降谷零のクローンなオリ主とコナン世界   作:ラムセス_

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王妃の別れ①

 

 半導体不足が問題視される昨今。

 不安なニュースが街を騒がせ、プラーミャ確保の一報も同じく社会のちょっとした話題となって流れていくのみ。

 

 というか、私の発する自死命令の電波をそのまま発信する命令拡散機には、当然半導体が使用されてるんだよな。

 デジタル信号処理とか、周波数変換もそうだ。

 

 文字通り生命線を担う命令拡散機の製造に、社会はあらゆる半導体を吸い取られてしまったことになる。

  

 そのため車もスマホも値段爆上がりの品不足。

 阿笠博士がご家庭でルーターを改造して作れるとか言ってたが、そういう天才発明家はそんなにいないし。

 とはいえ、作り方自体は阿笠博士が無償公開済み。

 現在はアメリカに拠点を置く専門メーカーを含めた世界の多くの企業が参入している。

 

 街頭の大型画面に映るニュースには、医療機関を受診する際のポイントが大映しになっていた。

 

『言動が支離滅裂、激しい痙攣、鼻血、眼球が大きく動くなどの症状がありましたら──』

『絶対に正規輸入品以外の食品を口にしないよう…』

 

 字幕を見上げて、園子ちゃんがむむむと眉を顰めた。

 

「ねえ、どこだっけ、昨日日本で初めてネバダ虫がでたってとこ」

「ううん、関西の方だったと思うけど。怖いね……新一は今頃何してるんだろ」

 

 不安そうな蘭ちゃんに、「あやつからの連絡はどうなのよ?」と園子ちゃんが腕を組んだ。

 

「元気にしてるから心配すんなって写真も送られてきたよ」

「んんー、どこよここ……ってホワイトハウスじゃない!!!どこ行ってんのよあの男は!」

「良いね、トートバッグのお土産買ってきてもらおうよ」

 

 私が言うと、「あ、それいいかも」「食品はみんな神経質だしね」とうむうむ同意を得られた。

 どうやら私とアメリカに渡ったときの写真のようだ。

 ちゃっかりしておるわい。

 目立たないよう小さくなっているコナン君がえへへ、と笑っている。

 

 わいがやの中に出てきた日本初のネバダ虫発見は、今も世間を大いにざわつかせている。

 

 どうやら未だ原因は不明なこともあり確かなことは言えないが、一部で自家製のなれずしではないかという疑惑が浮上しているとのこと。

 被害宅では川魚を釣ってそれを自家製なれずしにしてSNSにアップしていたとのことなので、塩漬けと発酵が甘かった可能性は否定し切れない。

 

 1ヶ月以上の塩漬けと乳酸発酵に耐え抜いた幼生が孵化して暴れ回った、という可能性も十分あるか。

 なれずしは流石に幼生も死ぬんじゃ、と思いつつ。

 輸出されたジャーキーなどでも生きているあたり、乾眠の性質があるかもっていくつかの研究で示唆されてるし。

 本当に厄介さの塊みたいな生態だなおい。

 

 もはや河川も安全では無いと言うことで、川のレジャー施設は臨時閉鎖となっているようだ。

 今後、政府による命令拡散機の設置などが検討されていくことだろう。

 

 幸いにも、発生したネバダ虫自体は駐在さんが一対一で死に物狂いで討ち取ったとのこと。

 今は村全体が封鎖され、清掃と命令拡散機の緊急配備が行われているらしい。

 

 

 

さて。

 

 本日は鈴木大博物館にやってきている。

 組織の仕事は一旦お休みで、ロマノフ王朝の秘宝展を見る行楽日だ。

 

 私が休学してしばらく経つ。

 気分転換にと園子ちゃんが誘ってくれたのだ。

 

「ともかく、阿笠君は調子どう?キッド様のこと結構気にいってたじゃない?ちょうどいいかと思ったんだけど」

「ありがとう!今夜だったっけ、キッドの予告」

「そのとーり!あわよくばキッド様の現場にお邪魔して、そのまま愛の口付けを…!」

 

