降谷零のクローンなオリ主とコナン世界   作:ラムセス_

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邂逅、協力、互いの思惑

 

 まず向かったのは米花町だ。

 

 隠れ潜んで歩くこと半日。

 研究所から離れたところまて来てから、電車を乗り継いでえんやこら。

 

 とはいえ、コナン界の地理なんてろくすっぽわからない。

 しかもスマホなんて便利な物も無いと来た。

 

 研究所にはあったんだが、追跡されると厄介だから持ってこられなかったんだよね。

 現金は頂いたから電車は使うことができたが、身一つで持ってこれる量には限界もあるし。

 

 道中図書館で地図と路線図を見つけ、なんとかアナログに向かうことのなんと苦行なことか。

 ついでに図書館では過去一週間分ぐらいの新聞とネットニュースを漁ることができたから、それは幸いだったか。

 

 コナンの時系列なんてすごくふわっとしてるし、あんまり信用はおけないけれど。

 でも一応目安ぐらいにはなるかなと思った次第である。

 

 新聞を見た結果、工藤新一はすでに活躍の最中にあるようだった。

 6日前の新聞には、トロピカルランドで起こったセンセーショナルな殺人事件が一面をかざっていた。

いた。

 

 原作はすでに始まっている、ということらしい。

 というかあまりにセンセーショナル過ぎて割と自主規制の利いた書き方だった。

 

 ジェットコースター上での殺人事件!としか書いていないというか。

 具体的に首チョンパ血の雨なことは伏せてあって、なんとも現実であることをしてしている。

 

 しかし、とするとバーボンの現在の動向はわからないことになる。

 研究所も一度訪れただけの幹部の所在など把握していなかったし。

 

 警視庁に駆け込んでも、門前払いな上に内通者に通報されてジ・エンド。

 できれば目暮警部レベルにはしっかりした立場の人にコンタクトを取りたいが、そんな野生の目暮警部なんて出現したりしないし。

 

 そのように考えながら辿り着いた米花町で唸っている私に、柔らかな声がかかった。

 

「あらぼうや、迷子かしら」

「ッ、すみませんおばあさん。お邪魔でしたか?」

「いえいえ。良い子ねぇ。この辺はずっと住宅街だから、公園に行くなら案内しましょうか?」

「ありがとうございます。僕は知り合いの家を探していただけで…」

 

 ちょっと困ったことになった。

 

 米花町は高級住宅街だ。

 高貴そうな犬を連れた品のいい老婦人が、心配そうに私を見つめている。

 本当は木馬荘に行くつもりだったのだが……。

 

 だか木馬荘に行ってもまだアムピはいないだろう。

 おそらく火事の後建て替えたのちに入居したんだと思われるし。

 それか姉妹館に入っているか。

 

 老婦人の連れた犬くんは「フンス」と私を検分して訝しげな顔をした。

 匂いで何か人間と異なるのがわかるのかもしれたい。

 

「どなたのお宅?」

「……工藤さんのお宅です。工藤新一さん」

「まあ、新一君の知り合い?今ご両親はご不在だから一人暮らしだったはずだけど…なにか事件のご依頼かしら」

「はい。少し相談したいことがありまして」

 

 嘘ではない。

 どうせ不在だし、彼の家と隣の阿笠博士の家を調べておくのは必要なことだと思ったからだ。

 

 案内に従って老婦人と歩いて行く。

 ご婦人は本当にいい人で、工藤新一の幼い頃がどんなにお利口で良い子かをたくさん語って聞かせてくれた。

 この辺の住民のようだし、たぶん結構なお金持ちさんだ。

 

 原作に該当する人物は思い当たらないが、見えないだけで近所付き合いはあるというやつだろう。

 

 到着した屋敷は思いのほか大きく、立派で、ドラマの撮影でもありそうなほど存在感のあるお屋敷だった。

 

 老婦人はそのまま「じゃあ私はこれで。気をつけてね」と優雅にまた去って行く。

 犬さんは相変わらず訝しげにフンスフンスしていたが、食い付いてくるようなことはなかった。

 

 どうしたもんか、と私は門の前で立ち尽くした。

 

 考えれば考えるほど面倒くさくなってくる。

 工藤邸の確認はできたから、この後「お父さんを探したい」とでも言ってコナン君にバーボンの行方を探してもらう?

