降谷零のクローンなオリ主とコナン世界   作:ラムセス_

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図書館殺人事件と本能

 

 はっと意識が戻って気がついた時、私は布団の上に寝かされていた。

 

 時計は私の覚えていた時刻より二時間後を示している。

 心配そうな蘭ちゃんが私の様子に気づいて駆け寄った。

 

「大丈夫!?今お薬もってくるからね!」

 

 風邪を引いた時病院に連れて行かれないように、あらかじめ偽薬を貰っていたのだ。

 それにしても蘭ちゃん、学校は……?

 

「その、蘭さんは、高校は…」

「今日は創立記念日なのよ。だから心配しないで」

 

 その言葉の真偽は定かではないが、起き上がるとクラクラと意識が明滅する。

 脳に私が知り得ない知識が想起されて頭痛がしているのだ。

 蘭ちゃんは「お水持ってくるね」と言って部屋を後にした。

 

 病み上がりのコナン君が私を覗き込む。

 

「おい、本当に大丈夫か?」

「大丈夫です、いえ、僕も気絶して初めて理解したのですが。これは『仕様』のようです」

 

 この機構が最初に稼働した時にわかるようになっていたらしい。

 これは生物的な仕組みではなく……脳に埋め込まれた機械的な何かの仕業だろう。

 他にも後から外科手術によって加えられた機能は多いらしい。

 ああいやだ、なんか自爆装置とか仕掛けてありそうで。

 

 研究所脱出の時に起爆されなかったことを思うに、その手のものは無いようだが。

 ただのガバ研究所じゃったか。

 

 今回の気絶はただの風邪によるものではない。

 

 コナン君の風邪を引き金に、身体の免疫系等が反応して、一気に肉体に変貌が起きたからだ。

 一旦機能を低稼働状態に移行して、免疫の構築に努めるというべきか。

 

 元々はラボ用の機能だったらしい。

 あらかじめ想定される疾病、もしくは生物兵器等による毒物に対応させてから運用。

 培養槽から出した後、あらゆるウイルス、細菌、毒物を投与して適応させていくのだ。

 それで初めて「完成品」になるとのこと。

 

 つまりアルコールも飲めば適応が始まる……?

 

 私がキリッとした顔になったのを目ざとく見咎めたらしい。

 コナン君が「おい、なんか妙なこと考えてんだろ」とジト目になった。

 

「いえ。それより気絶中に何か起きていませんか?」

「特に何もなかったよ。まだ無理すんなよ、寝てていいから」

 

 コナン君は身支度を整えている。

 今日の朝にようやく目を覚ましたばかりだが、どこかに行くのだろうか。

 

「出かける予定ですか?」

「あいつらが図書館に行こうって言っててさ。こっちは病み上がりだぞったく」

「無理はなさらないように。僕も直に回復すると思われます」

「お前が倒れて本当にびっくりしたよ。仕様って、俺の風邪が何か影響してのことだよな」

 

 申し訳なさそうな顔でコナン君が眉を下げた。

 そんなふうに思わなくとも、どちらにせよこれはいずれ起きることだ。

 責任を感じなくてもいいのに。

 

 というか、風邪系統の菌でその度にシャットダウンしてたら埒が明かない。

 一斉に済ませる方法があるといいのだが。

 

 私は首を振って彼にぶじを示すように微笑みかけた。

 

「お気になさらず。僕は問題ありませんから」

「………」

 

 コナン君がより一段悲痛な顔になってしまった。

 しまったな、これでは己の肉体の脆さを隠そうとする哀れなクローン仕草になってしまっている。

 正直に話しておくべきだったか。

 

 私は生物兵器にて、改造された免疫機構が発動したに過ぎぬ!

 脳内チップによりこれは確かな情報である!

 ご心配召されるな!!

 うーんどうやったら安心させられるのコレ。

 

「無理すんなよ」とだけ声をかけて、コナン君が下へと降りていく。

 出発するらしい。

 

 後で改めて謝っとかないと。

 起き上がると、身体はすでに軽くなっていた。

 もうほとんど問題ないようだ。

 

 だが気が昂ってなんだか落ち着かない。

 攻撃的になっているというべきか。

 

 体に負荷がかかったのは本当のことだから、しばらく寝て過ごすとしようか。

 

 

 

 

 さて、もう一度目が覚めた頃には、日も暮れて体もすっかり軽くなっていた。

 ちょっとばかりイライラが抜けないのは攻撃本能故か。

 

 二階に上がってきた蘭ちゃんが、困って「コナン君、もう帰ってきてないよね?」と寝室に入ってくる。

 私は首を傾げて起き上がった。

 

「どうかされましたか」

「図書館に友達と言ったっきり、コナン君が帰ってこないの」

「道中事件に巻き込まれたんでしょうか。彼が意味もなく連絡なく行方をくらませるとは思えませんから」

「大変!私、探してくる!」

 

