「縁」を視る近界民、ボーダー隊員になる   作:白豆男爵

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加古望の勧誘

──キィン、という音と共に駿がグラスホッパーを使って宙に跳ぶ。

 

「バイパー」

 

俺はそこへ駿の両サイドへ向かってバイパーの弾道を引き、放つ。

 

「っ!シールド!」

 

駿はそれに対してシールドを両側に出して弾を防御。

俺はすかさずスコーピオンを二つ繋げ、マンティスを放つ。

駿はそこからグラスホッパーを使い、上に跳躍してマンティスを避け、こちらに向かってくる。

ガキン、と両者のスコーピオンがぶつかり合う。

 

「やっと捉えたよ、神代センパイ!」

「…アステロイド」

 

俺は駿のスコーピオンを捉えながらしゃがみ込み、背後に出してあったアステロイドを露わにする。

 

「げ、置き玉!?」

 

威力重視のアステロイドを発射し、駿の胴を容赦なく撃ち抜いた。

 

【最終スコア、6-4。勝者、神代】

 

「くっそー、今日も負けた…」

 

悔しそうな表情をしながらブースから緑川が出てくる。

太刀川さんや出水と模擬戦をした後、俺はメインにバイパーを、サブにアステロイドをセットすることにした。

B級に上がってから駿や出水、米屋、黒江とはよくランク戦をするようになった。

 

「ずっと背後に置き玉隠してたのか、さすが神代だな」

「神代センパイ、弾とカメレオン使いだしてから戦法がいやらしくなったよねー。バイパーもマンティスもすぐマスターしちゃうしさ」

「いやいや、バイパーは出水に比べたら全然だし、マンティスももっと距離感を掴めるようにならないと」

「風間さん…というより、攻めっけのある歌川を相手にしてる気分だな、あれは」

 

俺の隣で米屋がそう呟く。

するとそこへ声をかけられた。

 

「こんにちは、ちょっといいかしら?」

「あれ、双葉に加古さんじゃん。どうしたの?」

「加古さん?この人が…」

 

黒江や出水から話はなんとなく聞いていたが、会うのは初めてだ。

 

「初めまして、神代くん。私は加古望、双葉から少しは聞いてると思うけど、加古隊の隊長をやってるわ」

「神代結人です。よろしくお願いします」

「実は、前から神代くんと話したいと思ってたのよ。双葉から話はよく聞いて…」

「か、加古さん!それ以上は言わなくていいです!」

 

黒江が慌てて加古さんを制止する。

 

「あらそう?じゃあ早速本題なんだけど……神代くん、うちの部隊に入らない?」

「……えっ?」

 

俺はその提案に思わず素っ頓狂な声をあげる。

あまりにも突然だったため、周りにいた駿、米屋も表情が固まっている。

 

「私の部隊はね、メンバーはみんなイニシャルKで統一してるの。だからイニシャルがKで才能がある子には声をかけずにはいられないのよ」

「はぁ、それで俺を勧誘しに来たんですか?」

「そうよ。それに出水くんから聞いたけど、攻撃手なのに射手の適性もあるんですって?」

「それはあいつが勝手に言ってるだけです。あくまで弾はサブですよ」

「ふふ、そこは重要じゃないのよ。要はあなたが持っているセンスと、それを活かした戦い方に興味があるの」

「すごい神代センパイ!もうA級に勧誘されてるじゃん!」

「この段階で加古さんに声かけられるなんて中々ないぜ?」

 

俺を差し置いて駿と米屋は盛り上がっているわけだが、急に部隊に勧誘されてもすぐには決められない。

 

「俺は加古さんのことをよく知りません。隊の雰囲気とか、戦い方とか、知らないことだらけです。そんな状態で部隊に入るわけには…」

「別に返事は今すぐじゃなくてもいいわ。でも、あなたの言うとおりね。まずは加古隊(うち)がどんな部隊なのか知ってもらわなくちゃ」

 

そう言って加古さんは一足先に歩き出す。

 

「ついてきて頂戴。うちの部隊を紹介してあげる」

 


 

「真衣、杏、戻ったわよ」

「お邪魔します」

「二人ともおかえりなさい。それと初めまして、オペレーターの小早川杏です」

「喜多川真衣だ。よろしく」

「あ、どうも、神代結人です」

 

隊室に入るなり二人の隊員が出迎えに来た。

小早川はしっかりしてそうな人で、喜多川は………人間…だよな?

