降谷零のクローンなオリ主とコナン世界   作:ラムセス_

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1200万人の人質と仇②

 

 白鳥刑事が救急車に運ばれると、現場検証が始まる。

 

 コナン君が素早く佐藤刑事の車に乗り込んだので、私も後に続いた。

 逃す手はねぇぜ、このビッグウェーブはよ!

 

「っおま!?戻ってあいつらと一緒に家へ帰れ!」

「できません。この事件に興味があるので」

「それはどういう……」

 

 言い合いをしているうちに佐藤刑事が戻ってきた。

 私たちに気付かずに車を発進させたようで、大層びっくりしていたが。

 そのまま流れるように事件の話になったあたり、手慣れたものを感じる私である。

 

 コナン君がこのノリでどれほど事件解決に貢献してきたかが窺い知れて、なんともコメントに困る状況である。

 

 「それよりそっちの子は大丈夫なの?」と佐藤刑事にバックミラー越しに視線を向けられ、私は遠慮がちに頷いた。

 

「問題ありません。コナン君と違い実績はありませんが、それはこれから積んで信用を得ることにしましょう」

「そ、そう。頼もしいわね…?」

 

 きちんとした受け答えを意識したのだが、なんとなく引かれてしまったようだ。

 

 予告文は警視庁などに一斉送付させてたものだ。

 コナン界では有名な「俺は剛球豪打のメジャーリーガー」で始まるアレである。

 コナン君が灰原さんと探偵バッジでやりとりした推理をまとめている。

 

「とすると、これは東都線の上り電車ってことになるな」

『こっちも同意見よ。とすると調べるべきは電車内……』

「それは少し難しすぎるのではないでしょうか」

 

 迷ったが、この辺で口を挟んでおくことにした。

 もしかしたら賭けに出ず早めに事態が片付くかもしれないからだ。

 

 私の言葉にきょとんとしたコナン君に、私は予告文をなぞって己の思考を口に出す。

 

「犯人は警察を誘い込み、爆破するつもりです。そこに警察が来られないことがあってはならない」

「それは…確かにな」

「犯人は警察を見下している。愚かで狡猾な、という言い回しです。あまり凝った暗号にして解かれたらプライドが傷つきます。『この程度に苦しむのか!』と嘲笑い、その末に警察官の命を奪う。復讐にしてお遊戯です」

 

 私の言葉にギリ、と佐藤刑事が奥歯を噛み締めた。

 凄まじく憤怒の濃い顔だ。

 コナン君が眉間に皺を寄せて続きを促す。

 

「だから単純な暗号にして、警察が来るのを待っているってことか」

「もちろん、地下鉄の案が間違いとも言い切れないので断言はできませんが」

「………誘き出すためにわかりやすくしてるはずってことは確かに考慮しなきゃならねーな。前回の暗号も結構単純だったみたいだし」

 

 コナン君が「オメーはどこに仕掛けられていると思う?」と問いかけてきた。

 推理の意見を私に聞くのは珍しいことだ。

 少しだけ認められたようで嬉しい私は、はにかみながら推理を口にした。

 

「前の予告文の単純さから、赤くて鉄でできてればなんでも良いのかと。それと、己の所業を誇示するために対象は大きい方がいい。例えば、誰もが知るランドマークなどでしょうか。爆発すれば多くの目撃者が出て、それをカメラに捉えるでしょう」

「………東都タワー?なるほどな、両面で捜査する必要はありそうだな」

 

 まあ、私の…というか安室さんの推理は「犯人が何を考えてそうしたか」に焦点を当てた推理だからな。

 コナン君は「どのように理論的な整合性が取れているか」を重きとする推理とは内容が異なっていて当然だろう。

 重点を置く場所が違っているのだ。

 

 コナン君のやり方の方が他の可能性を否定することに長けるため、法と裁判の場では有利だ。

 言い逃れさせないための詰将棋と言えるか。

 

 安室さんのこれは先回りに特化した、事件を未然に防ぐための視点に違いない。

 最速で犯人の思考をトレースし、事に対処する思考。

 

 そこに優劣はないのだ。

 

 一連の流れを聞いていた佐藤刑事がすごく瞬いて難しい顔をした。

 「コナン君、その子何者かしら」と厳しい声。

 コナン君か慌ててパタパタと手を振った。

 

「あはは、僕のお友達。すっごく頭がいいんだよ?」

「そうありたいと僕も思っています。コナン君のように、知恵と決断力に優れ、意志の強いものでありたいと」

 

 私はうむうむと深く頷いた。

 唐突なヨイショ攻撃にコナン君が困っている。

 佐藤刑事はふうむ、とやや得心が行ったように同意してくれた。

 

「コナンくんの弟子みたいな感じかしら」

「それですね。まさに。今後それで行きます」

「おぉい空!?」

 

 コナン師匠!!!

