降谷零のクローンなオリ主とコナン世界   作:ラムセス_

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難破船の行き先②

 

 さて、その一週間後のことである。

 私たちは飛行船に乗って、優雅な旅を始めていた。

 

 この飛行船はベルツリー一世号と言って、鈴木次郎吉氏肝入りの企画で作られた世界最大の飛行船だ。

 その内装は豪華で、まるで天空に浮かぶ一流ホテルの如し。

 

 東都を一望する景色に、私は思わず子供達と一緒にはしゃいでしまう。

 こんな大都市を上から存分に眺める機会はなかなかないからな。

 歩美ちゃんと光彦君を抱っこしてやると、わあわあと盛り上がったようだ。

 

「見て見て見て見て!宙お兄さん!東都タワーが見えるよ!」

「そうだね。なんだか小さく見えるね」

「俺帝丹小見つけたぞ!」

「えっ元太君どこですか!?そこ!?」

 

 ニコニコの灰原さんが保護者顔で背後から私たちを見守っている。

 なんか私のことを少年探偵団と同年代の幼児だと思ってる節があるんだよな。

 いや、実際私は四歳で間違いないから幼児なんだが。

 

 なお、毛利探偵は高いところが苦手なので、奥の方に立てこもっておられます。

 明らかに顔色が悪いまま水を浴びるように消費しておられて、流石の私も憐れみが先に立つ。

 

 そっと近寄って、私は毛利探偵に声をかけた。

 

「よく参加を決意されましたね。高所は苦手のご様子なのに」

「馬鹿言え、蘭を保護者抜きで送り出せるわけねーだろ。仮にも犯罪者が来るところだぞ」

「なるほど、家族思いなのですね」

「それにだ。何処の馬の骨ともしらねぇ男も参加してると来た。分かってんのか」

「それは本当に誤解なのですが」

 

 じろっと毛利探偵に睨みつけられ、私は苦笑してパタパタと手を振った。

 娘につく悪い虫、と言うことらしい。

 

 たぶん工藤新一は気に食わないが半ば公認なのだろう。

 そこに現れた変な新入りは警戒対象というわけだ。

 一人娘を持つ親は大変だ。

 

 子供達はちまっこく走り回って盛り上がっている。

 平和という感じがして、私はなんとなく頬が緩むのを感じた。

 まあ、その平和は間も無くぶっ壊されるわけですが。

 

 次郎吉氏がやってくると、今回の旅程を説明してくれた。

 怪盗キッドが仕掛けてくるのは夕方、飛行船が大阪市上空に入ってからとのことで。

 それまでは私たちは自由に中でくつろいでいいらしい。

 つまり、すでにキッドはこの中に紛れ込んでいる可能性が大だという事。

 

 「私のこともいただきに来てくれないかしら!」と恋する乙女の顔をした園子ちゃんが舞い上がっている。

 

「ああ、この際阿笠君でもいいわよ。なんかロマンチックなこと知ってそうだし」

「園子!ほら、また阿笠君が困ってるじゃない!」

 

 恒例行事のだる絡みに、蘭ちゃんが声を上げた。

 園子ちゃんは「冗談よ、冗談」とニシシと笑っている。

 

「でも阿笠君、紳士的で優しいけど危険さが足りないのよね。こう、燃え上がるロマンと言うか?まったり牧草食べてる品のいいポニーみたいな感じで」

「凄い悪口言うよね。僕も男だし本気出せば凄いんだよ?」

「ってむくれるところまで含めてキャラ性がサンリオなのよね。これで湧き上がるのは母性だけよ」

「そう言えばクラスの子、お母さんになってあげたいみたいなこと言ってたっけ」

「僕クラスでそんな扱いなのかい????」

 

 むっすーーー。

 私は完全に臍を曲げて唇を尖らせた。

 こうなったら目にもの見せてやろうではないか。

 

 近場の蘭ちゃんに狙いを定め、ドン!と壁に手をつく。

 いわゆる壁ドンだ。

 

 バーボンの雰囲気を出すべく完全に思考を切り替えて、うっそりと微笑んでやる。

 嗜虐的な雰囲気と怪しげな笑みはどこか陰鬱で、影のある雰囲気となる。

 

「ではご希望通り、ほんの少々手荒くいかせてもらいますよ。食べられても文句は受け付けませんのでそのつもりで」

 

 ペロリと唇を濡らす。

 はわわわわ、と蘭ちゃんが頬を染めて震え始めた。

 よしよし、元があむぴなんだからええ感じだ。

 

 すると背後から無邪気な声ひとつ。

 

「わぁ、宙兄ちゃん何してるの?」

「……。こ、コナン君……ッ!」

 

 燃え上がる般若はスタンドの如し。

 声は無邪気だし笑顔は子供っぽいそれではあるが。

 総合した雰囲気は「屋上へ行こうぜ…久しぶりに切れちまったよ…」で間違いなかった。

 

 そんなキレることないだろ!

