降谷零のクローンなオリ主とコナン世界   作:ラムセス_

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騒然/沈黙の変化

 

 今日はしんしんと雪が降っている。

 夏だったり冬だったり忙しいなおい。

 

 ていと銀行にやってきた私たちは、鼻高々の光彦君の話を聞いている。

 

「はい、僕はお年玉は全部貯金するつもりです!そのために口座も作ってもらいましたから!」

「光彦君は偉いんだね」

「いえ、そんな。宙お兄さんも僕たちについてきてもらってありがとうございます」

 

 光彦君は恥ずかしそうに頭をかいている。

 

 この頃、私は新しく阿笠邸に現れた頼れるお兄さんとして少年探偵団と親しくなることができていた。

 「空がお世話になっていたと聞いているよ」とかなんとか言って近づいて、一緒に遊んでやっただけだ。

 子供達は空の不在を心配しつつ、すぐに私に打ち解けた。

 

 今日も、パワフルな小学生たちに阿笠博士が力負けしないように着いてきた次第である。

 

「帰りには明日のキャンプの買い出しなんだよな!肉にしようぜ肉!」

「宙お兄さん、空君と一緒で料理もとっても上手だもんね!」

「蘭お姉さんに聞きましたよ、高校の料理部にも誘われてたって」

 

 光彦君の言葉に私は「あ、あー」と冴えない返事を返すしかなかった。

 灰原さんがクスクス笑っている。

 たぶん私を含めてちまいのがわちゃわちゃやっているように見えているのだろう。

 こちとら高校生あむぴじゃぞおい。

 

 そして、料理部については本当に大変だった。

 

 私の部活選びは難航した。

 幼生は産卵管から分泌される免疫系の毒とセットのもの。

 だからただの垂れ流しの幼生の感染率はそう高くはないが……それでも水泳部は頻度もあるため、万が一パンデミックになったら怖いので却下。

 全身を鍛えられて良かったのに。

 

 料理部は実にいい選択肢だったが、そこを根城にする女子たちの勢いが怖かった。

 私を獲物と見て、飛び掛かろうと違い激しく牽制し合うのだ。

 「手足」だってもうちょっと大人しいぞ君らよ。

 なんで女子高生が生物兵器より獰猛なんだ。

 

 恐れ慄いた私は料理部をやめて、テニス部に腰を落ち着けた。

 もうこの際動ければなんでもいいし、手加減の練習と思っての選択だ。

 園子ちゃんがいるから女性のアタックもそこまで強くないし。

 

 おお、あむぴよ。

 高校生時代は顔面で本当に苦労したんだな……とほろりと涙する私である。

 顔面勝利者の気持ちなんて考えたことなかったよ。

 

 さて、そんな普通に雑談していれば、元太君が不意に「うううう」と調子が悪そうにした。

 

「腹痛ぇ、餅たくさん食ったからかなぁ。でもいつもはこの倍食っても痛くなんねぇのに」

「何個食べたんですか元太君」

「七個だけだぜ?カレー二杯にきな粉四つに醤油三つ」

「明確に食べ過ぎですよ…どんだけ食べてんですか」

 

 光彦君のツッコミに、元太君はしおっとした。

 たくさん食べる子は嫌いじゃないぞ。

 ヨシヨシと私が頭を撫でて可愛がれば、元太君はちょっと元気が出たらしく嬉しそうな顔をした。

 

「自業自得ね。阿笠博士と私は薬局で薬を買ってくるから、貴方はトイレに行ってなさい」

「行っておいで。僕はここで待ってるから」

 

 流石に私が着いていったら出るもんも引っ込むだろう。

 子供達にはコナン君がついててくれるようだし、私はゆったりここで待つとしよう。

 

 そうして。

 二人が薬を買いに出て、子供達の姿がトイレに消えたすぐ後のことである。

 

 一発、銃声が響き渡った。

 後部の椅子に座る私の目の前で、装備を固めた男五人が目出し帽をかぶって大声を上げた。

 

「テメェら静かにしろ!動くな!!」

 

 マシンガンが一丁、拳銃が4丁。

 五人組の武装を冷静に値踏みする。

 

 何はともあれマシンガンが厄介だ。

 ばら撒かれると民間人に被害が出る。

 

