降谷零のクローンなオリ主とコナン世界   作:ラムセス_

144 / 189
ハロウィンの灯火⑤

 

 その後、千葉刑事が攫われるなどのちょっとした一悶着はありつつ。

 事態はひとまず整然と進んでいた。

 

 千葉刑事を攫った団体の要求は「松田刑事に会わせろ」。

 もちろん松田刑事はすでに殉職してこの世にはいない。

 そのため、高木刑事が松田刑事に変装することで事なきを得たようだ。

 

 高木刑事渾身の偽松田はきちんと動画をコナン君から送ってもらった。

 これは後で降谷さんとじっくり語り合う予定である。

 

 あれマジで迫真というか、解釈一致過ぎる松田刑事だったんだよな。

 

 あのシーンだけ松田刑事の霊が憑依したんじゃないかという完成度だ。

 降谷さんの記憶を通して本物を知る身からしても「それ言いそう…言うわ…」の集大成と言うか。

 

 たぶん降谷さんも盛り上がるんじゃないかと思う私である。

 

 

 

 私はカフェで時間を潰しながらコナン君と電話を繋げていた。

 

『そっちはどうだ?何かわかったか?』

「残念ながらプラーミャの足跡は追えませんでした。組織の目で探れないんですから、奴は病的に慎重ですね」

『そうか……』

「ただ、かろうじてキュラソーがロシアのデータサーバーに侵入してプラーミャのデータを抜いてくることに成功しました」

『!』

 

 データをコナン君のスマホに送ると、電話越しにピロンと着信音が響いた。

 これでも他国の国家機密だから扱いは慎重にね。

 

「プラーミャ。政府に便利に使われている爆弾魔…どうも元々は秘密組織の人間だったみたいですね」

 

 政府の後ろ暗いことを請け負う組織、と言う意味だ。

 その後組織と切り離されて暗殺専門の部隊となり、段々と殉職。

 現在生き残っているのはプラーミャだけ、と言う経緯である。

 

「まあ、裏のデータなのでご参考までに。頑張ったみたいなので、キュラソーと少年探偵団のふれあいの時間を多めに取ってあげてください」

「ああ、きっとあいつらも喜ぶ」

 

 コナン君がふっと笑ったようだった。

 キュラソーも本当に生き生きして1日子供達と遊びまくるし、今度はトロピカルランドとかいいんじゃなかろうか。

 

 ちなみに、プラーミャに関しては政府とその後長い間よろしくやっていたらしい。

 人の爆殺を好む異常な人格と、殺して良い人間を与える政府。

 お互い相性は良かったのだろう。

 

 だが膨れ上がりすぎた「被害者の会」の存在により政府の暗部が明るみになると、政府がプラーミャを切り捨てにかかった。

 

 コナン君が静かに目を伏せて声を落とした。

 

『お前の言う「被害者の会」なら、俺も接触した。ナーダ・ウニチトージティだろ』

「僕らの類縁組織ですね」

『その言い方やめろってば』

 

 ロシア語で「息の根を止めねば」。

 プラーミャの息の根を止めることを目的とする民間組織だ。

 

 その原動力が憎しみである以上、私たちがどう出るかは相当な慎重さが求められると言えるだろう。

 

『………リーダーのエレニカさんに会ったんだ。憎しみに満ちた目をしてた。以前に見たお前の内側と同じぐらいに』

「へぇ、それはそれは」

 

 肉体君の恨みと同程度とは、そりゃ相当な恨みだ。

 

 まあ、肉体君は培養中も意識があったそうだからな。

 生きたまま脳と肉体をクチュクチュされ続けたらそうもなるだろう。

 今でこそ捻くれた幼児をやってる肉体君だが、元来肉体君は極まった憎しみゆえに対話すら不可能な存在だった。

 私の呼びかけにもブツブツと恨み辛みを返すだけの人格未満。

 

 偉大なるは愛情深きママンとパパンってことだ。

 

「恨みとは、自らの破滅に周囲を巻き込む爆弾ですから。そう思うと、被害者達は爆弾に焼かれ、自らも爆弾と成り果てたのかもしれませんね」

『……お前はまだ、組織を、人を恨んでいるのか?』

「僕は最初から恨んでませんが……ふむ。僕は、ですからねぇ」

 

 ここは肉体君のコメントを貰うこととしよう。

 肉体を明け渡して、私は解答権を肉体君に委ねた。

 

 にたり、と口角が吊り上がる感覚。

 

