降谷零のクローンなオリ主とコナン世界   作:ラムセス_

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おまけの話

 

 これはとある男の小話である。

 

 あれから4日。

 あまりにも短い期間で、多くのことが起こりすぎた。

 

 男は核シェルターの中で湯を沸かし、今日の分の粉コーヒーを注いだ。

 やや褪せたコーヒーの香りが男の心を癒す。

 

 初めは街の住人が「荒野で化け物を見た」と言い出したのだったか。

 みんな気のせいじゃないか、何かの見間違いだろうと取り合わなかった。

 

 ほぼ同時期に、近場の研究所で事故が起きたことの方が大きなニュースだったぐらいだ。

 親族が研究所に勤めているという知り合いから聞いた話だが。

 どうもろくに詳細も伝えず、死体の返却もなく葬儀さえできない状態だったらしい。

 知り合いはそのことにひどく腹を立てて、あちこちで研究所を罵っていた。

 

 その頃は別段、生活が変わるなどとは思っていなかった。

 これから裁判になるだろうな、とぼんやり思っただけ。

 

 急速に悪くなったのはそれからだった。

 

 翌日、住人が見たという化け物が街の端にある民家に現れたのだ。

 それはまあ酷い見た目の生き物だった。

 

 人の胴体をいくつもつなげて、そこに人の腕をひと抱えも生やしたような、デザイナーの趣味を疑う生物だった。

 サイズは中型犬ほどだが、ずらりと乱杭歯の生えた口は大きく、犬なんかよりもっとずっと脅威だ。

 

 それは血に飢えて狡猾で、異常に執着心が強かった。

 

 食いつかれて足を怪我した老婆を助けるのに、大の大人五人がかかりだった。

 小型のそれは拳銃で容易に撃退できたが、死の間際になっても老婆を離そうとはしなかった。

 

 街は騒然としたが、噂を聞きつけた軍がすぐにやってきて、化け物の死体を持っていってしまった。

 残されたのは血みどろの地面と、動揺の広がる住民たちの野次馬のみ。

 

 その段階で、死に物狂いで街を離れるべきだった。

 そう、男は今も反省している。

 

 直にこの辺は封鎖された。

 移動が禁止され、軍は「化け物を駆除するまでの短い期間のことだ」と皆に説明した。

 ホラー映画のようだと冗談で笑い合っていたが、内心これで終わらないだろうと予感がひしめいていた。

 

 もう1日もすれば、状況は一変した。

 

 家に篭り、バンバンと板を打ちつけた窓を叩く怪物に怯えながら、皆が震えて過ごすことになった。

 あっという間に爆発的に化け物は数を増やし、買い出しはすぐに命懸けの行為に変わった。

 化け物はもはや昼夜問わずひっきりなしに街に現れて、獲物を探し始めていた。

 

 男の家には発電機を備えた立派なシェルターがある。

 睡眠のため夜に避難しにきていた知人も昨日から来ていない。

 無事だといいのだが。

 

 今日も「買い出し」の時間が始まる。

 

 シェルターの扉を開けて、慎重に蚊帳を張った緩衝スペースに入る。

 

 皆誰もが「あの化け物に噛まれると頭に化け物が入ってくる」と言っていたが。

 男はそうではないと思っている。

 

 この辺を飛ぶ、あの妙な形の羽虫。あれこそが原因だと思うのだ。

 また細かい虫が外に舞っている。

 だが蚊帳に阻まれて、中には入ってこれないようだ。

 

 あれは一応殺虫剤でも倒せるから、蚊帳の中からシュッと噴射して駆除する。

 もう殺虫剤の残りも少ないから、それも確保せねばならないだろう。

 

 男の姿は、頭からすっぽり蚊帳を被ったようなぼってりした見た目だった。

 分厚いゴム手袋越しになんとか銃を持って、蚊帳の外に出た足は脛まで覆う分厚い皮のブーツに靴下を何枚も履いている。

 

 昨日、とんでもなく大きな怪物の影を見た。

 より慎重に行動すべきだろう。

 

 しばらく歩いていくと、ショッピングモールに向かうまでの道で半壊した民家からか細い声が聞こえてきた。

 

