降谷零のクローンなオリ主とコナン世界   作:ラムセス_

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少年探偵団邂逅

 

 夕方、コナン君が学校から帰ってきた。

 私はやることもないので根気強く草むしりである。

 これは老人には腰が痛く辛かろうよ。

 

 「オメー飽きねぇな…」とコナン君がランドセルを下ろして声をかけてきた。

 小学一年生の体には、ランドセルが随分と重そうに見える。

 

「お帰りなさい。貴方の頭脳に子供用の勉学は苦行でしょう。お疲れ様です」

「あー、ひらがなの読み上げにも慣れてきたよ。オメーは良かったのか、学校に行かなくて」

 

 コナン君の言葉には揶揄いと同量の心配が含まれていた。

 私は首を振ってその言葉に否を示した。

 

「まだ時期尚早です」

「地名や常識なんてあいつらだってさっぱりだぜ?小学一年生なんだから」

「そうではなく、力加減の方が。今朝もドアノブを破壊してしまいましたし、子供達を傷つけてしまいかねません」

「………早くに培養槽を出た弊害か?」

「恐らくは」

 

 本来、私は人間の姿をしている以上人間に紛れて活動させることを想定して作られている。

 ならは成人男性の姿が一番適切で、無駄がない。

 

 それが小学一年生ほどの姿をしているのは、単に生物兵器としてまだ育ちきっていないからということだ。

 実験記録によると、あと一年ほど培養すれば運用可能な状態になったらしい。

 

 そんな未成熟な状態で外に出れば、まあ不具合の一つや二つあろうと言うもの。

 

 コナン君は少しだけ息をついて、それから話題を変えたようだ。

 

「ところで、オメーの方はそろそろ名前考えたか?」

「967-OA2ですから、オーエーかエーツーではダメなんですか?」

「ダメに決まってるだろ!もっと人間らしい名前にしてくれよ!」

 

 むっつりと叫ばれてしまっては私も抵抗しようがない。

 モブの名前なんてマジどうでもいいべ。

 私は3秒で考えた名前を披露した。

 

「なら空で。ソラ。無難でしょう」

「い、意外ときちんとした名前つけたな。変な由来じゃないよな?」

「オリジナルを参考にしました。透き通る、で空です」

 

 うそぴょーん。

 

 空文字の「空」だ。ヌルとも言う。

 つまりゼロでは無い、という意味になる。

 

 プログラミングにおいてヌルとゼロは初学者を悩ませる最初の概念だ。

 ヌルとは何も示さないもの。Nothing。

 あり得ざる、目的なき私にピッタリだろう。

 

 雑ネーミングにしては結構いい具合の名前に仕上がったのではなかろうか。

 

 と、そのあたりで「コナン君!」「コナーン!」と言う子供の声が耳を打った。

 

 3人組の子供達が阿笠邸の敷地内に駆け入ってきたのだ。

 大柄なおにぎり君、ひょろっとした頭の良さそうな子、可愛い女の子。

 見た感じ少年探偵団だろうと思われる。

 

 子供達はわぁっと私を取り囲んで騒ぎ始めた。

 コナン君が「あ、バカお前ら…!」と言いかけて私に視線を向ける。

 

「コナン君迎えに来たよ!」

「誰ですかその子?学校にはいませんでしたよね」

「フトーコーってやつか?俺らと遊ぼうぜ!これから4丁目の洋館に行くんだぜ!お化け出るかもしれねえぞ!」

 

 すごい勢いに、思わず私はぼんやり彼らを見つめるのみになった。

 明らかに勢いに負けているのを察してか、コナン君が割って入って来る。

 

「こいつは体の調子もあって学校には通えねぇんだ。そんなにグイグイ行ったら疲れちまうだろ」

「そうなんだ…」

「体調なら仕方ありませんね。すみません、突然お邪魔して」

「オメーあったかくして寝ろよ!」

 

 パチクリと瞬いて、私は微笑んだ。

 「ありがとうございます」といえば、「どーいたしましてー!」と元気に揃った声を出す。

 優しい子達だ。

 

「僕は空と言います。君たちは?」

「僕は光彦、こっちは歩美ちゃんです」

「俺は小嶋元太!帝丹小学校の一年B組、少年探偵団だ!!」

 