 ただの同級生のじゃれあい…。

 

「宙兄ちゃん?」

「あっ、反省してます。どうかご慈悲を」

「一緒にあっち行こうね」

 

 ニコッ!と手を引かれて、しょぼぼぼぼぼん……と私はドナドナされた。

 説教は手短だった。

 要約すれば「死ぬかおい?あ゛???」みたいな流れだったが。

 チンピラ過ぎるだろ君。

 

 子供達はその間、藤岡というルポライターと話をしていたようだ。

 朗らかにしているが、実際にはこの人がシャム猫のメンバーだ。

 まあ、正式には偽シャム猫なわけだが。

 

 テレビスタッフもいるようで、貧相ではあるがTVカメラも回っている。

 予告通りだと今日がシャム猫の予告の期限だからな。

 人も足りないという事なのだろう。

 

 次郎吉氏と一緒にやってきた犬のルパン君が私を遠巻きに見ている。

 「アウゥ…?」と非常に訝しげだ。

 足元までやってきてすごく匂いを嗅いで、さらに訝しげに首を傾げる。

 撫でようとしたらシュンッッと逃げられてしまった。

 

 やっぱり犬君は私のことを不審に思っているらしい。

 人間と匂いが違うからな。

 

 

 さて、その後は飛行船の見学である。

 駆け回る子供達に手を引かれて、私達はゆったりとデッキを見て回った。

 ニッコニコの灰原さんを添えて。

 

 園子ちゃんには「ドーベルマンの被り物したチワワって感じね」などとさっきのバーボンモードを称されていた。

 可愛いだけやないかワレ。

 

 スカイデッキも見学し終え、ビッグジュエルの確認もできた。

 美しき天空の乙女、レディ・スカイ。

 それを守る仕掛けはどっちかって言うとルパン系のトンチキなものであった。

 なぜボクシンググローブが飛び出る仕掛けを作ろうと思ったのか。

 

 そっとこちらを確認する視線を感じ、私はしばしここに残ることを考えた。

 「少しゆっくり外を眺めたい」と言ってここに残してもらうこととする。

 

 5分ほど経過すれば、誰もいないことを確認してからゆったりとキッドが現れた、

 少し会釈して、白々しくキッドは笑顔を作った。

 

「どうも、僕は仕事を抜け出してビッグジュエルを見に来たんです」

「そうだったんですか。確かに、美しい宝石ですからね」

 

 私はポケットからトランプをおもむろに取り出した。

 ぱらぱらと空中を舞わせてロイヤルストレートフラッシュを手元に持ってくる。

 

「どうです、少し上手くなったと思いませんか、師匠」

「……なーんか動きから他の師匠の香りがするんだけど?」

「そこはご勘弁を。勉学の機会にはがめついもので」

 

 怪盗キッドはニタリと笑い、くつくつと肩を揺らした。

 

「で、別の師匠さんはどなた?」

「ルパン三世です」

「ブッッッ」

 

 激しく吹き出したキッドはゴホゴホと咳き込んで口元を拭った。

 いや想像の範囲内やろがい。

 

「いやよく名探偵黙ってんな!?ぜってー詰められるだろ」

「秘密にしてますから。バレたら締められます。それで、評価のほどは?」

「及第点。そろそろより上位の技術に挑戦してステップアップするいい機会かも」

「よし。精進いたします、師匠」

 

 私はぺこりと頭を下げた。

 キッドは肩をすくめてやれやれと首を振ったようだ。

 

「このメンツを師匠にして何目指してるんだよオメーは」

「一応大泥棒一味の予定です。コナン君とは因縁の相手になれたらなと思ってます。あ、これ本人には内緒ですよ?」

「あははっ、悪い奴だな!」

 

 心底愉快と言った様子で笑ったあたりで、エレベーターが上がってくる機械音。

 私は素早く奥の家具の後ろに隠れた。

 キッドはといえば、変装を利用してそのまま入れ違いに外へ出ようとしているらしい。

 自然体でビッグジュエルの前に立っている。

 

 隠れながら遠巻きに眺めていると、何やら揉めている気配が少し。

 

 「あなたキッドね!?」「嘘、新一…?」などなど、大嘘の気配が漏れ聞こえてくる。

 怪盗キッドの正体が工藤新一だと大嘘ぶっこいているのだろう。

 

 おいおいおい、コナン君に殺されるぞ。

 

 あとでコナン君にチクってやろうかな、でも師匠がこんなところで無惨な姿になって見つかったら可哀想だしやめておくか。

 そのように考えながら、私はそっとその場を後にしたのだった。

 





・高校におけるクローンの地位
品のいいみんなのポニー。
誰かが独占してはいけない(紳士協定)。
本気出すと一瞬だけ白馬の王子様になるけど園子はタヌキの変化の術のたぐいだと思ってる。
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