降谷零のクローンなオリ主とコナン世界   作:ラムセス_

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ハロウィンの灯火④

 

 帰宅した後、私はまず最初にウォッカとジンを呼び出した。

 

 彼らは今日は付近で小さな任務をこなした後待機しているはずなので、命令があってすぐにアジトにやってきたらしい。

 私の部屋に入ってくる時も、二人は憮然として反抗的な態度を隠さない様子だった。

 

 表面だけでも従ったふりをすれば良いのに、どうも見た目の問題か舐められてるっぽいんだよな。

 潜水艦である程度力も冷酷さもアピールしたのに。

 あのぐらいでは足りないのだろうか。

 

 そう思うと、極道の凄み方もプロとしての苦労の集大成的なところがあるのかもしれない。

 

 手足君が「あ、下っ端。美味げもってこい」と相変わらず偉そうにフンフン言い始めた。

 最近侵入者がいなくて美味げ不足みたいなんだよな。

 お前それ以上太ったら虫が湧くでしょ。

 

 ジンが睨め付けるような鋭さで口を開いた。

 

「なんだ。任務か」

「はい。急ぎプラーミャの動向について調べてもらいたいんです」

「ああ?誰だそりゃ」

 

 私はコナン君からもらった軽い調査用資料を2部、ウォッカとジンに手渡した。

 

「ロシアの爆弾魔ですね。どうやら日本で活動しているみたいなので、足取りが追えればなと思いまして」

「なんでテメェみたいなのがチンケな爆弾魔を気にかける」

「日本が住みづらくなったら僕が優雅に暮らせないでしょう。嫌ですよメキシコみたいな不毛の土地に住むのは」

 

 ふん、とジンはくだらなさそうに鼻を鳴らした。

 

「ヴェスパニア鉱石を持つテロ組織との繋がりを持っている疑いがあります。それは命令拡散機を無効化して幼生をばら撒くテロに繋がりうる」

 

 ヴェスパニア鉱石、本当にテロ性能が高すぎるんだよな。

 本当なら医療用精密機器に組み込んで電波の干渉を防いだり、宇宙空間で太陽フレアを防ぐのに使ったりできそうだし。

 

 まあヴェスパニア鉱石の話はその辺にしておいて。

 ジンは資料をざっと確認してから肩をすくめた。

 

「メキシコはテメェの下っ端が暴れてるせいだろうが。そこにいるバケモンのお仲間だ。テメェの号令一つで世界は平和になるだろうよ」

「可哀想じゃないですか。この子達は人間が大好物なんですよ。食べられなくなったら悲しみます」

 

 ねー、と手足君に頬を寄せる。

 手足君が「美味げ!美味げ!」とワクワクして首を伸ばしている。

 もしかしたらもうすぐ美味げが運ばれてくると思っているのかもしれない。

 すまんが今日も豚肉なのよね。

 

 まあ、実際問題私の命令範囲が育ちきってないのがあるんだが。

 もう少し育てば私一人で事を終わらせることもできそうだ。

 

「ならいいがな。このヴェスパニア鉱石、怪しげな連中がうちにも取引を持ちかけたことがあるぜ」

「!なるほど。受けなかったんですか?」

「どうも損得計算の出来ねぇイかれた野郎どもの集まりだったからな。リスクを回避するってんでRUMが蹴った」

「賢明ですね。どうも己の命も人間社会も顧みない連中のようですので、正しく取引ができるかは怪しいでしょうし」

「気狂いと獣は道理を知らねぇからな。信じられるのはコレだけだ」

 

 ジンは己の懐にあるものを少しだけ揺らした。

 銃。鉛の殺意そのもの。

 

 私は嘆息して「不器用すぎませんか。人間社会で生きるの向いてませんよ」と言葉を落とした。

 

「器用な奴が裏社会で生きる必要はねぇ。まあ、器用だってのに好き好んで裏についてきた奴は居るがな」

「兄貴……へへっ。俺の居場所はいつも兄貴のいる場所だって決めてんです」

「まともに生きられるチャンスをふいにしやがって。物好きな野郎だ」

「とんでもねぇ。兄貴があってこそだ」

 

 急に私を置いてむさ苦しくイチャイチャするんじゃないよ!!!!