「たすけ、助けてくれぇ……!」

「………」

 

 地元民たる男は知っているが、その声はここに住んでいた住民の声ではない。

 先手必勝でショットガンを叩き込む。

 「ギャアアアア!!!」と醜い怪物の声が聞こえた。

 

 塀の向こう側を覗くと、事切れた大きな怪物の死骸が確認できた。

 生存者だったら申し訳なかったので、少しホッとする。

 

 念のため持っていた油をかけて、火をつける。

 油は貴重だったが、こういう時のために持ってきていた。

 死体から例の虫が湧いているのは幾度か見たことがあったからだ。

 

 助けが来ることは期待できない。

 ネットは時々繋がるから、広域で同じようなことが起こっているのは分かっている。

 

 きっと隣町の電波塔をなんとか維持しようとする人間がいるのだろう。

 

 男は最近、化け物についての考察をネットに上げている。

 時々ネットが繋がるたびに閲覧数が爆発的に伸びているのが確認できて、それが生存の糧になっている。

 

 いったいどれほどこれが続くのか。

 わからないまま今日も男は黙々と生存のための活動を続けていた。

 

 

 

 

 

 

 ネットを閲覧すると、アメリカで封鎖中の区域の生き残りと思しき人のSNSが更新されていた。

 

 この手の投稿はフェイクも含めてたくさん見つかる。

 アメリカ政府は完全に後手に回っているようで、未だ事態の収拾には程遠い。

 歯がゆいばかりであった。

 

 今日も今日とて阿笠邸に日参すると、コナン君も学校を休んで対応に当たっていた。

 彼の部屋はグッチャリと書類が張り出されたり置かれたり、何が何やらの状況だ。

 

 コナン君は「はい、手筈通り頼みます」と工藤新一の声で言ってから電話を切った。

 

「どうです?」

「ひとまず主要ハブへの配備は済んだ。結果はすぐに示せたからな。すぐに増産体制が整ったよ」

「ひとまず物資の投下は続けられるということですか」

「ああ。次の生産からはやばい地域を巡る救助車両に搭載するって話だ。全米に飛び火する前に食い止められればベスト、って感じだな」

 

 もはや事態は複数州にまたがる大事件になってしまっている。

 空港が手足の襲撃を受けて使えなくなってしまったので、まずは現地の空港へと優先的に命令拡散機を配備。

 取り残された人のための物資を運んだり、救助活動を続けているらしい。

 

 コナン君はソファにへたり込んで、とてつもなくお疲れの様子だった。

 あちこちに電話かけまくって頭を全力で回して。

 

 なんかいつの間にか対手足防疫活動の相談役にまで昇格したらしい。

 偉い人の電話をいくつもしのぎ、その発言権を増しているらしい。

 コナン君が無双してて私も嬉しい限りである。

 

 というか、こんだけ長時間の国際電話料金エグそうだな。

 とはいえそれだけの金で救われる人の数を考えたら、格安と呼ぶべきものではあるだろうが。

 

 私はぽやっとしながら口を開いた。

 

「そういえば結果で思い出したんですが、どうやって命令拡散機の効果の程を証明したんですか?まさかその場で実戦投入はしないと思いますが」

「実験室レベルではすぐに再現できたらしい。その後一番やばい場所に送り込んで、周囲に手足の死骸の山ができたから確定、ってことらしい」

 

 なるほど、一応実験はしたのか。

 

 というか実験室レベルって、また私の幼生を隠し持ってたのか。

 それとも今回の騒動で新しく採取したか。

 

 今は対策のため必要だろうが、できるだけすぐに処分してねと思う次第である。

 

「というか、工藤優作さんはいまどうなさっているんです?」

「父さんは母さんと一緒に米軍に軟禁されてるからどうしようもねーよ。近々解放されるけど」

「ふむ、このタイミングで解放?」

「俺が交換条件にした」

 

 コナン君がため息をついた。

 親子喧嘩みたいな状況ではあったが、それでも情は隠せないというわけか。

 

「渡航制限が解除されるまで帰国はできねーだろうけど、少なくとも自由に逃げられないと困るだろ」

「ですね。というか、彼ほどの知恵者の軟禁はアメリカにとっても損失です」

 

