降谷零のクローンなオリ主とコナン世界   作:ラムセス_

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黒づくめの謀略に寄せて①

 

 となりの工藤邸では、現在FBIとコナン君による作戦会議が行われている。

 

 滞在中のホテルでは危険ということで、工藤邸に一時集まっているらしい。

 私は首を突っ込まず、阿笠邸で大人しくしているのみだ。

 

 まだFBIにはバーボンが公安警察だとうちあけていないからな。

 このタイミングで私が行けば変な憶測を呼びかねない。

 

 ソファに寝転がって、足をバタバタしつつ翼をバサバサ。

 思う存分伸びながら阿笠博士の発明品である携帯ゲーム機を取り出すなどする。

 

 向かいに座ってPCを操作する灰原さんに「風が来て寒い」と叱られて、にわかにしゅんと縮こまる。

 

 肉体君が「どうするんですか。貴方のせいで母君に叱られましたよ」と私を非難した。

 うるさいぞそこ!

 つい動いちゃうんだもん仕方なかろう!

 

 羽をたたもうとすると、隣に移動してきた灰原さんがじーっと私を見た。

 そしてむんずと私の翼を掴んで、しげしげと観察する。

 

「えっと……灰原さん?」

「膝掛けにはちょっと硬そうね」

「毟って膝掛けに…!?!?」

「冗談よ」

 

 ぽんぽん、と灰原さんが私の頭を撫でて隣に座る。

 びっくりした…まあ確かにちょっと膝掛けにはゴワゴワする気がする。

 やっぱり一枚ずつ千切って宝石として使うのが一番いい気がする。

 

 気になって、先ほど私の抜け羽を手足に見せびらかしたんだよな。

 手足はもうすごく喜んでいた。

 一個しかないので手足のうちの1匹にあげたら、他が全員威嚇して「アイツ嫌い!」「嫌い!」「ひとりじめ!嫌い!」とギイギイ鳴き始めるトラブル発生。

 協議の結果、皆の見える壁に飾ることとなった。

 全く難儀な生き物であることよ。

 

 と、そのあたりでスマホがバイブレーションした。

 表示名は「脇田兼則」。

 RUMから電話だ。

 

 慎重に電話に出て「どうかしましたか脇田さん」と声をかける。

 RUMはカラカラと笑って肩をすくめたようだった。

 

「少しばかりバイトのお誘いをしようかと思いやして。今空いてやすかい?」

「僕が……ですか?料理は得意ですが寿司の経験はないのですが…」

「いやいや、あっしの前職でちょうど人が足りないってんで声がかかってやしてね。ちょうど今いいタイミングでして、どうです?」

 

 腕試しがてら組織の抜けられない仕事をさせてしまおうと言う魂胆だろう。

 そのまま芋蔓式に引き込む、と。

 流石に泥沼に足を突っ込む気にはなれないので、私は乗り気でなさそうな声を出した。

 

「すみません、お誘いは嬉しいのですが、僕最近体調を崩していまして。学校も休学手続きを始めようとしているところなんです」

「そうなんですかい?最近見ないとは思いやしたが…お大事になさってくだせえよ」

 

 そう言ってから、RUMはふぅむと少しだけ唸って言葉を続けた。

 

「なら阿笠のお兄さんもベッドで暇でしょうし、ちょいとクイズといきやしょう!」

「え」

 

 ぴろん、スマホがメッセージアプリの着信音を鳴らす。

 そこにはスマホ画面のスクショが写っていた。

 

 そこそこ難解な暗号だ。

 それもそのはず、FBIで実際に今利用している暗号だからな。

 一目見ただけでそれを解ける人間は少なかろうよ。

 

 やや低い声でRUMが問いかけた。

 

「どうです?読み解けますかい?」

「か…揶揄ってます?なんかこれ…多分どう見てもいろは寿司の住所なんですけど」

「おお!流石は阿笠のお兄さん!見ただけですぐたぁ驚いた!」

 

 実に上機嫌で私を持ち上げ、もう一つ暗号を投下する。

 そして、ニタリと笑うような底知れない雰囲気。

 

「じゃあこう来たら?」

「…………」

 

 二つ目も住所だった。

 多分これは本物の今受信したFBIの待ち合わせに関する暗号なのだろう。

 コナン君の策で送ることになったのだ。

 

 そう分かるのは、訓令式のローマ字が使われているからだ。

 先ほどの暗号はヘボン式。

 先ほどのいろは寿司の住所を示す暗号はRUMお手製で、訓令式のこれはジョディ先生が作成したものだろう。

 

 これを指摘すれば、コナン君の作戦は失敗に終わる。

 下手をすれば人の命が失われるのだ。

 

 それをラムは舌なめずりして待っている。

 「お前のせいで人が死んだぞ」

 「お前はすでに我々と共に手を染めているのだ」と陥れるために。

 

 私は深呼吸して軽く、躊躇わず答えを口にした。

 

「作成上の表記揺れですか?『ふ』の字がFUではなくHUになっていますが」

「………ほほう?その心は?」

「難しいことを聞きますね。うーん、外国人には看板表記などで見るヘボン式が馴染み深いでしょう。HUは訓令式で日本的です。この暗号がどこかのサイトの引用なら、前者が脇田さんのオリジナル、後者がそのサイトの掲載文とか。つまり製作者が違うのかなと思いますね」

 

 しばらくの沈黙の後、「素晴らしい!」とRUMが私を褒め称えた。

 どうせRUMは気付いてるんだから、私が言っても言わなくても事態は何も変わらない。

 なら、舐められるような真似は控えるべきだ。

 

 RUMは手放しで私を称賛しながら薄っぺらな言葉を続けた。

 

