「縁」を視る近界民、ボーダー隊員になる   作:白豆男爵

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射手の才能

「...断る」

「えっ!?」

 

俺は出水の提案を速攻で断った。

 

「俺はしばらくスコーピオンメインの攻撃手でやるつもりだからな」

「そう言わずにさー...」

「そもそも、何で射手をやらせようとしたんだ?」

「お前が駿とバトった時に見せたスコーピオン伸ばし。昨日ある先輩と話して、あれはトリオン量が多くないとできない芸当ってことが分かった。そしてお前の観察眼・分析力があれば、高いトリオン能力と合わせて射手としての適性が高いと思ったんだ」

「なるほどな...」

 

確かに出水の言うことも一理ある。

射手のような後方ポジションはただ援護・攻撃するだけでなく、戦況を見極める眼が必要だ。

その点俺は偵察員として観察力を育てられてきた。

求められている能力は申し分ないだろう。

でも、目の前の目を輝かせている出水を見ていると、本音は違うんじゃないかと思えてくる。

 

「...で、本音は?」

「お前と撃ち合ったら楽しそうだなと...あ」

「はあ...」

 

この男、自分の欲求を満たしたいがために俺に射手を薦めてきやがった。

 

「...半分は本気だぞ?そのトリオン量と頭の回転でただの攻撃手やるの、普通にもったいねえって」

「でもなー。もう方針は固めてるし...」

「頼むって!数少ない射手仲間を増やすチャンスなんだよ!それにほら、A級の加古隊って知ってるか?あそこの隊長もスコーピオン持ってる射手だぞ!」

「加古隊...黒江がいる隊か。隊長本人はまだ知らないが、それでもメインは弾だろ。往生際が悪いな...」

「ぐっ...」

 

俺の反論にたじろいでいる出水だが、出水はなおも何か言いたげにこちらを見ていた。

出水もどうやら簡単に引き下がるつもりはないらしい。

 

「分かった!せめて一回!一回だけ射手トリガー触って見ろ!」

 

出水はそう言って懇願するような目で俺を見つめてくる。

これだと俺が悪者みたいじゃないか...

 

「...分かった。一回だけな」

「マジで!?よっしゃ!そうと決まればついて来い!太刀川隊の隊室に行くぞ」

 

そう言って出水が先導し、廊下を歩きだす。

道中スマホで誰かとやり取りしていたが、恐らく隊の人と連絡を取っていたのだろう。

出水の案内により、やがてその部屋に辿り着いた。

 

「柚宇さーん、連れてきましたー!」

「お、お邪魔します...」

 

俺が恐る恐るその扉をくぐると、奥から女の人が出てきた。

 

「いらっしゃーい。太刀川隊オペレーターの国近柚宇で~す」

「あ、神代結人です。よろしくお願いします」

「出水君から色々聞いてるよ。こちらこそよろしくね~」

 

なんというか、おっとりとした人だな。

 

「柚宇さん、訓練室の用意できてます?」

「モチのロンだとも。存分に使ってくれたまえ~」

「ありがとうございます。ほら、神代」

「おっと...」

 

出水はそう言って俺にトリガーを投げ渡してきた。

 

「予備のトリガーだ。シールドとバッグワーム、そして両手にアステロイドとハウンドが一つずつセットされてる。それ使ってくれ」

「分かった。...本当に一回だけだからな?」

「分かってるって。さあ、行こうぜ」

 

そして俺と出水は仮想空間に転送される。

 

「柚宇さん、トリオン兵お願いします」

『ほいほーい』

 

国近の返事と共に、訓練用バムスターが出現する。

 

「それじゃあ、早速見せてくれ」

「ああ」

 

俺は返事するとともに、トリオンキューブを出現させる。

シグルと対峙したときも使ったから、要領は分かっている。

 

「でっか!?」

『おお~、これはデカい』

「おいおい、マジかよ...」

(これは二宮さんレベル...いや、それ以上か!?)

 

相手は大型だし、細かく分けすぎない方がいいだろう。

そう考えながらキューブを大雑把に分割し、狙いをトリオン兵に定める。

そして、それを放った。

 

「アステロイド」

 

弾は何発かバムスターに命中し、轟音を立てて装甲を粉砕した。

 

「うん、こんなもんか」

「『...』」

(やっぱり、というか想像以上のトリオンだ。確実にボーダートップレベルのトリオン量だ)

「これで満足か、出水」

 

俺はそう質問するが、出水は答えない。

ただ俺をじっと見つめたまま、何かを考え込んでいる。

 

(これだけのトリオンがあれば色んな弾をセット出来るし、こいつにはそれを使いこなせるだけの頭がある。射手をやるには申し分ねえ)

「...出水?」

「わりぃ、神代。今ので逆にもっと見たくなった」

 

出水はそう言いながらトリオンキューブを構える。

 

