降谷零のクローンなオリ主とコナン世界   作:ラムセス_

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黒き13の交流

 

 服を買いに近くの米花百貨店へ来ているなり。

 休日の百貨店内は人で賑わっている。

 

 私は直してもらったブランド品のズボンと羽織ものを持って、ぷらぷらとウィンドウショッピング中だ。

 別にこんなハイブランド品でなくても良かったんだがな。

 「大元に似て顔はいいんだからオシャレしなさい!」と灰原さんに喝を入れられて、阿笠博士に頭を下げて多少いい服を買い揃えていると言うわけだ。

 

 園子ちゃんとの遠出もあるし、多少は身綺麗にしないといけない場面もあるしな。

 

 そんなわけで一通り服を買って、あとは百貨店の地下に降りる。

 美味しいものでも仕入れて阿笠邸でのお土産にしようと言う算段だ。

 

 博士のメタボに配慮して、なるべくヘルシーそうなものにしようか。

 ゼリーとか爽やかで良さそうだ。

 

「…………はぁ」

 

 しかし、どうにも阿笠邸の空気が重い。

 

 先日私が誤ってコナン君の麻酔銃で撃たれてからずっとだ。

 あの時は私も完全にグースカ眠っていたのだが、恐らくは肉体の本能が暴走して暴れかけていたのだろう。

 まさか灰原さんに手をあげかけるとは。

 

 自己嫌悪が腹から湧き上がってきて、ついため息も重くなる。

 いややっぱ暴走する生物兵器と一緒に住むとか嫌だよなぁ。

 出てったほうがいいかなぁ、でも収入もないのにそんなの無理だし。ブツブツ。

 

 そんなふうにフラフラと歩いていると、カフェの前で電話をする人が一人。

 見覚えのある外国人女性は力強く美しい立ち姿で、その只者では無い雰囲気を示している。

 

 FBIのジョディ・スターリング捜査官だ。

 彼女は私の方を見てパチパチと瞬いたようだった。

 

「あら、貴方は子供たちのお兄さんの」

「はい、阿笠宙です。奇遇ですね。昼食ですか?」

「ええ、この近くで仕事をしていたの。でももうもうそろそろ同僚と戻らないといけないわ」

 

 雑談しつつ、私は思考を巡らせた。

 米花百貨店にジョディさんというと、何か動き出すような気がするんだよな。

 考えごとをしているとこに小走りでキャメル捜査官が現れた。

 顔色が悪い。なにかあったのだろうか。

 

「ジョディさん!大変です!!」

「どうしたのキャメル、顔色真っ青じゃない」

「トイレで赤井さんとすれ違ったんですよ!あれは赤井さんでした!」

 

 そんなはずはないのに、と幽鬼のような顔をしてキャメル捜査官が取り乱している。

 「あなた方は見ていませんか!?」というものだから、私は首を傾げて考える姿勢をとった。

 

「赤井……というと、確か亡くなられたというFBIの方ですよね。僕はお会いしたことがありませんので、顔までは」

「っ、目つきの悪い顔に火傷の跡のある男よ!」

 

 ジョディさんの言葉に私はふむと頷いた。

 なるほど、また安室さんの変装を見たのか。

 

「そこまで特徴的であれば忘れないはずですが、見覚えはありませんね。こちらには来ていないんだと思われます」

「そう、ありがとう!ごめんなさい、私たちは行くわ!」

 

 ジョディ捜査官は走りだし、そのまま「キャメル!ちょっと会計お願い!」と言い置いてそのままいなくなってしまった。

 困り果てたキャメル捜査官だけが場に残される。

 私も「では、僕はこれで」と言って退散することとする。

 

 何やら上で騒ぎがあったようで、道を歩くうちに機動隊と爆発物処理班とすれちがった。

 なにやらぞろぞろと物々しい格好で行き交っている。

 エレベーターとエスカレーターが使えないようになっているらしく、客たちがエレベーターの前で困ったように立ち尽くしているのが見えた。

 

 それを見て、ようやく私も事態を把握した、

 

 組織編の話だっけ。

 赤井秀一の出現を聞いて黒の組織が駆けつけたが、全然別件の野生の爆弾魔が出現して騒ぎになったせいで全然仕事できなかったやつだ。

 黒の組織、爆弾犯に縁がありすぎる。

 

 組織が見たと言う赤井秀一は偽物で、実際のところ関係者の様子を窺う為に変装した安室透がその正体である。

 FBIの見たそれも同様、安室さんの変装だ。

 