 古式ゆかしい銀行強盗達は、銃で客と店員を脅して威張り散らしている。

 一人、抵抗しようとした男性が肩を撃たれて悲鳴をあげて倒れ込んだ。

 客達から怯えた目が向けられている。

 あれは早く病院に連れていってやらないとまずいだろう。

 

「……………」

 

 ああ、牙がイライラする。

 喉の奥が燃えるような心地がして、何かを引き裂いてぶちのめしたくて仕方がない。

 何を前にして奴らはいきがっているんだ。

 殺してやるぞ。苗床にしてやる。餌如きが大きな口を叩くな。

 

 などと湧き上がる理不尽な感情を全部ポイしてため息をつく。

 成体になってから血気盛んで困る。

 

 まあ、今の私なら多少銃弾を受けても回復可能だろう。

 あくまで体感だが、そのように回復に特化しているのを感じ取ることができる。

 

 というわけでさっさと行動開始。

 

 携帯電話の回収のため、近くを通りかかったサブマシンガン持ちの男を適当に転かして意識を刈り取る。

 いきりたって何事か確かめにきたもう一人の腹に一発。

 残り三人が拳銃を向けてきたので撃たれながらジグザグに接近して全員ハイキックで薙ぎ払う。

 

 四発撃たれたが、計算通り人のいない棚のところにぶち当たっただけだ。

 私にも当たることなかったので、そのまま一人だけ上手く威力を調整して意識を残す。

 

 思い切り痛みに呻く男を捻り上げて、私は馬乗りになった。

 

 口角が自然と上がる。

 攻撃性が脳をガンガンと掻き立てて、こいつらを殺せと喚き立てる。

 もちろん殺しはしない。そんな面倒なことになることをするのは御免だ。

 

 転がったままの拳銃を手に取って、馬乗りになった男の頭に添えてやる。

 強盗犯の男はヒィ!と悲鳴をあげたようだった。

 

 目を白黒させる近くの男性に私は声をかけた。

 

「すみません、救急と警察を呼んでください!先ほど撃たれた方を早く病院へ運ばないと!」

「は、はい!」

 

 男性が慌ててスマホを取り出して110番をする。

 奥のトイレからコナン君がダダダっと現れて私を見上げた。

 

「お、おい、殺してねーよな!?」

「ギリ手加減が間に合いました。頭に血が上りましたが、なんとか」

「というかお前は無事なのか!?めちゃめちゃ武装してただろ相手!?」

「無事ですよ。それに成体になった僕なら銃弾を受けても自己回復できますので」

「そういう問題か!?」

 

 やや怒られが発生し、私はしゅんとした。

 申し訳ないパパン。怪我人がいたから話をまいた方がいいかと思って。

 

 そう思って未だ騒然とする室内を見ると。

 何故か火傷後の赤井さんがジョディさんに激しく絡まれていた。

 

 いや、赤井さんじゃねぇ!あれはあむぴ!

 

 私は原作を思い出しはっとした。

 たしかこの頃のあむぴは赤井秀一に化けてFBIの反応を見ているんだったか。

 コナン君が未だ呻く男を注意深く観察して、喉元を掴む私の手に力が入りすぎないよう見張っている。

 

 多分あむぴも困ってるだろうから、私はジョディ先生を手招きした。

 

「すみません、気絶した男たちを縛り上げるのを手伝ってくださいませんか?職員さんに結束バンドを貰いましたから、お願いします!」

「わ、わかったわ」

 

 凄く偽赤井のことを気にしつつ、ジョディさんがこちらにやってくる。

 

 

 間も無く機動隊が突入し、事件は一旦の収束となった。

 無論だが私は機動隊の方々にクソほど叱られつつ、褒められつつの天国と地獄をみることになった。

 

 私がようやく解放される頃には、すでに日も沈んですっかり夜になっていた。

 明日の買い出しは阿笠博士達にお願いしたが、とんだ足止めを食らってしまったものだ。

 

 そのとき、スマホが静かにマナーモードで震えはじめる。

 非通知だ。

 躊躇いなくそれを取り、「はい、宙です」と返事をする。

 

 降谷零がその平坦な声で私に苦言を呈した。

 

『無茶をしたね、君は。いや、君ならばあの程度の人間が障害でないことはわかってたけれど』

「流れを見ても良かったのですが、トイレに子供たちがいましたから。捕まる前に終わらせておきたかったので」

『そうか。君ならそうだろうな』

 

