降谷零のクローンなオリ主とコナン世界   作:ラムセス_

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命懸けの復活①

 

 キャンプの日である。

 

 度々とんでもない理由で邪魔されるキャンプだが、今日も今日とてそれでも懲りずに子供達はキャンプの歌を大合唱している。

 

 元気の良くノリのいい曲調が耳に残る。

 それを一緒に口ずさむなどして一体感を出しに行く私である。

 学校で習うのだろうか、みんな自信満々に歌っている。

 

 灰原さんが私たちを見て優しく微笑んでいる。

 急に恥ずかしくなり、私は恥じらって小さくなった。

 キャンプの歌なんて歌ってないです……。

 

 今度はテントもバッチリで、不足は何一つない。

 事前に私が積荷チェックしたから、困ることもなかろうよ。

 今日はみんなでバーベキューだと伝えると、元太君が喜びのあまり舞い踊っていた。

 面白いかよ。

 

 森にやってきたら、たきぎ拾いやテントの設営、やることは盛りだくさんだ。

 

 私は力があるのでテントの手伝いをする。

 子供達は枝を拾ったり、灰原さんはキャンプ道具の準備の予定だ。

 コナン君は子供たちの監督という大役があるので、ちょっとばかり面倒くさそう。

 それでも根気強く付き合ってやっているあたり、コナン君は将来良いお父さんになりそうだ。

 

 テントはスムーズに組み立てることができた。

 

 私は博士とともに一箇所に偏らないように力をかけつつ、ペグを打ったりテントを引っ張ったりしただけだ。

 タッパがないのが辛いところ。

 時々灰原さんが手伝ってくれたが、その時に私が土台になって灰原さんを持ち上げたりもした。

 

 そうしているうちに1時間ほど。

 夕暮れに空が染まっても、子供達はまだ帰ってこなかった。

 

 心配そうに灰原さんが眉を顰める。

 

「あの子達、何してるのかしら。流石に遅いわよね」

「また死体を発見したかもしれませんね」

「縁起でもないこと言わないでちょうだい。あの名探偵さんが一緒にいることを思ったら笑えないわ」

「ううむ、心配じゃし、探しに行こうかの。新一も付いとるし、遠くには行っとらんはずじゃが」

 

 頷いて手分けして探し始める。

 バーベキューだというのに元太君が腹減りを訴えもせず戻ってこないのが不安を加速させる。

 

 しばらく探すと、大きな洞窟を発見できた。

 どうやら立ち入り禁止らしく、粗末なロープに注意書きの書かれた看板がかかっていた。

 その前には集めた焚き木が四箇所、まとめて放置されている。

 

 役満ですねこれは……。

 

 灰原さんが大きなため息をついて頭を押さえた。

 

「あのバカ。何やってんのよ。止めなさいよ」

「おそらく止めようもないほど子供たちのテンションが上がってしまったのかと。洞窟ですので」

 

 洞窟はね、テンションあがっちゃうよね。

 ドッグランに放たれたボーダーコリーぐらい走り回る子供達が目に浮かぶようだ。

 三匹もノーリードで居たら制御できるはずもない。

 

 と、そこでこの中から漂ってくる香りに気付いて、私はすうと目を細めた。

 灰原さんがロープを潜って中へ入ろうとする。

 

「遭難かもしれないし、博士はここで待ってて。様子を見てくるから」

「いえ、僕が行きます。お二人は今すぐに通報しておいてください。血液の香りがします。かなり濃密です」

「!!!」

 

 一気に緊張する二人に、私は追加で言葉を落とした。

 

「距離があるので確かなことは言えませんが、死体があってもおかしくはないかと。それと、僅かな火薬の匂い。拳銃です。閉所の暗闇で相対するには危険な相手かと」

「………っ、無茶はしないでちょうだい」

「承知しました。探偵バッジの受信内で何か見つけたら追加で連絡します」

 

 多分コレは「命懸けの復活」だったか。

 コナン君が撃たれるやつだ。

 気付くのが遅れたのが悔やまれるところ。

 

 私はつけていた腕時計をライトモードにして、洞窟の中に身を滑らせた。

 私の腕時計はみんなの時計とは少しばかり違っていて特別製だ。

 

