降谷零のクローンなオリ主とコナン世界   作:ラムセス_

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加速!



優しさと悲しみの会談

 

 今日はベルモットと話し合いなり。

 

 近くのチェーン店の喫茶店にやってきて、私たちは予定通り落ち合った。

 彼女は新出先生の格好のままのようだ。

 

 私たちの方はと言えば、面子は私とコナン君のみ。

 灰原さんは何かあってはまずいので家で阿笠博士と待機している。

 すっごく心配されてしまったが、彼女を会わせる方が危険だしな。

 

 ベルモットの見た目は新出先生だが、それは見た目を取り繕うだけのつもりのようだ。

 こちらに気づいて手を振る動作はどこか女性みを帯びていた。

 

「あら、遅かったじゃない。レディを待たせるなんて」

「それは失礼しました」

 

 声もベルモットの本来のそれだ。

 

 私も端的に謝罪して席に着く。

 ベルモットはチラリとコナン君に視線を向けてから欧米感あふれる仕草で肩をすくめた。

 

「バーボンより素直ね。あの男はここから皮肉の一つや一つぶつけてくるところだけど」

「素直という評価が適当かは僕には分かりかねます。ただ、その必要性を感じないだけですから」

 

 原作キャラベルモット相手にそんな嫌味言えないしな。

 それを「制御下にある格下の戯言に付き合うつもりはない」と捉えたらしく、「可愛くない子」と息を突かれてしまった。

 そうは言っとらんやろがい。

 

 コナン君が怜悧に貫くような表情で言葉を切り出した。

 

「まず、オメーが組織幹部のベルモットで間違いねぇな」

「そうよ、クールガイ。あの愚かな科学者を殺そうと機会を待っていたけど、この通りあえなく失敗に終わったというわけ」

 

 大袈裟にぴらぴらと手を振り、ベルモットは戯けた調子を作った。

 ガワは新出先生だが、隠しきれぬ妖艶さが見え隠れする。

 

「本物の新出先生はどうした」

「FBIが匿ってるんじゃない?死んだと思っていたけど、どうも最近FBIが近辺をうろちょろしてるし」

「FBI………」

 

 コナン君が難しい顔をして黙りこくる。

 ジョディ先生のことを思い出しているのかもしれない。

 バスジャック事件で露骨に只者ではない動きをしていたしな。

 

 ベルモットはつまらなさそうにそっぽを向いて、言葉を落とす。

 

「それで、私に何をさせようというのかしら。脳におかしな仕掛けまでして」

「それについては今、解除方法を模索中だ。生物兵器である以上、安全装置がある可能性は否定できない。過去の資料を洗って再調査してるから待っていてくれ」

「……」

 

 思いもかけない言葉を聞いたような顔だ。

 ベルモットはコナン君の言葉にしばし目を見開いた後、機嫌良さそうに頬杖をついた。

 

「へぇ、聞いてないのかしら。私はあなたの正体も知っているのよ。枷が無くなれば、貴方の命の保障もなくなる」

「だろうな。その間にテメーの弱みの一つも握りたいところだが、上手くいくかどうか」

「結果は同じじゃない。おかしな寄生虫だろうが弱みだろうが。どうしてそんなことに手間をかけるのかしら」

 

 ベルモットの試すような口ぶりに、コナン君さんは挑戦的に青い瞳を煌めかせた。

 

「俺がそうしたいからだ。そして空にそんなことしてほしくないからだ。人の意思を捻じ曲げるなら責任を負うべきだ。なら、それは俺が背負う」

「……ふぅん、傲慢ね」

「なんとでも言えよ」

 

 まるで非難するような口ぶりで、その実ベルモットはこれ以上なく嬉しそうに微笑んだ。

 

 わかる。

 江戸川様かっこいいもんな。イケてるもんな。

 隣でトゥンク…としつつ、私は運ばれてきた水で一口喉を潤した。

 

「今後、僕からの追加の命令はありません。貴方の役割はないため、ご自由にどうぞ」

「ふぅん、協力関係も破棄ってわけ?」

「続けられるならそれが最善ですが、貴方に続ける意味はないでしょう」

「そうでもないわよ?」

 

 足を組み直して、ベルモットは目を細めた。

 

「私が研究を憎んでいるのは本当のことよ。シェリーを消せるならそれが1番だけど。それ以外にもやるべきことはたくさんある。あの忌むべき研究をこの世から抹消できるのなら、協力体制もやぶさかではないわ」

 

 チラリ、とコナン君に視線を向けてから何事もなかったかのように私を見る。

 この話も嘘ではないのだろう。

 だが本当は、有害な生物兵器たる私がコナン君を襲わないか見張りたい、と言う意思を多分に含んでいるようだ。

 

 それを示すようにわざと視線を向けたあたり、私への牽制も兼ねているのか。

 私は頷いて同意を示した。

 

「貴方が望むなら、僕は助力を惜しみません。これからよろしくお願いします、ベルモット」

「契約成立ね」

 

 ひと段落の気配を感じ取ったのか、コナン君がおずおずと口を開く。

 

「なあベルモット。何でそんなに灰原の研究を目の敵にするんだ?」

「………」

 