 

 私は憮然として手の中で書類を遊ばせた後、手足君の顎をタルタルした。

 ジンとウォッカ、組織でもニコイチとして扱われるんだよな。

 野生の猛獣やりすぎ暴走車ジンと、縁の下の力持ちウォッカ。

 

 特にウォッカのありがたさはピカイチで、尖ったやつしかいない裏社会でそのありがたさは群を抜いている。

 ジンは雑に運用しても帰ってくるしぶとさが魅力かな。

 ジェイソン・ステイサム的な感じ。

 自動的に劇場版になってしまうので爆発と大事件がセットなのが玉に瑕。

 隠密性は死んでる。

 

 ジンが改めて私に向き直って言葉を紡いだ。

 

「奴らはどうも各国の空港と港を火の海にするつもりらしい。神の火が落ちるとか言ってたようだぜ」

「今碌でもないフレーズが聞こえました。核じゃないですよね。ただの形容ですよね」

「さあな」

「今核戦争起きたらマジで人類滅びるんですけど、勘弁してくれませんか」

 

 私に蔑むような視線を向け、ジンが吐き捨てる。

 

「テメェは人類を滅ぼすための兵器だろう。望むところじゃねぇのか?」

「馬鹿言わないでください。ポストアポカリプスにネトフリとウーバーイーツはありますか。手足君の上で腰布巻いて叫ぶのの何が楽しいんですか」

「ククク、バケモンにはお似合いだろうがよ。毎日毎日食っちゃ寝する自堕落なバケモンじゃ格好がつかねえ」

「食っちゃ寝はしてないですちゃんと仕事してますから」

 

 私は図星を突かれて唇を尖らせた。

 ヒキニート生物兵器ちゃうわい!

 ちなみに、酒もヤニも嗜まない。灰原さんからドクターストップかかってるので。

 

 目を細めて、ジンは慎重に私に問いかけた。

 

「そんなテメェでも………シェリーにはそこそこ入れ込んでいるみてぇだな」

「……」

 

 私はチラリとジンへ視線を送った。

 ウォッカが「あ、兄貴、それは…」と戸惑ったような声を出す。

 そこまで踏み込むつもりはなかったらしい。

 

 なるほど、二人で独自に私の周りを嗅ぎ回ったのか。

 

「どうも随分とよろしくやってるそうじゃねぇか。組織から逃げた者同士、傷の舐め合いか?」

「まあ、単に家族ですよ。大事に思ってます」

 

 もちろん、幼生の設定で危害を加えるなどはできないように厳重にロックしてある。

 が、なかなかギリギリを攻めたようだ。

 調べるだけで相当な胸焼けや不快感に見舞われただろうに、頑張るものだ。

 

 ジンが目を細めた。

 

「あの弱い女が、テメーみてぇな怪物を抱えきれるわけがねぇ。途中で何もかも捨てて逃げ出すに決まってる」

「人は成長するものですよ。野良犬だった貴方は、ここで主人を得て何も変わらなかったんですか」

「………」

 

 静かに私たちは睨み合った。

 沈黙に先に耐えきれなくなったのはウォッカだった。

 叫んで立ち上がる。

 

「テメェ!ふざけたことを抜かすんじゃねぇ!!」

「よせウォッカ!」

 

 ジンが制して、ウォッカが怒りのこもった瞳で睨みつけてくる。

 人の柔らかい部分に手を入れておいて、自分が触れられないと思うのは脇が甘いだろう。

 唸るようにジンが私を睨む。

 

「あの女をそれほどまでに変えるきっかけがあるとでも言うのか?」

「そんなの些細なもので十分ですよ。例えば、守るべきものを得るとか。ほんの小さな一歩で人は変わるのですから」

 

 「ハッ!」とジンは笑い捨てた。

 

「おいおいおい。まさかとは思うが、あの女は化け物を保護してるつもりなのか?」

「嫌だな、僕は以前可愛らしい小学一年生の姿をしていたでしょうに」

「奴自身が同じ歳のガキになってたってのにか?馬鹿馬鹿しい!」

 

 こいつは傑作だ、とジンが嗤い出して、内側の肉体君の機嫌がどんどん悪くなっていく。

 

『こいつ殺しましょうよ。殺しましょう。母君を嗤った。不愉快だ。引き裂いてミンチにして手足の餌にしましょう』

 

 どうどう。ジンは有能だし、これ以上手足君をだらしない体型にするわけにはいかない。

 肉体君をモニュモニュと宥めて、私は平然とソファに体重を預けた。

 

 ニタリとジンは悪辣に口角を上げた。

 

「あの弱い女のことだ。不慮の事故でコロッと死んだとして何もおかしくねぇ。そうだろう?」

「んー、それはライン越えの発言です。制裁を科しますね」

「!」

 

