降谷零のクローンなオリ主とコナン世界   作:ラムセス_

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きのこと熊とクローン

 

 向こう方の仕事の都合で、ベルモットとの正式な話し合いは数日先のことにきまった。

 

 私たちは陰鬱な空気を吹き飛ばすために!とのことで、今日は阿笠博士と松茸狩りに行く予定である。

 少年探偵団も連れてのイベント事だ。

 旬の食材を使って昼食に松茸三昧を楽しむ手筈になっている。

 今からじゅるりと唾液が湧き上がる。

 

 というか、先日スキーに行こうとした…ような…もう10月…?

 頭が痛い。思考はここまでにしておこう。

 

 

 到着したのは県外の山の奥だ。

 旅館から山二つ離れたそこがきのこ山である。

 

 金網が幾重にも張り巡らされ、二つ金網を超えた向こうは狩猟区になっているらしい。

 熊の目撃証言もあるが、今のところ松茸狩り客が襲われた記録はないとのこと。

 

 初めて知ったのだが、松茸狩りは割とハードなレジャーのようだ。

 山に入るから重装備だし、熊も出るし蜂も蛇も出る。

 入山権を買うだけで、取れる保証も何もない。

 

 そういう点では、金網で整備されているここは非常に行き届いた場所なのだと思われる。

 

 いやそれにしても子供連れならりんご狩りの方が良かった気がするが。

 まあ、これはこれで子供たちの体験にはなるだろう。

 

 一応金網のこちら側には熊もいないとのこと。

 木登り上手なので余裕で超えてくると思われるので気休めだろうが。

 

 光彦君が不安そうに身を震わせた。

 

「怖いですね。襲われたらどうしましょう」

「そうですね。熊は…困ります。体格で劣るし体力がありますから」

 

 今の私ならやってやれないこともないが、進んで相手にしたいものでもない。

 

 打撃は体格と分厚い毛皮で分散されてしまうし、お互い顔を狙う形になるだろう。

 耳に噛みつけばギリ支配下に置ける気もするが、ノミだらけの野生動物なんて口に入れたくない。

 もっと膂力の出る成体になれば楽に処理できるのだがなぁ。

 

 今回の件についてりんご派筆頭だった歩美ちゃんが、しばらく辺りを彷徨いて

 「見つからない!」とむっつりして座り込んだ。

 早くも飽き始めているようだ。

 可哀想なのでアドバイスがてら声をかけてやる。

 

「あの木の根の辺りを探してみてください。いい香りがしてますから、たぶん見つかると思います」

「うーん、匂いわかんないよ?でも行ってみる!」

 

 ダッと元気よく駆けて歩美ちゃんに、コナン君が柔らかな笑顔になった。

 

「へえ、凄いな、こんなところ松茸の匂いで溢れてるだろうに」

「強さと新鮮さに強弱がありますから。でもここまで松茸が多いと、山にいるだけで満足感がありますね。素晴らしい香りです」

「ははは。お前ぐらい鼻が利くと、実物よりこれぐらいの方がいい香りかもな」

 

 コナン君も見つけたようで、いくつか手に持っている。

 灰原さんもてくてくと散策を楽しみつつ探しているようだ。

 確か個数制限があったっけ。

 私は取らずに子供達に取らせてやろう。

 

「………」

「どうした光彦?」

 

 ほわっとときめく光彦君が、頬を染めて灰原さんの散策の様子を見ている。

 かわゆいのお。青春って感じだ。

 

 コナン君の問いかけに、光彦君は少し下を向いて話し出した。

 小学生男子だけの恋バナだ。

 

「灰原さんを見ていたんです。灰原さんは口調はきついですけどミステリアスで博学で。素敵だなって、思ったんです」

「わかります、彼女は素敵な女性ですよね」

「いやあれは人の手には負えねぇだろ明確に」

 

 コナン君が半目で肩をすくめた。

 君にとって灰原さんってどういうポジションなんだ一体。怪獣への評価だぞそれは。

 

 光彦君は何かいいたげに言葉を飲み込んで、私に向かい合った。

 

「空君は灰原さんのこと好きなんですよね?」

「!?!?!?」

「あんなふうに愛おしそうに接していて、見ていればわかりますよ。灰原さんも満更でもなさそうですし」

 

 私は大宇宙を背負いしばし呆然とした。

 私が…灰原さんを……好き………?