 その問いにベルモットは答えなかった。

 

 そこに含まれる感情は、それを隠すことに長けるがゆえに読み取れない。

 ただ人差し指をそっと唇に当てて。

 「A secret makes a woman woman」と彼女は薄く微笑むのみだった。

 

 女は秘密を着飾って美しくなるものよ、と訳がついていたんだったか。

 実におしゃれな言い回しだ。

 

 そうして雰囲気を一変させて、ベルモットは全く別の話題に移った。

 これ以上答える気はないと言うように。

 

「それより、バーボンはもしかして勝手に人の細胞で兵器を作られてたのかしら」

「そうなりますね。彼自身、事情を知らないようでした」

「あっははは!なにそれ!間抜けな男!しかもあの口ぶり、それを自分の子だと誤認してるのよね」

 

 心底おかしいと言ったように笑い出した。

 多分いつも相当ギスギスしているんだろう、鬱憤も溜まっているのだろう。

 ベルモットは相当マジ笑いしている。

 

 おお、あむぴを虐めんでやって。

 

「面白いからしばらく見てようと思うわ。あの男が真実を知った時の羞恥と憤怒の顔が今から楽しみで仕方ない!これだけで元が取れた気がするわ」

「それは……なんとも、僕には発言できかねます」

 

 コナン君が難しい顔をして質問する。

 

「そのバーボンってやつ、どんな奴なんだ?」

 

 コナン君の質問に鼻白んだようにベルモットは口を曲げた。

 心底忌々しいと思っているのが丸わかりの顔だ。

 

「鼻持ちならない男よ。冷血で、傲慢で、人のことなんて踏み台としか思ってない悪辣な人間。実際、彼のことを電話で話した時も酷いものだったわ」

 

 わざわざ声を変えて安室さんの声で「『別に気に入ったならあげますよ。興味ないですし』の一言だけよ?」と再現する始末である。

 

 あの時電話越しに聞いた声はもっと押し殺した感じだったと思ったが。

 ベルモットバイアスがかかってとっても冷酷に聞こえた。

 いやもうちょっと思うとこありそうな声色だったよあむぴは!

 

 などと言えないのでぶつぶつ心の中で反論する私である。

 

 コナン君は「そう、か」と静かに俯いて瞳を伏せた。

 怒りなのか遣る瀬無さなのか、肩を小さく震わせている。

 

 ああお待ちになって!あむぴは、あむぴはそんな人じゃないんです!

 そう思ったら、思わず口から言葉が出てしまっていた。

 

「待ってください。オリジナルはそんな人間ではない。あまり、悪し様に言わないでください」

「…………」

 

 コナン君が息を呑んで私を見る。

 しまった、こんな弱みになるようなことをベルモットの前で言うなんて、とんだ失態だ。

 

 ベルモットは予想外のことを聞いたような顔をしてぱちくりと瞬いた。

 

「あらなに?どんな破綻者が親でも愛おしいってことかしら。貴方にとってただの遺伝子提供者でしょう?」

「空……」

 

 コナン君が悲痛に顔を歪めている。

 あっ待って、誤解です、DV親に「酔ってない時のパパは優しい」って言う幼児とは違うんです!

 これ以上の失言を避けるため、私は無言を貫いた。

 

 ベルモットが肩をすくめて首を振る。

 

「まあいいわ。あの男に夢を見るのは早めに諦めるのね。不幸にしかならないわ」

「…………」

「もうそろそろ私も次の仕事があるし、失礼させてもらうわ。もうしばらくは新出で居るつもりだから、用があったら声をかけてくれて良いわよ。それじゃ」

 

 それだけ言って、なんともあっさりベルモットは去っていった。

 

 どどどどうすんべ。

 ベルモットさん空気を荒らすだけ荒らして帰っていきおった。

 

 俯いて考え込んでいると、不意にコナン君が優しく私を抱きしめてくる。

 その手つきは壊れ物に触れるかのようにやわらかだ。

 

 静かに、囁くような声がもたらされる。

 

「心配すんな。どうあろうと、俺たちはお前の味方だ」

「………はい」

 

 男前なんだよなぁ、こんなに若いのに。

 私もかくありてぇもんよ。

 

 そのように思って、屈折し切ってしまった各々の認識にちょっとばかり現実逃避しつつ頷いたのだった。

 

 勝手に私が開示したら怒られるだろうからと潜入捜査官であることを隠していたが。

 ここまで来たら開示しても方々の怒りを増幅させるしかねぇのである。

 

 おお、この終わり散らかしたあむぴの好感度をどうやって戻せばいいのか。

 

 

 私は内心悶々と思い悩むのであった。

 





・ベルモット
将来、お前www勝手に生物兵器作られててクソワロwwwwってバーボンを死ぬほど煽る予定。

・コナン君
「バーボン実はいい奴説」を廃棄。
あの冷淡な言い回しにはかなり衝撃を受けた。
ことあるごとに親への思慕を漏らしていたこの子をどう元気付けるか考えを巡らせている。

・バーボン
この頃腐ったリンゴババアがニヨニヨ見てきてうざい。
何も知らず幸せだった頃のあむぴ。
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