降谷零のクローンなオリ主とコナン世界   作:ラムセス_

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罪の理解

 

 深夜。

 ボロンボロンの風見さんが帰宅して来た。

 

 どうやら念のため私の様子を確認するため帰って来ただけらしい。

 「着替えたらすぐ庁舎に戻る。君は寝ていてくれ」と声をかけられた。

 その顔には明確な疲れが見えている。

 

 たぶん東都水族館から直行して来ただろうから、私はトコトコと風見さんに近寄って微笑みかけた。

 

「あ、もしかしてどこかで夕飯食べましたか?一応作ってあるので温めますよ」

「作ったのか!?」

「はい。帰ってこないようなら明日の昼食にしようかと思いまして」

 

 そういうと、ちょうどよく腹の虫が鳴き始めた風見さんは、グーーギュルギュルと鳴るお腹を恥ずかしそうに押さえた。

 あの忙しさで食事する暇なんてないわな。

 

 返事を待たず電子レンジに皿を放り込むと、いい匂いがあたりに漂って来た。

 

 風見さんは天井を見上げて涙を噛み締めている。

 

「大袈裟ですよ。そんなに凝ったものでもないですから」

「帰ったら温かい飯がある。そのありがたみが君にわかるだろうか」

 

 独身社会人の悲哀らしい。

 

 疲れた体にはガツンとしたものが欲しいだろうし、格式張らずに豚バラ丼ネギたっぷりにしておいた。

 どうせそのあと仕事だと思ったのでにんにくは不使用。

 きゅうりの浅漬けと味噌汁、軽く口直しのパイナップルを添えて。

 

 ほかほかの豚バラ丼を前に、風見さんの目が輝いた。

 

「おお……弁当もそうだが、これも本当に君が作ったのか?」

「身長が台所に合わないので持って来た折り畳み踏み台は使いました。早く大きくなりたいです」

「フライパンとか、持てるのか?」

「それはご心配なく。この体でもオリジナルより筋力ありますから」

 

 「おお」と再び謎の感嘆符。

 そのままご飯タイムと相成った。

 

 よほどお腹が減っていたらしい。

 バクバクと激しくタレの絡む飯を掻っ込んでいる。

 やはりこの時間までご飯を食べられていなかったのは間違いない。

 

 無我夢中で食べ終えてから、風見さんは一息ついて咳払いした。

 

「明日は帰れるかわからないから、晩御飯も気を遣わなくていい。………本当に美味しかった、ありがとう」

「この後が本番ですもんね。リニューアルしたばかりの東都水族館側との話し合いと監視カメラの確認、メディアへの口封じ。ふふ、考えただけで気が遠くなります」

「本当にそうなんだ!」

 

 風見さんはにわかにいきりたった。

 

「あの人は不可能を可能に変えるが、その代償はしっかり私たちにのしかかる!」

「しかもその代償は残業という形で積み上がると」

「そう!その成果を思えば払い甲斐がある代償といえばそうだが、私たちも人である以上限界があって…!」

 

 ぬおおおお、と溜まった鬱憤が爆発した風見さんが苦悩している。

 そしてほへぇ、と肩を落としてトーンダウンした。

 

「済まない、君に愚痴るような話ではなかった」

「まさか。公安がこういう時に愚痴らないでいつ愚痴るんですか。どれだけ喋っても問題ない魔法の耳ですよ」

「……誘惑が上手いな。心がぐらっと来た」

「こうしてこまめに吐き出すことでコンディションを保てば仕事も捗ります。オリジナルには黙っときますので存分に」

 

 私が誘惑すると、風見さんは「うぐっ」と呻いてからそろそろと顔を上げた。

 

「もう15分ほどで出発するんだが、それまで私の話を聞いてはもらえないだろうか」

「もちろん」

 

 キュラソーがどうなったとか、聞きたいことはたくさんあるが。

 そんなこと後でいい。

 しばらく、風見さんのためのまったり相談スペースを開催していたのだった。

 

 

 

 

 

 翌日朝。

 明け方早くに電話がかかって来た。

 

 むにゃむにゃ眠気まなこでスマホを取る。

 

「はーい」

『空か、お前本当に空か!?』

「コナン君!はい、無事戻りました阿笠空です!」

『悪い、すぐ阿笠邸に集まれるか!?』

 