 なんとなく締まらない雰囲気になりつつ、一旦路肩に停車させてから佐藤刑事が本部へと連絡する。

 駅員に東都線上り車両を確認する指示を出しつつ、私たちは東都タワーへ行く事となったのであった。

 

 

 

 

 そこにはすでに高木刑事がひと足早く到着していた。

 その姿に駆け寄って、佐藤刑事は焦りにつたう汗を拭った。

 

「佐藤さん!先ほど僕の到着と同時に、上で小さな爆発がありました!それでエレベーターが止まっています!」

「っ、間違いなく私たち警察を誘い込むための罠よ!あなたはここで待機!」

「は、はいぃ!?」

 

 佐藤刑事がそのままダッシュ。

 「ま、待ってください佐藤さん!今エレベーターには子供と老婆が閉じ込められていて!」と高木刑事が狼狽えている。

 

 コナン君もするりと中へ入っていくので、私も後に続くことにする。

 人でごった返す非常階段から展望フロアへ。

 

 中は人だかりができていた。

 軽く柵を設置して野次馬が近づけないように、スタッフさんが立ち入りを規制しているようだ。

 

 どうやら途中でエレベーターが止まってしまっている様子。

 中には転倒して痛みで動けない老婆と、怯える三歳ほどの幼児が一人見えた。

 

 出入り口は狭く、子供の頭がギリギリ入るくらいの幅しかない。

 老婆の脱出は不可能だろう。

 

 スタッフさんが呼びかけても、怯え切ってしまった子供は出てこない。

 いたずらに時間だけが経過している状況であった。

 

「空、お前はここで待ってろ!」

 

 そのように叫んで、コナン君が「僕があの子を連れてくるよ!」と佐藤刑事に声をかける。

 警官たちに大層驚かれているようだ。

 ちょっと怒られている。

 

 幼児はコナン君に任せるとして、あとはあの保護者の老婆だろう。

 原作にはいなかったが、タイミングが違ったから被害を受けてしまったか。

 

 犯人はこの周辺で見張っていて、警官が近づくと同時に爆破したのか。

 

 原作知識によると。

 二度目の爆発で、一瞬大きく出入り口が開くことになる。

 老婆に関しては、そのときを狙って私が引き摺り出すのが1番良さそうだ。

 

 1番入口から近いのが足だが。

 骨折・脱臼覚悟で引っ張るか、内側に潜り込んで投げ飛ばすかは少しばかり悩ましい。

 

 とはいえ、老人の足の骨折は本当にそのまま人生終了コースになりかねない。

 内側に入って押し出すほうが安全だろう。

 

 勝負は一瞬だ。

 いつでも動けるように重心を低くしておく。

 

 コナン君によって子供が助け出された、その瞬間。

 

 上階で爆発音が響く。犯人が警察官を狙って爆破したのだ。

 エレベーターが動き出す前に跳躍。

 ギリギリ中に転がるように滑り込む。

 

 次の瞬間、ヒュッとエレベーターが落下を開始した。

 驚愕に目を見開くコナン君を押しのけて、中から思いっきり老婆をエレベーターの外へと押し出す。

 老婆が痛みに声を上げながらも佐藤刑事に上手くキャッチされたようだ。

 

 これでよし。

 あとは私が怒られるだけだ。

 

 落下したエレベーターが緊急停止装置で東都タワー中腹あたりで停止する。

 私はしょぼしょぼと肩を落として、未だびっくりしたままのコナン君に向き合った。

 

「すみません。出過ぎた真似をしました。このままだとあの老婆が危険だと思い」

「………いや、いいよ。助かった。ともかくこのエレベーターにまだ何か仕掛けられてないから探そう」

 

 コナン君は笑って、私の頭をわしゃわしゃ褒めるように撫でた。

 パパ……。灰原さんといい、どんどんバブーになる私である。

 

 中には何も不審物はない。

 外側に出るには天井のハッチを開ける必要があるが、大人がいないため肩車等では出られない。

 

 代わりに私が、掲示物のわずかな出っ張りに手をかけてするりと上へと入り込んだ。

 コナン君の伸縮サスペンダーを持っていったから、それを上から垂らせばコナン君も来れるというわけだ。

 

 コナン君は登ってすぐに爆弾の存在に気づいたらしい。

 それを検分して顔を顰めて叫んだ。

 