なんというか、構ってあげたくなる可愛さがある。

 

「神代先輩のお話は双葉ちゃんから伺っています。お会いできて光栄です」

「杏さんまで!?や、やめてください!」

 

黒江は即座に声を上げる。

どうやら色んな人に俺の話をしているようだ。

嬉しいと同時にちょっと恥ずかしいかもな…

 

「杏、戦闘訓練の準備をして頂戴。神代君に見せるから」

「了解です」

 

小早川はそう言ってデスクに向かう。

 

「紹介も済んだし、まずは私たちの戦い方を見せてあげるわ」

「見ててください、神代先輩。私、頑張りますから!」

「お、おう。張り切ってるな…」

 

そして加古さん、黒江、喜多川の3人は仮想空間に転送される。

一方俺はモニターからその訓練の様子を眺める。

 

「双葉ちゃん、強くなってるのを見てほしいんですよ。最近訓練頑張ってますから」

「それは知ってるよ、痛いほどに」

 

黒江とランク戦をするたびに、彼女が成長しているのを感じている。

戦術の勉強や実践の訓練を頑張っているんだろうなというのは何となく察していた。

自分を慕ってくれている子がこうして強くなっていくのを見るのはどこか嬉しいものがある。

 

「訓練、開始します」

 

やがて訓練用の仮想トリオン兵が出現、陣形を組むべく3人は散開する。

 

「あれ、喜多川はどこへ?」

「彼女は特殊工作兵(トラッパー)っていう特殊なポジションなんですよ。主に罠を仕掛けたり味方を援護するのが仕事です」

「なるほどな…」

 

そこからの連携は非常にスムーズな物だった。

黒江がトリオン兵に向かって切り込み、韋駄天を交えた高速軌道で翻弄。

加古さんが中距離からハウンドやアステロイドで援護し、時にはそのまま弾で敵を仕留める。

喜多川の罠に誘い込んでトリオン兵を妨害したり、テレポーターで二人の位置を変えて攻撃を継続したりと、さすがA級といった連携だった。

 

(黒江が前衛で敵を引きつけ、その間に加古さんが射線を作る。喜多川さんは直接戦わず、戦場そのものをコントロールしてるのか)

 

でも、それと同時に見えてくるものもある。

この隊は確かに強い。

個々の実力も申し分ないだろう。

だが、工作兵、それと前衛と後衛が一人ずつというのはどこか一箇所でも崩れれば一気に苦しくなりそうだ。

 

「ふふ、気づいたみたいね」

 

すると仮想空間から戻ってきた加古さんがそう言う。

 

「そうですね、連携はかなりのものですが、それぞれのポジションが一人ずつである以上、陣形の厚みが足りないように感じます」

「そのとおり。だからこそ、神代くんならその穴を埋められるでしょ?」

「…というと?」

 

加古さんはモニターに簡単な図解を表示させながら話し始める。

 

「神代くんはどの距離でも戦えるいわば万能手。双葉と組んで前線を張れるし、私と組んで射撃戦もできる。奇襲も得意みたいだから、真衣と組んで敵を翻弄することもできるでしょう」

「ふむ…」

 

確かに、加古さんの言うとおりだ。

俺のできることすべてが、加古隊の戦術を底上げすることができる。

 

「あなたには戦術の要、ポジション同士をつなぐパイプ役になってほしいのよ」

「…わざわざ役割まで考えてくれてたんですね」

「私だっていろいろ考えてるのよ?臨機応変に対応できる子が一人いるだけで、私たちの戦術は何通りも増えるのよ」

「神代先輩、ぜひ入ってください!」

 

四人は俺に期待の眼差しを向ける。

この隊に入るのも悪くないかもしれない。

けれども、いくつか懸念点がある。

 

「皆さんはご存じだと思いますけど、俺は近界民で、特殊な立場です。俺を隊にいれるなら、上層部に許可を貰わないと」

「ええ、その件は承知しているわ。許可が必要なら私が城戸司令に掛け合う。問題はあなたの意思だけよ」

「…それに、俺はまだボーダーという組織について、部隊について全然知りません。そんな状態で重要な決断をすぐに下してしまうのは、ちょっと違うと思うんです」

 

俺はまだ、知らないことだらけだ。

もっと色んな部隊に、人に触れて、理解したうえで決断したい。

 

「…分かったわ。私たちはいつでも待ってるから、いい返事を期待してるわ」

 

加古さんの言葉に、三人も頷く。

頭が上がらないな、本当に。

 

「ありがとうございます。では、今日はこれで失礼します」

 

俺は頭を下げ、その部屋を後にした。

 


 

「風間さん、何を見てるんですか?」

 

風間隊オペレーター、三上はデスクで映像を見ている風間にそう質問する。

 

「なに、少し面白い新人がいたからな。個人ランク戦のログを見ているところだ」

 

三上がモニターを見る。

そこには、カメレオンやバッグワームを駆使して奇襲を仕掛け、敵を仕留める神代のログが映っていた。

 

「……面白い」

 

風間はモニターを見ながら静かにそう呟いた。




神代結人の個人ポイント

スコーピオン:4723
アステロイド:3745
バイパー  :3262

トリガーセット
メイン:スコーピオン、バイパー、カメレオン、シールド
サブ :スコーピオン、アステロイド、バッグワーム、シールド
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