 なお、この謎の疫病事件をうけて各国はアメリカとの輸出入停止、渡航禁止などの措置を講じている。

 

 もちろん米国経済は爆発した。

 同時に国際経済も爆発。日本経済も自動的に連鎖爆発した。

 えらいこっちゃである。

 

 某国は「アメリカが危険な火遊びによって世界と人類を危機に陥れた」と煽り散らかしている最中だ。

 さすが、私を攫おうとした国が言うと一味違ってくるな。

 

 私はデロンデロンのコナン君に声をかけた。

 

「そういえば話は変わるんですけど、キュラソーはどうなりました?」

「あー、そうか。安室さんと同じ記憶があるからキュラソーのことも知ってるんだっけ?」

「彼女も情報担当ですから、一緒に仕事をしたこともあったみたいですよ」

 

 記憶にはバーボンが彼女と共に任務をこなす姿が焼き付いている。

 完全なるビジネスライクだったようだが。

 

 コナン君が机のアイスコーヒーを飲んでため息をついた。

 

「結論から言うと、今はベルモットに引き取ってもらってる。組織を裏切ってな」

「幹部で裏切り者同盟ができそうなんですけど。組織ガバガバすぎませんか」

「それはそうだけど俺に言われても困る」

 

 三人も純幹部の裏切り者が集まってるとな、なんというか、新しい組織ができそうな勢いだ。

 一応ベルモットは今コナン君が手綱を握っているから、完全にコナン君の私設部隊となってしまっている。

 たぶん純黒中も動かしたことだろう。

 

「今日もちょっと来てもらう予定……お」

 

 チャイムが鳴って、コナン君が入り口にかけていく。

 しばらくすると、スマートな美人秘書さんみたいな変装をしたキュラソーが部屋に入ってきた。

 

「あら、この子は……バーボンの……?」

「悪いなキュラソー、来てもらって」

「貴方には恩があるもの。シェリーちゃんは?」

「寝てるよ。昨晩研究にのめり込みすぎたらしくて。呼んでくるか?」

「いいわ。起こしちゃ迷惑だもの」

 

 柔らかい表情だ。

 どうやらキュラソーは新しい己を気に入ったらしい。

 

「初めまして、キュラソー。阿笠空です」

「なるほど、貴方が子供達の言っていた空君なのね、初めまして。私は彼に呼ばれてきていたのだけど」

 

 挨拶もそこそこに、コナン君が「悪いキュラソー、これ覚えておいてくれ」と書類一式をキュラソーへと渡した。

 ずらりと並んだデータを前に、きょとんとキュラソーが瞬く。

 

「どこにも残しとけねぇんだけど、できれば数ヶ月後に確認したい。できるか?」

「分かったわ。貴方の力になれるなら」

 

 キュラソーは五色のカードを取り出して、すう、と小さく息を吸った。

 彼女の特異な記憶能力が発動する。

 

 て、天然のデータ貯蔵庫扱いとは、コナン君も組織幹部を顎で使うやんけ。

 キュラソーもとても嬉しそうだし。

 

 覚え終わって一息ついているあたりで、私はキュラソーに声をかけた。

 

「何も聞かなくていいんですか?」

「彼の必死そうな目が、悪いことをしているようには見えないもの」

「そうですね。事実、今彼は何千万人の人を救う試みの真っ最中です」

 

 キュラソーは余計に嬉しそうになって、にっこりと微笑んだ。

 

「私のこの力が、正しいことのために使われている。それより嬉しいことなんてないわ」

「……そうですね。それは、僕もよくわかります」

 

 後ろ暗い道でしか生きられないと諦めていたとき。

 この明るい日差しの下を歩くことが、どれほど人の心を救うのか。

 それはとても素敵なこと思うのだ。

 

 よーし、今日も灰原さんと薬効頑張るぞい!

 

 そのように、私はやる気を新たにしたのだった。

 





・無名の男
オープンワールドクラフトサバイバルゲームの主人公ぐらい強く逞しく生きるモブA。
余裕で1ヶ月生き延びて、やってきた救助隊に救助される。

・元幹部三人組
コナン君に足で使われてる三人。
色々文句言いつつも協力してくれる。
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