 それを脅しとみなし、私はパチンと指を鳴らした。

 瞬間、頭を押さえてジンが崩れ落ちる。

 「兄貴!!!」とウォッカが隣で叫んで体を抱き止めた。

 

「制裁終了。あまり出過ぎたことを喋れば、次は本気でやりますので、覚えておいてください」

「テメェ!兄貴に何をしやがった!!」

 

 私の胸ぐらを掴もうとしたウォッカが、激しく唸って前に出た手足君に阻まれる。

 

「ッ……」

『下っ端。女王に何する。噛んでやる!噛んでやる!』

 

 ギギギギギ、と獰猛な唸り声に流石のウォッカもたじろいだようだ。

 うっすらと笑って、私はウォッカの質問に答えた。

 

「大事なものを挿げ替えてあげました」

「なに…?」

「彼の大事なものはあの方のようなので、あの方を僕に差し替えました。脳と思考の改竄ですね」

 

 は、とウォッカが吐息のみを漏らす。

 何を言われたかわかっていないかのような反応だ。

 私はクスクスと笑って三日月型の笑みを作った。

 

「どうです?感想は。尊敬する人が目の前にいる気分だったでしょう?そんなはずないのに、ありえないのに、頭の中がぐちゃぐちゃになる感覚だったでしょう?」

 

 ウォッカが震える拳を握りしめる。

 そんなに怒るなら、最初からギリギリを攻めるように私の身辺調査などしなければよかったのに。

 なんで私舐められてまうんやろ…困ったなぁ。

 

「もちろんそんな急に認識が変わったら人格が崩壊しますから、本番はもっと丁寧にやりますよ?ウォッカ、貴方でやるなら兄貴さんを誰か別の人物に変えるとかでしょうか」

「お、ま……」

「ある時、知らない誰かを兄貴と慕う自分に気付くんです。楽しいですよ、きっと」

 

 羽をばさりと広げて、その光の乱反射が神々しく部屋を照らす。

 偽りの神聖性。悍ましき天の加護。

 

「言ったでしょう。あなた方の脳は僕が握っている。あなた方は僕の可愛いお人形だと」

「悪魔が……!」

 

 ウォッカの言葉を私はせせら笑った。

 

「どうせ今まで、あなた方は善良な民間人というたくさんのお人形で遊んできたんでしょう?自分が遊ばれる番がやってきたというだけの話だ」

 

 肉体君が「ヒューッやれッ殺せッ!!!首をもげ!!」とか内側で叫んでいる。

 幼児が汚いヤジを入れるんじゃないよまったく。

 

 頭を押さえて体勢を立て直したジンが、脂汗を浮かべながら私を睨め付ける。

 そして震える声で言葉を紡いだ。

 

「テメェは外見こそバーボンと似てるが、その内面が大きく違う」

「ん?」

「罪を犯すのに躊躇いがない。バーボンはネズミだ。罪を嫌う潔癖のネズミ野郎。だがテメェは違う」

 

 ギロリと睨まれて、私は困惑した。

 いやまあ、転生したら法的な罪は持ち越さないから気軽だけど、人並みの倫理観はあるつもりだぞ?

 ジンが断罪するように宣言する。

 

「テメェのようなものは表じゃ生きられねぇ、闇の生き物だ」

「失礼な男ですね。表と裏なら、表の方が好きですよ、僕は」

 

 裏社会は面倒ばかりだ。

 弱肉強食ですらない。表社会の面倒臭いところの煮凝り。シンプルさのかけらもない。

 生きるなら表一択だ。

 

「まあ、両方で生きられる適性があるならよりお得だとは思いますけどね」

「抜かせ、バケモンが」

 

 話はお開きになりそうだ。

 しばらくの沈黙の後、ウォッカとジンが立ち上がる。

 私はその背に最後の忠告を流し込んだ。

 

「あと、今回の貴方の冗談、面白くなかったですよ」

「………」

 

 

「この処罰は、あなたの気付かぬうちに」

「!!!」

 

 そう、わざわざ宣言してやる義理はない。

 気付かぬうちに自己が歪められていくことこそ、ネバダ寄生虫の悍ましさである。

 

 扉の閉まる直前に、優しく優しく微笑んで、その恐怖を示唆してやったのだった。

 





・クローン視点各ユニット
ジン:ジェイソン・ステイサム主演劇場版制作男。
ウォッカ:組織内折衝に秀でた超有能上司。
キャンティ&コルン:意外と真面目な仕事人。
ベルモット:本業の女優が意外と忙しい。
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