降谷零のクローンなオリ主とコナン世界   作:ラムセス_

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過激派の意見と瞳の中

 

 MRI等の検査を一通り終えた蘭さんが、入院着のまま庭にやってきた。

 コナン君と毛利探偵に連れられている。

 

 記憶喪失の彼女はどこかぼんやりした面持ちで、たよりなさげに見えた。

 

「僕は光彦で、こっちは歩美ちゃん、元太君です!」

「僕は空。よろしくお願いしますね、蘭さん」

 

 私は彼女の手を取り、できる限り優しく微笑んだ。

 きっと蘭ちゃんも大層心細いことだろう。

 知らん奴らに囲まれて、自分が誰かもよくわかっていない。

 足元が不安定で、少しバランスを崩したら倒れてしまいそうな、そんな恐怖。

 

 子供達の元気な自己紹介に顔を綻ばせては頷いた。

 やはり困惑と不安は大きいようだ。

 

 私がやや強く握って言葉尻に力を込めた。

 

「ご安心ください。思い出しても出さなくても、貴方の力になってくれる人は沢山いる。気楽に、肩の力を抜いてください。貴方は大変なのだから、周りの知らない人に寄りかかったって誰も責めない」

「………優しいのね、空君は」

「不安に寄り添いたいだけです。知らない環境で困惑が強いかと思いますが、堂々と迷惑をかけていいと思いますよ。記憶が戻ったらできない経験だと思って、思い切り聞きまくってください」

 

 ニコッと笑いかけてやる。

 子供達も「そうだぜ!俺たちが何でも教えてやるよ!」「蘭お姉さんのお家も案内できるよ!」「僕、高校もわかります!」とわあわあ騒ぎ出した。

 彼女から少しだけ肩の力が抜けたようだ。

 いい傾向だ。

 

 コナン君が「悪いな、助かった」と私に囁いた。

 

「いえ。貴方がたは身近な分心配が大きい。無責任な言葉で肩の力を抜けるのは外様の特権です」

「でも、俺らの不安が蘭にも伝わってたかもしれねーな。お前のおかげだ」

「貴方のお力になれたならよかったです」

 

 コナン君がわしゃわしゃと私の頭を撫でる。

 最近ことある事にコナン君は私を撫でるんだよな。

 パパみが強いというか、私はどんどんバブーになるというか。

 どうしてくれんだ立派な赤ちゃんになっちゃったら。

 

 私が撫でられているのを目ざとく見つけた歩美ちゃんが、バタバタしながらすっ飛んできた。

 

「あーーーっ!またコナン君が空君を撫でてる!歩美も!歩美も撫でて!!!」

「おう歩美ちゃん、こっちこっち」

「えへへ」

 

 シュンッと私の隣にやってきて待機。

 コナン君はなでなで二刀流になった。

 

「分かります。コナン君のなでなで良いですよね。本当は自分だけ撫でられたい気持ちすごく分かります」

「………空君のいじわる」

「ふふふ、この立場は僕のものです。良い子ポイントを順調に稼ぐことで僕が一歩リードしていますから」

「歩美、負けないもん!!!」

「いや何で張り合ってんだお前ら」

 

 よし、歩美ちゃんは良い子になる努力を始めたようだ。

 この調子で探偵団のストッパーになっておくれ。

 殺人犯に突貫しちゃう悪い子は撫でてもらえないぞ。

 

 コナン君が心底困った様子を見せたが、私がサムズアップすることでガックリと肩を落とした。

 なんでや。教育のタイミングやで。

 

 ふと、灰原さんが挙動不審になっているのが目についた。

 キョロキョロと辺りを見回し、不安そうにしている。

 

 気になったコナン君が声をかける。

 

「どうした、なんか気になることでもあったのか?」

「今、誰かがこちらをじっと見ていたような……」

「!?」

 

 コナン君が息を呑んで私に目配せした。

 

「空、気付いたか?」

「ええ。敵意のある視線が一つ。蘭さんのことをまだ諦めていないと見て間違いないかと」

「っ、蘭が犯人の顔を見てるってことか!」

 

 私もコナン君から事件の概要は聞いている。

 水浸しの現場は停電していて、誰のものでもない懐中電灯が一つ落ちていた。

 暗闇にも関わらず、佐藤刑事は的確に銃弾を受け生死の境を彷徨った。

 

 懐中電灯についた指紋は蘭ちゃんのもの。

 

 本命が警察の殺害として。

 もし現場に落ちていたという懐中電灯で蘭ちゃんが犯人の顔を照らしていたとしたら、その命を狙って何ら不思議ではない。

 

 警察も命狙われすぎ問題である。

 激務と合わせて成り手がいなくなっちまうよ。

 

 まあ、ここまで来れば私も事件が何だったのか思い出すことができた。

 劇場版である「瞳の中の暗殺者」に違いない。

 

 犯人は蘭ちゃんの担当の精神科医。

 自身の犯した殺人の発覚を恐れて、それを追う警察官を殺していた、だったか。

 

 まあ、オーソドックスな動機だ。

 

 しかし私にできることはほとんどない。

 蘭ちゃんとの逃避行に頭を突っ込むのは野暮ってものだし、ショートカットできそうなシーンもあまりない。

 

 あえて言えば、幼生をうまく使えば蘭ちゃんの記憶を戻すことができそうなくらいだ。

 だが幼生の排出方法もわかっていないんだし、うら若き乙女を寄生虫漬けにするなんてとんでもない。

 

 考え込むコナン君の前には、未だ暗雲が立ち込めているようだった。

 

 

 

 

 さて、そうして帰宅すると。

 ちょうど私のスマホが着信音を鳴らしたてた。

 

 非通知のそれを躊躇いなく手に取る。

 

