降谷零のクローンなオリ主とコナン世界   作:ラムセス_

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謎めいた乗客と感染

 

 ここ数日熱っぽい私である。

 

 何とか今日は回復したが、今日のスキー旅行は周りみんなに心配されてしまった。

 

 無理しないほうがいいのは分かるが、私もイベントは見逃したくない派閥である。

 私が留守番の子犬みたいな目をしてキューキュー言えば、最後は折れて連れて行ってくれることになった。

 無理は厳禁、と言い添えてだが。

 

 体感だが、姿こそ変わらないが体機能がやや「成熟」した感覚がある。

 本来なら第三段階のサナギになって休眠するのだが、機能の先取りが行われたっぽい。

 

 不具合なような気もするが、まあ気にしないこととする。

 そんなこと言ったらこの体なんて不具合が服着て歩いてるみたいなもんだし。

 

 

 さて、阿笠博士に連れられて乗り込むのは都営バスである。

 ここから乗り継いで近場のスキー場まで向かう予定だ。

 用具は向こうで借りるので私たちは最低限の荷物のみ。

 子供達はワクワクソワソワだ。

 

 ただ、なんだか季節がおかしいような、気のせいなような。

 もうずっと冬が続いているような、途中で5月になったような、冬のような。

 深く考えるとうまく認識できなくて頭がクラクラしてしまう。

 

 まあ、サザエさん時空の仕様なのだと思うしかない。

 

「空君スキー初めてなんだよね!歩美が教えてあげる!」

「こうすーっとやるんだぜ!」

「楽しいですよ!」

 

 子供達はワックワクでキラキラした目を私に向けた。

 それを見ていると、私もちょっと心が弾む心地がする。

 正直スキーの経験は前世ならあるし、あむぴもスキーはしたことがあるから滑れるだろう。

 しかしこの肉体がスキー未経験なのは本当のことだ。

 

 この上昇した身体能力で風を切るのはさぞ楽しいだろう。

 

 米花公園前に止まったあたりで、新たな客がバスに乗り込んできた。

 

 えー、一人目子供たちの「あーっ新出先生だ!」の声で新出先生確定。

 つまりはベルモット。

 お次に金髪の美人女性、みるからにジョディ先生。

 そのさらに後ろでマスクをしている怪しげなニット帽は赤井秀一。

 

 錚々たる顔ぶれだ。

 

 この顔ぶれだけで今回のスキーが中止であることは想像がつき、私は思わずがっかりした。

 なんだっけ、組織FBI勢揃い一般バスジャック回だったっけ。

 

 下手するとここでベルモットが爆殺されていたかもしれないのか。

 

 一般殺人犯に爆殺される組織幹部が二人に増えていたことを思うと、なんとも米花町の格の違いを見せつけられる心地だ。

 

 ベルモットは私を見て、思わずと言った様子で目を見張った。

 そのまま何食わぬ顔でジョディ先生と席に着く。

 

 しかしあの粘着質な視線は、完璧に目をつけられたことを物語っている。

 やばいな、この距離だと内緒話もできない。

 困ったことになってしまった。

 

 さて。

 案の定、まもなくゴーグルにニット帽で完全武装した男達が拳銃を取り出した。

 「騒ぐなーっ!」と大声を上げる。

 

 瞬間、細く強烈な殺気がベルモットから放たれる。

 クールガイ防衛用の殺気だろう。

 ジョディ先生ものんびりした面持ちの裏で目を細めてている。

 赤井さんは消極的ながらいつでも動ける姿勢を取った。

 

 私の出る幕は無さそうだ。

 

 その後も、コナン君がピンチに陥った時に一回身を挺して庇ったぐらいだった。

 犯人の銃弾から守るために彼を突き飛ばしたのだ。

 結果頬を跳弾が掠めたがその程度。

 犯人は仲間に制されてそこで話はおしまいとなった。

 

 爆弾積んでるのにマジで撃ってくるやつがあるか、まったく。

 

 私は、思わず突き飛ばしてしまったコナン君に怪我がないか確認した。

 どこかぶってないか、私は怪力なのであらぬ捻っていると大怪我になるからな。

 

「大丈夫ですか、コナン君」

「空、お前……」

「僕はかすり傷です。貴方に怪我がないならよかったです」

 

 コナン君が思い詰めたような表情をしている。

 血がだらだらと溢れて、思ったより傷が深かったことに遅れて気がつく。

 「おいガキ!座れ!」と言われて私は大人しく席へとついた。

 

 こんなに乗客がいる中で暴れたら、流れ弾で死ぬ人が出かねない。

 ざわめく本能を抑えるのは多少の苦労を要したが、静かに拳を握りしめることでなんとかなった。

 

 ハンカチで強く抑えると、外傷に反応して、血液が沸騰するような奇妙な感覚が駆け巡る。

 何かが促進されているような。

 

 

 そうして、無事バスジャック事件は解決した。

 まあ解決というか高速道路上でバスが急停車大爆発大炎上とかそういうアレだ。

 すげえな、今日の夕刊はこれで全部差し替えだろう。

 

 私が我慢してる間にコナン君が全部なんとかしてくれました。

 流石コナン君だぜ!