 すごく誇らしげに3人で決めポーズをする姿は非常に可愛らしい。

 私を新たな顧客と見たようだ。

 元太君がグイグイと寄ってきて叫ぶ。

 

「オメーも何か依頼があったら俺たちに言えよな!」

「猫探しも無くした文房具も探偵団にかかれば見事解決!」

「ありがとうございます。今のところありませんが、その時はぜひともお願いしますね」

「おう!」

 

 子供達は非常に満足したようだ。

 ふんすふんすと誇らしさに胸を広げている。

 

 コナン君が大きくため息をついて頭を掻いた。

 

 「俺も準備できたらすぐ行くから、オメーら先行っててくれ」

 「わかった!コナン君、4丁目の洋館の前だよ!」

 「すぐ来てくださいよ!」

 

 ダダダダダ、と走り去る子供達の様子は嵐のようであった。

 

 気遣わしげというか、触れると破裂する危険物を扱うような仕草でコナン君が私に声をかけて来る。

 

「あいつらは邪魔じゃねぇはずだ。わかってるよな」

「ここで無闇に手をかければ生活に不都合が出る。そのような真似はしませんよ。……そんなに、僕は見境なく見えましたか?」

「オメーの視線、温度がなくて怖ェんだよ。笑顔も威圧的だし」

 

 それは言われても困るんだよなぁ。

 私が魂たる意思でしっかり制御しているのは6割ほどだ。

 無意識に出る言葉や仕草は癖のようなもので、詳細は身体に任せられている。

 笑顔を作る時、思わず顔が動くのと似たようなものだ。

 6割でも随分頑張っている方だと思うのだが。

 

 ちなみに、お分かりの通り私は内心非常に少年探偵団所君を可愛がっていたことを追記しておく。

 

 身を固くするコナン君が、やや目を伏せて言葉を固くした。

 

「ともかく、前にも言ったように殺しは禁止だ。俺と協力する以上、それだけは守ってもらう」

「了解しました。貴方がそう望むなら、ご命令を違えはしません」

 

 従順に家臣のように礼をとってみせれば、コナン君がさらに苦しげな顔になってしまった。

 なんでなんや、どうすればいいんや。

 

 そのままコナン君を見送って、阿笠邸に入って夜ご飯の支度をしようと意識を切り替える。

 このために踏み台も買ったし、繊細な動作の練習にもなって一石二鳥だ。

 

 器具の制作を終えた阿笠博士が、「ジャジャーン!」と少年探偵団並みに誇らしげな様子で私に開発したそれを見せびらかした。

 

「どうじゃ、『ゴリラの握力も計れる君!』これで君の埒外に強い握力も正確に計れるわい!」

「こんな短時間でできるとは……流石阿笠博士ですね」

「ぬわーっはっはっは!」

 

 愉快な人だが、同じだけ有能な人だ。

 Vサインを見せる阿笠博士の前で、早速握って見せる。

 

 真っ直ぐ立って、よいしょ、と。

 

結構固いようだ。私の握力でも3分の1ほどまでしか行かなかった。

 その値は230kgを示している。

 

 こんな細腕で230は絶対おかしいんだよなぁ。

 生物兵器にしても腕は太くなるはずやろがい。

 

 そのようにちょっぴりつっ込みつつ、ぐっぐっと手を握り直して力を抜く。

 そうして左右を二回ずつ測って記録すれば完了である。

 

 ほか、空いている時の米花体育館横のグラウンドを借りて計測する。

 50メートル走、反復横跳び、立ち幅跳びなどの一般的な項目だ。

 どれも六歳児童の平均どころか、高校生男子と比べても明らかに飛び抜けて高かった。

 

 阿笠博士が記録を見返してふぅむと唸る。

 

「やはり思った通り、身体能力全般が一般的な成人男性を大きく上回るようじゃの」

「聴力も嗅覚も、恐らくは。逆に味覚は劣っているようですから、どこが凹んでいるのか判別が難しいですね」

「なんじゃと!?何か違和感があったのかね!」

 