 明かりが極々薄く、人の目では多少の違いしか感じられないほどに薄い青の微光が放射されるようになっているのだ。

 爬虫類用の夜間ライトを改造したものらしいが、なんとなく科学技術的に整合性がとれているか疑問なところ。

 私にはすごく明るく見えるが、人間から見ればどうもほぼ暗闇に見えるらしいし。

 阿笠博士の謎ガジェット定期。

 

 音を消して、静かに洞窟内を探索していく。

 奥からは濃密な血の匂いが漂っている。

 

 瞳孔が開く感覚がする。思わず口角が上がる。

 この体は血の気が多くていけない。

 

 しばらく進むと、コナン君のメガネが無造作に洞窟の通路中央に放り出されていた。

 その周囲を確認すると、石の裏にはべっとりと血液が付着しているのが確認できた。

 

「…………」

 

 コレは本当に急いだ方が良さそうだ。

 もう撃たれたのか。

 

 同時に、付近に岩陰に無理やり柔らかい岩を砕いて掘り返した跡があった。

 中から濃密な屍臭がして、私は思わず顔を顰めた。

 

 誰かを殺して埋めて、それを少年探偵団に見られたか。

 

 掘り返してみれば、それは見知らぬ男だった。

 そういえば銀行強盗だかなんだかで仲間割れして、その口封じで殺したのを探偵団に見られた、という筋書きだったか。

 

 これ以上奥へ進めば探偵バッジの通信圏外になってしまうだろう。

 その前に連絡せねばなるまい。

 

 探偵バッジを取り出して、私はその向こうに話しかけた。

 

「聞こえますか灰原さん。洞窟で何者かの死体が見つかりました。子供達は奥に行った様子です」

「死体を見つけて逃げたのね。了解、くれぐれも冷静に」

「承知しました」

 

 長距離走は苦手だが、そう距離はないことを信じて走るしかない。

 音を極力抑えて、猫のようにしなやかに。

 

 

 

 そのまま走り続ければ、目的地は意外と近くにあった。

 分かれ道は匂いを参考にすればすぐにわかったから、子供の足で歩いて逃げていることを考えれば妥当な距離か。

 

 なるべく音を立てずに進む。

 幻想的な、上から水の流れてくるスペースの向こう、卵の如き彫刻のある場所に出た。

 その昔、何かに使われていたのだろうか。

 間違いなく人の手が入っていた。

 

 その向こうに、男たちの話し声が聞こえてきた。

 

 特に分岐の多い分かれ道の前だったから、男たちもどこへ逃げたか分からず苦戦しているのだろう。

 気配を隠してその向こうを覗き見る。

 

 やはり、男はそこにいた。

 

 出口を塞ぐように、男が一人気だるそうに座っている。

 手には拳銃が握られていて、コレでは子供たちは逃げられまい。

 

 その奥には子供達が隠れているのがわかった。

 彼らの匂いと、目の眩むほど濃密な血液の匂いがここまで届いている。

 間違いなくコナン君が撃たれているのだろう。

 

 目の前が赤熱するかのような苛烈な怒りが湧き上がる。

 多分私の魂の怒りではなく、このクローンがキレやすいのだろう。

 

 殺してやる。殺してやる。邪魔者は消さなければならない。

 主人を脅かすものには死を。

 

 まあ、私も穏やかな方ではないから人のことは言えないか。

 そうとも、軽くぶちのめしてやるとしようか。

 

 気配を消して、肉食獣の様にそっと音もなく背後から忍び寄る。

 

「往ね」

「っなんだテメっ…アガ!?!?」

 

 銃を持つ手首を、捩じ切るつもりで捻り上げた。

 ひっくり返った悲鳴を上げる男を、首に手刀を落として意識を刈り取る。

 拳銃を奪おうかとも思ったが、相手を警戒させそうなので釣り餌として使うこととする。

 

 わざと悲鳴をあげさせたからな。

 「おいどうした!!」とすかさず男たちが二人が駆けつけてきた。

 それが罠だとも知らずに。

 

 ちょうどいい位置に拳銃を滑らせ、私は姿を隠す。

 お前たちは拳銃を拾わざるを得ない。子供達に拾われたら困るからだ。

 その場所に足を向けざるを得ない。

 子供が逃げたと思って、焦らざるを得ない。

 

