連の出来事はは影浦が根付さんにアッパーかまして降格した後くらいです。
ゆりさんとかクローニンとかはこの時期からスカウト旅に行ってて不在、という設定で進行してます。
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