 普通に毛利探偵に児相に突っ込まれるわい。

 

 それにアムピに会えたとして問題は山積みだ。

 

 「僕はあなたのクローンです!」なんて叫んでもなぁ。

 昔どっかで間違いが起きたのかとビビらせるだけだろう。

 そうならないようにデータは全部パクったUSBに入れて持ってきたけれど。

 次はその現実の悍ましさにドン引きさせてしまうだけだし。

 

 勝手に作られた自らのコピーに嫌悪感の目を向けるアムピは、流石に私の心がブロークンする。

 

 別に第二の生にそこまで執着はない。

 エクストラターンだし、苦しみさえなければそこまで長生きする必要はないからだ。

 

 組織のアジトに突貫してバーボンを出せと喚いて、それで真実を叫んで満足して自害するとか。

 面倒臭さを排せば、それはそれでアリな気がしてきた。

 

 そのようにぼーっと考えていると。

 背後から声がかかった。

 

「君は誰じゃ?ここは工藤邸じゃが」

「ッ………はじめまして。工藤新一さんはご在宅ですか」

 

 ふくよかな体型にもふっとした髪型が特徴的な男性だ。

 白衣に丸メガネは実にそれっぽく、彼が間違いなく隣家の阿笠博士であることを示している。

 

 阿笠博士はちょっと焦ったように愛想笑いをした。

 

「新一は今留守にしとってのお、要件があるならワシが聞こう」

「では失礼して。アポトキシン4869で死体が上がってないのって、どう言うトリックですか?」

 

 単刀直入。

 阿笠博士が目を見開いて、それからわけがわからないと言う顔をした。

 

 破滅願望は一旦脇に置いておいて。

 正直、今の私には対外的には彼らに保護を頼む理由がないから、なんとか誤魔化しつつ保護してもらうのか最善だ。

 

「え、いや、その……?」

「組織が開発した毒薬と聞いています。死体から毒が発見されない新薬。工藤新一に使用されたとも、噂で」

「……ま、まさか組織の…!?」

「別にあなた方を害そうと言う気はありませんよ。ただ純粋に、やることがなかったので自由研究がてら聞き込みに来ただけです」

 

 そう冷静に告げたが、阿笠博士の焦りはかなり酷いらしい。

 結構致命的なことを叫んでワタワタと距離をとった。

 

「君も薬で小さくなったと言うことか!」

「小さくなった?僕は分野領域が違うので、アポトキシンは摂取したことも無いし詳細も知りません」

 

 たしかに、今の私はすごく幼児化したやつに見えるかもしれん。

 でも本物のアムピは別にいるから、明確な勘違いだ。

 私は少し悩んでから博士を落ち着かせるようゆっくりと提案した。

 

「よければ、どこかで詳細をお話ししましょうか。同席者がいても構いませんので」

 

 そのように言うと、阿笠博士はごくりと生唾を呑んだようだった。

 

 

 

 

 

 果たして、阿笠邸に迎え入れられた私は、小さなイヤホンをつけた阿笠博士と対面することになった。

 

 少し待っててくれと言われて小さな応接間に通されたが、扉の向こうは慌ただしくバタバタしていた。

 全環境対応型生物兵器だからか、どうもこの体はすごく耳がいいらしい。

 多分その向こうにはコナン君が頭を抱えているのが色鮮やかに脳裏に描かれた。

 

 しばらくして戻ってきたカンペ付き阿笠博士が、ごほんと咳払いして私の向かい側に座った。

 

「では、改めて聞かせてもらおうかの。君が何で、目的はなんなのか」

「ええ。と言っても、薄っぺらなものですが」

 

 繰り返しになるので内容は割愛。

 すなわち「目的は無く、単なる好奇心でアポトキシン4869を調べているだけ」。

 そのような話に、阿笠博士越しのコナン君が目を鋭くしたのがわかった。

 

「では、君の正体について聞きたい。それほどの知恵があって組織の闇を知っていて、一般人というわけではあるまい」

「はい。僕は…」

 

 少し言い淀んで、私はできるだけ確からしく冷静に言葉を紡いだ。

 

「あらゆる手をかけて、組織のために育てられた存在です」

「手を……どういうことじゃね」

「薬物、外科的、その他倫理を問わぬあらゆる手段で、という意味です。培養は3年と11ヶ月。培養槽を出たのは今日の早朝になります」

「ッ!?」

 

 息を呑んで、絶句して、二人はおそらく同時に黙り込んだ。

 私はあらかじめ用意してあったUSBを机の上に置いて、それを差し出した。

 

「これは僕の培養データの入ったUSBです。どうぞ、ご自由にしてください」

 

