降谷零のクローンなオリ主とコナン世界   作:ラムセス_

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蛹の準備

 

 何だか最近体調が悪い。

 

 先日のベルモット騒動の後、凄い勢いで降谷さんは家に帰還してきた。

 仕事で抜けられなかったらしく、その限界ギリギリを抜けて来たらしい。

 

 部屋は盗聴器の類が仕掛けられてないか全部確認したし、急遽引っ越しの準備を始めることになったのでてんやわんや。

 その合間に組織の呼び出しがあるなどしてもう完全な修羅場であった。

 

 降谷さんは毎秒レベルでベルモットの長文悪口を吐きだしていた。

 多分今後会うたびに冷戦になるのは想像に難くない。

 

 まあそれはともかく、私の体調の話。

 

 ベルモット騒動以降、体調が悪いのはここ最近ずっとのことだ。

 

 熱っぽくてだるくて、風邪のようだが長く続く不調だ。

 不愉快なので何とかしたいが、私が市販の風邪薬を飲むわけにはいかないので放置。

 

 先日阿笠邸に行った時も検査することになったのだが。

 その時に抜け漏れがあったのか、灰原さんの勧めで本日は再検査する予定である。

 

 今日は降谷さんを伴っての阿笠邸訪問である。

 なぜか降谷さんも連れてきてくれと灰原さん阿笠博士連名で話があったから、無理を言って一緒について来てもらった。

 

 間を縫って降谷さんも来てくれて、先日のツインタワー爆破で忙しいだろうに頭が上がらない。

 

 チャイムを鳴らすと、玄関からは少し顔色の悪い灰原さんが顔を出した。

 目の下のクマは彼女が連日眠っていないことを示している。

 まさか、私のために夜更けまで調べてくれていたのだろうか。

 

 玄関には私が以前送った造花の瓶が朝の日差しを浴びて煌めいていた。

 

「よく来たわね、空君」

「瓶、飾ってくれたんですね。嬉しいです」

「ええ。こんなに可愛らしいんですもの。みんなに自慢しなきゃと思ったのよ。貴方からのせっかくのプレゼントだもの。そうそう、手品は上手くなった?」

「新技は覚えました。今日見せていいですか?」

「もちろん。楽しみにしてるわ」

 

 相変わらず灰原さんは優しく、目元を緩めて私を歓迎してくれた。

 私がやや上目遣いで灰原さんを見ると、灰原さんは柔らかな手つきで私を撫でてくれた。

 

「今日も結構多項目だから時間がかかるわ。ごめんなさい空君、体調が悪くて負担だろうから、辛かったら無理をせず言って」

「はい。お気遣いありがとうございます、灰原さん」

 

 阿笠邸の奥に案内される。

 光の差さない部屋に病院にありそうな医療機器がたくさん並んでいて、このために用意したのかもしれない機材も多くみることができた。

 阿笠博士、まさか私財を投じて…!と震えが走る。

 

 機器の調子を見ていた阿笠博士はこちらを振り向いて笑顔を見せた。

 「後輩から古くなったものを買い取らせてもらったんじゃよ、心配せんでもいい」とダブルピース。

 医療器具の扱いは色々と法にも触れそうで、なんだがソワソワ落ち着かなくなる。

 

 そんなわけで検査である。

 

 検査は何項目もあって大変だったが、私よりずっと灰原さんの方が大変だったことだろう。

 患者である私の方は他の患者もおらず待ち時間ゼロでスムーズなものだった。

 肺活量を測ったり、超音波検査をしたり。

 降谷さんはその間「これに目を通しておいて」と言われた資料を広げているようだ。

 

 そうして検査が終わったら、私は居間でまったりくつろぐ休憩タイムに入る。

 分析は二段階。

 すぐに結論が出る話と、分析を待つ必要がある話の二つだ。

 待つものに関しては一週間ほどしたら結果がわかるらしい。

 

 阿笠博士が椅子でたるんとしている私を覗き込んだ。

 

「今気分はどうじゃ」

「今日は比較的マシな感じです。でもまだ熱っぽくてふらふらしますから、ソファを借りていいですか?」

「もちろん。枕とブランケットも持ってこよう」

 

 優しい阿笠博士が心配そうに私に「くれぐれも無理はせんようにな」と声をかけてくれる。

 

 その間に灰原さんなパタパタとスリッパを鳴らしながら「ちょっと、いいかしら」と言って降谷さんを別室に呼び出している。

 

 ソファで横になると、阿笠博士がブランケットをかけてくれた。

 柔らかくて心地いい。

 そのあたりでコナン君もやって来て「博士!」と何か言いかけたまま停止。

 私の姿を見てゆっくりとこちらに歩み寄って来た。

 

「コナン君、学校はどうしたんです」

「ちょっとな。灰原はどうした?」

「今奥でオリジナルと話をしています」

 

 コナン君は私の額に手を当てて、ゆっくりと撫でてくれる。

 

「あの人のところの生活はどうだ?」

「とっても嬉しいです」

「嬉しい?」

 

 きょとんした顔に、私はクスクス笑った。

 

「心が暖かくなるんです。コナン君も、こんな気持ちを僕にくれていたんですね」

「ああ。人を大切に思う気持ち、人の幸せを願う気持ち。そういうのがオメーも分かったなら俺も嬉しいよ」

 

 コナン君はにっこりと笑って私をわしゃわしゃしてくれた。

 

「じゃあ俺は灰原のところ行ってくるから、お前はあんまり無理せず、辛くなったら遠慮なく阿笠博士にいうこと!」

「はい、承知しました」

 

 そのまま、私はお疲れの弟君を抱き込んですやすや眠りに落ちたのだった。

 

 

 

 