 そうとも知らずジンはスナイパーを使って偽赤井を狙撃しようとするわけだ。

 

 原作では無事だったものの、いつ安室さんが誤射されてもおかしくなかった。

 建物内に残る僅かな匂いを辿っていけば、もうすでに爆弾のある階に行ってしまっているようだ。

 機動隊によって封鎖されてしまっている為、もう彼に会うことは叶わない。

 

 危険を知らせるには電話するしかなさそうだ。

 出るかどうかは賭けになるが、連絡しないよりマシだろう。

 向こうは電話は制限されていないから、いま通話客でいっぱいで目立ちはしないだろうし。

 

 そのように安室透の名をアドレス帳から表示すると。

 この肉体に宿る意思がざわざわと反応を見せた。

 

 ああ、わかる。愚かなオリジナルよ。

 殺してやる、お前のせいだ。

 

 脳内に響くような憎しみに満ちた声がする。

 これ一方通行っぽくて、私からは話しかけられないんだよな。

 肉体の思考が脳を介して私に伝わっているのだ。

 

 お前が愚かだったからだ。

 僕は玩具の如く苦しみの中弄り回された。

 お前は何も知らないままだった。

 正義感だけの出来損ないめ、殺してやるぞ。

 

 

 めっっっっ!!!

 

 

 人通りの少ない非常階段に駆け込み、ところ構わず恨みまくるボディに気合を入れるべく、一発拳を腹に叩き込んだ、

 げふぅ。

 

『げふぅ!?!?なんでですか!?!?』

「オリジナルは悪くないでしょう。恨むのはお門違いすぎませんか」

 

 思考は伝わらないようだから、わざと口に出して話しかける。

 肉体君はその耳と脳でそれを受け止めて、凄まじい怒気で満ちていく。

 

 私の思考は通じずとも、ひとりごとの形にすれば通じるらしい。

 面倒なことだ。

 

『そんなこと関係ありませんね。僕らが苦しみのうちにあったのにのうのうと平和を謳歌したものも、力無い正義も愛も何もかも、僕の憎悪の対象です』

「厄介すぎませんか。よくその情熱が続きますね。僕そう言うのは疲れるので任せました」

『人の心無さすぎて引きます』

 

 なんで復讐の鬼にドン引きされないとあかんのや。

 私は憮然として膨れた。

 心底見下げ果てたというように苛つきながら、肉体が思考をぶつけてくる。

 

『あんな男の何を慕っているのか理解に苦しみます。僕らの元になるだけあって能力はある程度担保されていますが、己の感情に振り回されて失敗する。碌でもない男だ』

「高度な自虐ですか」

『殴り合いで決着をつけましょう。ぶちのめしてやりますよ』

 

 オラついた肉体ができもしないことを口にして憤っている。

 やだ野蛮。

 私はたわいもない吠え声を適当に流しつつ、電話をかけた。

 

電話はツーコールで繋がった。

 

『………珍しいな、君からとは』

「お忙しいところすみません」

 

 私は短く謝罪をして、素早く本題に入った。

 

「オリジナル、今すぐウォッカに連絡をとったほうがいいかと。向かいに狙撃手、そしてジンの車がいます」

『…まさか』

 

 安室さんが目を見開いているような気配が伝わってきた。

 彼の今回の目的は赤井秀一の関係者の反応確認だ。

 ベルモットはこのために変装に協力したし、当然バーボンの事情を知っている。

 本来こんな誤報じみたことが起こるはずはないのだ。

 

 安室さんは眉間に皺を寄せた。

 

『ベルモットがあえて言わなかった、事故が起こればいいと放置したと見るべきか』

「そこまではわかりませんが。この件を取り仕切っているのが誰かは知りませんが、早めの連絡をお勧めします」

『助かった。僕も勘違いで誤射されては敵わないからな』

 

 ため息をついて安室さんがしばし沈黙する。

 奇妙な間が開く。

 

『────例えば、なんだが。僕と家族として暮らさないかと言ったら、どう思う?』

 

 おや、と私はすぐに首を傾げた。

 

 正直な話、潜入捜査中の安室さんには土台無理な話だ。

 お互いにとって不利益しか齎さない。

 特に私は高校生の姿だし、大抵の事はすでに一人でできてしまう。

 子供の姿ならまだ保護者として通じるが……情に流されるにしては少々おかしな言い回しだ。

 

 彼の声に情は含まれていなかった。

 躊躇いと、それと同じだけの冷徹な響きが宿っている。

 

『どうだろうか、君はどう考える?』

 

 急くような声。

 なるほど、そのまま確保、収容、保護ってやつか。

 それともそのまま殺処分だろうか。

 

 ガンガンと鳴り響くような肉体の絶叫が脳内を満たす。

 

 この男は!