 阿笠博士が「見るぞ、新一」と小声で言ってUSBをPCに挿す。

 ダメじゃないか、怪しい人物の渡したUSBを機器に挿しちゃ。

 まあウイルスなんて仕込んでないから別に構わないんだけどさ。

 

 そのまま待っていると、阿笠博士の顔がどんどんと顔面蒼白になっていった。

 慌てて何か操作しているのを見るに、コナン君にデータを転送しているのだろう。

 

 そのデータを確認しつつ、コナン君が阿笠博士越しに激情を押し殺したような声をだすのが僅かに耳に響いた。

 

「……こんな資金のかかった研究成果を組織が放っておくはずがない。研究所は今どうなっているんじゃ?」

「僕が全て殺し尽くしました。失敗作の兄弟たちも、研究者も、全て。データも焼いて、残っている情報はそれだけです」

「………なぜ、殺したんじゃ」

 

 問われた内容はなんとも答えづらいものだった。

 保身は間違いなくあるが、第二の人生においてそこまて重要な理由では無い。

 追われている最中に民間人に被害を出さないため。それも弱いな。

 ならばそう。

 

「邪魔だったので。特に、深い意味はありません」

「……そうか」

 

 沈黙が部屋に広がった。

 アムピが潜入捜査官だから記憶ありクローンは危険だったからって伝えたかったから、というのが多分一番の正解だろう。

 

 でも勝手にNOC情報をバラすのはマナー違反だし。

 あまりにそっけなさ過ぎて空気が死んでるのだけはなんとかしたいが、どうしようもない。

 

 コナン君が阿笠博士越しに話しかける。

 

「これからどうする気かね」

「行くあてはありません。帰るあてもありませんが……目的は、少しだけ」

 

 顔面蒼白なままの阿笠博士が、恐々と私を見た。

 

「オリジナルに会いたいと思っています。僕のクローン元。組織幹部です」

「なぜじゃね」

「親に会いたいと思うのは、真っ当な感情だと思ったからです」

 

 うそでーす生アムピサイン会に行きたいだけでーす。

 息子のふりして擦り寄ってやるぞゲヘヘ。

 などと下衆な思いを隠して、実に真っ当そうな外向きのガワだけをかぶってそれを通す。

 

 重たい空気はそのままに。

 なにか決断があったのだろう。

 阿笠博士が「ちょっ、これ、新一!!」と叫んで、直後。

 

 部屋に入ってきたのは、小さな姿であった。

 

 今の私とほとんど同じだけの背丈に、鋭く怜悧な瞳が私を貫いている。

 メガネを外し、コナン君は私と相対した。

 

「オメーのご所望の工藤新一だ。満足か?」

「……幼児化って、言葉のままだったんですね。それは、誤解の一つもさせてしまうかもしれません。ご迷惑をおかけしました」

「これでオメーの第一の目的は達成されたわけだ。アポトキシン4869投与者の失踪について探るって言うな」

 

 真実を追い求める鋭いに、どこか挑戦的な気配が宿る。

 

「お前の次の目標は、俺と利害が一致する。協力しろ」

「…僕がオリジナルと会うことがですか?」

「どうせその口ぶりだと足取りが掴めてねぇんだろ。俺たちも組織について追ってる。そういう意味では、俺たちは協力できるはずだ」

「なる、ほど」

 

 ヤッタァァァアアアアア!

 なんとかして味方のふりしたいと思ってたところだ!

 向こうから申し出てくれるとは、さすが主人公様!愛してる!

 

 内心の喜びを押し隠し、私は至極冷静に頷いた。

 

「それに行くところもないってことだし、俺ん家に住めば良い。このコンクリートジャングルで野宿はキツいぜ」

「確かに。それに貴方がたも僕を監視できると。では、お言葉に甘えてあなたとの協力関係を築きましょう」

 

 頷いて私は手を差し出した。

 彼はその手を取って、しっかりと握手が結ばれる。

 

 そしてコナン君が少しだけ笑って私に声をかける。

 

「で、オメーの名前なんて言うんだ?」

「はい。僕は検体番号967-OA2です。よろしくお願いします、工藤新一」

「───………ああ」

 

 彼はわずかに目を落として、憂いを帯びた顔をしたのだった。

 





・コナン君の抱いた印象
まるで氷のような、機械じみた調子のやつ。
命に頓着せず、感情に頓着せず、ただ虚ろな目的に沿って動く人形。
組織の非道によって作られた哀れな子供ならば、なんとかして正しい道に戻さないと。

・クローンの弁明
コナン君の前で緊張してただけなんだわ。
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