 園子ちゃんがむふふとエロ親父並みのだらしねぇ笑顔を浮かべている。

 「京極さんに怒られるよ!」と蘭ちゃんの言葉にもどこ吹く風。

 これだから憎めないお嬢様なんだよな、園子ちゃん。

 

 蘭ちゃんが眉を下げて私に声をかけた。

 

「それ重くない、大丈夫?」

「大丈夫。下ろせないからトイレとか不便だけどね」

「もし体調が悪くなったりしたらすぐに言ってね」

 

 蘭ちゃんの気遣いに満ちた言葉に、私は思わず笑顔になった。

 ええ子や。

 瞬間、素早く私の脛を蹴っ飛ばして「鼻の下伸ばしてんじゃねぇ」と目で訴えてくる嫉妬男を添えて。

 鎮まりたまえ。

 

 というか、実はもう少し体調が悪いんだよな。

 

 たぶん、そろそろ「寿命」だからだろうけど、今日のうちぐらいは問題ないだろう。

 それよりせっかくなので今代最期の挨拶をキッドにしておきたいし。

 

 肉体君が「ヤダーーッ死にたくないー!」と昨日からわんわん泣き止まないんだよな。

 私が魂連れてってやるって言っても全然聞かずに「母君と別れたくないぃぃい」ってバタバタしてるし。

 聞き耳すら持ってくれねぇ。

 

 と、そのあたりでふと後ろから声がかかった。

 

「あれ、蘭ちゃんに園子ちゃん!」

「梓さんに安室さん!お二人とも来てたんですか?」

「お店のエアコンが調子悪くて。修理までの暇つぶしにね」

 

 降谷さんが安室モードで爽やかに片手を上げた。

 私は近距離用電波で同時に話しかけた。

 

『オリジナル、バイトの時間を作れるようになったんですね』

『本当はまだ燃えてるんだが、梓さんから怒りのメッセージが来たから仕方なくね』

『不良アルバイター過ぎますもんね…中抜けバックれ上等の問題店員。決め台詞は「すみません、急用で早退します!」』

『反省はしている。改善できるとは言わないが』

 

 まったく、どうしようもねぇあむぴである。

 降谷さんは反省も後悔もない圧の強いニコニコ笑みを浮かべた。

 

『そういえば荒ぶる上司が公安に出現したって聞きましたがそろそろ静まりました?』

『………風見かな?』

『いやみんな言ってましたよ。祟り神が庁舎を徘徊してたって。野生の赤井秀一に遭遇したからってカリカリしすぎですよ』

『僕のクローンともあろうものが僕を裏切るのか!』

『愉快な人じゃないですか。僕結構仲良くてお茶会とかしますよ』

 

 降谷さんは激昂したのか、わけのわからない激しい怒りの波動だけを電波で送りつけてきた。

 感情を直で送れるネバダ虫式通信方法に熟達しておられるらしい。

 

 一応、二人して黙ったままは不気味なので、表面上当たり障りない会話をしている。

 裏で何やら言い合っているのを察したのか、コナン君が胡乱な目を向けた。

 

 と、そこいらで女子高生組に安室&梓ラブラブデートとやらを疑われた梓さんが憤慨。

 「それなら、阿笠君はいい子いないの!?!?」と私に牙を向けてきた。

 うわっ、急に私に喰い付かないで!

 

「ほら、蘭ちゃんとかいい子よ?」

「あ゛???……じゃなくて、蘭姉ちゃんは新一兄ちゃんが居るから無理じゃないかなぁ」

「コナン君、抑えて抑えて」

 

 素早く荒ぶったコナン君は、みんなの前だということをギリギリ思い出して取り繕ったらしい。

 

 でも小学生に許される「あ゛?」の低さじゃなかった気がする。

 肉体君がまだズビズビに泣きながら「父君は何もわかってない…母君の方が相応しい…」とグズグズ泣いている。

 情緒がおかしい人しかいねぇ。

 

 空気が変になってしまったので、慌てて私からもフォローする。

 

「僕はお相手居ないんですよね。僕のこと丸ごと受け入れてくれる人募集中です」

「意外、阿笠君は安室さん似だから彼女なんてすぐできると思ったのに」

「こやつ、告白されてもすぐ断っちゃうのよ」

「僕のこと丸ごと受け入れてくれる人のみ募集なんで」

 

 私の言わんとしていることがわかったのか、コナン君が苦笑した。

 

 ネバダ寄生虫のクイーンすなわちメスやけどええか?