 僕らの情を利用して僕らを害そうとしている!

 これほどの思慕を受けてなお裏切ろうとしている!!

 正義を掲げる資格のない外道だ!

 

 血を吐くような憤怒と憎悪が叩きつけられ、私は思わず手で耳を塞いだ。

 

 お前キレすぎでしょ。

 普通に公安としては妥当な判断だよ。

 ともかく、丁寧にお断りの返事をしなければなるまい。

 

「すみません、僕は今の生活が気に入っていますので。阿笠博士達も、血のつながりこそありませんが家族だと思っている」

『…そうか。残念だな』

「あと、組織としてどうしても監視や処分が必要になりましたらおっしゃってください。僕は抵抗せず受け入れましょう」

『!!!』

「僕は、貴方の志の害にはなりたくありませんから」

 

 震える吐息だけが、向こうから漏れ聞こえてくる。

 彼は返事をせず、ただ沈黙だけが場を支配した。

 

 肉体の声が、憎悪に塗れたそれが怨嗟を叫ぶ。

 

 そんなことする必要はない。全て滅ぼすべきだ。

 全てを蹂躙して弄んで報いを受けさせるべきだ。

 だってそうでないと不公平だ。

 

 なんかもう肉体まで鬱々としてきているようだ。

 コンディションが落ちそうだし後でフォローしておくか。

 

 「それでは、僕はこれで」と言って強制的に電話を切る。

 まだ彼は何かを話したがっていたようだが、長電話はボロの元だしな。

 

 おしゃれなゼリーのおやつを買ってから、あえて細い連絡通路を通って地下から帰宅。

 組織に見られたくないしな。

 そのまま買い物袋を抱えたまま帰路につく。

 

 というか、今思えば私は私だけのつもりだったから躊躇いなく命を捧げるつもりだったが。

 肉体君に意思があるとちょっと問題が複雑になってくると気がついた。

 

 人通りの多いところを外れてから、そっと小さく声を出す。

 

「あの、さっきの発言撤回していいですか?」

『何の話ですか』

「いや。冷静に考えたら貴方と無理心中みたいになってしまいますから。どうしようもなくなったらルパンと逃げてお茶を濁しましょう」

『僕は所詮完璧な精神としてこの肉体を支配する貴方とは違う、感情に汚染された不要物でしょう。顧みる意味はありません』

「そう卑屈にならず。僕だけだと平熱すぎてバランスが悪い気がするので、僕を助けるつもりでお願いしますよ」

 

 街を歩きながらの独り言だ。

 聞かれないようにしなければと思いつつ、なんとなく変人っぽくて恥ずかしい。

 

 私は死後だと言う意識が強くてなにぶん熱量が足りないからな。

 こういう情熱は生きる上であって然るべきだろうと思うのだ。

 

 肉体君は長い沈黙の後、クソデカため息をついた。

 

『はあ。確かに貴方は人の心が無いですから。僕が適宜教えてさしあげますよ』

「はい。これからお願いしますね」

 

 ひとまずの和解が成立して、私は少しだけ笑顔になったのであった。

 





・あむぴ
TVでていと銀行の一件が放送され、ウォッカにクローン大暴れがバレた。
それをウォッカはバーボンと誤認。
「ヒーローごっこたぁ洒落た趣味じゃねぇか。どう言う風の吹き回しだ?」って聞かれてた。
「むしゃくしゃしてたので」と言い訳するも、心臓が早鐘を打つ。

「だがよぉ、米花百貨店の赤井がテメェだったとして、ていと銀行の赤井はなんだ?」
「さあ。知りませんよ、他人の空似では?」
「………フン。まあいいさ」

あの子の存在がバレるわけにはいかないから。
組織に回収されるのだけは阻止しなければならないから。
公安で処分をせねばならないから。
バレていた。
あの子を見捨てたことがあの子自身にバレていた。
あの子は秘密を守ったのに松田の仇を討ったのに危険というだけで勝手に処分する日本のために日本のためだから仕方ない仕方ないに決まってるこれ以上考えるな考えるなやめろ。

日本のために。
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