 

 ジョディ先生とのタッグに、私は大人しくしているだけで楽なものであった。

 すでに周囲を警官が包囲し、客達を確認している。

 

 新出先生ことベルモットが、私に駆け寄って声をかけた。

 

「大丈夫かい!?まだ出血があるんだろう、僕の医院で見るよ」

「本当ですか?ありがとうございます」

 

 せっかくのお誘いなので、これ幸いと乗ることとする。

 もちろん出血はすでにほとんど止まっている。

 コナン君は怯える灰原さんに付いていて、こちらの様子には気づいていないようだ。

 

 原作と違って自殺未遂はしなかったようだが、あるいは、私の存在が彼女の生の意味を支えていたのかもしれない。

 いいことだ。

 

 警官が寄ってくる前に退散するつもりなのだろうか。

 どこぞへと連絡した後、10分後に到着した見知らぬモブ男の車に乗せられ、私たちは現場から立ち去った。

 

 そうして連れられてきたのは新出医院だ。

 一応まだ新出先生を演じるつもりはあるらしい。

 

 優しげな笑みで新出ベルモットはややしゃがんで私と目線を合わせた。

 

「まずお父さんとお母さんに連絡したいんだけど、電話番号は覚えているかな?」

「現在僕はシェリーと同居しています。詳しくお話しするまでもありません」

 

 ベルモットはその言葉にすう、と目を細めた。

 

 バリバリとラバー製の顔を剥がして私を値踏みするように見る。

 初めて見たけどすごいインパクトだ。

 

 そのまま拳銃を突きつけ、ベルモットはせせら笑った。

 

「随分面白い姿になったじゃない、バーボン。動けなくなった働き蟻は死ぬしかないわね?」

「僕はバーボン本人ではありません。今ここで彼に電話してもいいし、呼び出しても構いません」

「はあ?今更『人間が子供の姿に若返るなんて夢物語だ』なんて言い出さないわよね?」

 

 鼻白む彼女に、私は嘆息した。

 完璧に誤解されているようだ。

 そりゃそうか。実例がさっき目の前にいたんだし。

 

「僕が何を言っても信じてはいただけないでしょう。ともかく、オリジナルに連絡をお願いします」

「………どんなトリックを仕組んでいるか分からないけど、いいわ。乗ってあげましょう」

 

 しばらくコール音のあと、電話がつながったようだ。

 「ハァイバーボン。今どこにいる?」「ビデオ通話にしてちょうだい。少し確認したいことがあるの」「先週の任務、あの件って進んでるかしら」と試すような会話が漏れ聞こえてくる。

 

 電話先が本物バーボンだとベルモットも気づいたらしい。

 バーボンは訝しみつつ、全てのテストを終え目からため息をついた。

 

『先ほどからいったい何なんです?僕も暇ではないんですが、妙な世間話なら他所でやってくれませんか』

「貴方、もしかして子供でもいるの?」

『……ああ、小学校低学年ぐらいの子が一人。別に気に入ったならあげますよ。興味ないですし』

「へぇ。悪かったわねバーボン。それだけよ」

 

 あっけなく電話を切って、ベルモットが肩をすくめた。

 

 推しに華麗に切り捨てられて内心悲しみの涙の私である。

 いや、下手に惜しむと余計に危険だから興味ないふりをしてるんだとは思うが。

 

 私は薄く笑ってベルモットに問いかけた。

 

「ご理解いただけましたか?」

「まさか。貴方みたいな子供が居たら不気味だわ」

「そうでしょうね。ですが、バーボンとは別個体だという認識を共有できたならそれでいい」

 

 私は手の中でビー玉を遊ばせながら立ち上がった。

 いつもポケットに入れて持ち歩いているものだ。

 

「第七生物科学研究所についてはご存知で?」

「知らないわ。組織の手は広いし、いちいち確認していられないもの」

「生物兵器とクローンの実験を行なってます。ふむ、最近襲撃があって潰れた研究所ならわかりますか?」

 

 ベルモットもそれには僅かに思い当たる節があったらしい。

 眉間に皺を寄せて頷いた。

 

「ああ、あれ。あの襲撃とどう関係が?」

「あれは襲撃ではなく、逃げ出した生物兵器が暴れたため潰れたんです。その兵器が僕です」

「面白い冗談ね。センスは認めるわ」

 

 ベルモットが鼻で笑って拳銃を構え直す。

 

「話す気がないなら、知り過ぎたキティは消すしかない。悪く思わないでちょうだい。呪うなら迂闊な己を呪うの───ッ!?」

 