 健全な高校生が恋心で一生を棒に振るもんちゃうで。

 

 蘭ちゃんがやや頬を染めた興味津々の様子で口を開く。

 

「梓さんは安室さんとどうなんです?」

「とんでもない。とんでもない。とんでもない」

「僕がこんなにアピールしてるのに梨の礫なんですよ」

「そのニヤついた表情引っ込めてください」

 

 善良な民間人を揶揄うことに決めたらしい安室さんが、悪質な笑顔で器用に悲しそうな顔を取り繕った。

 純粋に自分に靡かない女が珍しいから遊んでるだけだろう。

 こんな邪悪な「おもしれー女」ムーヴ初めて見たわい。

 

 憤りのままに梓さんは蘭ちゃん達の後ろにシュンっと隠れた。

 

「私は蘭ちゃん達と回ります!コナン君、阿笠君、安室さんは別グループということで!!!」

 

 宣言と共に決定されてしまったらしい。

 すっかりグループ分けの雰囲気が出来上がってしまった。

 

 というかコナン君に私に降谷さんって、いつ死体が上がってもおかしくないメンツやんけ。

 

 流石安室さんというべきか、周囲でも「わっ安室さんだ!」「かっこいー!」「あれ甥っ子君だよね?そっくり!」と声が上がっている。

 私までパンダ扱いってどういうことや。

 

 しかし、待っていても長蛇の列は遅々として進まないものだ。

 ぼうっとしている間に、降谷さんがいつのまにかマジックを始めていた。

 

「え、安室さんもマジックできるんですか?」

「阿笠君ほどじゃないですけど、手慰み程度にはね」

 

 ほら、と初歩的なトランプマジックを披露して、「すごーい!」と女子高生組が歓声を上げる。

 流石降谷さんだ。

 初歩の初歩だが、彼の堂々とした自然体の態度がそのトリックを極めてわかりづらくしている。

 マジックは素人だが、嘘つきは玄人というわけか。

 

「子供騙しだな」

 

 後ろに並んでいたおじさんこと怪盗キッドが華麗に参戦。

 挑戦者が現れました、とカットインが脳内に流れる。

 

 安室さんから受け取ったトランプを自在にスート(記号)ごとに分けつつバラバラと舞わせて、それを鳩に変えて空に放る。

 

「そこのやつは俺と同じことができる。そんな子供騙しで満足しているようじゃ、痛い目を見るぜ?」

 

 いうだけ言ってポヒュンとキッドは姿をくらませた。

 それだと私がキッド側の人間みたいに聞こえるんじゃが。

 ちなみに、消えたトランプは私が受け取っておりますのでご心配なく。

 

 コナン君が私に内緒話のポーズをとった。

 

「あれ、マジでできるのか?」

「鳩は飼ってないですから、手足を代わりにしてトランプを手足に変えるとかならできます」

「上がるのは歓声じゃなく悲鳴だなそりゃ」

 

 手足は頭がいいからな。

 色々なマジックができそうだ。

 手足切断マジックとか、大脱出手足とか。

 

 なお、眼前ではプライドエベレスト男はしめやかにキレ散らかしているものとする。

 

 風見さんを召喚しようとして、まだプラーミャの件が終わってないことをギリギリ思い出したらしい。

 風見さんの追加業務は首の皮一枚で回避され、そのままイラつき全開で憤怒の波動を放出している。

 表面上は困ったように笑っているだけだが、私にはわかる。

 内側は祟り神降臨に違いあるまい。

 

 まったく、とんでもねぇあむぴだ。

 

 「キッド様素敵!!!」とハートを飛ばす園子ちゃんを引きずって、ようやく順番が回ってきたので中に入ったのだった。

 





・コナン君
まだクローンの死が近いことを知らされてなくて割と呑気。

・クローン
死期を早く報告しなきゃ…いや面倒臭いし後でいいか…。

・肉体君
この人心無野郎!!!
あっでも待ってまだ言わないで心の準備が。
情緒が育って死が怖いお年頃。
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