降谷零のクローンなオリ主とコナン世界   作:ラムセス_

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pixiv版から時間軸をずらす試み。
原作開始後間も無くから始まります。



転生者は降谷零のクローンである

 

 ふと気がつくと、私はどろりとした粘着質な液体に満たされた水槽の中にいた。

 

 水槽は大人一人分くらいの大きさで、棺桶よりは多少大きめか。

 びっくりして慌てふためきながら口を押さえる。口元にフィットする半透明のシリコンのようなものから太いチューブが伸びている。人工呼吸器のようだ。

 私の周りの水はぬとりとしていて、粘度の高さが抵抗になって身体にまとわりつく。

 

 こっ怖ぇえええええ!!!

 

 まさにパニックホラー。映画の導入にしたってワケが分からない!

 語彙力が乏しくて申し訳ないけれど、こんな水責め拷問を受けるような状況に陥る非日常を味わったことなんてない。

 

 自分が置かれている状況も分からぬまま、閉じ込められた恐怖に分厚いガラスを触った。

 

 そろり、と透明なそれに手を伸ばす。

 不意にビシ、という硬質な何かにヒビが入る鋭い音が耳を穿った。

 

 私は思わずびくりと肩を揺らした。足もつかないような水の中でまともな身動きは取れないが、目も耳も不思議と正常に稼働している。

 きょろきょろと見渡せば目の前のガラスに蜘蛛の巣状のヒビが入っている。水槽が割れそうになっている?

 

 数瞬の後、脆くガラスが割れる大音量と共に私は液体とともに外に投げ出されていた。

 

「がは、こほっ、何なんだここは…!どうなってるんだ一体!」

 

 私が咳き込んで悪態をつくと、聞き覚えのない苦悶に満ちたボーイソプラノが喉から躍り出て、もう何が何やら驚きすぎてわからない。

 ううん?なんだかCVでも付いていそうな美声だぞ?

 

 よく考えると座り込んでいるにしても私の視線はやけに低く、手はもみじのように小さい。

 

 視界にチラつく明るい金髪。浅黒い肌。

 手を握って開いて、全裸のままに腕を回してみて。

 あーあー、と妙に美麗な声を出す。

 小学生の低学年くらいの身長は大人の私には随分と低く感じる。

 ……が、間違いなく己の体である。

 

 まさか本当にSFホラーで、記憶や意識だけ取り出されて男児の脳にぶち込まれてしまったとかそういうのだろうか…?

 そういう映画が昔あったような気がする。

 

 不安になって辺りを見回してみれば、悪い方向に想像通りの────もっと言えば最悪かつ狂気的なSF風景が広がっていた。

 

 薄暗い室内に立ち並ぶのは円筒形の培養槽だ。

 私が入れられていたのと同型のそれには、整った顔立ちの金髪の男児が浮かんでいる。

 ……ただ、残念ながら正常なのは首から上だけで、下半身は奇妙に膨れていたり捻れた挙句トカゲのようなものと合体したりしていたが。

 顔は人間なのにバイオハザードもかくやという異形の身体。

 中途半端な人間性が生理的嫌悪を掻き立てる。

 

 私は悲鳴すら上げられなかった。

 そのどれもが目を虚ろに開き、意志なき瞳で外を映しているようだったから。

 

 メカメカしいチューブとパネルの間に標識らしきシンプルなプレートがかかっている。

 967-OA2。

 私の出てきた培養槽の上にあるプレートに刻印されたシンプルな英数字だ。

 

 それ以外にも同じように並んでいるのから察するに、これは管理番号らしい。

 

 …………。

 はっはっは。どうやら濃厚なSF長編モノのアバンタイトルだったようだな。

 

 どうせここはクローン研究所とかそういうアレで、私も彼らと同じクローンだったりするのだろう。

 偶然、魂無きそれらに私が宿ってしまったとかね。

 

 エヴァンゲリオンの二次創作とかで読んだことがあるから詳しいんだ。

 わたしが死んでも代わりはいるもの。かっこ震え声。

 

「くそ、くそ!最悪だ、早く逃げないと、……いや違う。それだけじゃダメだ。絶対に潰さないと!」

 

 何はともあれこの状況で私がやるべき事は見えた。

 

 つまり、このクローン達の処分と研究所の焼き討ち、そして生きて脱出し然るべき場所で保護してもらうことだ。

 この見るからにどうしようもねぇ研究を残して逃げれば、間違いなくこの先私に被害が行く。

 生き残りの実験体を巡って刺客が差し向けられたり、第三組織がその技術の深淵を奪い取ろうとしたりとかの定番事件が。

 

 急がば回れ、と一つ頷く。

 静謐なばかりのラボで裸のままにそーっと抜き足さし足。

 

 そう言えば私って前世で死んだ記憶があるから、これはいわゆる転生というやつでは?