「うわ、水銀レバー。上がってきた時起爆しなくて助かったぜ」

「これは……盗聴器ですね。警官の断末魔の悲鳴が聞きたいとかでしょうか。ここ、警官乗ってませんけど」

「そこなんだよな。とりあえず上から解体道具おろしてもらおうと思うけど、先に爆破されねーよな…?」

「せっかくの催しですし、まだドラマが起こることを期待して粘るんじゃないですかね」

 

 軽口を叩くが、コナン君はそこそこに緊張しているようだった。

 原作ではかなりリラックスしているように見えたが。

 

 そのあたりで軽快な着信音が鳴り響く。

 コナン君のスマホだ。

 電話相手は高木刑事で、どうやら連絡先を交換していたようだ。

 

『二人とも無事かい!?』

「大丈夫だよ。怪我は無し。水銀レバーと盗聴器のついた巨大爆弾はあるから、東都タワー周辺の避難指示と上からの解体道具の手配をお願いしたいかな」

『ぇえええ!?!?す、水銀レバーって!?』

 

 電話先でなにやら揉めるような声がする。

 電話が佐藤刑事にもぎ取られたのか、電話口から聞こえてくる声が変わった。

 

『ちょっとコナン君!水銀レバーって本当なの!?』

「ちょっと珍しい作りで、表面に液晶パネルがついてる。何か表示するのかもね」

『………!!!』

 

 佐藤刑事が思わず息を呑んだようだ。

 そう、これが松田陣平の仇のやり方だ。

 あれほどの爆弾解体の天才を仕留めてみせた、多くの市民を人質に取る悪辣な仕掛けである。

 

 一旦解体道具の手配に高木刑事は走って行ったのか、声が遠くなる。

 その間、私はコナン君と内緒話をする事にした。

 

「俺が解体しておく。お前は外に出られたら適当に話を合わせてくれ」

「了解しました。犯人も、警官が乗ってないとわかって遠隔爆破せず放置してくれると嬉しいんですが」

「爆破したらその時はその時だ。お前のこと、守りきれなくて悪かったよ」

 

 コナン君がさっぱりと笑って見せた。

 私も微笑んで肩をすくめる。

 

「まさか。僕が好きでしたことです。あなたと同じように、僕が好きでしたんです。それは僕にとって最高の死に様でしょう」

「お前、覚悟決まりすぎ。誰に似たんだよ」

「あなたであることは間違いないかと」

 

 クスクスと笑い合って、私たちは内緒話にしけこんだ。

 まあ、こんなの口だけだ。

 私たちはちっとも諦めてなんかいないし、死ぬつもりだって毛頭なかった。

 

 その爽やかさがおかしくて、ちょっとだけ笑えてしまう。

 コナン君は一段、声を潜めて問いかけた。

 

「ところで、これ。バーボンだと思うか?」

「………?」

 

 なにが?

 聞かれている意味がよくわからなくて、思わず首を傾げてしまう。

 遅れて思考がめぐり、それが「バーボンが今回の爆破事件の首謀者か」と聞いているのだと気づくことができた。

 

いや、いやいやいやいやいや。

 

「か……考えづらいかと」

「けど、組織の人間があのタイミングでこそこそ現場を彷徨いてたんだ。無関係ってことはねーだろ」

 

 無関係ではないのは正しいのだが、好感度が地を這ってるせいで犯人にされかけている。

 あむぴ、あまりにデケェ推理のノイズ説。

 慌てて私はフォローに回った。

 

「ですが、こんな派手な騒ぎを個人的に起こして回っていたら組織に消されますよ」

「…………」

 

 コナン君は険しい表情を隠すことなく考えに耽っている。

 

 凄い、どんな外道だと思われてんだろ。

 というか最近どんなに私があむぴアゲキャンペーンしても「フーン」「貴方、人格は褒めないわよね」でしかなくなってしまったんだよな。

 信用度が低くて悲しい私なり。

 

 いやだって人格はほんとに難ありだからな。

 手放しに褒めるには上級者向けすぎるお方である。

 

 というか、松田さんたちの仇に見間違えられて爆弾犯にされるあむぴ。

 今世紀最大の侮辱を受けててあまりに面白いかもしれない。

 

 現実逃避も含みつつ、私は思わず遠くを見つめたのだった。

 





・あむぴ
子供が二人エレベーターに閉じ込められてるってTVニュースの第一報を聞いて、ちょっとだけ振り返った。
まさかな。
犯人と疑われてたと知ったら憤死不可避。

・コナン君
実は相当焦ってる。
自分はいいけどなんとかして空だけは助けたいのに。
3割ぐらいバーボン犯人説ある。
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