 リーダー格が状況を確認し、舌打ちして激昂した。

 

「あのクソガキども!絶対逃すな!入り口に向かったはずだ!ぶっ殺すぞ!」

「お、おう!!」

 

 さて、まず下っぱだ。

 リーダーが出入り口の方へと視線を向けたタイミングで行動開始。

 明かりのない背後から、メキョリと肩を外してライトと拳銃を取り上げる。

 

 暗闇に絶叫が響き渡り、リーダーは驚愕して振り返った。

 もちろん、すぐにわたしは暗闇に姿を隠した。

 拳銃をあちこちに向けて警戒しているようだ。

 

 私は天井の鍾乳石に掴まってるから、探しても無駄なんだよなぁ。

 あとは拳銃を遠い出入り口の方に放り落として気を逸らしてから、上から襲撃をかけるだけ。

 

 首をゴキッとな。

 それだけで男は動かなくなった。

 死んでないよ。殺してない。予後は保証しないがな。

 

 肩を外されて痛みに震える男に馬乗りになり、私は微笑んだ。

 

「ガァッ!?!?やめ、やめ」

「あなたたちのお名前と、あの死体の身元を教えてください」

「ひ、……」

「手早く。怪我人がいるので」

 

 優しく外れた手を捻ってやる。

 男は壊れたレコードの様にペラペラと喋り出した。

 警察に話せる程度の概要が聞ければあとは意識を刈り取ってポイ。

 

 あとは子供達の保護だけ。

 あの一番奥の影に隠れているはずなのに、何故かちっとも出てこない。

 

 わたしは首を傾げて彼らを手招きした。

 

「歩美ちゃん、元太君、光彦君、僕です。もう男たちは制圧しました。出てきても大丈夫です」

 

 チロ、と顔を出して子供たちはカタカタと震えた。

 その顔は一様にひどく怯えている。

 

 

 私は、何か間違えただろうか?

 

 

「そ、空か……?」

「はい。助けに来ました。もう心配いりませんよ」

「っ空君!!大変なんです!コナン君がお腹を撃たれて、血がいっぱい出て!」

「出口はすぐ先です。早く病院に連れて行きましょう」

 

 私が一歩前へ出れば、子供たちは震えて小さく縮こまった。

 もう犯人は制圧済みなのに。何故だ?

 

 そうして私たちがその先の出口へ向かうと。

 その出入り口には灰原さんたちが呼んだ警官で囲まれていた。

 多量出血のコナン君はすぐさま病院に運ばれて、そのまま緊急手術となった。

 

 元太君の服はコナン君の出血でドス黒く染まっている。

 ずっと気を失ったコナン君を抱えていてくれたのだろう。

 みんな涙目で、歩美ちゃんはわんわんと泣き出してしまった。

 

 原作で無事だとはされているが、でも、現実においてそんな保証はどこにもない。

 生死の境を彷徨うことは確実の怪我に、私の中にドス黒い思いも芽生えざるを得ない。

 

 子供達も怪我がないか確認のため、念のため病院に来ている。

 つい無表情でコナン君の運ばれた先を見ていると、灰原さんが話しかけてくれた。

 

「大丈夫よ、彼なら。あなたのおかげで、早めに病院に行くことができた」

「………すこし、頭に血が上ってやりすぎたかもしれません」

「殺さなかったんでしょう。本能は殺せと言っているのに」

 

 優しくわたしの髪を手で梳いて、灰原さんが微笑みかけてくれる。

 

「良い子」

「………ありがとうございます」

 

 その手を取って、そっと頬を寄せた。

 それは肉体の無意識の動きだった。

 人の温もりを確かめるように、体は自然と目を閉じて、甘えるが如く身を委ねる。

 

 あとは、コナン君の無事を祈るしかないのだ。

 





・クローン体
本能的に殺しを常に要求している。
少年探偵団の危機が定期的な発散になっているとも言う。
実はこまめに発散しないと大惨事になる。

・工藤優作
実はロスで悩んでる。
彼は、あの生物兵器は本当に危険なものだ。
彼がいくら善性でも、もしパンデミックが起きれば取り返しがつかない。
寄生する幼体で「軍」を組織する敵地制圧兵器が、彼なのだから。
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