 どこか感慨深いような、遠い日差しを見つめるような声で彼が言葉を落とす。

 

『ところで、助かったよ。君の五感ならば僕の正体はすでにわかっていて、その上で庇ってくれたんだろう?』

「はい。おそらくはFBIの反応を見るために変装をされていたんでしょう。あまりベタベタされてはボロが出て困るでしょうから」

『そうだな。だがあの反応は……本当に死んだのか、赤井秀一は』

 

 まだ信じきれていないのか、降谷零の言葉は困惑と同量の怒りが込められているようだった。

 振り上げた拳を下ろす先が無くなったような、そんな怒りだ。

 

「さて。その男が死んだ当時、僕は眠っていましたから。貴方とその男が険悪な仲であることは知識としてありますが、そこまで生死確認する因縁があるとは思いませんでした」

『っ、』

 

 そう、このクローンたる肉体にはあのビルの屋上での二人の因縁が記録されていない。

 だから、私は景光の死を知らないはずなのだ。

 そこに至る因縁の全てに覚えがない。

 

 そのため、この辺で教えてくれればなと思い話を振らせてもらったわけだ。

 

 しばらくの沈黙。

 震えて、あらゆる物事を喉の奥に押し込めるような苦しげな声が聞こえてくる。

 

『………別に、ただ、少し仲が悪いだけだ』

「そうでしたか、失礼しました」

『ところで、なんだが。君には、どの程度記憶があるんだ。例えば、ヒロのことは覚えているか』

「はい。もちろんです。オリジナルの親友ですね」

 

 私は記憶を掬い、やや微笑んで返事した。

 

「記憶は幼少期の他に、警察学校時代が多いですね。彼に料理を教わったこととか、共に五人で風呂場を掃除したこととか。鬼塚教官は厳しい方でしたね」

『ああ。そうだな、あの人には随分と迷惑をかけてしまった』

「ふふふ。どれも輝かしい記憶です。もっとも、僕はただそれを無断で見ているに過ぎませんが」

 

 私は後ろめたさで少しだけ声が小さくなった。

 というか、勝手にあむぴ過去編の無断アップロード視聴は犯罪なんだよな。

 

 しおっとして窺うように小さな声で問いかける。

 

「すみません。不快ですよね、赤の他人が勝手に記憶を見るなど」

『君は記憶を植え付けられた側だ。こちらこそ、自分のものでもない記憶に苛まれて、君を苦しめていないだろうか』

「まさか!こんな暖かくなる友情を、決意を、清き誓いの記憶を見ることができて、僕は幸せ者ですよ」

 

 これはまったくの本心である。

 こんな超貴重秘蔵映像、OVAで本来は金取るレベルである。

 脳内無料視聴し放題は収益考えてないとしか言いようがない。

 

 降谷零はただ沈黙し、息を呑んだようだった。

 

『…………』

「ところで、それが赤井と何か関係が?」

『いや、単に聞いてみたかっただけだ』

 

 ピシャリと冷たい声で突っぱねられた。

 

 おいおいおい降谷零よ隠し方雑だぞおい。

 どうせいずれ諸伏景光の死はバレるんだから軽く伝えてくれよ。

 私が知ってることのボロが出ないうちに教えてもらわないと困るんだが。

 

 などと内心ブーイングしつつ、私はしゅんと再び小さくなった。

 

「……そ、うでしたか。失礼いたしました」

『すまない。僕は仕事があるからこれで』

 

 そのままぶつっと切られ、私はぶつぶつ文句を言った。

 なんで隠すの。

 クローンにとってみれば、記憶で見た知らん人が知らんタイミングで死んだだけやんけ。

 

 

 まあともかく、事件は解決したことだし。

 イライラしたままの歯をなんとかするためにも、阿笠邸に向かうのであった。

 





・あむぴ
君の記憶にある親友はもう死んでいる、奴のせいで死んだ(いや本当は俺のせいだ)。
こんなことをどうして教えられようか。
こんなにも無慈悲な立場にある君に、どうして伝えられようか。

・クローン
フラストレーションが溜まっている。
ああ、思いっきり殺して引き裂きたい。子らを用いて全てを蹂躙してやりたい。
転生者の意思に勝てなくてイライラ。
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