 

 性別不詳のつもりだったから考えたことなかった、というのが本当の所だ。

 概念ママだったから余計に想定外である。

 likeって意味なら間違いではないが、この場面で想定される好きってloveしかないのよね。

 

 光彦君はしょぼしょぼに萎れて縮こまっている。

 

 これどうフォローすれば私の命は助かるのか。

 困り切ってコナン君にオロオロとした視線をつける。

 

 コナン君が激しく動揺して、「そ、そういうの、空にはまだ早いと思うぞ…?」と狼狽えながら視線をあっちこっち向けるのみだった。

 分かっとるわいこちとら四歳だぞ。

 バブーなんだぞ。

 

 チラッと見えた足元にはテングダケがこんちにわしている。

 毒キノコも遠慮なく生えてるあたり、子供にきのこ狩りはやはりハード感満載だ。

 もうすでに楽しい体験にはなっているが、歩美ちゃんが籠満載の毒キノコ取ってきたらどう泣かれないよう慰めればいいのやら。

 

 さて、そんなあたりで事件が勃発。

 

 元太君が居なくなったのだ。

 きのこ狩り中に山で小学一年生が行方不明。

 もう出だしだけで明日の一面になれるスペックを秘めている。

 

 元太君がいない熊がいるという金網を超えたのは確実で、その証拠に泥の跡が付着していた。

 超えちゃダメって言われても、登ってみたくなるのが子供のサガ。

 阿笠博士がひたすらひょええと慌てた様子を見せている。

 

 元太君の探偵バッジは修理中で、それを元に探すのはできないようだ。

 コナン君がため息をついて頭をかいた。

 

「しゃーねーな。管理人さんに連絡すっか?」

「いえ。今の段階ならまだ私の方で匂いを辿れます。完全に遭難する前に連れ戻せるかと」

 

 つまりはみんなで柵を越えるってことだ。

 本当はいけないのだが、これを逃せば匂いも飛び、どんどん元太君を見失う危険性が高くなる。

 

 コナン君は悩ましそうな顔をした。

 

「そうだな、狩猟区に迷い込んでたら本当に取り返しのつかねえことになりかねない。早めに連れ戻してこっちに戻ってくるとしようぜ」

「お任せください」

 

 私は恭しく頭を下げた。

 歩美ちゃんがくんくんと自分の匂いを嗅いで首を傾げる。

 

「でも元太君そんなに匂いするかなぁ?」

「山で動いたのでちょっと汗臭いとは思いますけど。犬なら別ですが人間でそれはあり得ませんよ」

「……光彦」

 

 コナン君が光彦君を制したが、私はそれに慌てて口を挟んだ。

 

「僕の性能は犬にも似ます。僕だけ特別で、それだけ皆の役に立てるということです」

「そうなんですか!?」

「はい。実は科学館にあった匂い当てゲームがとても得意です。耳もいいです。だから学校は騒がしく苦手です」

「なるほど……元気そうに見えましたが、学校に来れないのはそういう理由だったんですね」

 

 素直な光彦君の言いくるめに成功したようだ。

 私は己のスペックを誇り、満足げに胸を張ることとした。

 灰原さんが私を撫でてくれるので余計に得意げになる。

 そう、私はハイスペック。ありがとう科学者。今世も楽しく過ごせてます。

 

 その光景にふたたびしょぼんとする光彦君を添えて。

 あちらが立てればこちらが立たぬ。

 世の縮図である。

 

 ともかく、今は元太君だ。

 柵を越え、匂いで淡々とその行方を追っていく。

 

 私とコナン君で探しにいき、戻ってくる可能性を考慮して歩美ちゃん、光彦君、阿笠博士がお留守番。

 正確には私だけでも良かったのだと思われるが、コナン君が私のお目付役になったのだろう。

 私の信頼のなさよ。

 

 どんどんとその行き先は奥へ奥へと向かっている。

 