 しばらく後。

 私が扉の開く音でポヤポヤ起きると、降谷さんが真っ青な顔で奥の部屋から出て来た。

 というかなんだなんだこの空気。

 

 弟君がむむむと唸って腕を組んだ。

 

『そういえばそんな時期でしたね。以前より少し遅れてるのは時間のブレなのか、あるいはコバンザメの影響なのか…』

『そんな時期、といいますと』

『体の作り変えの時期です』

 

 私は幼生、幼体、蛹、成体の四段階を踏む生き物だ。

 その蛹の時期がやってきたということらしい。

 そして成体が終わると、体内の次代に転生して命を終える。

 

 サイクルはとても短く、数ヶ月もない程度だと弟君は証言した。

 前回の世界では実に四人目の阿笠空まで行ったらしい。

 

 特に今回は蛹の期間が長くなりそうで、蛹のまま寿命を迎えて枯死する可能性が高いのだとか。

 

 多少私も記録を見て知っていたが、そんなキモい生態だったのかとびっくりする。

 同時に、シンプルに嫌だなと思う。

 

 顔を顰めていると、弟君が意外そうに瞬いた。

 

『あれ、死を超えて同一ゆえに何も問題ないって理屈は使わないんですか』

『だって死んだら同一人物と見てくれないかもしれないじゃないですか。転生を打ち明けて気味悪がられたら立ち直れないですよ』

『あなたにそんな真っ当な感性があったとは』

 

 そんな真人間でなかったみたいな言い方は名誉毀損なのだが。

 私はブスブスと弟君の魂を指でつついた。

 「うお、うお、つつかないでください擽ったい!」と弟君がむずがる。

 

『それに、よしんば受け入れてくれたとて、オリジナルの悲しみは拭えないでしょう。僕はオリジナルを悲しませたくない』

『ほー……』

『何ですその反応。犬が逆立ち歩きするショーを見たみたいな反応』

『いえ別に』

 

 むしゃくしゃしたので、私は激しく弟君の魂をこね始めた。

 餅つきである。

 「ままままま待った待ったへブゥ」とこね回されて弟君が悶絶している。

 柔らかくて実にこねやすい。餅生地みたいだ。

 

『転生はそうそう信じてはもらえないでしょう?だから今のうちに魔女さんの力を借りて転生者であることを打ち明けましょうか』

『待った待った喋れなむぎゅ!!……こねすぎですよあなた!』

『すみません。柔らかくて手触りが良かったので』

『まったく……そうですね。ただ魔女に頼むとなると高くつきそうなのが何とも。対価なら、僕が前周の貴方からもらったエネルギーの一部とかどうでしょう』

『え、その大福千切られるのは申し訳ないですよ』

『えっ千切るの?うーん、本人に聞いてみるのが早いでしょうね』

 

 まったり雑談していると、降谷さんがやってきて、私の額に手を当ててくれた。

 眉が下がって心配そうだ。同時に悲痛そうでもある。

 

 そのまま、見ているこちらの方が辛くなるような声で囁いた。

 

「辛そうだね。僕が背負っていくよ」

「ありがとうございます、オリジナル」

 

 降谷さんが両手を広げたので、ぎゅっと抱きついて背中に回る。

 嬉しさが体に満ちていく、不思議な感覚。

 

 降谷さんの顔色がすこぶる悪い。

 私をおんぶをする指が僅かに震えている。

 

 どこか沈鬱な空気の中、降谷さんは阿笠博士達に頭を下げてから家を出た。

 

 歩いてすぐの距離だ。

 私を背負ったまま、お昼の日差しが私達の体に降り注ぐ。

 疲れたからか、また発熱して来た気がする。

 

 降谷さんがぎゅっと私の足を握った。

 

「空君は、したいことはあるかい?」

「え?そうですね、オリジナルと美味しいもの食べたいです」

「今晩はうんと豪勢にするよ。他には?」

「うーん、できればいずれ新しい手品道具が欲しいかもしれません」

「すぐ用意しよう。他には?」

「あの……僕、今のままでも十分幸せですよ」

「僕がしたいんだ」

 

 何でも言っていい。何でも欲しがって。何でも叶えたい。

 だからどうか少しでもこの世にいて。

 少しでもその生の証を残して。

 

 言葉の端々に、そんな切なる願いが込められているのを感じ取る。

 降谷さんは迫真の様子に、私は全く困ってしまった。

 

 枯死の可能性について降谷さんも聞いたのだろう。

 そうすると私が過度に遠慮するのも違うし、だからと言って別れの挨拶などしたくない。

 

 ならば、と私はポンと手を打った。

 

「なら………会って欲しい人が居るんですけど、オリジナルの時間をもらえますか」

「会って欲しい…人?」

 

 きょとんとした様子に、私はおんぶされたまま彼の耳元で話した。

 

「まだ先方に確認していないので確定ではないんですけど。できれば会って話をして欲しいです」

「なぜだい」

「僕の一番大事な秘密を、打ち明けたいとおもったので」

 

 私の言葉に、降谷さんは息を呑んだ。

 

 そして慎重に「わかった」と答えてくれたのだった。

 





・降谷さん
灰原さんに「蛹のまま枯死するでしょう」って言われてこの世の終わりになってる。
絶望曇らせにつきモノローグ省略。
また失うのか…とかって独白で激鬱してた。

・蛹化の遅れの原因
コバンザメが鬱ってるから。
「せっかく作った生物兵器が普通の子供みたいに笑顔でホワホワしている……鬱だ……」
「見ろ!バーボン様と親子ごっこしてるぞ!」
「幸せそうで激萎え。解釈違い乙」
「力湧いてこない。蛹化を促す元気もない…」
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