 前置きもそこそこにコナン君は急いだ様子で切り出した。

 どうやらとっても焦っている様子だ。

 

 このスマホの電話番号はまだほとんど人には教えてない。

 もしかしたら番号を灰原さんに聞いたのかもしれない。

 

「んん、今日コナン君は学校ではありませんか?毛利探偵のところを抜け出して大丈夫ですか?」

『緊急事態だ。俺も気づいたのは今日になってからなんだが、父さんから連絡が入ってて。アメリカのネバダ州のニュースは見たか?』

「いえ……ネバダ州?」

 

 私が捕えられていたのは別の州だ。

 私は疑問符を浮かべて、ひとまずネットを検索した。

 ここにきて軽くニュースは確認していたが、ここのところは脱走した研究所周りの地域ニュースしか確認していなかった。

 

 ネットを検索すると、まず目に留まったのはセンセーショナルな見出しだった。

 

 「怪生物を目撃か!民家を襲った謎の大型肉食獣に騒然!」との文言が踊っている。

 監視カメラの映像の切り抜きと思しき荒い画像には、兵士型が民家の窓ガラスに食い付いている姿が映っていた、

 

 私は深呼吸した。

 

「卒倒していいですか」

『いいわけねーだろ。ともかく阿笠邸に来てくれ!俺もすぐに向かう!』

「わかりました!」

 

 えらいことや…戦争や…。

 手足が逃げ出すとどうなる。知らんのか。人類は滅亡する。

 おいおい死んだわ人類。

 

 数々のネットミームが流星のように頭の中に流れては消えていく。

 

 ともかく変装用のラバーマスクをむぎゅっと被り、人目を避けてそそくさと阿笠邸に向かう。

 嫌な想像がグルグルと頭を中を駆け巡り、冷や汗が止まらない、

 いや…マジか?

 

 そして阿笠邸に向かうと、コナン君は阿笠邸の外に締め出されてしまっていた。

 朝早すぎて灰原さんと博士が起きてくれなかったらしい。

 しょぼんと屋敷の前でしょぼくれるコナン君はちょっと面白かった。

 どうやらコナン君も焦っていたようだ。

 

 私は合流してコナン君に声をかけた。

 

「外だと目立ちますので、ひとまず工藤邸に入りませんか?」

「けど工藤邸には昴さんが…いや、この際しゃーねーか。話せるならそれでいい、行こう」

 

 隣の工藤邸は真っ暗だったが、廊下だけ明かりをつけて応接室に入る。

 コナン君はソファに座って一息ついた。

 

「ともかく、俺が父さんから聞いたのは、何らかの理由で幼生が外に漏れたってことだ」

「理由が定かではないんですか?」

「軍が情報を伏せてるらしい。漏出元は閉鎖。研究者で死者が出てるが、それは『事故』ってことで原因を公開してないらしい」

 

 それは……さぞ遺族からの突き上げも激しかろう。

 現場クラスでは抑えきれないだろうし、もうすでに上層部も事態を把握して、その上で混乱を防ぐために組織的に情報を伏せているのだろう。

 

「しかし…多少でも情報が優作氏に開示されているということは、軍と優作氏に期待をしているのでしょう。優作氏が軍から求められたのはなんなんです?」

 

 私が問いかけると、コナン君は深刻そうに俯いた。

 

「何か局面を打開する情報、だ。藁にもすがる思いだったんだろうな。以前の研究に一枚噛んでた父さんに縋りつくぐらいには」

「まだそこまで状況が悪いようには……いえ、隠蔽しているだけでもうかなり感染が広域に広がっているのかもしれませんね」

 

 完全に終わり散らかしている。

 私は嘆息した。

 

 つまりこうだ。

 私の幼生を、別の研究所に移送して研究を続けていた。

 そこで脱走事故発生。

 ネバダ州の広い範囲に手足が散らばってしまった。

 

 軍はどうしようもなくなったと判断し、一度は決裂した優作氏に泣きついた。

 泣きつかれてもどうしようもない優作氏は、一縷の望みをかけてコナン君に電話したというわけだ。

 

 私がまたコナン君のところに戻って来てるとは知らないはずだし。

 コナン君、ひいては灰原さん達が幼生を死滅、あるいは感染を遅らせるような研究データを所持していないか確認したかったのだろう。

 