 蘭ちゃんが出ていくのを見て、私も着替えて時間差で探しに出かけることとする。

 

 外交官殺人事件の翌日というと、そういえば図書館殺人事件があったはずだ。

 犯人が図書館内で追いかけてくる話だったから、私も怖くてよく覚えている。

 

 暗闇を歩き、図書館に向かってトコトコと散歩する。

 私にとって夜でも視界は真昼のように明るい。

 色はこう、失われてしまうんだがな。

 懐中電灯要らずで便利なものよ。

 

 米花図書館は既に閉館中だった。

 扉は施錠されていて、入れる扉はなさそうだ。

 

 だが上の階の窓が一部、まだ開いているように見える。

 戸締りの確認不足だろうか。

 膂力だけで壁に張り付いて、よいしょよいしょとベランダもない壁をよじ登っていく。

 指の力も樹上生活生物並みにあるからな。

 ただ六歳程度だと背丈が短いので、こういう時少し困るのである。

 成体になればもうちょっと自由に活動できると思われる。

 

 ちょろっと窓から中に入ると、濃密な匂いが鼻をついた。

 多分これは麻薬の匂いだ、と身体の知識が告げた。

 これは降谷零の知識だ。正確にはバーボンの知識か。

 図書館の窓のそばには空っぽの段ボール箱が積まれている。

 

 本棚には大量の本が出された形跡があった。

 コナン君達が家探ししたからだろうか。

 

 匂いの元の棚は児童書コーナーのようだ。

 本を出してみると、中央に奇妙な本型の箱が大量に隠されていた。

 そこには相当な価格になりそうな麻薬が粗末な袋に入れられて隠されている。

 

 おいおいおい、ガキなんて何しでかすかわからないんだから見つけて食べたら大事だぞおい。

 私は少し戦慄した。

 

 この図書館自体も実に体に悪そうで、私は早くも帰りたくなった。

 ここにあるものだけで、一体どれだけの人の人生をぶち壊せることだろう。

 

 そんな私の背後から忍び寄るものが一人。

 

「こんなところにいたのか……ん?」

 

 見知らぬおじさんが私を見て訝しげな様子を見せた。

 この麻薬密輸の件の犯人、図書館館長だ。

 多分少年探偵団を探していて、私の姿が追っていた少年たちと違うことに気づいたのだろう。

 

 私は丁寧に頭を下げた。

 最初は挨拶か大事。古事記にもそう書かれている。

 

「図書館のひとですか?ごめんなさい、僕、本を読みたくなって、開いてた窓から入っちゃったの」

「さっき見た子は君の友達かな?」

「………?しらない。僕一人で来たよ」

「そうかい。だめだぞ坊や、勝手に入っちゃ」

 

 私の無防備な様子に、館長は笑顔を浮かべた。

 本当に私が何も知らぬままここに来たかは分からないが、安全をとって殺しておこうと思っている顔だ。

 ニタニタと気色の悪い笑みで私を見下ろした。

 

 私は無垢をよそおって首を傾げる。

 

「あのねあのね、この本っておじさんの?」

「おや、本当に妙だな。背表紙がない。図書館の本かい?」

「うん───しらを切るのが随分と得意なのですね。こんなにも大量の麻薬を隠しておいて」

 

 私が低い声を出したからか、何を言われたのか分からず館長はきょとんと目を見開いた。

 

 これは本来コナン君達の仕事だ。

 だが、一歩間違えれば一人二人殺されてもおかしくないのがこの状況。

 ここで私が対応するのは安全のためにも必要だろう。

 

 私は本型の箱を開けて、中から麻薬を引き摺り出した。

 

「g何円ですか?さぞや儲けているのでしょう」

「ば、バカな!なにを…」

「惚けても構いませんが、僕はこの本を持って警察に駆け込むとしましょう。それとも、僕を殺しますか?もう既に一人殺されているようですし」

「っ、……お、おまえ……」

 

 むせ返るような麻薬の匂いに混じって、腐敗し始めた死体の香りが鼻をつく。

 なんとも、凶悪犯が図書館の館長なんてしていとはおかしなものだ。

 さらに唸って、次に本性を現すことを決めたらしい。

 見下すような冷徹な表情で館長は私をせせら笑った。

 

「坊や、それで生きて帰れるとでも思ってるのかな」

「はは」

 

 私は少しの笑いでもって返答とした。

 

 身体はまだ昂っている。

 何かを引き裂きたくてたまらない。

 ぐちゃぐちゃにして、悲鳴を上げさせて、潰して命乞いさせたくてたまらない。

 

 それを発散するいい機会だろう。

 もちろん殺しはしない。

 シナリオとしては、そう、「追いかけっこの途中で犯人が足を滑らせた」とか。

 その程度のことた。

 