 私は思わず顔を顰めた。

 

「彼の進行方向と同じ方角から、大量の血液の匂いがします」

「!!!」

「それと火薬の匂い。狩猟区なので野生動物の可能性もありますが」

「急ごう!」

 

 コナン君の号令に頷いた次の瞬間。

 乾いた発砲音が耳をつんざいた。

 

 この音量ならば人間の耳にも届いていることだろう。

 

 全力で音のした方へと駆けていく。

 やはりというべきか、二つ目の金網を超えてしまっていた。

 その先は狩猟区だ。

 金網の一部が壊れ、子供が入る隙間ぐらいはある。

 匂いを確認し、私は叫んだ。

 

「元太君はこの先です!」

「あのバカ!っなんとかしねぇと…」

 

 歯噛みするコナン君が次の行動を起こす前に、元太君の切迫した悲鳴が耳に響いた。

 

 反射的に跳躍して金網を掴み、腕の筋肉だけで反転、柵上に足を乗せる。

 

 そこにいたのは2メートルを超すヒグマだった。

 超大型で、300kgは裕にあるだろう。

 遠くに猟師さんの姿が見える。

 先ほどの発砲はこの熊に向けてのもの……にしては熊自身に出血がない。

 

 木陰に倒れ伏した人の足がチラリと見えた。

 まさかヒグマに襲われたか?

 

 私はともかく、熊に対して先制攻撃を仕掛けることにした。

 今、熊の気は元太君に向けられている。

 あの体格差では軽く一撃入れられるだけで容易に命を落とすだろう。

 

 跳躍、上を掠めるようにクマの背後に着地する。

 そのまま足の関節を外すように足払いをかけた。

 

 どてっと巨体が転ぶ。

 素早く振り返ったクマの本場のベアパンチが私の頬スレスレを掠めていく。

 

 やっば。

 あんなん食らったら顔面無くなるんだわ。

 カウンター気味に鼻面に全力の突きを叩き込む。

 

 熊は低く吠え、怯んだ様子を見せた。

 体重が軽くて威力が弱い。

 だが、熊の意気を挫くぐらいはできたはずだ。

 

 その隙に元太君を掴み上げて猟師さんの元へと走る。

 熊は唸り声を上げ、そのまま走り去っていった。

 

 猟師のおじさんは複雑そうな顔で銃を下ろした。

 側には腹から血を流して死んでいる男の姿がある。

 

「無事か、坊主ども」

「ええ。そちらの方は先ほどのクマに襲われたのですか?」

「………いや。十兵衛はそんなことせんよ」

 

 名前ついとるんかい。

 元太君が「ひぇぇぇえ!」と悲鳴をあげて小さくなった。

 

 そこで死体の服の状態から、それが射殺であるということに遅れて思い当たる。

 つまり最初の火薬の匂いはこの男の発砲で人が死んだことによるものだということ。

 

 ボス二段構えとはやるじゃねぇか。

 私はさりげなく元太君を庇う位置に立った。

 

「………この傷。銃によるものですね。あなたが殺したんですか?」

「そうだ。見られたなら、まあ、そういうもんだろう」

 

 なんともあっさりと男は自供した。

 私たちを襲う気もない様子で、肩を落として項垂れるばかりだった。

 

 

 

 そうして到着した警察官によって、男は逮捕された。

 動機等は省略。クマに恩義があるタイプの人らしい。

 

 まあ、なんにせよみんなが無事で良かった。

 

 元太君は警察の人にガチ説教を受けて。

 私はみんなに「元太君を助ける時活躍したんですよね!」「スッゲーかっこよかったぜ!」「あゆみも見たかったー!」とちやほやされ、鼻高々になるのであった。

 





・その頃のベルモット
バーボンをイビリ倒してコマ使いにして嫌味言いまくった。
これについてバーボンは「更年期障害ですか笑。まぁ、あなたもお年ですから笑」という反応だったので余計にいびった。

・バーボン
突然呼び出されて買い物の荷物持ちにさせられたので悪口たくさん出た。
FBIも密入国するし良いことなんもない。
グローブボックスにある電話番号は忘れたことにした。
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