「ここからは俺の趣味だ。俺と撃ち合え、神代。お前がその弾をどう使うのか見たい」

「はぁ、やっぱこうなるんじゃねえか...」

 

俺は出水に呆れながらもアステロイドを構える。

 

「本当にこれで最後だぞ?」

「へっ、そうこなくっちゃな!」

「「アステロイド」」

 

それを合図に、俺と出水の撃ち合いが始まった。

 


 

「おー、なんか面白そうなことやってんなー」

 

そう言いながら隊室に入ってきたのは太刀川隊隊長、No.1攻撃手の太刀川慶である。

 

「あ、太刀川さん、おかえりなさい。今出水君と神代君って子が撃ち合ってるよ〜」

「神代?誰だそいつ」

「出水君が連れてきたB級上がりたての新人だよ。本当は攻撃手らしいんだけど、絶対に射手にしてやるんだー!って張り切ってたよ」

「ほう、出水がそんなに興味を示すなんてな。確かに、出水と撃ち合ってるってことはそれなりの実力はありそうだ」

 

太刀川はそう言いながらモニターに視線を移す。

出水が優勢ではある。

それでも、神代は初めてとは思えない精度で撃ち返している。

 

「何だこいつ」

 

太刀川の口から思わず言葉が漏れる。

 

「本当に今日初めて撃ってんのか?」

「そうらしいよ〜」

「...ほう」

 

出水は触りたての神代を相手にメテオラ、そしてお得意のバイパーを封印、アステロイドとハウンドのみで戦っている。

だが、それを考慮したとしても、

 

「こりゃ確かに才能の原石かもな。出水が食いつくわけだ」

 

珍しく出水がやる気満々な理由にうなずきつつも、太刀川もまた、神代結人に興味を示しつつあった。

 


 

「ほんとにスゲえよ、お前...」

 

俺は神代と撃ち合いつつ、思わず言葉を零す。

確かにまだキューブの分割はそんなに速くないし、命中精度も荒い。

だが、撃ち合いを重ねるごとに無駄が消え、俺の動きに合わせて弾道を修正してくる。

俺はその成長を戦いの中で肌で感じ取っていた。

 

「こんなに楽しいのは二宮さんと撃ち合ったとき以来だぜ!」

「俺は対応するので手一杯なんだけどな...!」

「対応できるだけで十分スゲえよ。お前はやっぱり射手に向いてる!」

「「ハウンド」」

 

そしてお互いのハウンドが衝突し、爆発。

撃ち漏らした分はお互いにシールドで防御する。

神代のシールドの位置もどんどん正確になってきている。

後手後手に撃ち合っていた神代が、今では反撃までしてくるようになった。

俺は感情の高ぶりが抑えられなかった。

だからこそ、今まで封印していたそれを、思わず放ってしまった。

 

「あ、しまっ──」

 

俺は撃った直後、思わず声を漏らした。

無意識のうちに、封印していたバイパーを放ってしまった。

 

「!?弾が直前で曲がって...!」

 

神代は何とかシールドを張り、何発かは防ぐものの、残った弾がシールドを掻い潜ってその胴体を撃ち抜いた。

 

【戦闘体、活動限界】

「す、すまん、神代。つい...」

「いや、気にしてない。にしても今のがバイパーか。C級で使ってるやつはいなかったから、食らうのは初めてだ」

「まあ扱いがムズいからな。リアルタイムで弾道引けるのは今の所俺と那須さんくらいしかいない」

「よーお前ら。いい撃ち合いだったぞ」

 

俺と神代が話していると、太刀川さんが訓練室に転送されてきた。

 

「太刀川さん!帰ってきてたんすか」

「ついさっきな。お前らが撃ち合い始めたあたりから。にしてもお前センスあるな」

 

太刀川さんはそう言いながら神代に視線を向ける。

 

「ありがとうございます。えっと...」

「あ、自己紹介してなかったな。俺は太刀川慶。太刀川の隊長だ」

「神代結人です。出水にはお世話になってます」

「ははっ、こっちこそ、あんなに楽しそうな出水は久々に見たぜ」

「で、なんでわざわざ訓練室の方に来たんすか?太刀川さん」

「いやー、あれを見たら体を動かしたくなってな」

 

太刀川さんはそう言って腰にかかっている二振りの弧月に手をかけ、笑った。

 

「なあ、次は俺と一本やろうぜ、神代」

「...ちなみに拒否権は?」

「受けてくれるまでここから出さん」

「理不尽!?」

「というのは冗談だが、やり合いたいのは本気だ。受けてくれねえか?」

 

そんな太刀川さんの様子を見て、神代はため息をつき、渋々と言った様子で返事をした。

 

「本当に、一本だけですからね」

「よしきた!そうこなくっちゃな」

 

そうして今度は、攻撃手としての神代と太刀川さんの一本勝負が始まろうとしていた。




結人は案外押しに弱かったりする
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