『ハァイミニバーボン。元気にしてるかしら』

「ベルモットですか。何かありましたか?」

『一応この辺でうろちょろしているFBIが洗い出せたから情報共有よ。クールガイのことを利用しようと近づいてくるかもしれないしね』

「ありがとうございます、助かります」

 

 電話の相手はベルモットだ。

 意外にマメな人で、こうして時折進捗を知らせてきてくれる。

 暇だったというのもあるかもしれない。

 

 それとも、私に対して「シルバーブレットに手を出すな」と牽制しているのか。

 

『ところでそっちはどうなの?』

「今大事件が起きています。毛利蘭が野生の殺人鬼に狙われて記憶喪失になり、今付きっきりでコナン君がそばについています」

『!?!?!?』

 

 電話越しにジャキっという拳銃の音が聞こえる。

 おいその物騒なもんしまえよ。

 

『なるほど、バレないよう始末しろって話ね。いいわ、今回は特別よ?死体も上がらないようにするから、ターゲットのデータを送りなさい』

「違いますそうじゃないです。座ってくださいベルモット」

『あら、嬲るのが好みなの?バーボンに似て趣味が悪いわね』

「そういうことでもないです」

 

 やべぇベルモットキレるの早すぎんだろ。

 蘭ちゃんにチャラ男がちょっかいかけた時のコナン君並みの速さだぞ。

 私はどう彼女を止めようか、少々悩みながら口を開いた。

 

「悪い男を撃退するのは王子様の見せ場です。僕たちはそっと見守って二人の愛が深まるのを観察すべきかと」

『…………貴方、いいこと言うじゃない。バーボンより物事がわかってるわ』

「お、オリジナルにもその辺の機微はきちんと備わっていると思いますよ…?」

 

 ベルモットは心底見下したように鼻を鳴らした。

 まるで物の道理のわかってない幼児に言い聞かせるような口調になる。

 そんなにか、そんなに嫌かバーボンが。

 

『嫌ねぇ、あんな陰険悪辣男に分かることなんて何もないわよ。それで、協力の名の通りシルバーブレットは任せていいのよね?』

「はい。陰ながら見守らせていただきます。やばくなったら援護なども予定してます」

『いいわ。任せたわよミニバーボン。大きい方よりもずっと優秀よ貴方」

 

 ううむ、思ったより強火のベルモットだったようだ。

 写真撮ってる暇はないから、見どころのシーンはきちんと語って聞かせてあげよう。

 噴水のシーンとか「お前のことが好きだからだよ」のシーンとか良さそうだ。

 

 電話を切ると、風呂上がりの灰原さんが髪を拭きながら片目をこちらに向けていた。

 ホカホカの状態でふうと息を吐き、小首を傾げる。

 

「誰か電話してたのかしら、工藤君?」

「いえ、ベルモットです」

「!?!?」

 

 おっと、せっかくホカホカだった体を凍り付かせてしまったようだ。

 すまんやで。私はぺこりと頭を下げた。

 

「ご心配なく、近況報告だけですので」

「………そう。気をつけなさい。組織の人間は危険よ」

 

 灰原さんの声が暗く影をおびる。

 まあ新蘭過激派によって犯人の命は危険に晒されていたから、危険は危険だったと思う。

 私に特段の危険はないが、うむ、間違ってはいない。

 

 ふと気になって私はぼんやりと天井を眺めながら口を開いた。

 

「組織の人間は、なぜ僕のような生物兵器を作ったのでしょうか」

「…………それは」

 

 考えれば考えるほど不合理だ。

 

 兵器というならもっとメンテナンス性を高めてシンプルにするべきだというのに。

 私の性能はあっちこっち完全にとっ散らかってパンジャンドラム相応だ。

 

 身体能力の増強は優秀なクローン兵士の増産に役立つだろう。

 コマンドで制御もできて恐怖心も抱かない。

 だが幼生の機能は完全に後方統率のための能力だ。

 後付けの過剰な免疫は取り回しを考えたら人間のそれを流用した方がはるかに便利だ。

 

 見目の良さは交渉事に役立ちはするだろうが。

 にしては人外としての性能が多すぎて相手を警戒させてしまう。

 

 本当は何をしたかったのだろう。

 灰原さんが少しだけ黙り込んだ後、か細い囁きを一つ漏らした。

 

「組織の目標は一つよ。私の研究も、その生物兵器の研究も。根底に流れるのはただ一つ」

「ふむ。とすると本来は……」

 

 組織の目的に沿ったものだったとしたら。

 それは、完全な生き物を作りたかったからか。

 

 私は緩く息を吐いて思いを巡らせた。

 

 何とも夢見がちな目標だ。

 ある種転生者とは完全な形の一つだが。

 それはそれとして、この生物兵器の体には問題が多すぎる。

 

 次は、私は何に転生するのだろうか。

 

 灰原さんがそっけなく肩をすくめた。

 

「空君、お風呂。冷めるわよ」

「はい。では失礼しますね」

「所詮くだらない話よ。そんなこと気にするぐらいなら、明日の朝食について考えた方がよほど有意義なぐらいにはね」

「明日の朝はパンケーキにしましょうか。フルーツを盛り付けましょう」

「博士のは……いいわ、少し多めにしてあげましょう。日頃頑張ってるもの、たまにはご褒美もあげないとね」

「かしこまりました」

 

 おだやかにいつものように、私たちは笑い合ったのだった。

 





・ベルモット
言うてエンジェルを狙う不届きもの狙撃しちゃあかんやろか。
そのような悩みを抱く今日この頃。

・優作さん
研究機関から「この生物兵器は一刻も早く隔離した方がいい」って進言を受けてる。
でも阿笠博士の口ぶりから、そんなこととてもできないし。
画面外でずっと悩んでる人。
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