「さっすが阿笠のお兄さん、小五郎先生にも迫る名探偵っぷりお見事!」

「あの…僕変なことさせられてないですよね?二件目の住所知らなくて怖いんですけど」

「ま、あっしもネットの問題なんでよくしらねぇんですけどね。特段誰かに言うでも無し、大丈夫でありやしょう!」

「うーむ。怖いのでまたお寿司食べたいです。美味しいやつ」

 

 RUMは私の発言にからから笑って「好きなだけ奢るんで、今度いろは寿司にきてくだせぇ!」と答えた。

 私はブーブーとそれを非難する。

 

「えぇ、体調悪くて外出はしばらく無理ですよ。出前はダメですか?」

「すいやせんねぇ、あっしも忙しくて。もちろん来てもらえれば良いネタ弾みますんで!」

「ええー…ならいずれ。なんにせよ今は安静にしたいですから」

「お待ちしておりやすぜ!」

 

 私のメッセージは「変なことに巻き込むなら対価を払え」。

 RUMの返事は「言い値で支払おう。その代わり、正式にこちらに所属するなら」。

 

 あーやだやだ。

 RUMなんて頭を手足にかじり取られて仕舞えばいいのに。

 そのまま通話を切って、私は大きくため息をついた。

 

 灰原さんが心配そうに私の顔を覗き込んだ。

 

「ねえ、その電話なんだったの?」

「RUMです。どうも断続的に勧誘を受けていまして。厄介なことになってきました。先ほども組織案件に無理やり関わらせてきましたし」

「!」

 

 灰原さんは目を見開いて息を呑んだ。

 

 組織も人間社会で営むものであるからして、ネバダ寄生虫の影響で弱体化しているのは間違いない。

 だが依然として脅威であり、人の社会に巣食う癌である。

 

 FBIが未だこの国で活発的に活動しているのも、ネバダ寄生虫の元が組織である可能性を疑ってのことだと聞いている。

 

「……断ったの?」

「一応まだ交渉の余地を残しつつ、今回はお断りの雰囲気を出しておきました。下手に交渉決裂すると厄介ですから」

 

 相手が強行手段に出るような事態は避けたい。

 下手に決裂すれば、あとはバーボンに対する人質として使われるだけだ。

 

 私の頬に手を添えて、灰原さんが心配そうにするりと首を撫ぜた。

 

「奴らの手は長く、目は数多ある。いざという時は貴方だけでも逃げてちょうだい」

「嫌だな、逃げるなら貴方も連れて逃げますよ。僕の母。『僕』に愛を教えた人」

 

 もし灰原さんがいなかったら、肉体君はもっとずっと扱いづらい性格だったことだろう。

 私と入れ替わった途端、パンデミックを引き起こそうとしたに違いない。

 

 小さな体を柔らかく抱きしめて、私は愛情と共に彼女へゆっくりと言葉を落とす。

 

「でもこの絵面ちょっと危険ですね。主に僕の名誉が。逮捕される絵面です」

「まあ、そうね。若い情欲に流されて、いたいけな少女を襲う不届者のシチュエーションね」

 

 私は憮然として口をへの字に曲げた。

 本当は生後半年に満たない赤ちゃんだからいいんだよ!

 バブー!と強引に赤ん坊のふりをする。

 

「まあ僕は生物学的には男性ではないってことで一つ。女性かどうかも微妙なラインですが」

「単為生殖だからメスでいいと思うわ。メスが単独で子を作る事例は、アブラムシやミジンコでも確認されているもの」

「その並びに僕が来るの屈辱なんですけど」

 

 ミジンコの仲間だったんか私……。

 いや幼生は完全にミジンコの仲間だし、それはその通りなのかも知れない。

 私としては男性のつもりだったのだが、実に難しい生態だ。

 

 私はパタリと頭をソファに埋めて「あ゛ー」と呻いた。

 灰原さんが撫でてくれる。

 あーいい。なでなでで喜ぶ手足の気持ちがよくわかる。

 

『はぇ……母君すごい……しゅき……』

 

 肉体君も内側で蕩けているようだ。

 パタパタ喜びで羽が勝手に動く。

 

 すると自然と私の感情を乗せた電波が発せられ、「喜び、喜び、喜び」と私の感情が誤送信される。

 

 それは地下まで届いたらしい。

 さっき孵化したばかりの手足が「喜び?いいこと!」「とても良い!」「喜び喜び」と同意してくれた。

 やっぱ人間生まれの手足と比べて語彙が乏しいようだ。

 でもすぐに寄り添ってくれてとても優しい。

 これで灰原さんに食いつこうとしないともっと良いんだがなぁ。

 

 私は相変わらずパタパタする羽をそのままに、頬を染めてそっぽを向いた。

 

「僕が喜んでたら地下の手足が同意してくれました」

「よかったわね。あれも貴方から生まれた者だもの、貴方を思ってるのね」

「……?僕の子ということは…灰原さんはおばあちゃん……?」

「一週間は撫でないからそのつもりで」

 

 ああ!そんな!

 

 私は素早く姿勢を正してソファの上で土下座した。

 ぴしゃりと「誠意が足りない」と注意される。

 

 その夜は灰原さんの好みで固めることを約束し、なんとか機嫌を直してもらえるよう交渉したのであった。

 





・米国の動向
実は日本を重点的に探してる。
ネバダ寄生虫の本物の開発主、つまり「真犯人」を世界に突き出すのが目的。
アメリカの汚名を晴らすため、FBIは精力的に動いている。

・組織の動向
活動抑えめ、FBIは目障りなので排除したい。
というか米国株が死んだので資金難。
RUMは日夜組織運営に頭を悩ませている。
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