 私が鼻で笑ったことに激昂した犯人が、勢いよく殴りかかってくる。

 素人のパンチなんて体を痛めるだけやで。

 

 軽く半身でかわして、そのままバランスを崩したところを掴み、頭を机に叩きつける。

 ゴキャッという生々しい音と共に、館長が動かなくなる。

 

 おっとセーフ、気絶しているだけのようだ。

 本能の煽りを受けてやり過ぎたかと心配したが、息があるようで何よりである。

 ただ、念のため後で病院に行った方がいいだろう。

 

 ────ああ、不完全燃焼だ。もっと派手に暴れたい。

 

 

 あとは犯人の襟首を掴んでズルズルと引きずっていく。

 コナン君達の潜むエリアは、すでに物音からわかっている。

 犯人を引きずったまま階段を降りたので、ドスドスっと犯人の足と尻がぶたれた。

 まあ後日あちこちが痛いだろうが、そこは容赦願いたい。

 

 扉を開くと、息を顰める細い吐息が聞こえてくる。

 私は電気を点けて声をかけた。

 

「コナン君、そこにいますか?」

「そ、空!?お前どうしてここに!」

「不審者は仕留めましたのでご安心ください」

 

 どさっと投げ落とせば、床に倒れ込んだ犯人を見てコナン君が目を剥いた。

 

「おまっ!?!?」

「気絶しているだけです。警察には連絡しましたか?」

「もう連絡してあるよ。直に駆け付けると思うけど」

 

 コナン君ははあ、とため息をついてズルズルとへたり込んだ。

 元太君達がみんな涙目になって、次々に堰を切ったように私のところに駆け寄ってくる。

 

「空おめーあいつに何かされなったか!?」

「人殺しで!エレベーターに死体があったんですよ!」

「歩美すっごく怖かった!!!」

 

 私は少年探偵団達を労りつつ、「追いかけられている途中で転んで頭を打ってしまったようで。幸運でした」と大嘘をぶっこいた。

 なんか言ってる…みたいな顔をコナン君にされてしまった。

 与太話聞いたみたいな顔しないでね。

 

 しかし、まだざわざわと肌が粟立つ感覚がする。

 この無垢な生き物達を解体したくて、毀損したくて、絶望に歪ませたくて仕方がない。

 無意識に肉体がペロリと唇を舐めている。

 指が動く。首を絞めろと。

 

「『967-OA2、オーダー』少し屈んで、じっとしてろ」

「!!」

 

 コナン君が私だけに聞こえるよう、囁くように私の耳に吹き込んだ。

 私は命令を弾かなかったから、身体は自然と片膝をつく形になる。

 

 命令を受諾して、ふわふわとした浮遊感に満たされる。

 やっぱり酒感あるなこれ。

 浴びるほど酒を飲みてぇ定期。

 

 でもなんで急に命令?

 絶体絶命のピンチに駆けつけた私へのご褒美ですか?

 

 頭をぶっきらぼうにわしゃわしゃ撫でて、コナン君が俯いたままぽつりと呟いた。

 

「助かったよ、お前がいなきゃヤバかったかもな」

「お力に、なれたようで、…何よりです」

 

 風呂を楽しむようなリラックスした心地で目を細めて安らぎを享受する。

 これに憤ったのは歩美ちゃんであった。

 

 「コナン君に撫でて貰ってる!ずるい!歩美も!!!」とジタバタしている。

 可愛いかよ。

 腹減り元太君が空腹のあまりしおっと遠くを見ていて、光彦君に慰められている。

 いつも通りというやつか。

 

 コナン君は歩美ちゃんもぎこちなく遠慮がちに撫でた。

 同時に私からパッと手を離して、スンッとした顔を見せた。

 

「サービスタイム終わり。次の営業は未定でーす」

「そんな。せめて隔日営業でお願いします。一時間コースで予約させてください」

「強欲かよ。今回が特別だっつの」

 

 仕方なくではあったが、もしかしたら私が本能に揺さぶられているのがわかっていたのかもしれない。

 いくら私でも、腹が空いてるからってスーパーに並んだ食料を盗み食いしたりしないのに。

 そんな簡単に凶行に及ぶと思ってもらっては困るのだが。

 

 そんな感じに少々膨れつつ、私たちは駆けつけた目暮警部に再び怒られるのであった。

 





・クローン体
自爆機能は無い。
ただ、外科的な処置はたくさんある。
遺伝子操作だけでは無理があるので、順次育つたびに外科的に各機能を取り付けていった。
命令機能は代表的な機械系システムである。
ツギハギの実験体。

・コナン君
曇りが増えていく。
翌日クローンに「あの意識の喪失はですね」と詳しい機能を説明されてより阿笠博士と共にドカ鬱になる。
優しい心根と、外道な研究者によって歪められた本能の狭間で苦しむ子。
護らなきゃ(決意)
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