 転生先がハードモードなのは若干どころではなく気になるが、まぁこれも降って湧いた幸運である。

 人生二度目ということで多少のことは大目に見よう。

 

 あとコレは強がりとかではなく本心なのでかっこ震え声とか語尾につけないように。

 別に怖すぎて頭がパーになってるとかじゃないから。

 ホントに。いいね?

 

 と、いうわけで偶然目が覚めてしまった全裸のクローンAこと私は、第一ダンジョンたる謎の研究所を探索し始めたのです。

 

 

 

 

 どうやら、ここは地下施設らしい。

 隣に埃を被った古い資料室があったから、簡単に概要を把握することができた。

 

 資料を見るに、ようは悪の組織の研究施設らしい。

 

 やっているのは優秀な人材のクローン、加えて生体兵器の作成。

 ただ昨今は結果の出ない状況に予算を減らされつつあり、資金難に喘いでいる。

 「採算の取れない研究は閉鎖すべきでは」との声もあり、崖っぷちに立たされているようだ。

 

 今では設備も古く頻繁に故障するようになり、修理に苦慮しているらしい。

 

 だから私が水槽を脱出してもアラームの一つもならなかったと言うわけだ。

 資本主義がこんなところにまで顔を出して悪の研究者を苦しめているのは、なんとなく愉快なような悲しいような。

 

 そんなわけで、今の私の名は967-OA2。

 組織幹部バーボンこと安室透のクローンであり幼体。

 最新の侵食型生物兵器である。

 

 ちなみに結構極悪仕様。

 見た目は普通の人間だが、生態はエイリアンとかその手のキモい生き物のそれである。

 推しのガワを使って冒涜的生命を作らないでほしい。

 

 そう。推し、安室透。

 かの国民的漫画名探偵コナンの登場人物であり、我が推したるイケメンのクローンである。

 

 クローン降谷零とかマジ私得に神話的恐怖が入り混じる特大の厄ネタ事案である。

 人権ないなった……しかも生物兵器として別の生物の要素まで入れられて次々廃棄されてるとか。

 やば過ぎて逆にニュースにもならないレベルの事案である。

 

 まあ、現実逃避それくらいにして。

 

 状況は結構最悪だ。

 生物兵器の実験体が逃げ出したとかラボ側にとっても生死に関わる問題だからね。

 全力で始末にかかってくるだろう。

 黒の組織は軍事的にも力のある奴らだから、応援を呼ばれればいくら生物兵器でも蜂の巣にされてしまうことは間違いない。

 

 その上で彼らは手が広いため、私の情報が知られれば追っ手を巻くのは至難の業だ。

 私は恐々と表情を強張らせながら頷いた。

 

「………全滅、させるしかない」

 

 そう、やはり研究所の焼き討ちが必須になるわけだ。

 

 全ての資料と実験体を焼き払って、何かが逃げたのかすらわからなくする。

 もちろん生きて逃すものがあってはいけない。

 

 幸い私には幼体ながら生物兵器としてのスペックがある。

 こう、うっすら降谷零の記憶や知識もある。

 

 改めて思うのだが、クローンで知識と記憶があるってマジやべぇわ。

 ここから安室透の潜入捜査がバレるまである激毒じゃんか。

 

 ともかく、私はやり遂げねばならぬ。

 この意思持たぬ哀れな兄弟達を息の根を止めて、邪悪な研究を燃やし尽くして、研究員達を殺し尽くす。

 

 それで初めて「問題なし」と言えるのだ。

 

 うおおお、やってやる!やってやるぞ!

 私は己を鼓舞し、頷いた。

 

 自分のため、推しのため、世のため。

 クローン、いっきまーす!

 

 

 

 

 

 ということで前略。

 

「ふふ、楽な仕事でした。もっとも……僕はゼロのトップエースたる降谷零のクローン。この程度は当然の結果ですがね」

 

 おおよそ2時間後。

 燃え上がる研究所を背景に、私は大人用のシャツ一枚で裸足のまま光魔法かっこいいポーズを決めていた。

 裸は流石の私も羞恥が過ぎるのでね。

 

 しゃらぁっと髪をかきあげた姿は6歳児にしては絵になっていたはずだ。浅黒い肌に幼くも整った顔立ち。

 これは間違いなくまだ見ぬ劇場版における原作者の書き下ろしシーンなはず。

 ちょうど舞台はハリウッド系SFパニックホラーだったのだから、豪華にカットが入っているはずだ。

 おいそこ、ギャグシーンとか言わないように。

 

 いやぁ、色々ありました。

 数々の極悪非道の研究やマッドサイエンティストの野望の吐露、某大企業との癒着、エトセトラ。

 この二時間だけでハリウッド映画もかくやという獅子奮迅だった私は、前世今世含めていままでで最も輝いていた。

 

 

 しかし危なかった。

 やってやれないことはないと言うけど、本当に成し遂げられてしまうとは。

 

 この降谷さん由来のスーパーな肉体と頭脳が無ければ間違いなく死んでいた。

 

 というか今振り返っても何で生きてるんだ私。降谷零補正とかか?