 瞬間。

 ガラス玉が砕ける甲高い音が鼓膜を揺らす。

 手を押さえてベルモットが肩を震わせ、バランスを崩した。

 

 私が手に持っていたガラス玉を飛ばしたのだ。

 それは彼女の手の甲の骨を破壊。二発目が肘を撃ち抜いた。

 

 そのまま跳躍。

 取り落とした拳銃をキャッチしながら、膝蹴りと共に馬乗りになる。

 形勢逆転だ。

 

「動かないで。殺さないように手加減するのは難しいんです」

「…………!」

「こんな身体能力の子供ってあり得ますか?アポトキシン4869で幼児化しても難しいと思いますが」

 

 私の言葉に、彼女が目を見開いて生唾を飲んだ。

 何気にメアリーさんならできそうな気がしないでもないが。

 それは例外中の例外としておこう。

 

 ベルモットは冷静に私に質問した。

 

「私の正体を見抜いた根拠は?」

「秘密です。ただ、僕は鼻も犬並みには効くのでラバーの匂いは結構しますとだけ」

「そう。わざわざ分かっていて付いてきたのには理由があるんでしょう?聞かせてもらえるかしら」

 

 大人しく力抜いたふりをして、実際には油断なく逃れる隙を窺っている。

 流石、長年裏社会を生きていると強かだ。

 

「協力関係のお誘いです。僕たち、利害が一致していると思ったので」

「………どういう意味かしら」

 

 私はうっそりと笑った。

 

 ベルモットに私の存在がバレたということは、イコールで灰原さん以上に非常に危険な立場となるということだ。

 

 何せ利用価値がない。

 バーボンへの人質としてとりあえず雑に攫っていいし、身辺調査もするし。

 それで研究所に辿り着いて、あの跡地を再調査されたら大問題だ。

 

 研究の復活だけは避けねばならない。

 

 とすると、もうベルモットに黙っていてもらうしかないわけで。

 

「同じ、組織の研究の被害者として我々は同志だ。秘密裏にその研究を抹殺するという目的で、協力し合うことができる」

「何を馬鹿なことを。私が幹部だと知っていての発言なら笑い話にもならないわ」

「それに、僕もコナン君にはある程度恩がある。彼を護るという目的も一致しているでしょう」

 

 一瞬、彼女は黒々とした敵意を見せた。

 

「なんのことかしら」

「貴方の視線を見れば一目瞭然でした。どうです?悪くない提案だと思うのですが」

「……断ればズドン。実質的に選択肢はなさそうね」

 

 肩をすくめて「わかったわ、協力する」と薄っぺらな言葉を吐く。

 そしてニヤリとチェシャ猫のように笑った。

 

「でもいいのかしら。私が貴方を裏切らない保証はある?」

「はい。貴方は裏切ることができなくなりますので」

「………どういう」

 

 言葉を待つ前に。

 私はベルモットの美しい喉元に牙を突き立てていた。

 「ぐっ……!」と痛みに呻く彼女に深く犬歯を食い込ませていく。

 

 クローン体の犬歯は人のそれより尖っている。

 それは犬歯ではなく、本当は産卵管に類するものだ。

 そこから素早く産み落とされた幼生が、身体に寄生するのに時間はかからない。

 

 ああよかった。

 成長の兆しは感じていたが、なんとかこの機能はきちんと成長してくれていたようだ。

 

 いや1番の目玉機能が1番キモイのなんとかしたほうがいいと思う。

 あむぴの見た目を毀損してる。

 

 ベルモットは首を抑えて愕然とした顔をした。

 

「何を、したの」

「これで貴方は僕を傷つけられない。ああ、これはお返しします」

 

 拳銃をそっと手渡すと、素早く跳ね起きたベルモットが私に拳銃を突きつける。

 と、同時に頭を押さえてうずくまった。

 

「ぐっ、ぁ!?」

「言ったでしょう。僕を傷つけることはできないと」

 

 激しい吐き気と頭痛で喋れない彼女に向かって、私はせせら笑ってゆっくりと歩み寄った。

 彼女の顎と首筋をゆるりと撫でる。

 

 これは単に寄生して休眠モードしているだけだから、このまま私を傷付けず逆らえないのみだ。

 酷いことにはならない。

 

「では、契約成立ということで。これからよろしくお願いしますね、ベルモット」

「……貴方ほんと、バーボンそっくりよ」

 

 ベルモットは心底忌々しげに吐き捨てたのだった。

 





・幼生
何種類かある。
今回使用したのはチェストバスターしないやつ。

・コナン君
庇われて激鬱のあげく、推定黒の組織の人間がいる車内だったのにちょっと目を離したらクローンがいない。
マジ焦りしてる。

・ベルモット
治療の名目で連れ出してこの場は無事返して、後で攫うつもりだった。
貴方達そっくりよ(憤怒)
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