「───恨んでますよ。とっても。絶対に殺してやるぐちゃぐちゃに擦り潰してやる引き裂いてやる殺してやる」

『ッ!』

「でも貴方がやめろと言うならやめます。僕は貴方に嫌われたくない。愛して欲しい。抱きしめて欲しい。慈しんで欲しい」

『宙……』

 

 それは憎悪に隠された正直な、心からの懇願だった。

 愛して。愛して。

 愛無き培養槽で育った幼子の悲痛な叫びにも聞こえたようだった。

 

 コナン君はふっと笑って、それからごく柔らかく言葉を落とす。

 

『たとえお前が間違えたって、愛し続けるのが情ってもんだ。そんな条件付きで愛するつもりはねーよ』

「………!」

『安心しろよ。お前が何を選んでも、俺たちはお前を愛してる。大事に思ってる。その上で、正しい道に引き戻してみせる』

 

 コナン君の言葉に、肉体君はただ立ち尽くして瞳を揺らしているようだった。

 

『もっとも、お前が恨みを捨てられるぐらい幸せならそれより嬉しいことはねーけどな!』

「……良い人すぎます。父君はもっと慎重に生きてください」

『父君?』

「僕の父君ですから。母君とともに、僕を愛してくださいました。人を滅ぼすのは延期にしようと思うくらいには、僕は愛で満たされました」

 

 コナン君が電話越しに困っている。

 父君…?父君?????と突然の息子爆誕に困惑しているようだ。

 しかしすぐに腹を決めて、コナン君は「おう、そうだな!息子だ!」と言ってくれた。

 

 肉体君が飼い主が帰ってきたゴールデンレトリバーより喜びいっぱいの顔になる。

 

 パパン!!!流石です!!!

 私はコナン八幡大菩薩を拝むなどした。

 

「っとと、まずいまずい!そうでなく伝えなければいけないことを忘れそうでした!」

『ん、なんかあんのか』

「これが今回の電話のメインです!あの時伝えていればよかったのですが、二人になるタイミングがなくて、重要なことを伝え損ねていたんです」

 

 私は声を一段潜めて真面目な顔を作った。

 親子ふれあいモードが解除されて、内側で肉体君が不満げにブツブツ言っている。

 

「クリスティーヌ・リシャール。あの爆弾事件の後、警視庁で彼女と僕らが会う機会がありましたよね」

『ああ。結婚式も無理やり強行させられるみたいだし、結構参ってたっけか。何故犯人は村中さんの結婚式にこだわるのか…』

 

 コナン君の疑問に、私は明確に返答した。

 

「それについては簡単ですよ。結婚式自体がそのためのデコイなんです」

『それは…どういう……』

「貴方、脱出の時に爆弾の薬液を採取したでしょう。あの時とんでもない匂いでしたからね。鼻にこびりつきました」

『お、おう。すまん』

「そんな匂いのする薬液です。どんなに着替えても、シャワーを浴びても、長年爆弾制作に携わっていた彼女からは、随分と濃密な匂いがしましたよ」

『!!!』

 

 コナン君が息を呑んで「……まさか!」と信じられないかのように声を漏らした。

 

「クリスティーヌ・リシャール。鼻が曲がるほど臭いがしました。人間の鼻は不便ですね。香水の香りと混ざって吐きそうでしたよ」

『それは…ならなんでわざわざ本物の爆弾を使って、自分が狙われているように偽装したんだ?

いや、違う。そもそも子供達が狙いだった?結婚式を強行した理由は…』

 

 コナン君の推理が急速に進んでいく。

 まあ、コナン君のことだからもう間も無く答えに行き着くだろう。

 

「目的というのなら、やはり一番は復讐者の会の一掃じゃないですか?」

『何か知ってるのか?』

「裏ではどうも引退の噂が出回ってるらしいので。これを逃したら永劫プラーミャへの復讐の機会は巡ってこないでしょう」

『………日本に集めて暗殺するつもりってわけか。結婚式を利用して…けど、あんな雑多で共通点もない人たちを一体どうやって』

 

 善良なコナン君では、「渋谷ごと全員吹き飛ばす」という実にシンプルなソリューションは思いつかないらしい。

 

 私は咳払いしてコナン君に言葉を向けた。

 

「では僕は予定通りナーダ・ウニチトージティに接触します」

『ああ。ともかく彼らの行動をコントロールできればそれで良い。交渉の全権をお前に任せる』

「ありがとうございます。必ずや復讐者達の暴発を防いでみせましょう」

 

 

 

 

 

 電話を切って、もうそろそろ時間なことを確認する。

 