 ちなみに詳細については劇場版クローン主〜冒涜の研究者(コンダクター)〜をご参照ください。

 

 と、ここらで追加で研究所を家探しする中で得た情報を少し整理しよう。

 

 まず最初に、やはりここは名探偵コナンの世界である。

 この研究所に保管されていた機密書類に「幹部バーボン(安室透)の遺伝子を用いて…」とあったし。

 ホラーゲームお馴染みの研究員の日記には「RUMの管理下において予算は日に日に…」とか堂々と記してあった。

 紛うことなき名探偵コナンに私は目を白黒させる羽目になった。

 

 どうも、あの培養槽に浮かんでいた異形の怪物達はバーボン本人すら預かり知らぬうちに作られていたらしい。

 つまり無断実験。

 何故安室透が選ばれたのかは定かではないが、断片的な情報から推察するに「安定した組織片を採取できたのが安室透だけだったから」だと思われる。

 

 あの無機質な水槽の中、何も知らず何も成せないまま無惨に保存されていた「出来損ない」達。

 

 唯一の「成功作」たる私は外に出て動けるだけの身体だった。

 無理な遺伝子改造や脳への科学的処置の数々を耐えきり、無事に生命としての体裁を成したままで成長できたのは私だけ。

 

 でも彼らは違う。

 肺に、脳に、全身に異常のある彼らは培養層から出るどころか意識が宿ることもない。

 人道を顧みない無茶苦茶な実験が彼らを不出来な肉塊へと変えてしまった。

 単なる失敗作として研究者たちに見放され、培養槽の中で実験結果の一つとして保存されるだけの日々。

 

 だから彼らに自由はなく人権もないが、それを気付けるだけの自我も無かったのだ。

 

「………次の僕らはもう生まれない。だから安らかに眠れ、僕の兄弟達よ」

 

 研究所は潰した。

 研究は全て処分して破棄して、研究者は炎の中に消えていった。

 

 この忌まわしい実験成果を知る物は既にこの世で私一人だけ。

 弔うものの居ない彼らのせめてもの墓標として、炎上する研究所と破壊された実験データを思い起こす。

 

 その死後に幸福あれ。

 私という実例があるように、次はきっとあるはずだから。

 

 

 ────まぁそれはともかく。

 本人に内緒でクローン作られてたってのは流石にヤバい。

 特に公安からの潜入捜査官的には相当な事案なので、早急に降谷さん本人に伝えねば!

 

 肩からずり落ちそうなシャツを手で押えながら眦に力を込めて前を見た。

 私はバーボン、すなわち100億の男にして空前のコナンブームを世にもたらした立役者の一人、降谷零その人のクローンである。

 

 しかもその上位互換を目指して作られた組織の技術の粋。

 あらゆる違法な手段を用いて強化された脳と身体は常人の遥か上をいく。

 

 つまりアルティメット降谷さんイコール私ということだ。

 

 だから堂々と本人に会いに行っても不自然じゃないし、何なら「僕のオリジナル!」と親しげに呼びかけても咎められはしないだろう。

 真正面から推しを愛でてもクローンがオリジナルに憧れてるみたいな絵面に収まるはず。

 

 ……んん? 私が?

 我が最推しあむぴ様のクローン……?

 

 ありがとう研究、ありがとう黒の組織。

 

 私は改めて頬肉を噛み締めてニマニマ緩む表情筋に気合いを入れた。

 

 糞マッドサイエンティスト共が世界に残した唯一の善を私が慰謝料代わりに受け取ろう。

 この身体は私が大切にします。

 アデュー兄弟達、君らの分まであむぴのご尊顔を味わっておくから化けてでるんじゃないぞ。

 下手に出られたら安室さんのSAN値が心配だからな。

 

 私は火災によって煙に濁る空を見上げた。

 

 幼い四肢はか弱く力ない風体で、しかし鍛え上げられた軍人を遥かに凌駕する力を秘めている。

 浅黒い肌に金髪、スカイブルーの瞳を備えた美貌はオリジナルの幼少期そのもの。

 脳にコピーされた降谷零の知識は組織の研究所を軽々と潰せるハイスペックさ。

 

 つまり転生チートって奴だ。

 チートなうえに推しのクローンになれるとかもう最高じゃないか!

 

 ふはははは、待っててくださいオリジナル。

 私が貴方に尽くしてみせます。

 けっして下心とかじゃないですホントです。

 

 

 そんなこんなで単身東都の米花町を目指すクローン、識別番号967-OA2さんなのであった。

 





・識別番号967-OA2
原作知識あり転生者。
根本的に生物兵器なので人間ではないが、見た目は降谷零六歳。
誰が見ても一瞬で血の繋がりが理解できる見た目をしている。
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