 そしてコナン君が私を呼んだのは、それは私を米国に送り込むために違いない。

 

 コナン君が真っ直ぐに私を見た。

 

「悪い、お前が生きてるって聞いて真っ先にすべきはお前の無事を祝うことなのに、こんなことに呼んじまって」

「構いませんよ。僕を呼んだのは米国の幼生駆除に協力を仰ぐためですよね」

 

 私が淡く笑って確信を持ってそう言うと、コナン君はきょとんとしてからカラカラ笑って見せた。

 

「まさか。そんなことしたら次に狙われるのはお前の身柄だろ。またオメーを殺させるような真似はしねえよ」

 

 私は瞬いた。

 米国に私を送り込むのではないのか?

 コナン君は鼻白んでむすっとへそを曲げた。

 

「第一、あんな州単位に拡散した幼生をお前一人でどうにかできるわけねーだろ。命令の範囲だって広大ってわけじゃねぇんだし」

「……はは、そうですね。その通りです。僕が勝手に覚悟を決めただけです」

「見くびんなよ。もうあんな悔しい思いはしたくねーんだ」

 

 コナン君はわしゃわしゃと私の髪を撫でて。

 それから優しく、どこか救われたように目を細めた。

 

「お前はもう家族なんだ。あん時、俺は心底後悔した。止められなかった。何も知らないうちに事が起きて、お前が死んで。自分の無力を痛感した」

「………」

「ほんの少しだけ、人が罪を犯す理由も、理解した」

「!!!」

 

 私は目を見開いた。

 そんなにも、そんなにも思ってもらえているとは。

 身が震える。

 この輝ける名探偵の重荷になってしまったのではないかと、少しだけ後悔する。

 

 コナン君が「少しだけな!」とわざとらしく明るい調子で肩をすくめた。

 

「だから全力で他の方法を探したい。お前は何か知ってることはねぇか?」

「それならばうってつけの方法が。僕も昨日知ったばかりなのですが、阿笠博士の持つ命令拡散機をご存知ですか?」

「あの押収品か?あれは米軍が持ってっちまって。あれだけでも返してもらえないか掛け合ったんだけどさ」

 

 心底悔しそうにコナン君が歯を食いしばった。

 私が攫われた後の混乱を、その苦い顔から少しだけ察することができた。

 

 人が罪を犯す理由を、コナン君が理解するほどの苦難がそこにはあったのだ。

 

「アレ、二号機を博士が完成させていました。その動作が確認できれば、量産して米国に配備すればほぼ鎮圧できます」

「おい、それは……」

 

 コナン君が顔色を変えた。

 つまり私にも命令を届かせることができるということで、それはそのまま私の命の危機、暗殺の危機に相当する。

 

 まずその懸念がコナン君の頭をよぎるほど、私は思われている。

 身が引き締まる思いがする。

 

「それまでに僕が命令パターンの変更を習得すればいいだけの話。杯戸中央病院にそのサンプルがあるんですから、きっと可能です」

「………本当に、大丈夫なんだな?」

「はい。そのぐらい尻を叩かれた方が調子も出るというものです」

 

 なんか外に物音がする。

 多分昴さんが盗み聞きしているのだろう。

 米国にとっての朗報だし、多少は構わない。

 

 コナン君が力強く頷いた。

 

「なら交渉は俺に任せてくれ。決して不利には持って行かせないようにする。あらゆる手を尽くして見せる!」

「はい。頼りにしています、コナン君」

 

 私はコナン君に、全幅の信頼で持って応えた。

 自身を軽んじてどうなってもいいという心ではなく。

 彼ならばきっと奇跡を形となすであろうと言う信頼でもって。

 

「生きててくれてありがとう。お前が帰って来てくれて、嬉しいよ」

「……はい。ただいま、コナン君」

 

 彼はようやっと、心から笑ったようであった。

 





・昴さん
諸々全部上には黙ってるつもりの人。
ボウヤには命を救ってもらった恩義がある。
けどポストアポカリプスの米国でFBIをするのは大変すぎるのでなんとかしたい気持ち。
懇意にしてる米軍退役将校を紹介すべきか。

・コナン君
オブラートに包んでいってるけど割とガチに憎しみが湧いた人。
そこで踏みとどまれるから光の主人公でもある。
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