 歩いて向かう先はフードコートだ。

 ルパンの教えを受けて作ったラバーマスクは特徴のない黒髪の男性の顔で、これならば私の身元が明らかになることもないだろう。

 加えてリュックはリバーシブルに作ってもらったから、警察が追うのも一苦労だろう。

 

 さて、視線の先でフードコートで昼食をとっているのはナーダ・ウニチトージティの皆さんだ。

 

 復讐者の彼らは、爆弾魔の息の根を止めんとして集まった方々である。

 私は彼らの前に立ち止まって、にこりと微笑みかけた。

 

「はじめまして、復讐者の皆さん。あなた方に耳寄りなご提案があるのですが」

「ッ!……何者だ」

 

 すぐさま鋭い殺気が私に突きつけられる。

 この机だけでなく、この近くで食べていた別のグループも敵意を向けてきている。

 どうやら被害者の会のみんなでまったりしてたらしい。

 すまんな…休日フードコートオフ会を邪魔しちゃって。

 

 代表であるエレニカが私に敵意のこもった問いを投げかけた。

 

「まずお前は何者だ?」

「プラーミャの敵です。あの爆弾魔に消えて欲しいと願っている、皆さんの味方でもあります」

「凄いな、信じられる要素が何一つない」

 

 そう言われると自分でも恥ずかしくなってくるのだが、どうしたら良いものか。

 このままだと主人公に「力が欲しいか…」って言ってくる黒服の類似品になってしまう。

 私は穏やかに両手を広げて苦笑した。

 

「蛇の道は蛇ですよ。プラーミャについて、我々は少しだけよく知っています。話を聞く価値はあると思いますよ」

「ほう……ならば我々に求めるのはなんだ?」

「実行役としての立場でしょうか。ほら、我々は後ろ暗い人間なので、警察に捕まるのは嫌と言いますか」

「腰抜けめ」

 

 ひとまずは納得してくれたらしい。

 話を聞く姿勢になったエレニカさんの机に私も座る。

 ワイワイガヤガヤするフードコートで、意外と聞いている人は少ないんだよな。

 

 私はまず核心から話し始めた。

 

「私は現在のプラーミャの素顔と経歴、正体を知っています」

「!!」

「我々の仲間が一人、ロシアのデータサーバーに侵入しました。ある程度情報が掴めましたので、そこからは…多少の幸運がありましたがね」

 

 目を見開いたエレニカは、次の瞬間凄い剣幕で私の胸ぐらを掴んだ。

 慌ててそばの男が静止に入る。

 

「教えろ!!どいつがプラーミャだ!!!」

「おいエレニカ!やめろ!」

「あわわわ。もちろんお教えします。ついでに、プラーミャの今後の動向もお教えするつもりですよ」

 

 私は胸元を直して息をついた。

 さすが復讐者、剣幕が凄まじいな。

 殺気まじりの視線をいなし、私は冷静に言葉を続けた。

 

「今後、買い物だったかの名目で一人になる時間があります。巧妙に隠した武器を回収するべく、手配した人間に連絡を入れるんです」

「………」

「貴方達はその時、スマホを取り上げれば証拠とできるでしょう。貴方達も、誤解で人殺しはわりに合わないでしょうし」

 

 空気が緊迫している。

 こいつの言っていることが本当か、なんとかして見極めようとしているのだろう。

 

「それができなかったとして、肩の弾丸を調査するのも手です」

「弾丸?」

「貴方の兄、オレグが残したメモにも書かれていることですが。三年前、日本の警官に撃たれて肩に銃弾が入ったままだそうですよ」

 

 その弾丸が取り出せず、腕を上げられないのだという。

 それは死んだ諸伏景光の残した唯一の光明だ。

 

「金属探知機で探してみたらどうです?それか、捕まえて腕から外科的に取り出してみるとか」

「わかった。……それだけの情報があるなら、お前を信じよう」

 

 怪しんではいる。

 だが私の持つ情報量に確かな部分もあると考えて、ひとまず動いてから考えれば良いと思ったのだろう。

 

 本当は原作通りウェディング当日に警官達の前でプラーミャに自白させられれば一番楽ではあるんだが。

 流石に夫の村中警視正が可哀想すぎるし、コナン君が爆弾を防げるか賭けすぎるからな。

 

 

 残る問題は。

 

 たとえ片腕だったとして、プラーミャは金属バットとかのしょぼい武装をしたナーダ・ウニチトージティの人員二十名以上を一人で殺して逃げ出せるスペックがあるってことだけどな。

 





・実は混乱してたコナン君
小一時間ほどベビー用品コーナーに居座る。
宙は…俺の第一子…???
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定
▲ページの一番上に飛ぶ  X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。