 急に心配そうしてくれたので、私は気恥ずかしくなって視線を逸らした。

 そう大したことじゃないんよ。命に別状なしというか。

 

「別に、甘味と塩味がかなり鈍いだけです。苦味と酸味は人間以上に感じ取れるので、肉食動物の遺伝子の影響かと思われます」

「気付かんかった…それじゃあ料理を作るのは辛いじゃろう」

「いえ。料理はレシピ通り作ればいいだけなので、今まで通り僕にお任せください。もちろん、味に問題があれば仰ってください」

 

 「じゃが、おいしく食べられんものを作らせるのは…」と阿笠博士はしおしおになってしまった。

 気にしなくていいのに。

 

 私はもとより食に興味がないタイプだ。

 料理も、降谷零の記憶に則って作っているに過ぎない。

 食べるのはどっちでもいいけど、作るのはアムピごっこみたいで楽しい今日この頃。

 

 置きっぱなしの「ゴリラの握力も計れる君」を見ながら、私はここ数日の体力測定全般を思い返した。

 

 本当は健康診断をしたいところだが、身分を示すものが何一つない状態で、こんな生物兵器の体を晒すなど軽々にできるはずがない。

 恐らくそうして採取されたデータは間違いなく異常なもの。

 外に出すこともできないデータを、どうやって秘密裏に破棄してくれとお願いできようか。

 

 博士は眉をハの字に下げて肩を落とした。

 

「ままならんのお。培養槽を自ら出たと言うことは、まだ育ちきっておらんのじゃろう?それがどういう悪影響になるか…MRIを含めた精密検査をワシの知り合いのドクターにお願いできればいいんじゃが」

「別に構いませんよ。感覚的には安定していますし、死んだとて、それは兄弟達の下に還るだけ。特段の影響はありません」

 

 私はそもそも死人である。

 死人が偶然にも盛大なおまけを楽しんでいるに過ぎない。

 ならば、未練などあるはずもない。

 

 もちろん死体が残ると阿笠博士に迷惑だから、その時はできるだけどっか海か山に移動せねばなるまい。

 

 阿笠博士がモゾモゾと落ち着かなさげに動き、意を決して私の肩を掴んだ。

 その目には心配と、同じだけの決意が宿っている。

 

「伝わっておらんかもしれんが、ワシらは君を心配しとる。君が穏やかに過ごしてほしいと思っとる。それだけは分かっておくれ」

「………?」

 

 行きずりの悪の組織の生物兵器相手に聖人過ぎか???

 ゔっ、光が眩しい!

 

 私は慌てて謝罪した。

 善人の阿笠博士なら、死にそうな子供を前にしたら心を痛めるに決まってたな!

 

「……たしかに、今の言い回しは僕の都合しか考えていませんでした。貴方の配慮を蔑ろにしたことを謝罪します」

「いいんじゃよ。まだ、君はまもなく四歳になろうという歳じゃろうて。大人に甘えて、親に甘えて然るべき子じゃ」

 

 優しく阿笠博士が私の頭を撫でる。

 小さな私の体躯に対して、随分と大きな手のひらに感じられた。

 

 その手つきがあまりにも優しくて、私は思わず微笑んでいたのだった。

 

「ありがとうございます、博士」

「……!」

 

 

 

 なお、その夕方に未解決だった殺人事件が解決。

 大活躍だった少年探偵団は保護者にこっ酷く怒られることになった。

 私も一緒に着いて行ってあげれば良かったかなと今更思うなど。

 

 そして少年探偵団の次なる目的地は工藤邸らしい。

 魔物が住むと噂があるのとのこと。

 

 定期的に私のところに遊びに来るようになった少年探偵団は、工藤邸で魔物を見つけるんだと意気込んでいる。

 

 工藤邸に出る魔物というと、敢えて言うなら本を借りにきた私が該当するだろう。

 要望に応えて本気モードでエイリアンすべきか、ちょっと悩む今日この頃なのである。

 





・空(ソラ)
「親が透き通るで子供が空。収まりがいいでしょう?」
ヌル。ゼロではない。何もない。空っぽ。
本人は景品表示法に則ったつもり。
勝手に偽造品を売るのは犯罪だからね。
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